流星のメモリアル   作:スーサン

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ミソラのメイド実習

「今度の仕事が決まったわよ!」

 マネージャーの持ってきた仕事の資料にミソラは目をパチパチさせた。

「メイドさんとご主人様?」

「今度やるドラマのタイトル! ミソラちゃん、ヒロインのメイドさんね?」

 ニッコリ笑うマネージャーにミソラは頬をポリポリと掻いた。

 

 

「それで、メイドさんの心を知るために僕のところに来たわけ……その格好で!」

「そう!」

 オーソドックスなメイドファッションでターンを決めるミソラにスバルは顔を真っ赤にした。

「ま、まぁ……似合ってると思うよ?」

「えへへ♪ ありがとう!」

 スカートの端を持ち上げ、優雅にお辞儀をした。

「今日一日、私はスバル君……もとい、ご主人様のメイドです。なんなりとご命令ください!」

「メイドね?」

 マジマジとメイド姿のミソラを眺め、スバルは少し恥ずかしそうに答えた。

「じゃ、じゃあ、耳掻きとかしてくれる?」

「わかりました!」

 チョコンッとスカートを正しながら床に正座するとミソラはパンパンとモモをたたいた。

「どうぞ、ご主人様! 準備万端です!」

「う、うん……それじゃあ」

 ゆっくり、ミソラのモモに頭を乗せ、目を瞑った。

(……柔らかい)

 ふわふわのミソラのモモの感触にスバルは一瞬、顔の筋肉が緩んだのがわかった。

「スバル君の髪って意外とサラサラだね?」

「勝手に触らないでよ……」

 真っ赤になりながらスバルはハッとなった。

(ヤバイ……ミソラちゃんの膝枕、想像以上に気持ちいい!?)

 思わず、興奮してしまいそうな自分を抑え、耳かきを待った。

 耳に耳かきが入った。

「あう……!?」

「あ、痛かった?」

「あ、ち、違うよ!?」

 慌てて耳掻きを出すミソラにスバルは否定した。

(こ、これは想像以上だ……癖になりそう)

「そ、それじゃあ、痛かったら、言ってね?」

 ホジホジと丁寧に耳の垢を取っていくミソラにスバルは身体を振るわせた。

 逆の耳も綺麗にしてもらうとスバルは恍惚とした顔でミソラにお礼をいった。

「ありがとう、ミソラちゃん、気持ちよかったよ!」

「い、いえ……ご主人様に膝枕できたのは私もうれしかったですし……」

 カァ~~と本当のメイドのように甲斐甲斐しく振舞うミソラにスバルは思わず、抱きしめたくなる衝動を覚えた。

「あ、そうだ……学校の宿題出てたんだ! やらないと!」

 自分を抑えるように机に向かうとミソラも立ち上がり、一礼して、部屋を出て行った。

「……」

 機嫌を損ねたかと不安になり、ミソラを追いかけようとした。

「お茶をお持ちしました」

「あ……?」

 何事も無かったように戻ってきたミソラにスバルは安心した顔で机に向き直り、宿題を片付けにいった。

「宿題、早く終わりそうですか、ご主人様?」

 お茶を置き、一歩、後ろに下がるとミソラはニコッと笑った。

「うん、あまり難しい宿題じゃないから、すぐ終わりそうだよ。ミソラちゃん、悪いけど、部屋の掃除を頼めるかな?」

「はい、喜んで!」

 といいながらも……

(スバル君の部屋って大して片付けるところ無いんだよね?)

 多少、男の子らしいものがいくつか散らばっているが、片づけが必要といえるほどのものじゃなく、むしろ、適度な生活臭が溢れていて、住みやすかった。

(スバル君って、興味の無いものは無頓着そうに見えて、案外しっかりしてるよね?)

 そういえば、先日、ハープに部屋の掃除をしろと怒られ、掃除をしたら一日かかったことがあった。

(将来のために私も掃除をマスターしないと?)

 そう思い、本棚を確かめるとミソラは首をかしげた。

(並び方がバラバラだな?)

 几帳面なスバルにしては珍しく本の並び方が悪かった。

 出版社別でもなければ、大きさ別でもない、旗から見ても統一性の無い汚い本の並び方にミソラは一冊抜いてみた。

 仰天した。

(私の写真集!?)

 手に取った雑誌にミソラは真っ赤になった。

 水着写真だけじゃない。

 自分が売り出し中に撮った忘れてしまいたい過去の写真もあり、ミソラは一度スバルを見た。

「……」

 宿題に集中してこっちに気づいていないスバルにミソラは首を強く振った。

「エッチなのはいけないことだと思います!」

「うん、なにか言った?」

 慌てて写真集を本棚に戻し、ごまかし笑いを浮かべた。

「あ、もうそろそろ、おやつの時間ですね? なにか作ってきます!」

「あ、うん……どうしたんだろう?」

 急いで部屋から出て行くミソラにスバルは首をかしげた。

 

 

「まさか、あんな写真集を買っててくれたなんて、恥ずかしいような嬉しいような……」

 自然と顔の筋肉が緩むのを感じて、ミソラは慌ててキリッとした。

「さて……頑張りますか?」

 キッチンで用意してあった、ホットケーキの材料を並べ、腕まくりした。

 十分後……

「なぜ、たかが、ホットケーキでここまで、微妙な味が?」

 出来上がったホットケーキの味に別の意味で驚愕した。

 まずくない。

 でも、うまくもない。

 果たして、こんな料理、出して喜んでくれるのか?

 でも……

「三十分以上も待たせられないよね?」

 覚悟を決め、出来上がったホットケーキを二階まで持っていった。

 

 

「はむはむ……」

 出来上がったホットケーキをスバルは夢中になって食べていた。

「あの……まずくない?」

「なんで?」

「いや、別に……」

 やはり、味オンチみたいだった。

「ふぅ~~……食った食った!」

 膨れたお腹をさすり、スバルは机から立ち上がった。

「今日はありがとう、ミソラちゃん……半日だけだったけど、充実した一日だったよ!」

「本当!」

「うん!」

 大喜びするミソラにスバルもニコッと笑った。

「これで役になりきれるね?」

「それなんだけど、最後にどうしてもやっておきたいことがあるの」

「やりたいこと?」

「このドラマ、主人公のご主人様とメイドが恋に落ちるシーンがあるんだけど……その」

「……」

 ミソラの言いたいことがわかり、スバルもやさしく微笑み、彼女の腰に手を回した。

 ミソラもスバルの首の後ろに手を回し、密着した。

「大好きです……ご主人様!」

「僕もだよ……ミソラ」

 主従っぽく呼び合うと二人は確認するようにキスをした。

 

 

 それから数日後……

『あわわわわぁ、ご主人様、すみません!』

『またですか、怪我をしてませんか?』

『は、はい! それだけが取り柄ですから!』

 テレビの中で派手に高級そうな皿や壺を割るミソラにスバルは苦笑した。

「メイドって、ドジッ娘のことだったのか?」

 余談だが、番組終了後、このドラマは映画化が決められた。

 そのことを知るのはもうちょっと後の話だった。

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