流星のメモリアル   作:スーサン

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夢レゾン

「うぅ~~……」

 部屋のベッドで横になりながら、ミソラは階段の下のスバルに話しかけた。

「ねぇ、スバル君」

「うん」

 弾いていたベースのヘッドホンを外した。

「どうかした、ミソラちゃん。ベースの音程狂ってた」

「うぅん……違うよ」

 ふふっと微笑んだ。

「少し練習をやめて話ししよう」

「休憩時間ね」

 ベースのストラップを肩から外し、部屋の隅に置くとベッドに続く階段を上がった。

「なにか話したいことでも出来たの」

「うん……まぁ、ね」

「……」

 歯切れの悪いミソラにスバルは眉根をひそめた。

「スバル君は宇宙飛行士になるのが夢なんだよね」

「うん。いつか、僕も宇宙に行ってみたいからね」

「……確か、お義父さんを見つけたいって、言ってたよね」

「父さんを見つけたいと思っていたよ」

 昔を懐かしむスバルにミソラはベッドから起き上がり、聞いた。

「で、でも、もうお義父さんは帰ってきたんだよ。それって……」

 宇宙に行く理由がなくなったと言いかけ、やめた。

「……」

 スバルもミソラの言いたいことがわかり、ベッドに腰を下ろし、肩を抱いた。

「あ……!?」

 真っ赤になるミソラにスバルは優しくささやいた。

「父さんのことを抜きにしても僕は宇宙に行きたいんだ」

「なんで」

「……」

 一瞬、考えた後、スバルはハンターVGを取り出した。

 ノンキに居眠りをしているウォーロックに苦笑した。

「宇宙にはいろんな生き物がいるよね」

「う、うん……」

 同じようにハンターVGでニヤニヤしているであろうハープを想像しさらに赤くなった。

「僕はね、そんな宇宙の人とたくさん、ブラザーバンドを組みたいんだ」

「ブラザー……バンド」

 暗い顔をした。

「でも、宇宙は危ないよ」

「危険なくして新しい出会いはないよ。僕とロックみたいに」

「……」

「ミソラちゃん」

 重い空気が場に流れた。

「もし、帰ってこれなくなったらどうするの」

「絶対に帰ってくる!」

「なんで絶対っていえるの」

「……」

 今度は言葉を返らずミソラも諦めた顔をした。

「もう帰るね。時間も遅いし」

「あ、送ってくよ」

「うぅん」

 首を横に振った。

「一人で帰りたい気分なんだ……じゃあね」

「あ……」

 バタンッとドアが閉められ、スバルは一人ぼっちになった、

 

 

「ふぅ~~……」

 帰りの電車の中でミソラは外の風景を眺めていた。

≪ため息を吐くと幸せが逃げるわよ、ミソラ?≫

「ハープ」

 ハンターVGを取り出し、ニヤニヤするハープを認めた。

「私って酷い女の子だよね……スバル君の夢が叶わなければいいなんて思ってるんだもん」

≪そんな事ないわよ≫

 ハンターVGから実体化したハープが現れ、ミソラの隣に座った。

「ミソラがスバル君の夢が叶わないといいなって思いは心配からきてるものでしょう」

「うん……ちょっとだけ」

「じゃあ、本音は」

「……」

 少し考えた後、ミソラは正直につぶやいた。

「宇宙に行ったら、スバル君が帰ってこなくなるんじゃないかと思って」

「……ミソラ」

 ハープの顔が優しく綻んだ。

「ミソラはスバル君が心配なのね」

「スバル君が宇宙に行って、たくさんの人たちと友達になりたいという願いはわかってるつもり……でも、それはスバル君じゃなくっても」

「そうね。誰でも出来るわ……うぅん、誰でも出来ないといけないことだもの。でも……」

 琴を弾くように優しくいった。

「一番絆の大切さを知ってるのもスバル君だということもミソラが一番、知ってるでしょう」

「……」

 ミソラは涙をぬぐった。

「わかってる! でも……」

「ミソラはスバル君が今、夢を捨てるって言ったらどうする」

「え……」

 予想だにしない言葉ににミソラは答えに困った。

「きっと、アナタはスバル君に「夢をあきらめないで」というでしょうね」

「な、なんで」

「わかるわよ。ミソラはスバル君の夢を邪魔できる娘じゃないって。むしろ夢のために努力するスバル君を応援出来る娘だって、私はわかってるわよ」

「……」

 首を横に振り、ハープを見つめた。

「でも、私は本当はスバル君は地球で、ずっと一緒にいてほしいと思ってる!」

 ギュッと左胸を押さえ、必死に言葉を搾り出した。

「スバル君は宇宙で危ない目にたくさんあった……私はそれが不安なの。もし、スバル君が宇宙で死んじゃったらって」

「ジレンマね……」

 ハープも複雑な顔をし電車の天井を見上げた。

「でも、大切なことよ」

「大切」

「ミソラは今、大人になるための大切な時期にいるのよ。「ただの恋人」から将来を支えあえる「大人の恋人」になる大切な時期に……」

「「大人の恋人」……なんだか、格好いいね」

 テレた笑いをするミソラにハープも冗談めかしく微笑んだ。

「ポロロロロン♪ でも、「大人の恋人」は「ただの恋人」よりもずっと辛いわよ……今までよりもずっと相手が好きになっちゃうから、ずっと大人の対応を取らないといけない」

「ずっと、大人な対応……」

「楽しいことだけ共有の仲じゃないでしょう……アナタ達の関係は」

「……」

 ピルルルルルルル♪

「あ、メールだ」

 受信ボタンを押し、メールを開いた。

『ミソラちゃんへ。

 いきなり帰るからビックリしたよ。

 ミソラちゃんの言いたいことはわかってるよ。

 夢の話の続きだけど、僕のことを心配してくれてありがとう。

 でも、宇宙飛行士になりたいという夢は変わらないよ?

 だって、父さんが見つかっても僕の夢が続くのは君のおかげなんだから。

 君が最初のブラザーになったから、僕は絆の大切さを知った。

 君のおかげで僕は今の僕になれた。

 だから、僕はそれをもっとたくさんの人に、もっと、たくさんの宇宙の人に広げたいんだ。

 もし、僕の夢が叶うときになって、宇宙に行くのが当たり前の世の中になったら、一緒に宇宙に来てくれないかな?

 僕にとって大切な人はやっぱり、近くにいてほしいから……

 返事は僕が夢をかなえたときに聞かせてね?

 草々。

 僕が夢を追いかけるようにミソラちゃんも自分の夢を忘れないでね?

 僕はいつまでもミソラちゃんの夢を応援するから。

 星川スバルより』

「……えっぐ」

 メールを読み終えると、ミソラは目から、ポロポロ涙を流していた。

「スバル君、私のこと、忘れてなかったんだ」

「当然でしょう。夢を語っても、その夢の中には必ずアナタがいるんだから。スバル君をなめちゃダメよ」

「う、うん……私、新しい夢……レゾンを作るね」

「どんなレゾン」

「うん!」

 泣きながらミソラは笑顔でハンターVGをいじった。

 ハープも新しく作ったミソラのレゾンを覗き、パァッと顔を輝かせた。

「素敵なレゾンじゃない!」

「え、えへへ……」

 満更じゃない顔をするミソラにハープも嬉しそうに笑った。

 新しく作ったミソラのレゾン、それは……

『宇宙の全ての人たちを私の歌で幸せにする』

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