流星のメモリアル   作:スーサン

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知ってる知ってない?

「あづぅ~~~……」

 ベッドの上でだらしなくダレながら、スバルはウチワをパタパタ扇いだ。

「じぬ~~~……」

 また、ウチワをパタパタ扇いでスバルはバターのようにベッドに寝転がった。

≪あ~~~……うるせい!≫

 ハンターVGから飛び出し、ウォーロックは厳しい顔で怒鳴った。

≪そんなに暑いなら、クーラーでもなんでもつければいいだろう。あちぃあちぃ、うるせーぞ?≫

「省エネ対策で母さんがクーラーの電源切ってるんだよ……扇風機もこの暑さじゃ役に立たないし……本気で死ぬ~~~」

≪……≫

 ホトホト呆れた顔をするウォーロックにスバルはベッドの上でゴロゴロ転がった。

「あ~~……冬が懐かしい」

≪よく聞く言葉だな?≫

 ピピピピピピ……

「うん、電話」

≪ほれ≫

 ハンターVGを投げ渡され、スバルはだらしなく寝転がったまま、受信ボタンを押した。

『あれ、スバル君……なんだか、すごく顔が赤いよ。もしかして、熱」

「暑さでダレてるんだよ……ミソラちゃん」

 溶けてしまったのか、起き上がる気力も見せないスバルに苦笑した。

『完璧に夏バテしてるね。土曜丑の日には遠いけど、ウナギでも食べる?』

「ソーメンかアイスが食べたい、今は……」

『夏バテをコジらせるよ……?』

 腰に手を当て、ハァとため息を吐いた。

『そんな暑さにバテているスバル君にとっておきの朗報……ジャ~~ン!』

「チケット」

 ミソラが差し出したチケットにようやく、スバルは起き上がった。

『ねぇ、今からデートしようよ。今年絶好の避暑地を見つけたんだ?』

「……海」

『もっと、いい所!』

「じゃあ、山」

『もっと、いい所だよ!』

 えへへと夏の暑さとは別の意味で顔を赤くし、ミソラは叫んだ。

「スキー場!』

「へ……」

 

 

「ヤエバリゾートか……懐かしいな」

「確か、ムー事件の時に行ったことがあるんだよね」

「あまり、いい思い出はないけどね」

 怒り心頭のクラス委員長の顔を思い出し、真っ青になった。

「コラ~~! 恋人の前で違う女の子のことを思い出すな!」

「あいたた……」

 頬を抓られ、涙目になった。

「ゴメンゴメン……つい懐かしくって」

「まったく!」

 頬を離し、ミソラはバスの背もたれに身体を預けた。

 頬を開放されたスバルもバスの背もたれに身体を預け、ダラしなく顔を緩ませた。

「でも、バスはいいよね。クーラーが利いてて、まるで天国だよ」

「そうだね……ここは天国かも」

 同意するミソラにスバルもホケェ~~と彼女の肩に身体を傾けた。

「こうやってくっついても暑くない……ああ、一生、バスから出たくない」

「もう……スバル君ったら」

 クーラーの涼にスッカリ魅了されたのか、まるで赤ん坊のように甘えるスバルにミソラも嬉しそうに頬を染めた。

「なんだか、おっきい赤ちゃんが出来たいみたいだね」

「……すぅ」

「寝ちゃった……」

 スヤスヤ眠っているスバルにミソラは、頬をぷにぷにと突っついてみた。

「……うぅ」

 赤ん坊のように眉をひそめるスバルにミソラの顔がパァッと輝いた。

「可愛い……!?」

 ぷにぷに突っついてみた。

「うぅ……う」

 ぷにぷに突っついた。

「ミ、ミソラちゃん……」

「ドキッ!?」

 慌てて手を引っ込め、目線を泳がせた。

「すぅ……」

「ホッ……寝言か」

 安心した顔で眠っているスバルをジッと眺めた。

(あ~~~……スバル君、なんて可愛い寝顔なの!?)

