流星のメモリアル   作:スーサン

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仲直りの方法

「スバル君、遊びに来たよ~~~~♪」

 電波空間を使ってスバルの部屋にやってくると、ハープ・ノートは電波変換を解き、元の響ミソラへと戻った。

「なにやってるの」

「うん」

 いつもつけているバイザーとは違う作業用ゴーグルを外した。

「ジラコンヘリだよ」

「ラジコンヘリ」

 ラジコンヘリを見て、首をかしげた。

「以前……ミソラちゃんに会う前に気前のいいオジサンから、ラジコンヘリを貰ったんだよ。しばらく出してなかったから、その整備」

「へぇ~~……」

 女の子のせいかちょっとだけ、興味なさそうな返事を返した。

「遊びに来たならゴメン。もうちょっとで整備が終わるから、待ってて……後は油をさすだけだから」

 そういい、プロペラの付け根部分に油を差し、軽く回した。

「これでちゃんと、飛ぶようになったぞ」

「へぇ~~……こんな重量感のあるものが本当に飛ぶの」

「ラジコンヘリは立派な飛行機だからね」

「飛行機」

 頭の中で雲の上を飛ぶジャンボジェットを想像し、首を振った。

「ラジコンヘリに限らず、ラジコンカーにミニ四駆……だいたいはモーターのあるものはちゃんとした力学の元、作られてるんだ」

「……」

 頭の上に何個も「」を作るミソラにスバルは判りやすくいった。

「簡単に言うと、このラジコンヘリは本物のヘリコプターを小さくしたものだと思ってくれればいいの……」

 少し考えるように染みのついた天井を眺めた。

「動かしてみる」

「え……」

 プロペラマンのカードを渡した。

「ちょっと難しいけど、慣れるとクセになるよ」

「クセに……ね」

 不安そうに眉をひそめた。

 

 

 近くの公園まで足を運ぶとミソラはハンターVGにプロペラマンのカードをスキャニングし、実体化したラジコンのコントローラーを握った。

「じゃあ、飛ばし見ようか……最初は慣れないから、浮かす程度にやってみて」

「う、うん……こう」

 喉を鳴らし、コントローラーのレバーを引いた。

 ブロロロロロロロ……

「うわぁ、飛んだ!?」

「そら、ヘリだもん……飛ぶよ」

 呆れたように笑った。

 そっとミソラのコントローラーを握る手を握った。

「あっ!?」

 真っ赤になって固まるミソラを無視し、ラジコンヘリを見た。

「ほら、バランスが崩れてるよ……ヘリのコントロールは意外と難しから、最初はバランスを取る練習をしよう」

「あ……う、うん」

 握られた手に困惑しながら、ミソラは空に浮かぶ、ラジコンヘリを動かした。

「あ、左側にバランスが崩れたよ。逆にバランスを取って!」

「こ、こう!」

 握られた手にドキドキしながらコントローラーを動かした。

「あ、ミソラちゃん、そっち逆!?」

「え……キャァァァァァ!?」

 見事にバランスを崩し、自分たちに迫ってくるラジコンヘリにミソラは悲鳴を上げた。

「あぶない!」

 ドンッ!

「キャッ……!?」

 ラジコンヘリが激突する前に突き飛ばされ、ミソラは尻餅をついてしまった。

「あいたた……ありがとう、スバル君」

 腰をさすりながら起き上がると、声を上げてしまった。

「ラジコンヘリが!?」

 煙を上げて壊れているラジコンヘリを見て、ミソラは慌てて謝ろうとした。

「そんな事よりも、ミソラちゃんは大丈夫!?」

「え……」

 壊れたラジコンヘリに目もくれず、ミソラの身体に触れると、ホッとした。

「よかった……怪我してないみたいで。ゴメンね、突き飛ばしたりして」

「う、うん……スバル君のおかげで怪我はしなかったけど……でも」

 ラジコンヘリを見た。

「私のせいで、壊れちゃった……」

「いいよ、どうせ貰い物だし、それでミソラちゃんが怪我したら、そっちのほうが僕にとって重大だよ」

「……」

 優しく微笑んでくれるスバルにミソラは心がチクチク痛んだ。

 

 

