スバルとミソラは日帰りのスキー旅行に来ていた。
「新雪って感じだね? 雪がキラキラ輝いてるよ!」
「斜面も急だしね?」
小さく見える山下のコテージにスバルは苦笑した。
「そういえば、去年は散々な目にあったな?」
「あの時は森に放り出されて、吹雪にあったね?」
冬だけに乾いた笑いを浮かべた。
「今回はちゃんと予報も確かめたし、大丈夫、大丈夫!」
えっへんと胸を張るスバルにミソラもおかしそうに笑った。
「スバル君が自信を持つと大抵、いいことはないんだけどね?」
「そんな事ないよ!」
ぷぅと頬を膨らませた。
「スバル君、可愛い♪」
クスッと笑った。
「じゃあ、お先♪」
ミソラはコテージに向かって、雪山を滑り出した。
「あ、ミソラちゃん、待ってよ!」
ミソラに続くようにスバルも雪山を滑り出した。
「ヨッと!」
雪山に出来たコブを利用し、ジャンプした。
「やっぱり、コレをやらないと楽しくないよね?」
「やるね?」
スチャッと着地するスバルはまた、警戒に滑り出した。
ガチャッ……
「えっ……!?」
スキー板が外れる音がし、スバルとミソラは真っ青な顔をした。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
スキー板が外れ、空高く放り出されたスバルはそのまま、森の中へと放り出された。
「スバル君!?」
森の中、転がり落ちるスバルにミソラは慌てて自分のスキー板を外した。
スバルを追いかけるように雪山へと入っていった。
「うぅ……」
薄暗い洞窟の中、スバルは目を覚ました。
「ここは?」
「スバル君、目が覚めた?」
「え……うわぁ!?」
ミソラの膝の上に眠っていることに気付き、慌てて起き上がった。
「大丈夫? どこか痛くない?」
身体をいたわるようにミソラは背中をさすった。
「う、うん……だいじょツゥ!?」
右足に鈍痛を感じ、眉根を引いた。
「足を捻ったんだね? いいものがあるよ!」
「いいもの?」
肩を借りながら、スバルはミソラと一緒に洞窟の奥へ進んだ。
「ほら、これ!」
「あ……!?」
ゆらゆらと揺らめく湯気とほのかに漂う硫黄の臭いにスバルは目を輝かせた。
「温泉だ……!」
「さっき、見つけたんだ! ちょうどいい湯加減だから、一緒に入ろう!」
「え、で、でも……」
真っ赤になるスバルにミソラは肩を離し、背を向けた。
「背中を向けてれば、恥ずかしくないよ! ねぇ、入ろうよぅ♪」
「……」
甘えるような声を出すミソラにスバルは二度、三度の心の中で葛藤を描いた。
相手は女の子。
でも、自分の彼女だ。
なら、裸くらい見たっていいだろう?
いやいや、彼女でも節度は必要だろう?
仲良きことは良きかなだぞ、スバル!
いやしかし、親しき仲にも礼儀あり。
だが、混浴という言葉を知らないのか?
頭の中に様々な邪念と欲望が渦巻き、最後に勝ったのは……
「僕は紳士だから……」
「そういうことにしてあげる!」
満面の笑みを浮かべ、ミソラはスキーウェアーのファスナーを下げた。
(へへ……コレは予想だにしない嬉しいアクシデントだな?)
チャポンッ……
「ふぅ~~……」
お湯に浸かるとスバルは親父臭いため息を吐いた。
「いい気持ちだね、スバル君?」
「うん……そうだねって!?」
慌てて背中を向けた。
「こ、こっち向かないで!?」
「なんで?」
不思議そうにスバルの顔を覗き込んだ。
「大丈夫だよ、私はスバル君のを見ても、なんと思わないから!」
「僕が思うの!」
「もう! そんなんじゃ、将来が不安だよ!」
頬を膨らませ、ムリヤリ、スバルの身体をこっちに向かせた。
「ぶっ!?」
ミソラの裸体がモロに目に飛び込んだ。
「あわ……あわわわわ!?」
目をそらすことも出来ず、真っ赤になって、固まった。
「……」
スバルの熱い視線にミソラも気付いたら赤くなっていた。
「も、もう、これ以上見ちゃダメ! 罰金だからね?」
胸を隠すように身体を丸め、そっぽを向くミソラにスバルもせめての応対と確かめた。
「見せても大丈夫じゃなかったの?」
「制限時間があるの! 女の子の身体をジロジロ見ていいものじゃないの!」
「りょ、了解……!」
慌ててスバルも背中を向け、身体を丸めた。
(見せても大丈夫なつもりだったけど、結構、恥ずかしいな?)
スバルに見せてしまった身体をにミソラは恥ずかしさに爆発しそうであった。
いつ、どこで、どの状態でもスバルに身体を見られてもいいように、お肌のチェックは欠かしたことはなかった。
シャンプーもボディーソープもいつも身体に合うものを選び、胸を大きくするエクササイズも日課になっていた。
食べるものだって、アイドル業とは別に健康にいいものを食べてる。
それもこれも全部、スバルに喜んでもらおうという、ミソラなりの乙女心であった。
でも……
「……」
チラッとスバルの背中を見た。
(意外と大きいんだよね、スバル君の背中って?)
自分だけじゃない……
世界や宇宙すらも背負うことの出来る大きな背中……
その背中をミソラはいつも、自分だけのものにしている。
(なんだか、みんなに悪いことしてる気になるな……)
お湯から立ち上がった。
「ミソラちゃん?」
ザパァって音にスバルは出て行くのかと寂しそうな顔をした。
「スバル君……」
「え……おわ!?」
いきなり、背中に抱きつかれ、スバルは今までにないくらい真っ赤になった。
背中に感じる、ミソラの育ちかけの胸の柔らかさとその先の胸のポッチの感触に沸騰してしまいそうであった。
「ミ、ミソラちゃん……冗談でも」
「今だけ、こうさせて……スバル君の宇宙のよりも大きい背中を独り占めさせて?」
「ミ、ミソラちゃん……?」
言ってる意味がわからず、スバルは不思議そうな顔をした。
コテージまで戻ると、二人はそのまま、帰りのバスに乗った。
バスに乗ってる間、二人は一言も喋っていなかった。
お互い顔を真っ赤にし、温泉のときの出来事を思い出していた。
「……」
スバルはミソラの膝の上の手に自分の手を重ねた。
「ス、スバル君?」
いきなり、手を重ねられ、ミソラは仰天した。
「……」
ギュッと握られた。
「……スバル君」
ミソラも手のひらを返し、握り返した。
「……ミソラちゃん」
「……スバル君」
無言のまま、お互い手と手を握り合ったまま、キスをした。
「うぅはぁ……」
「うぅん……はぁ」
唇を離し、糸が服につくとふふっと笑いあった。
「次は……どこに行こうか?」
スバルの言葉にミソラも楽しそうに笑った。
「お互い素直になれる場所がいいな……?」
「温泉とか?」
「エッチ……!」
「うん!」
二人はまた、幸せそうに笑いあった。