 いつか、この寝顔を自分だけのものに……

 ピンポ~~ンッと音声が流れた。

『次は終点、ヤエバリゾート……お荷物の忘れ物が無いようお気をつけてお降りください』

「あ……もうそろそろ、目的地だ!?」

 ハンターVGで検索したリゾート名物に心を躍らせ、ミソラはまた、終着点まで、スバルの頬をぷにぷにした。

 

 

 バスから降りると、スバルは晴れやかな顔で人口雪の覆うヤエバリゾートのホテルを見上げた。

「ここに来るの久しぶりだな」

「雪男と戦ったんだよね」

「あれは電波体だったけどね……」

 金に取り付かれた哀れな男の末路を思い出し、スバルは胸をつかんだ。

「あれ、スバル君……久しぶりだね」

「え……」

 自分の名前を呼ぶ声に振り返った。

「アイちゃん!?」

 スシャ~~~と人口雪を華麗に滑り降りる少女にスバルは驚いた。

「そっか……ここはアイちゃんの実家だったね」

「そうだよ」

 ゴーグルを外すとアイはニコッと可愛く笑った。

「また来てくれるなんて嬉しいよ。隣の女の子は……」

 アイの目が大きく見開かれた。

「響ミソラ!?」

「え……あ、はい」

 名前を大声で呼ばれ、ミソラはビックリした顔で聞き返した。

「そういうアナタはもしかして」

「私、滑田アイ! よろしくね、ミソラちゃん」

「う、うん……よろしく、アイちゃん」

 手を握られ、ぶんぶん振り回すアイにミソラは困惑した顔でスバルを見た。

「ちょっとちょっと……」

 アイの手から離れ、スバルの耳を引っ張ると小声で怒鳴った。

「なんで、有名少女と知り合いなの!?」

「は、話すから、耳を離して!?」

 必死に謝りながら、スバルはミソラにムー大陸事件で起きた雪男事件の概要を説明した。

「あ~~……」

 ミソラは納得した顔でスバルの耳を離し、目をジト~~と細めた。

「へぇ~~~」

 でも、どこか目は冷たかった。

「なんで、そんな目をするの」

「べっつにぃ~~……スバル君って案外、ミーハーで、手が早いタイプだったんだなと思って」

「そ、それ、どういう意味!?」

 急に不機嫌になるミソラにスバルも慌てて弁解した。

「彼女とはたまたま、ここで出会っただけで」

「そうだよ、ミソラちゃん!」

 アイもスバルを助けるようにミソラに弁解した。

「スバル君にやましいことはないよ。だって、初めてあったときなんて、手を出すどころか、スバル君、私に会ってビックリしてたんだもん!」

「え……ビックリ」

「うん!」

 元気良く頷いた。

「ほら、私、私一応、世界戦選手だから、テレビにも何回か出てるでしょう。だから……」

 アイの言葉が止まった。

「な、なにか悪いこといったかな」

 すごい目で睨まれ、アイとスバルは全身に冷や汗をかいた。

「スバル君、アイちゃんのことは知ってたんだ……へぇ~~……アイちゃん、可愛いもんね」

「な、なにを怒ってらっしゃるのでしょうか、ミソラちゃん」

「気安く呼ばないでよ!」

「ひぃ!?」

 いきなり怒鳴りだすミソラにスバルは怯えた顔で縮みこまった。

「ふんっ!」

 そっぽを向き、ホテルの中へと入っていった。

「こ、怖いね……ミソラちゃんって、普段からああなの」

「う、うぅん……いつもはああじゃないんだよ」

 首を横に振り、謝った。

「いつもはワガママだけど、いい娘なんだよ」

 二人して、首をかしげた。

「って、追いかけないと!? ごめん、また後で!?」

「あ、スバル君!?」

 慌てて手を振り、叫んだ。

「私、今日は練習、お休みだから、ミソラちゃんの機嫌が戻ったら、一緒に滑ろうね」

「わかった! 待っててね」

「うん!」

 

 

