「メリークリスマス!」
パァンッとクラッカーが鳴った。
「メリークリスマス、ミソラちゃん♪」
身体にかかった糸くずを落とし、スバルも微笑んだ。
「今日はクリスマスパーティーに誘ってくれて、ありがとう。これ、つまらないものですが……」
「あ、これはどうも!」
スバルのお土産を受け取り、ミソラの顔が輝いた。
「うわぁ! これ、最新型のデジカメだよね? 高くなかった?」
「奮発しちゃった! コレを使って、これからもいっぱい、デートの記憶を残そうね?」
「うん!」
デジカメを大切そうに抱き、スバルの手を引っ張った。
「今日は私、頑張って料理作ったんだ! 食べて食べて♪」
テーブルの前に座らせ、大きなショートケーキを見せた。
「このケーキ、ミソラちゃんが作ったんだ!」
「そうだよ! そなえつけのチキンはゲンタッキーのだけどね……」
えへへと苦笑し、ミソラは髪をテレ臭そうに掻いた。
「じゃあ、私、パーティー用の服に着替えるから、待っててね?」
「着替え?」
自室に戻るミソラにスバルは首をかしげた。
「パーティー用の服って、なに着る気だろう?」
テーブルに乗ったオシャレなガラスのコップの口をツーと撫でた。
「……」
やる事が無く、なんとなく、部屋の中を見渡した。
「綺麗な部屋だな……」
というよりも、生活臭が感じられない部屋だった。
ミソラは母と死別してから、一人暮らしだと聞いている。
後見人として、前のマネージャーがいたが、別に一緒に暮らしていたわけじゃない。
「……この家ではいつも一人なんだよな?」
なんとなく、悲しい気持ちになり、慌てて首を振った。
「なにしてるの、スバル君?」
「え……?」
後ろから声をかけられ、スバルはビックリした。
「ジャ~~~ン♪」
「ミソラちゃん……すごい格好だね?」
「可愛いでしょう♪」
真っ赤なビキニ姿のサンタコスチュームにミソラは満面の笑顔でクルリと回転し、ポーズを決めた。
「この日のために新調したんだ! まぁ、プールに入れないけどね♪」
テヘッと可愛く舌を出すミソラにスバルは真っ赤になった。
「ほらほら、見惚れてないで、パーティーを開始するよ!」
「う、うん」
スバルの隣に座り、ミソラはノンアルコールのシャンパンを開けた。
「はい、スバル君!」
「ありがとう」
ミソラにシャンパンを注いでもらうと、今度は自分がシャンパンのビンを持った。
「はい、ミソラちゃん」
「ありがとう!」
スバルにもシャンパンを注いでもらい、ミソラはそっと、傾けるようにコップを上げた。
「じゃあ、せ~~の!」」
「メリークリスマス♪」
カチャンッとコップがぶつけ、シャンパンを飲んだ。
「おいしいね、このジュース?」
「知り合いから、おいしいのを貰ったんだ! ほら、ケーキも食べなよ! 今回は味に自信があるんだから!」
「ミソラちゃんのはいつも自信満々の味じゃない」
「そ、そうかな?」
満更でない顔でミソラは目の前のショートケーキを八等分にカットし、フォークで刺した。
「はい、あ~~ん♪」
「ちょちょ、ミソラちゃん、それは恥ずかしいよ」
「テレない、テレない♪ 今日は人目も気にせずイチャつけるんだから、楽しもうよ?」
「もう……」
スバルの顔も緩み、ミソラの刺すフォークのケーキを食べた。
「むぐむぐ……」
「どう?」
強張った顔で味の批評をまった。
「うん、やっぱり、ミソラちゃんは料理の天才だね! すごく、甘くて美味しいよ!」
「ス、スバル君……!」
一生懸命作ったケーキを褒められて、ミソラは嬉しさに目をウルウルさせた。
「じゃあ、私も!」
自分の分もフォークで指し、食べた。
「ッ!?」
口を押さえた。
「どうしたの、ミソラちゃん?」
美味しそうにケーキを食べるスバルにミソラは涙を抑え、顔を上げた。
(なんで、ちゃんと出来たケーキでこんな微妙な味が!?)
自分で作ったものなのに一生懸命、ケーキを飲み込んだ。
(やっぱり、スバル君は味音痴だ……)
「どうしたの? 宇宙人を見る顔をして?」
「な、なんでもないよ! わ、私、チキン、食べるね?」
慌てて口直しにゲンタッキーのチキンにかぶりついた。
「そんなことしなくったって、ケーキはたくさんあるよ?」
ミソラの行動に呆れ、スバルもフライドチキンを食べ始めた。
「うん! やっぱり、クリスマスのチキンは格別だね!」
「うん! ケーキは……置いといて、チキンは美味しいね?」
ミソラの言葉にスバルもニコッと微笑んだ。
「美味しいケーキにチキン……それに可愛い恋人と迎えられるクリスマス。きっと、幸せって、こういうことを言うんだね?」
「スバル君、今日はいつにもましてキザでクサイよ」
「ふふっ……いや?」
「嫌じゃないよ、もちろん!」
「あ……!」
外を見て、スバルは慌てて、部屋の窓を開けた。
「雪だ!」
「本当だ……」
遠くから聴こえる「きよしこの夜」の音楽に二人は街でもクリスマスをやってるんだなとおかしくなった。
「そうだ、ミソラちゃんにクリスマスプレゼントあげてなかったね?」
「え、このカメラがクリスマスプレゼントじゃなかったの?」
「それはお土産。本命はこっち!」
窓も閉めず、スバルはミソラのアゴを人差し指と親指でクイッと上げた。
「ハッピークリスマス♪」
チュッとキスをした。
「……」
「……」
長くキスをし、二人は糸を引きながら、唇を離した。
「チキンとケーキの味がしたね?」
「ケーキだけ食べてれば、キスの味はケーキだって、言えたのに!」
少し拗ねた顔をするミソラにスバルもおかしそうに笑った。
ギュッとミソラの身体を抱きしめた。
「ミソラちゃんの身体、あったかいね?」
「お、女の子だからね」
スバルに抱かれながら、ミソラも嬉しくなり、彼の背中に腕を回した。
「本当に暖かくって気持ちいいね?」
「うん……」
「クチュン……」
クシャミをするミソラにスバルは慌てて離れ、窓に走った。
「窓、開けっ放しだったね?」
慌てて窓を閉めた。
「じゃあ、寒くなくなったし、もう一度、仕切りなおしだね?」
「うん……もっと、今度は激しくしてね?」
また、お互い抱きしめあうように腕を回し、キスをした。
お互いを確認しあうように激しく熱く、雪が溶けるような情熱的なキスを……
「あれ……?」
目を覚ますとスバルは隣で頬をプニプニするサンタの水着姿のミソラに起こされた。
「おわぁ!?」
ベッドから転げ落ち、慌てて自分の格好を確かめた。
「よかった」
服を着ていることを確認し、ホッとした。
「なによ! 私と間違いが起こって欲しくないの?」
「道徳の問題だよ……大人になるまで清い関係でいたいじゃない?」
「スバル君は……」
床に倒れたままのスバルにのしかかり、キスをした。
「ッ!?」
ぐちゅぐちゅと嫌らしい粘液のこすれる音が響き、ミソラは唇を離した。
「これでも、清い関係がいいって言うの!?」
淫らに潤んだ目で睨みつけるミソラにスバルも恍惚とした目で言葉を探した。
「来年もよろしくお願いね、スバル君!」
「こちらこそ、来年どころか、十年も百年も末永くよろしくお願いします!」