 その日の夜。

 シャワーを浴び終わると、ミソラはパソコンを見てもらっていたハープに聞いた。

「どう、同じものあった」

 イスに座って実体化していたハープは残念そうに首(身体?)をふった。

≪ごめんなさい……ウォーロックに聞いて型番を調べたけど、どうやら相当古いもので、もう売ってないみたいなの?≫

「そっか……」

 残念そうに目を伏せた。

≪で、でも、スバル君、許してくれてたし……気にする必要ないわよ。あの程度で怒るほど、器は小さくないわよ、スバル君は?≫

「ありがとう、ハープ……でも、もう少し調べてみる」

 イスを変わってもらい、マウスを動かした。

≪アナタも健気ね……壊したラジコンを弁償しようなんて?≫

「……だって」

 顔を赤らめた。

「ラジコンを弄っているスバル君の顔、とっても可愛かったもん……」

≪あらあら?≫

 ご馳走様とハープも顔を赤らめた。

「それに、新しいの用意したらきっと、もっと喜んでくれるよ。ラジコン弄ってるときのスバル君、なんだか楽しそうだったし」

≪男の子だからね?≫

 ピッピッと玩具店のホームページを検索していくと、あるものに目がついた。

「手作りラジコン……」

 値段は二千円ちょっとで見た目もお世辞とスバルの持っていたものと比べると大したものじゃないが不思議と惹かれた。

「えっと……簡単に作れて、本物の操縦技術……着色することで世界で自分だけのラジコンヘリが完成……か」

 手作りのラジコンヘリを見つめ、ジッと考えた。

「よし! これを買ってみよう!」

≪え……でも、これスバル君の持ってるのと比べると偉くチャチよ?≫

「うん……でも、これがいいの。普通の組み立てのを買っても私じゃ作れないし、出来合いじゃ弁償にならない気がするし」

≪青春ね?≫

「えへへ」

 テレたように笑い、クリックボタンで「購入」を押した。

 

 

 数日後。

「えっと……塗装は先に済ませるんだ」

 届いた手作りラジコンヘリを分解し、用意した着色インクを並べるとバンッと手を叩いた。

「やるぞ!」

「ピンク色と青色ね」

「私とスバル君のイメージカラーだからね」

 満面の笑顔で筆にインクをつけると、ゴクリと喉を鳴らした。

「待ってて、スバル君……私とスバル君だけのラジコンヘリを作って見せるから」

 額に「必勝」と書かれた鉢巻を巻き、筆を走らせるとミソラは一心不乱にラジコンヘリを塗っていった。

 その姿にハープはクスッと笑った。

≪ミソラ……頑張って≫

 

 

 数時間後。(星河家:スバルの部屋)

