流星のメモリアル   作:スーサン

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ミソラとの最後の夏休みの思い出

「え……」

 バンッと立たされたテレビスタジオのプールの前でスバルは慌てて水着姿のミソラを見た。

「なんで、僕、ここにいるの」

「私が呼んだから」

 キッパリと言い切られ、スバルは慌てて、叫んだ。

「確か、プールで遊ぶんじゃなかったの。夏休み最後の思い出として」

「だから、今日、生放送で私達、夏休み最後のプール合戦がここで繰り広げられてるの」

「生放送って……」

 スタジオの上でカメラを構えるカメラマンにスバルは顔を真っ青にしてミソラを見た。

「僕、素人だよ」

「私がついてるから、大丈夫だよ」

 えっへんと上下分かれた大胆に分かれた水着の胸を張るミソラにスバルは諦めたようにガックリきた。

「なんか、最近、流されてばかりいる気がする」

「気にしない気にしない……それよりも、これからやるゲームのルールが説明されるから、ようく聞いてね」

「え……」

 観客席に向かってマイクを張り上げる男にスバルは目をギョッとさせた。

「バ、バナナボート……まさか!?」

 一瞬、嫌な予感を覚え、外れてくれますようにと願った。

「ルールは単純! 二人一組となり、他のバナナボートに乗ったチームを転落させれば勝利! バナナボートから降りる意外はなんでもありの、バーリードゥードゥー(反則無し)! さぁ、ゲームの時間だ!」

「さぁ、早く行きましょう」

「え、ちょっと待って!?」

 バシャンッとミソラに引っ張られるまま、スタジオのプールに飛び込まされ、スバルは突然の環境の変化に身体を震わせた。

「酷いよミソラちゃん……」

「アハハ……これが、私達のボードみたいだよ」

「あ、これね」

 ぷかぷか浮かぶ、バナナボードにゆっくり登るスバルにミソラも後を追うようにバナナボートの後ろに乗り、スバルの背中に抱きついた。

「ミソラちゃん、なにを!?」

「だって、抱きついてないと、落ちちゃうでしょう」

「で、でも、水着だし……は、肌が……いや、その……」

 言葉に詰まるスバルにミソラは心の中で舌を出し、喜んだ。

 動揺してる動揺してる。この最後の夏休み企画で二人の仲をもっと進めてやろう。

 

 

 そして、ゲームが始まった。

 ゲームのルールは至ってシンプルなだけあり、最初はスバルは近くにいる者同士の接戦になると思った。

 だが……

「うわ!? みんな、こっちに攻めてきた!?」

 まるでイノシシのように自分達の元に責めてくる黄色いバナナの戦艦にスバルは慌てて、ミソラに叫んだ。

「戦線離脱。今すぐ逃げるよ!?」

「ダメ、スバル君、囲まれてる!?」

「え……!?」

 いつの間にか逃げられないよう後ろを包囲しているバナナの戦艦にスバルは自分以外のチームは全員、敵になったのだと、本能的に理解した。

「スバル君、こうなったら、戦うしかないよ。勝利とは戦ったものにのみ得られる称号なんだよ」

「そんな、お金だけ無駄にかかってる家庭用ゲームのCMじゃあるまし……でも」

 それ以外、生き残る道も無いことは確かだった。

 スバルは、用意された浮き輪の棒を構え、ミソラに指示した。

「いくよ、ミソラちゃん!?」

「オーケー、スバル君!」

 ギュッと背中に抱きつくミソラに、参加者の男連中の目がギラッと怖くなった。

「あいつだけは、殺す!」

「我らのミソラちゃんをたぶらかす腫瘍は取り除かなければ」

「殺す殺す殺す……」

 余りにも凄まじい負のオーラに一瞬、気圧されそうになったが、スバルはめげずに、バナナボートを動かした。

「突撃!」

「はい!」

 裸一貫で突貫していくスバル達に今度は逆に男達が戸惑った。

「おい、ミソラちゃんだけは狙うなよ」

「無茶言うな……あいつだけ、どうやって狙うんだ」

「じゃあ、ミソラちゃんがプールに突き飛ばされてもいいのか!?」

「そうは言ってないだろう!?」

「言ってるだろう!?」

 言い争いを始める男連中にミソラはチャンスと叫び、スバルに攻撃命令を出した。

「今だよ、スバル君! 言い争ってる人たちを攻撃!」

「でも、それって、卑怯じゃ」

「戦いに正々堂々なんってないの!」

「んな、身もふたも無い……」

 たはぁと苦笑し、スバルは言い争っている男連中を手に持った浮き輪の棒で叩き落した。

「ぷはぁ……ほら、見ろ、お前のせいだぞ!?」

「お前のせいだろう!?」

 脱落しても、未だにケンカを続ける男連中にかまわず、ミソラは裸体に近い水着の身体をスバルに密着させ、ビシッと普通に試合をしている女性群を指差した。

「今度は強敵だよ! あっちは普通にバトッてるし!?」

「ていうか、なんで、男連中がケンカしてるのか、僕は知りたいんだけど」

「さぁ」

 まったく、訳のわからないという顔をする二人だが、構わず女子達の戦っているプールの陣地へと向かった。

 だが、そこにきて、二人とも後悔した。

「じ、地獄だ……」

「う、うん……」

 外から見れば、可愛い女子達による色っぽい深夜番組のような光景が流れてる見せ場だが、実際は可愛さなど微塵も無い本物の戦場であった。

「うら!」

「キャッ!?」

 ドボンッ!

