「ふぅ~~……」
本を読み終わるとスバルは深いため息を吐いた。
「ふみぃ」
スバルのベッドの上でうたた寝をしていたミソラは眠そうに目を擦り、猫のように伸びをした。
「ほうしたの、シュバルくん……ふかい、ため……」
また眠そうに欠伸をし、ベッドの上を転がった。
「あた……」
ベッドから落ち、お尻を打つと、ようやく目を覚ましたのかミソラは涙目でスバルを見た。
「どうしたの、スバル君……ため息が重いよ」
「……」
まだ雨の匂いの残る外を見て、自分のお腹を掴んだ。
「梅雨の時期に家にこもってたせいで太っちゃったんだ……どうすれば体重を落とせるか考え中」
「太っちゃったの」
興味深そうに近づき、お腹を掴んだ。
「ひゃっ!?」
無遠慮にお腹を掴まれ真っ赤になった。
ミソラの顔が難しくなった。
「十代のメタボは良くないよね」
「そ、そうだね……だから、お願い、お腹、ぽよぽよしないで」
「……」
よっぽど、スバルのお腹のポヨポヨが気に入ったのか、ミソラは何度もスバルのお腹をポヨポヨした。
「明日から、ダイエットしようか!?」
「え……」
キョトンとした。
そして、ため息を吐いた。
「まぁ、避けて通れないよね」
「ちょうど、梅雨明けだし、明日から、早朝ランニング! 食事制限もこっちでお義母さんと話すから安心して」
「今、僕の母さんをさりげなくお義母さんって、呼んだよね」
「じゃあ、私、帰ってダイエットに必要な道具そろえるから、明日五時起きね」
「無視ですか」
「とりあえず、また明日ね」
「うん、また明日!」
「夢の中でも一緒に遊ぼうね」
「そうだね」
ニコッと笑い、二人は別れのキスをした。
ピピピピピピピピ♪
「う、うぅ……」
鳴り響く目覚ましにスバルはベッドの上で手をさまよわせた。
「やっぱり、まだ寝てる!」
「ッ……!?」
呼吸を止められるような感触を感じ、ガバッと起き上がった。
「キャッ!?」
尻餅をうち、ミソラは涙目で頬を膨らませた。
「もう、いきなり酷いじゃない」
「あ、ごめん……ていうか」
唇を撫でた。
「キスした」
「お目覚めのチュッ……だよ!」
悪びれもせず、笑顔を浮かべるミソラにスバルは少し、ムッとした顔をした。
「ミソラちゃん……ちょっとこっちに来てくれる」
「うん……なになに」
ニコニコの笑顔でベッドに近づいた。
「おらぁ!?」
「キャッ!?」
腕を掴まれ、ムリヤリ、ベッドの中に押し込まれる、腕を掴まれ、身動きが取れないようにされた。
「ス、スバル君」
顔を真っ赤にし、スバルの顔を見上げた。
「ミソラちゃん!」
「あ……!?」
奪うようにキスをされ、ミソラはビクンッと身体を揺らした。
「う……うぅ」
動けない状態で舌を入れられ、口内を嬲られるとミソラは潤んだ目で身体の力が抜けていくのがわかった。
「ぷはぁ……」
涎をたらし、唇を離すとスバルはミソラに負けない赤い顔で微笑んだ。
「おはよう、ミソラちゃん」
「う、うん……おはよう、スバル君」
胸を激しく上下に動かし、ミソラもスバルに微笑んだ。
「じゃあ……早朝ランニングを始めようか」
「う、うん……」
ベッドから抜け出すと、ミソラは乱れた服を直した。
「お風呂場、借りていいかな。ランニングスーツ、用意したから」
「うん、いいよ」
「これ、スバル君のね」
紙袋を渡した。
「わざわざ悪いね」
「いえいえ」
十分後、星河家の玄関先で後ろ髪を縛ったミソラは軽くストレッチをした。
「まずは軽く柔軟をしよう。いきなり走ると怪我をするし」
「そうだね」
「じゃあ、まず、屈伸から……私に合わせて」
「了解!」
軽く足を曲げ伸ばしし、屈伸の運動をするとミソラは肺にいっぱい空気を吸った。
「今度は身体を横にずらす運動!」
身体を横にくの字に曲げるように腕を上げた。
「次はひざを挙げたまま、地面に手をついて!」
軽々と地面に手のつくミソラに身体がうまく曲がらないスバルに苦笑した。
「次は座って、お互いに柔軟ね」
地面に座り、ミソラはスバルの背中に自分の胸をくっつけた。
「ミ、ミソラちゃん!?」
「ほら、ちゃんと腰を曲げる!」
「う、うん……」
意外と育ちかけの胸がなんとも柔らかかった。
(しょ、しょうらい……これが、もし)
余りの気持ちよさにスバルはついつい、柔軟を忘れ、妄想の世界へと入ってしまった。
「こら、スバル君!」
ふぅと耳に息をかけた。
「私の胸に興奮してる」
「も、もう柔軟はいいでしょう!? 走ろう」
「私、まだなんだけどな」
残念そうにため息を吐くとミソラは立ち上がり、軽くぴょんぴょんジャンプした。
「さぁ、ランニングは一定の速度で手足をリズミカルに振る……これ基本! ついてきて!」
「わかった!」
走り出すミソラにスバルも後を追うように走り出した。
「はい、おいちに、さんし!」
掛け声を上げ、走るミソラにスバルも必死に後を追いかけた。
「おいちに、さんし!」
「……」
走り続けるうちにスバルの顔が真っ赤になった。
(ジャージって、意外と色っぽいよな?)
