「うぅ……」
朝、起きると、ミソラは気だるさと吐き気を感じていた。
「水、飲みたい……」
お腹からくる気持ち悪さと吐き気に頭がクラクラし、水を飲もうとベッド出ようとした。
「あ……」
しかし、床に足を着く前にバランスを崩して、転んでしまった。
「気持ち悪い……」
≪ミソラ、大丈夫?≫
ハンターVGから飛び出してきたハープにミソラは必死に笑顔を作った。
「大丈夫だよ……ちょっと疲れてるだけ……」
バタンッ……
≪ミソラ!?≫
「あれ?」
額に心地いい冷たい感触を感じ、目を覚ました。
「あ……起きた、ミソラちゃん?」
「スバル君?」
額に乗せられた手に驚き、慌てて起き上がろうとした。
「起き上がっちゃダメ!」
肩を押さえ、起き上がれなくすると、スバルは厳しい顔でいった。
「熱を測ったら、三十九度もあったよ?」
「そんなにあったの……?」
真っ赤になりながら信じられない顔をするミソラにスバルは苦笑した。
「季節の変わり目にやられたね……よくある話だよ」
「仕事は?」
「ハープが事情を話してくれるって……それよりも今は風邪を治さないと」
床に置かれた土鍋のふたを開けた。
「ほら、お粥を作っておいたよ」
「スバル君が作ってくれたの?」
「そうだよ……あまり上手に作れなかったけど」
ふわぁっと、お粥独特の優しい匂いにミソラはお腹が空くのを感じた。
「ありがとう……ちょうだい」
「手を使わなくって大丈夫だよ」
「え……?」
レンゲを手に取り、お粥をすくった。
「ふぅふぅ……」
「ス、スバル君?」
レンゲの上のお粥を冷まそうとするスバルにミソラは風邪とは別の理由で真っ赤にした。
「はい、ミソラちゃん、ア~~ン!」
「あ、あ~~~ん……」
ゆっくり、口の中に入るお粥にミソラは幸せそうな顔をした。
「おいしい?」
「うん。スバル君、料理の才能あるね!」
「じゃあ、もっと、食べないとね? あ、塩昆布入れる?」
「入れる!」
サラサラの塩のかかった塩昆布をお粥に入れ、ぐるぐる混ぜると、また、レンゲでお粥をすくった。
「ふぅふぅ……ほら、あ~~ん!」
「あ~~ん♪」
塩昆布の甘い塩の味にミソラは天にも昇る気持ちを味わった。
(ああ……なんだか、新婚さんみたいだな)
エプロンを着たスバルがなんとも現代風の主夫をイメージさせ、顔を高潮させた。
「さて……全部、食べ終わったね?」
「あ……?」
気づいたら、全部、食べ終わっており、ガッカリした顔をした。
(もっと、新婚さん気分を味わいたかったな……)
「さて、次は薬だね……実は出張のドクターウィザードに来てもらって、薬を処方してもらったんだ」
「あ、ありがとう……」
薬を取り出すスバルにミソラはちょっと思いついたように頬を染めた。
「ねぇ……お願いがあるんだけど?」
「なに?」
錠剤を取り出した。
「薬も一人じゃ、飲みづらいんだ……だかッ!?」
言葉を全て言い終わらぬうちにミソラの言葉は遮られた。
スバルの口から流し込まれる錠剤と水にミソラは一瞬、咳き込みそうに薬を飲んだ。
「うくぅ……ごきゅん。ふぅ……スバル君……」
荒っぽい息を吐くミソラにスバルも顔を真っ赤にした。
「ほら、食べて薬飲んだら、後は寝るだけ……」
「一緒に寝よう?」
「……ミソラちゃん」
ちょっとだけ考え、スバルは意を決すように、上半身を脱ぎだした。
「眠るまでだからね?」
そっとベッドに入るスバルに抱きつき、ミソラは嬉しそうに微笑んだ。
「今日のスバル君、優しい♪」
「風邪のときはいつもお世話になったから、そのお礼ね?」
「うん!」
スバルの胸のぬくもりを感じながら、ミソラは眠りについていった。
「よいしょと……」
ミソラを起こさないようベッドから出るとスバルは前髪を上げ、オデコをくっつけた。
「うん、だいぶよくなったね……」
「うぅ……」
起こしてしまったかとドキッとするスバルにミソラはうなされるように寝返りをうった。
「ま……まま」
「……ミソラちゃん」
涙を浮かべるミソラの涙をすくい、そっと手を握った。
「ママはいないけど、僕がいるよ……ずっと一緒にいようね?」
「……スバル君」
安らいだ顔で眠るミソラにスバルはふふっと微笑んだ。
「大好きだよ、ミソラちゃん」