「最近、ミソラちゃん、遊びに来ないけど、やっぱり、この前のラジコンのこと気にしてるのかな」

≪さぁな……俺の知ったことじゃないがな?≫

 暇そうに欠伸をするウォーロックにスバルは作業用ゴーグルをあげた。

「もうちょっとだな……」

 手に持った油を床に置くと額の汗を拭った。

「なにが後、ちょっとなの、スバル君」

「おわぁ!?」

 背後から声をかけられ、ビックリした。

「後ろから声をかけないで、ビックリするから」

「ご、ごめん……」

 ハープ・ノートに電波変換したミソラは元に戻り、腰をかがめた。

「なにしてるの」

「うん、これね」

 最後にプロペラを回した。

「丁度直ったところだよ」

「え」

 真っ青になった。

「それ、壊れたんじゃ」

「一部がね」

 新品同様に直ったラジコンヘリを見せた。

「前にも言ったようにラジコンは本物を小さくしたようなもので壊れた部分を取り替えれば実は元に戻るんだよ……まぁ、外壁は一から作り直したんだけどね」

 テレたように笑った。

「そ、そうなんだ……えっと……じゃ、じゃあ、私、もう……かえ」

「帰らない!」

 ガシッと手を掴まれ、ビクッとなった。

「やっぱり、最近、顔を見せなかったのはラジコンヘリを壊した責任を感じてたんだね」

「……」

 厳しい目で見られ、ミソラは今にも泣き出しそうな顔をした。

 手を離した。

「ごめん」

「え」

 いきなり謝られ、困惑した。

「ちゃんと修理できるって教えておけば、変な不安、与えなかったのに……本当にゴメン」

 必死に頭を下げるスバルにミソラも慌てて弁解した。

「あ、謝ることないよ……元を正せば悪いの私だし」

 シュンとなるミソラに優しく微笑んだ。

「だったら、こっちのほうでお詫びしてね」

「あ……」

 唇が重なり、ミソラの手から自然と力が抜けた。

 ポトッ……

「うん」

 トロンと目を潤ませるミソラにスバルは落ちたものを拾った。

「あ、それ!?」

 慌てて阻止しようとするも、スバルの手が彼女の身体を制した。

「そっか……このためだったのか」

 床に押し倒すようにミソラの身体を押さえつけ、奪うようにキスをした。

「ありがとう……僕のこと、こんなに考えてくれて」

「ち、違うよ……悪いの私だから、そのお詫びでね。別にスバル君がお礼を言うことじゃ」

 言い訳する言葉をキスをすることで止め、スバルはまたお礼をいった。

「本当に……ありがとう」

「……」

 しばらく、なにも言えなくなり、気づいたら涙が溢れていた。

「ほ、本当は……怖かったんだよ」

 嗚咽を漏らした。

「スバル君の大事なおもちゃ壊して、嫌われて、もう逢いたくないっていわれたら私……」

 必死に涙を拭い、ヒックとしゃくり声を上げた。

「だから、必死にラジコンヘリ作って、色だって、ピンクと青と私とスバル君のイメージカラーを使って、必死に許してもらおうと」

 静かに泣きはらすミソラにスバルは彼女を涙をすくった。

「バカだな」

 ゆっくり起き上がった。

「それくらいでダメになるほど、僕たちの仲って危ういものだったの」

「うぅん」

 必死に首を振るミソラにスバルは満足げに頷いた。

 ラジコンヘリを持ち上げた。

「じゃあ、このラジコンヘリ、貰っていいかな」

「い、いいの。スバル君が直したのに比べたらずっと安いし、チャチだよ。塗装だって所々、はみ出してヘタクソだし」

「これだからいいんだよ……外で飛ばしてみよう」

「う……うん」

 嬉しそうに涙を呑み、微笑んだ。

「えへへ……」

 

 

 公園に着くとスバルは早速、ミソラから貰ったラジコンのコントローラーを握りスイッチを押した。

 ブルルルルルルルル……

「おお!? さすがは最新型……初心者を意識して作ってるから、すごく動かしやすい!」

「私とスバル君のヘリが飛んでる!」

「重心を大胆にそらすことまで出来るな……これは重量が軽いおもちゃだからこそ出来る荒業だな……よし、必殺技だ!」

「必殺技」

 グイッと上昇レバーを上げた。

「あ、そんなに空高く飛ばしたら、受信できなくなって、コントロールできなくなるよ」

「大丈夫……ギリギリは知ってるから、それよりも」

 見えるか見えないかまでラジコンヘリを上空に飛ばすと一気に前へと堕ちるようにスイッチを切った。

「ス、スバル君、そんな事したら、ヘリが落下して……キャァァァァァァ!?」

 苦労して作ったラジコンヘリが壊れ堕ちる未来を想像し、悲鳴を上げた。

「ここから!?」

 真っ青になるミソラにスバルは下唇を舐めた。

「必殺……「流星ツバメ返し」!」

 地上に落下する瞬間、ラジコンヘリのプロペラが高速で回転し、ツバメのように上空へと飛び上がった。

「あ……」

 へなへなと腰を抜かした。

「ビックリした」

「初めから言ってよ……今のは本気で怖かったよ」

 真っ青な顔で身体を固めるミソラにスバルはやりすぎたと謝った。

「ごめんごめん……でも」

 今度はカクンカクンとラジコンヘリを器用に縦方向に上下しながら動かすと意地悪く笑った。

「壊れたら、今度は僕が弁償するよ……ミソラちゃんカラーで」

「もう!」

 拗ねたように頬を膨らませ、空を器用に飛ぶラジコンヘリを眺めた。

「そういえば、まだ、名前をつけてなかった、あのラジコンヘリ……」

「それなら、僕の一番好きな歌の名前をつけるよ」

「え……」

 ドキッと胸が高鳴った。

「Stellar!」

「スバル君!?」

「冗談だよ」

 すごい目で睨まれ、スバルはまたラジコンヘリを上空へと飛ばした。

「このヘリが地上に向かってまるで流星のように落ちる名前……もちろん、その名前は」

 声を揃えた。

「シューティング・スター!」

 地上にぶつかる寸前にラジコンヘリ――シューティング・スターはツバメのようにまた上空へと飛び上がり、二人は笑いあった。

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