軽く揺れるポニーテイルに後姿からもくっきりするお尻に喉を鳴らした。
(可愛いお尻だな……)
ぷりぷりとまるで桃のように綺麗なお尻に後ろ首から見えるウナジがなんとも色っぽかった。
「……」
胸の中が動悸し、スバルは慌てて走る速度を上げた。
「あ、こら! 私より、早く走っちゃダメ!?」
近くの公園まで走りきるとスバルはスッカリ、くたびれた顔でベンチに横たわっていた。
「運動不足だね、スバル君」
「ミソラちゃんは体力あるね」
「レッスンで鍛えてるからね」
ブイッと指を二本立てるミソラにスバルも御見それしましたと手を合わせた。
「にしても……ミソラちゃんの膝枕は気持ちいいね」
「そう……かな」
枕代わりにしている自分の足にミソラは嬉しそうに笑った。
「でも、一日目でこれじゃあ、最後まで持つかな……」
不安がるミソラにスバルは思いついた顔で人差し指を立てた。
「じゃあ、僕の体重が戻ったら、ご褒美にミソラちゃんは僕のお願いを一つ聞いてくれるっていうのはどう」
「ハハッ! それいいね。どんなことお願いしたいの」
満更でない顔をするミソラにスバルも冗談交じりにいった。
「下着で添い寝とか」
「さぁ、今度は腹筋をしようか」
「あた!?」
ベンチから落っこちるとスバルは涙目で苦笑した。
(調子に乗りすぎたかな?)
とかなんとかやってるうちに二週間が過ぎた。
「それじゃあ……運命の裁定です」
神妙な顔をするミソラにスバルもゴクリと喉を鳴らし、彼女の家の体重計を眺めた(しかも、体脂肪も計れる最新型)。
「じゃ、じゃあ、乗るよ」
「がんばって、スバル君!」
そっと、片足を乗せ、微妙に揺れる針に目を瞑った。
「……」
体重計に乗るとスバルはぶるぶる震えた顔で目を開けた。
「お、戻ってる!? というよりも……」
体重計の針を見て喜んだ。
「目標体重より一キロも落ちたね。ダイエット大成功だ!」
「やったね、スバル君!」
体重計の上で抱きつき、キスをした。
「ミソラちゃんのおかげだよ!」
唇を離すとスバルも嬉しそうにミソラにキスをし、微笑んだ。
「そんな事ないよ! スバル君の努力の成果だよ……そ・れ・よ・り」
体重計から降りた。
「これでご褒美が出来るね」
「え……」
時間を確かめ、テレ臭そうに手を引っ張った。
「体重計に乗る前にお風呂にも入ったし、早く一緒に寝よう」
「ちょ、ちょっと……添い寝の話、本気だったの」
「本気じゃなかったの」
今度はミソラがマジな顔で見つめ返され、言葉を迷った。
「いえ……」
「よろしい!」
引っ張れるまま、ミソラの部屋のベッドに押し込まれるとスバルは慌てていった。
「そういえば、母さんにまだ宿泊の」
『スバル~~……お母さん、別に反対はしないわよん~~♪』
「軽い……」
録音されたテープに赤くなり、スバルはミソラの周到さに感心した。
「じゃあ、今、脱ぐからね」
「ちょ、下着姿で添い寝もマジだったの」
「本当は全部、脱いでもいいんだよ」
「いえ……倫理は守りましょう」
「えへへ……♪」
下着姿になるとミソラはベッドの上でスバルに抱きついた。
「スバル君って、いい匂いがするね♪」
「あ、あまり、かがないで……」
「……すぅ」
「てっ……もう寝てる!?」
見事に抱きついたまま眠っているミソラにスバルはどうにか身体を動かそうと身悶えた。
「うぅん……」
機嫌を悪くしたのか、パシッと手を叩き、抱きつく腕に力を込めた。
「ね、寝づらい……」
色々な意味で……
下着越しから感じるミソラの胸の感触や股の柔らかさ。
下着を着けてない素肌からも感じるミソラのぬくもりにスバルは涙を流した。
「こんなの寝れるわけないよ~~~~~~!?」
情けない悲鳴がミソラの部屋全体に響き渡った。
おまけ
「アレ……スバル君、昨日よりも体重が十キロも落ちてる。これは痩せすぎだよ」
「そ、そう……」
スッカリ痩せこけ、宇田海のような顔になったスバルは真っ青な顔で笑った。