「いや~~……まさか、スバル君に妹属性が合ったとは知らなかったよ」
「言わないで……」
顔を真っ赤にし、うな垂れた。
「えへへ……♪」
「どうしたの、ミソラちゃん」
「なんかいいね、こうやって堂々と手を繋いで帰れるって」
「え……」
今更になってミソラと手を繋いで家に帰っていることに気付いた。
「ねぇ、お兄ちゃん、私まだ、帰りたくないの……どこかに泊まって行こうよ」
「マセたことを言うな!」
「あいた……」
軽く額にチョップをくらい、えへへと笑った。
「なんだか、本当の兄妹みたいだね」
「そうだね」
ニコッと笑い、スバルも嬉しそうに繋いだ手を少し大きく振った。
「あ……」
ピタッと足を止め、首だけを古びたお店屋さんに向けた。
「こんなところに駄菓子屋、あったんだ……」
少し考えた。
ふと笑い、スバルはミソラを連れて駄菓子屋の中に入った。
「ちょっと買い食いしちゃおうか」
「いいの」
「母さんには内緒だよ」
シ~~と人差し指を口元に当てるとミソラは嬉しそうに頷いた。
「えっとねえっとね……まずは、これとこれとね。次に、あれとあれとね……あ、あれもおいしそう!?」
楽しそうに駄菓子を選んでいくミソラにスバルも嬉しくなった。
「最近の駄菓子屋って、コンビニで売ってそうな普通の食玩も売ってるんだな」
手近にあった玩具入りのお菓子を手に取るとクイクイとズボンの裾を引っ張られた。
「これ食べたい!」
「はいはい……」
ミソラの選んだお菓子を買うと二人は南国という陽気なお兄さんが経営するカードショップ、「BIG WAVE」の公園のベンチに座り、買ったばかりのお菓子を食べていた。
「これ、おいしいね、スバル君」
「そうだね……これもおいしいよ」
「あ、スバル君、動かないで」
「うん」
ポケットからハンカチを取り出し、ミソラはウンッと背伸びをし、スバルの口元を拭ってあげた。
「えへへ……スバル君、私よりも子供みたい」
「……ふふ♪」
ミソラの無邪気な笑顔にスバルも自然と顔が綻んだ。
本当、この娘と一緒にいると楽しい。
それは小さくなっても変わらない。
どんな姿をしても、ミソラはミソラなのだ。
気付いたら、スバルはミソラの頬に手を沿え、唇を近づけていた。
「スバル君……」
ミソラもそっと目を瞑り、スバルを迎え入れた。
二人の唇がそっと重なろうとした。
夕暮れの空が夜の色へと変わり、一閃の流星が落ちた。
「これから気をつけてね」
「はぁ~~い」
正座をしながら二人は母に謝った。
買い食いがバレたのだ。
理由は夕食にあった。
買いすぎた駄菓子が夕食に響いたのだ。
最初は白を切り通そうとした。
しかし、時間が経つにつれ、二人の状況は劣勢に変わっていった。
ついにミソラが耐え切れず白状してしまったのだ。
姑さんとは仲良くしたい。
それとも純粋に、この母に逆らえなかったのか。
たぶん、両方だろう。
どっちにとっても、ミソラは気持ちのいいくらい、アッサリとスバルを裏切ったのだ。
「もう、ミソラちゃんにお菓子、買ってあげない!」
ぷんぷんっと怒りながらスポンジで身体を洗っていると風呂場のドアがバンッと開いた。
「えッ……!?」
振り返るとプールの時とは違う水着姿でミソラが飛び込んできた。
「お兄ちゃん、背中流してあげる♪」
泡がつくのも構わず抱きつくミソラにスバルは一瞬、ドキッとした。
「もう、洗ったよ」
「だったら、お湯をかけてあげる!」
桶からお湯を掬い、ザパ~~と背中にかけた。
「どう……」
「どうって……」
コメントに困った。
「……」
自分でもちょっと違うなとわかった。
「よし、それなら」
ボディーソープを手にまぶし、身体に塗りこんだ。
「ちゃんと身体を洗うスポンジあるよ」
「もっといいものがあるもん♪」
「え……」
いきなり、目の前が真っ黒になった。
「突撃~~~~~~♪」
「おわぁぁぁぁぁぁ!?」
タックルをくらうように抱きつかれ、背中を打ち付けてしまった。
「ミソラちゃん、お風呂場でふざけな……」
「あぁん……動かないでよ」
「ちょっ……!?」
身体全体をスポンジのように使うミソラにスバルは大慌てした。
「ほら、こことか気持ちいい」
「チョッ……そこはダメ!?」
足の付け根を十本の指で這うように撫でられ、スバルはビクンッと身体を固めてしまった。
「意外とスバル君って厚い胸板してるよね」
「こ、こら……そんな洗い方」
自分の胸を当てるように胸板も洗う、ミソラにスバルの吐く息がだんだんと荒くなっていった。
「これくらいじゃ、終われないよ」
ミソラも興奮を抑えられなくなったのか、水着の肩に手をかけた。
「ちょっ……ミソラちゃん、それは!?」
「こんな身体だけど……いや、むしろ、こんな身体だからこそ、いいって事もあるよ」
水着の上の部分を脱ごうとするミソラにスバルはいつの間にか動けなくなった。
(ど、どうしよう。このまま流されちゃう。でも、それじゃあ、倫理が……あれ?)