「やった!」

 ドスンッ!

「え……キャッ!?」

 プールに突き落とした女子からプールに突き落とされ、顔を出すと女子達は観客に聞こえない声で卑怯だ、反則だと罵り合った。

「ミソラちゃん……僕、お腹痛くなってきた」

「ダ、ダメだよ、攻撃!」

「いや、したら、きっと、報復されるよ、落とした娘から」

「え……じゃ、じゃあ、どうすれば」

「騎馬戦の必勝法って知ってる」

「……」

「騎馬戦は空気になってるほうが勝つ確立が高いんだ」

「え……どういうこと」

「まぁ、見てて」

 女子の戦場エリアからギリギリはみ出した地点に戻るとスバルとミソラはお互いの肌のぬくもりを感じながら、女子達の戦争を眺めた。

 まさに男子達とは一線を配する本物の戦場であった。

 一人が落とせば、落とされた女子は腹いせに落とした女子を落とし、戦いに夢中になってる女子がいれば、その不意をついて、後ろから攻撃し、バナナボートから落とし、また、落とされた女子が落とした女子に報復する。

 まさに醜い女の争いの縮図がここに体現されていた。

 もっとも、観ている観客からすれば、いい見世物として笑えるタネであるが……

「だいぶ減ったね」

 ようやく、スバルの言う作戦がわかり、ミソラは呆れた顔を浮かべた。

「ねぇ……これってさぁ、卑怯者の取る手じゃないの」

「さっき、ミソラちゃん、自分がなに言ったか覚えてる」

「え……」

「戦いに正々堂々はないよ! 突撃!」

「はい!」

 ギュッと背中に抱きつき、バナナボートを全力で戦場へと走らせるとスバルは戦いで一人っきりになった生き残りに向かい浮き輪の棒を高く振り上げた。

「一撃必殺!」

「え……きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 バシンッと浮き輪の棒に叩き落された女子に、ピ~~~とホイッスルがなった。

『勝者、響ミソラチーム!』

「やった~~~~!? スバル君、すごい!」

 大はしゃぎで手を上げるミソラにスバルも調子に乗った顔でミソラのほうを向いた。

「手を離すと落ちちゃうよ」

「大丈夫、だいじょう……」

 するっ……

「え……キャァ!?」

 手を上げた反動で水着の紐が解けてしまったのか、プールに落ちた水着も拾うのを忘れ、ミソラは胸を隠すため、スバルに今まで以上に強く抱きつき顔を真っ赤にした。

「ミ、ミソラちゃん!?」

 今度は水着越しでなく、直で女の子の胸の感触を背中に感じたスバルは顔を真っ赤にして、この後、どうすればいいか、迷った。

 その瞬間、バシャンッと下のほうからつい先ほど、自分達が突き落とした女子がスバル達のバナナボートを突き落とし、スバル達を転落させた。

「ベ~~~だ!」

 最後は子供らしく舌を出す少女だが、ミソラとスバルはここからどうやって出ればいいか、迷い、助けを求めるようディレクターを見た。

 ディレクターも突然のことに、動揺したのか、動作が多少遅れたが、慌てて、CMに入れと怒声を上げ、事なきを得た。

 ちなみに、その日の視聴率は夏の特番の中でミソラの色っぽいシーンが観れたということで、今年一番の視聴率を取れたのだが、二人はまだ、そのことを知らない。

 

 

 家に帰るとミソラは疲れきった身体をベッドに倒し、ハンターVGのハープに語りかけた。

「マネージャーとディレクターさんに散々怒られちゃった」

《調子に乗るからよ。水着の紐くらいちゃんと結んでおきなさい!》

「は~~い……でも」

 胸を隠すためとはいえ、裸になった身体でスバルに抱きついてしまった事実を思い出し、ミソラは真っ赤になり、枕に顔をうずめた。

「もう、明日から、どう、スバル君と接すればいいのよ、これ!?」

《自分で考えなさいよ。自業自得でしょう?》

「うぇ~~ん……夏休み最後の思い出が最悪になっちゃったよ~~……」

 

 

 同じ頃

「……」

 背中を肌をゆっくり撫で、スバルは顔を真っ赤にした。

「こ、これって、男の思い出としていい思い出になったのかな……でも」

 ベッドの枕に顔をうずめ、スバルは悶えるように暴れだした。

「明日から、どうやってミソラちゃんと顔を合わせればいいんだよ」

 未だに残るミソラの胸の直の感触にスバルはゴロンゴロンとベッドで転げ周り、眠れない夜をすごした。

 だが、彼は本当の恐怖に気付いていなかった。

 今日、彼が出た番組は委員長こと、白金ルナたちがシッカリ観ていたことを……

 明日から、学校の始まりである。

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