 部屋の前でスバルは何度もドアを叩いた。

「ねぇ、開けてよ、ミソラちゃん! なに怒ってるの!?」

 一向に返事の返らないドアにスバルは途方にくれた。

「僕……なにか悪いことしたなら、謝るからさ……入れてよ。このままじゃ、一緒に」

 遊ぶことができない。

「アイちゃんと一緒にスキーしてくればいいでしょう」

「ッ……!?」

 ミソラの反論にスバルはカチンッときた顔で怒鳴った。

「いい加減にしないと本気で怒るよ!? こんなドア、開かなくっても、電波変換すれば、簡単に入れるんだよ!?」

「……」

「ミソラちゃん……」

 ドアを叩くのを諦め、ドアに背をつけ、座った。

「なにを怒ってるか、せめて話してくれないかな……それとも、もう僕と一緒にいるのいや」

「……嫌じゃない」

 ボソリと声が漏れた。

「だから、会いたくない、今のスバル君には」

「……もしかして、僕とアイちゃんにヤキモチやいた」

「……ッ!?」

 言葉を失うミソラにスバルは苦笑した。

「そっか……ありがとう」

「な、なんで、お礼を言うの!?」

 今度はミソラが怒鳴り返した。

「だって、ヤキモチをやくって、好きだからすることでしょう。恋人なら最高の名誉じゃないか」

「それだけじゃない……アイちゃんのことを知ってた」

「知ってた」

 言ってる意味がわからず、首をかしげた。

「私だって、テレビで頑張ってるのに……」

 だんだんと涙声に変わっていった。

「わ、私とは、は、初め……えっぐ……初めてあったときは、わ、私の事……え、えっぐ……し、知らなかったのに、アイちゃんの時は、ちゃ、ちゃんと知って……えっぐ……ふ、不公平だよ!?」

「そういえばそうだったね」

 座ったまま天井を見上げ、体育座りした。

「あの時は僕、外のことはあんまり興味なかったからね。人と付き合うのも人に興味持つのもやめてたから……ミソラちゃんと初めてあったときも、展望台で歌う変わった娘だな程度しか思ってなかったし」

「でも、アイちゃんには驚いたんだよね」

「うん……ミソラちゃんのおかげでね」

「え……」

 そっと、ドア越しのミソラに寄り添う気持ちで肩をくっつけた。

「だって、僕がアイちゃんを知ったのはミソラちゃんが出演する番組に関連したCMやコーナーでだもん。実際、僕、あんまりテレビ見ないし」

「ほ、本当に私のテレビを見てるの」

「昨日、放映していたミソラちゃんがゲストの「不快い話」はちゃんと、ダビングしてあるよ」

「ああ!? そ、それ観ちゃったの!?」

「うん……名前、秘匿にしててもさすがにあれは恥ずかしかった」

「……」

 真っ赤になるスバルにミソラも言葉を失ったのか、なにもいわず、黙り込んだ。

「……」

「……」

 ガチャッ……

「あ……」

 コテンッと開いたドアに寄り添ってたため、マヌケに倒れるスバルにミソラは前屈みになって聞いた。

「本当にアイちゃんとはなにもないの」

「疑うなら、このまま、ミソラちゃんを傷物にする覚悟もあるよ」

「もう……」

 テレたように笑い、ミソラは背中から倒れているスバルにキスをした。

「……ん」

 唇から糸を引き、離すとミソラはスバルの身体を起こした。

「アイちゃんと私……どっちが……」

 大切かと聞こうと思ったがやめた。

 自分が一番だといって欲しかったが、スバルは地球を……

 宇宙を代表するヒーロー。

 自分だけが特別大切だといって欲しくなかった。

 だから、もっと、ちゃんと聞かないといけないことを聞いた。

「どっちが好き」

「バカだな」

 今度はスバルがミソラの肩を抱いた。

「そんなのミソラちゃんに決まってるよ」

「……うん!」

 ようやく満足のいく答えが聞こえたのか、ミソラは満面の笑みを浮かべ立ち上がった。

 スバルも安心した顔で立ち上がり、伸びをした。

「じゃあ、早速、滑ろうか。ここはキズナ値があれば、スキー板を無料で貸してくれるらしいよ」

「え、本当。今回、雪とグルメタウンをメインにしてたから、スキー板、用意してなかったんだ!?」

「アイちゃんも一緒に滑る約束してるから、きっと楽しいよ」

「うん! 三人でめいっぱい、滑ろうね♪」

 ガサッ……

「うん」

「今、観葉植物が動いた気が……まさかね」

 仲直りの余韻に浸りながら二人は嬉しそうに笑いあった。

 その姿を真っ赤な顔で見ている影にも気づかず……

 

 

おまけ

 

 

「……」

 スバルが廊下を抜けるとアイはコソコソと観葉植物の影から飛び出した。

「まさか、スバル君とミソラちゃんが、あんな関係だったなんて」

 ってきり、委員長と思ってたけど、世の中、わからない。

「でも……」

 スバルとミソラのキスを思い出し、ボッと赤くなった。

「私もスバル君、狙ってたんだけどな……」

 クルリと回れ右した。

「ま……いっか」

 スバルが探してるであろうホールに戻りながら、アイはミソラが歌う「シューティング・スター」を口ずさんだ。

 それはとても、楽しく小気味良く……

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