流星のメモリアル   作:スーサン

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サイン会にへとへと

 『響ミソラサイン会』と書かれた堂々とした看板の前でルナは意思のしっかりした声でスバル、ゴン太、キザマロに一喝した。

「いい! 今日は我がコダマタウンでミソラちゃんのサイン会が開かれるのよ! ブラザーとして、コレは絶対に逃せないイベントよ! 恥をかかせないでよ! 特にゴン太!」

「はい!」

「はい!」

「はぁい……」

 目の下にクマを作りながらも、気合の入った声を上げるゴン太とキザマロに対し、スバルだけ、少し気の抜けた返事を上げた。

「スバル君!」

 怖い顔で睨まれた。

「アナタ、ミソラちゃんのブラザーとしての自覚はあるの!? そんな、情けない声を上げて!?」

「あ、いや……」

 スバルも真っ青になって答えなおした。

「早過ぎない?」

 すでに列は出来てるがスバルは眠そうにあくびをした。

「まだ、午前の二時だよ? ミソラちゃんだって、まだ、寝てるよ?」

「スバル君、甘いですね?」

 今度はキザマロが得意げにメガネをあげた。

「サイン会は十時会場の午後四時までですが、ミソラちゃんの人気はすでに世界レベルです! コレだけ早く来てもすでに並んでる人たちがいい証拠です! 朝早く来ても、恐らくサインがもらえない人がたくさん出るのは必然です!」

「そ、そうなの?」

「そうです!」

 キッパリ言われ、スバルは頭がぐわんぐわんした。

(眠い……)

 ため息を吐いて、またあくびをした。

「でも、やっぱり眠いよ……」

「我慢なさい! 帰ってから寝ればいいでしょう!」

「……」

 言い返す言葉が出ず、スバルはさらに出来上がっていく長蛇の列に感嘆とする。

 それから、八時間後の午前十時。

『これより、響ミソラサイン会を始めます! 皆様、列に並び、ゆっくり会場に入ってください!』

「ふわぁ~~……ようやく開場か?」

 待ちくたびれたのか、少し疲れた顔をするスバルにルナもあくびをかみ殺し、気合を入れた。

「いくわよ……!」

「はい、委員長!」

 開場と同時に気合が復活したのか興奮した顔をする二人にスバルは元気だなと呆れた。

 三十分くらい経ち、自分たちのサインの番になるとスバルはミソラの前に立った。

「あ……?」

 ミソラもスバルの顔を見てビックリした。

「あ、ああ!? サインですよね……かぁきかき~~と」

 スバルの顔を見ようともせず、ミソラは慌てて色紙にサインを書いた。

「あれ、ミソラちゃん、あの少年の名前聞いてないぞ?」

「あ、き、君の名前は!?」

「あ、はい……星河スバルです!」

 スバルもミソラも今になって、自分たちの関係が公では秘密であることを思い出した。

 

 

「ふぅ~~……」

 トイレの個室でスバルはため息を吐いた。

「ミソラちゃんと僕の関係が秘密なのは当然としても、なんか、気を張るな~~……」

 ルナ達はサインを貰うと、すぐに「眠い」と言って帰ってしまっ。

 スバルもすぐに寝たかったが、しばらく、この会場にいることにした。

「……」

 サイン色紙の裏に張られた紙を抜き、読んだ。

『イベントが終わったら、一緒に帰ろう? だから、絶対に帰っちゃダメだからね!』

 苦笑した。

(言われなくっても、ちゃんと残る気だったよ……ミソラちゃんは心配性だな?)

 ガチャンッ……

 外のトイレのドアが開く音がした。

「おいおい、今日は来てよかったな?」

「ああ、そうだな!」

 個室の外から聞こえる男達の声にスバルは聞き耳を立てた。

「ミソラちゃん、最近、ますます可愛くなってないか?」

「ああ、それは俺も思ってた! 歌も引退前よりも遥かに上達してるし、本当に勉強してたんだな?」

 ミソラが褒められてることを知り、スバルは不思議と眠気が吹き飛ぶ興奮を覚えた。

「歌手活動を休止して勉強してたのもそうだけど、俺は恋人が出来たと踏んでいるぞ!」

「恋人……まさか、ミソラファンクラブの重要危険人物に指定されてるあの小僧か?」

「まさか! ミソラちゃんは世界を代表するアイドルだよ? あんな、オタッキーとじゃ吊りあわないよ」

「……」

 笑いながら去っていく男たちにスバルは個室の中で暗い顔をした。

「吊りあわないか?」

≪今更のことだろう、気にするな≫

「……ありがとう、ウォーロック」

 

 

 イベントが終わり、スバルの家に帰るとミソラは我が物顔でベッドに倒れこんだ。

 足をバタバタさせ、近くのマンガを読み始めた。

「ふぅ~~……やっぱり、我が家は落ち着くね?」

「ここ、僕の家……」

「細かいことだよ♪」

 スバルの使っている枕に顔をうずめ、微笑んだ。

 ゴロリと寝転がって、天井を見上げた。

「でも、みんな、私のサインを貰って満足したかな?」

「したと思うよ……」

 スバルもニコッと微笑み、ハンターVGの検索モードでミソラのブログを開いた。

「ほら、これ!」

『ミソラちゃん、サイン、ありがとう! 宝物にするから!』

『これからも素敵な歌をお願いします!』

『ミソラちゃんの歌を子守唄に聴いてます! 今日のサイン会、充実してました!』

『恋人が出来たって嘘ですよね?』

「……」

 ブログのコメントを眺め、ミソラは晴れやかな顔をした。

「そっか……ちゃんと、喜んでくれた人がいたんだ?」

「ここにもいるよ」

 スバルもミソラから貰ったサインを見せた。

「僕の宝物の一つにするね?」

「スバル君……」

 ミソラの顔が真っ赤になり、慌てて首を振った。

 ニコッと笑い、ベッドから起き上がった。

「そういえば、スバル君には特別なサインをあげてなかったっけ!」

「特別なサイン?」

 ベッドから起き上がるミソラに近づくと……

「えい♪」

 ちゅっ……♪

「ッ……!?」

 唇にキスをされ、スバルは仰天した。

「ぷはぁ……」

 糸を引き、唇を離すとミソラは嬉しそうにニコッと笑った。

「スバル君限定、ミソラ特別サイン、どうだった?」

「……」

 下唇を指でなぞり、頬をかいた。

「トンカツの味がした♪」

「もう、ムードがない!」

 また、キスをした。

 スバルのベッドに倒れこみ、布団を被った。

「寝てないんでしょう? 私も疲れたから、一緒に朝まで寝よう?」

「そう……だね」

 ミソラの胸に顔をうずめ、安らいだ顔で目を瞑った。

 ミソラもスバルの吐息を胸に感じながら、疲れが取れた顔で眠りにつくのであった。

 二人が目を覚ましたのは次の日の朝だった。

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