「みんな、ありがとうォォォォォォォォォ!?」
ワァァァァァと歓声が鳴り響き、ミソラは身体全体で喜びを表し、大きくジャンプした。
「今日は私のバースデーライブに来てくれて、本当にありがとう!」
『ミッソラちゃ~~~~~~~~♪』
『ミソラファンクラブ』と書かれた旗を振り上げるハッピ姿の男たちにミソラも大きく手を振った。
『これだけのファンの人たちに囲まれて、ミソラちゃんも幸せ者だね?』
「えへへ……♪」
マイクを持ったMCのからかいにミソラもテレたように頭の後ろをかいた。
「怪我をして、みんなにたくさん、迷惑をかけちゃったけど、また、私、アイドルとして頑張って歌を歌います!」
強い歓声が鳴り響き、チラッとステージの真下で手を振るスバルを認めた。
(それ以上にスバル君が見てくれてる……)
マイクを口元にやり、汗が飛ぶ勢いで叫んだ。
「それでは最後の曲! 最後の歌は……」
『シューティング・スター!』
合わせるように観客の叫びと同時にミソラは手に持ったギターの弦を弾いた。
「ウェーブロード♪
広い世界♪
夜空見上げ♪
独りぼっち♪
キズナ 探して ただ彷徨う♪
嘘に怯え 逃げ続けて 孤独にさえ 気付かずに ただ歌い続けていたの♪
星の 光が 輝く♪
私の 心に 降り注ぐ♪
そして あなたと 巡り会えたんだ♪
アン バンド ワズ♪
ディスカバード ゼン♪
震えて泣いていた私を♪
見つけけてくれたね♪
シューティング・スター♪
暗闇照らし かけてく♪
その 笑顔に 力 もらうんだ♪
怖いものなんか なにもない♪
振り返らない ずっと 前を見て♪
光 つかむ♪
君の笑顔♪
それが私の ハートなんだよ♪
シューティング・スター♪
暗闇照らし かけてく♪」
バースデーライブが終わるとミソラは会場のシャワールームで汗を落とし、夕涼みを楽しんでいた。
「ふぅ……」
スッキリした顔で夜空の見える月を眺めた。
「まだ、心臓が高鳴ってる」
「最高のライブだったもんね」
「……あ」
会場を降りるための階段に座る少年にミソラは慌てて駆け寄った。
「スバル君! 待っててくれたんだ」
嬉しそうに顔を綻ばせるミソラにスバルは返事に答えず静かに空を眺めた。
「今晩は眠れそうにないな。ミソラちゃんのせいで」
悪戯っぽい言葉をかけ、背中に背負っていた荷物を持ち上げ、立ち上がった。
「これ、僕からのプレゼントね」
「プ、プレゼント」
ズッシリと重量感のある独特のフォルムにミソラは丁寧に包装紙を解いた。
「これって!?」
プレゼントの中身を見て、驚いた。
「ミソラちゃんの持ってるギター、お母さんから貰ったものでしょう」
テレたように頬を人差し指でかいた。
「この前のバイト代でなんとか、一番安い奴だけど、ギターが買えたんだ」
テレ臭そうに頬をかいた。
「気に入ってくれたかな」
「スバル君……」
ミソラの目がウルウルなった。
「ミソラちゃん」
スバルも満更でない顔で微笑んだ。
「これ、ベースだよ」
「ハヒ」
マヌケな顔をした。
「ほら、これが私のギター……」
背負っていたギターを見せた。
「ほら、弦の数が違う……」
「本当だ……ギ、ギターとベースって違うの」
「全然違うね」
苦笑するミソラにスバルの顔が真っ青になった。
「そ、そんな~~~……」
膝を突きそうになり、慌ててミソラが支えた。
「階段で危ないよ」
それでも、泣き出しそうになるスバルにミソラはクスッと笑った。
「スバル君、可愛い♪」
スバルをシッカリ立たせるとミソラは貰ったばかりのベースのストラップを肩にかけた。
「でも、ベースだったら私も多少は弾けるよ」
「え……」
ギターとは違う独特の音程を奏でるベースにスバルは目を数度、パチパチさせた。
「す、すごい……」
いつの間にかミソラのベースに聴き惚れていたスバルは惜しみない拍手を送っていた。
「スゴイよ!? いつもの曲とは全然違う格好よさがあった!」
「そ、そうかな……」
頬を染め、ベースを置くと、また、ギターを背負いなおした。
「ありがとう、スバル君……プレゼント、すっごく嬉しかった!」
ちょっと空回ってたけどと笑った。
「……ベースにギターか」
なにか考えるように首を上げた。
「ミソラちゃん」
急に考え事を始めるミソラの顔を覗き込んだ。
「スバル君!」
「はい!?」
いきなり怒鳴られ、やっぱり、プレゼントが気に入らなかったかと涙目になった。
「今日から、私と一緒にベースの練習しよう!」
「ハヒ」
本日二度目の「ハヒ」であった。
「ほら、軽音だよ、軽音! 二人でユニット組もう」
ぴょんぴょん跳ね、ミソラは踊るようにターンをした。
「きっと楽しいよ」
「ちょ、ちょっと……僕、音楽をやりきる自信は」
「大丈夫!」
ギュッと手を握り、目を見つめた。
「私がついてるから!」
「うぅ……」
「ねぇ……私と一緒はいや」
ジワッと涙目になるミソラにスバルは全身に冷や汗をかいた。
「一緒に軽音をやろうよ」
泣き出しそうになるミソラにスバルはコクリと頷いた。
「わかった……頑張るよ」
「やった~~~~♪」
大ハシャギで喜びをあらわにした。
「じゃあさ、じゃあさ! 今日はウチに泊まりなよ。マンツーマンでベースを教えてあげる♪」
「え……今から」
「そうだよ♪」
ニッコリ笑うミソラにスバルは慌てた。
「で、でも、母さんに黙って」
「それなら、大丈夫!」
ハンターVGを取り出し、電話をかけた。
数秒後……
「泊まっていいって!」
「早っ!? というか、なんで、皆、僕の意思を無視して勝手に話を進めるかな」
「じゃあ、早速、二人で練習をしよう!? 手取り足取り、口でだって練習は出来るからね」
「く、口って……!?」
真っ赤になるスバルに、ミソラは本当に嬉しそうに月を指差した。
「二人のユニット名、『SSR」だよ!?」
「SSR……なんの略」
「内緒……♪」
そう笑い、ミソラは階段を降りながら大きく跳躍し、綺麗に着地し、クルリとターンした。
「目指すは武道館!」
「ぶ、武道館!?」
スバルの顔が本日最大のマヌケな顔になった。
「ミ、ミソラちゃんでも、まだ行ったことのない聖地を僕みたいな素人が……」
「二人で行くの……」
そっと手招きするミソラにスバルもなにも言えなくなり階段を降りた。
「でも、まだ、私の誕生日プレゼントは貰ってないね」
スバルの後ろ首に手を回し、ミソラはそっと目を瞑った。
「ミソラちゃん……」
スバルもそっと、彼女の腰に手を回し、密着した。
二人の唇が重なった。
(ッ……!?)
キスした瞬間、スバルの脳裏にたくさんの観客の声援を受ける自分とミソラの姿が映った。
(幻視かな……それとも?)
唇を離し、スバルは真っ赤な顔で幸せな顔をするミソラにふと笑みを漏らした。
八月二日九時二十分。
この日、記念すべきユニットが生まれた。
「SSR」。
このユニットが後の世界にどのような旋風を巻き起こすか……
それは空に浮かぶ流星だけが知っていた。