首をかしげた。
(倫理ってなんだっけ?)
いつの間に自分の中にあった常識が壊れたのか、水着を脱ごうとするミソラの胸に視線が集中していった。
ぷつんッ……
「あっ……!?」
「なぬ!?」
いきなり、視界が真っ暗になり、二人ともゴチンッとおでこをぶつけてしまった。
「あいた~~……」
「な、なんで、いきなり電気が」
「スバル~~……ミソラちゃ~~~ん! さっき、電気屋さんから停電するって連絡があったわ! お風呂は入らず、すぐに出てらっしゃい!」
「……」
顔の見えないまでも、ミソラが不機嫌な顔をしてるのはわかった。
「じゃ、じゃあ、僕、先に出るから」
「……」
返事を返さないミソラにスバルはイソイソと大事なものを隠し、お風呂場から出て行った。
「ふぅ~~……今日は疲れた」
「そうだね。今日はもう、なにもせず寝よう」
「そうだね……おやすみ、ミソラちゃん」
「うん。おやすみ、スバル君!」
シーツを被ると二人は同時に目を瞑った。
「……」
「……」
暗い部屋に静かな空気が流れた。
「って、なに当たり前のように一緒のベッドで寝てるの!?」
「え……ダメだった」
心の底から不思議がるミソラにスバルは頭が痛くなった。
「もう……いい!」
朝から昼、夜にいたるまでずっと、ミソラターンが続き、スバルはすでに限界だった。
もう疲れたのだ。
もう寝たいのだ。
もうツッコミから足を洗いたいのだ。
さまざまな、「もう」が頭の中に連呼し、ミソラの目を見つめた。
「変なことしないと約束しなさい!」
「アハアイサー!」
ビシッと敬礼した。
「本当に分かってるのかな」
ホトホト呆れたため息を吐き、ミソラにも自分の分のシーツをかけ、目を瞑った。
「おやすみ、ミソラちゃん」
「おやすみ、スバル君」
静かになった部屋でミソラは気付いたように起き上がった。
「ねぇ、普通、さっきの言葉って、女の子が言う言葉じゃないの」
「すぅ~~……」
「あ……寝ちゃってる」
スッカリ、安らいだ顔でグッスリ眠ってるスバルにミソラは拍子抜けした顔をした。
「まぁ、今日は大変だったもんね」
今日一日の出来事を思い出し、ふふっと笑った。
「楽しかったな……」
そっと眠っているスバルの顔を覗き、
「ありがとう、スバルお兄ちゃん」
チュッとキスをした。
目を覚ますとミソラは顔を真っ赤にした。
「キャァァァ!? 身体が元に戻ってる!?」
着ていた子供用のパジャマ服(スバルの小さい頃の服)が破け、慌てて胸を隠した。
ベッドから出て、机においてあった自分のハンターVGを手に取った。
「ハープ、起きなさい!」
≪あら、アナタ、元に戻ってるじゃない?≫
ホッとした顔をするハープにミソラは真っ赤な顔で怒鳴った。
「今すぐ、電波変換して帰るよ。こんな格好、スバル君に見せられない!」
≪いつも、すごいことしてるくせに今更?≫
「いいから!」
「はいはい……」
ハンターVGを掲げた。
「トランスコード ハープ・ノート!」
光と共にミソラの姿が消え、スバルが起き上がった。
「なに、今の光」
メールが届いた。
『元に戻ったから帰るね』
「……眠い」
また、シーツに包まり、眠りについた。
ミソラが元の姿に戻ったと理解するまで後二時間かかるのであった。
その頃、アマケンでは……
「宇田海、この前、君に貰った痩せる薬、まったく効かなかったんだが」
「あれ……それ、ただのジュースですよ。薬はこっちの缶です」
「え……それって、この前、ミソラちゃんにあげたジュース!?」
「く、薬を人にあげっちゃったんですか!?」
二人の顔が真っ青になった。
「今すぐ、ミソラちゃんを呼べ!? 精密検査だ!?」
「わ、わかってますよ!? なにも起きてなければいいんですけど!?」
三時間後、二人はスバルの母、あかねにこっぴどく叱られるのであった。
「なんで、僕まで叱られるんですか」
理不尽なお説教に宇田海は今後、絶対に天地のダイエットに付き合わないと誓った。