「新年明けましておめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
畳に三つ指を付き、丁寧にお辞儀をすると二人はエヘヘと笑った。
「新年もよりよいお付き合いを……」
「こちらこそ……」
ペコリとまた、頭を下げた。
「その振袖、綺麗だね?」
「そうでしょう~~?」
着崩れしないよう丁寧に振袖を見せると自慢するように胸を張った。
「この日のために新調したんだ! これで、似合ってないって言ったら、本気で怒ってるからね!」
「わかってるよ……」
クックックッと苦笑し、スバルは思い出したようにポケットに手を入れた。
「忘れるところだった……」
ポケットから熨斗袋を取り出し、ミソラに渡した。
「はい、僕からのお年玉! 少ないけど、取っておいて!」
「え……お年玉?」
お年玉を貰い、ミソラは二、三回、スバルの顔とお年玉を交互に見た。
「スバル君が私に?」
「ほかに誰に?」
「私のほうがお金持ってるよ?」
「いいだろう、こういうのは気持ちなんだから?」
「スバル君ったら……」
嬉しそうに頬を染めた。
「格好つけちゃって!」
「男は格好つけてなんぼの生き物なの……!」
スバルもちょっと恥ずかしくなったのか、頬を染め、拗ねた顔でそっぽを向いた。
「まったく……!」
頬を染めながら、ミソラはお年玉の中身を確認した。
「うわぁ! 一万ゼニーも入ってる!」
「この前、南国さんのお店の大掃除を手伝ったら、バイト代に貰ったんだ!」
「へぇ~……そうなんだ?」
それでも、景気良くパッと出せる値段じゃないので、ミソラは純粋に感動した。
「大切に使うね!」
「うん、そうして……!」
お年玉をバッグに入れると畳から立ち上がった。
「じゃあ、新年の挨拶も済ませたし、初詣に行こうか!」
「そうだね!」
畳から立ち上がると二人は手を繋いだ。
コダマタウンの神社につくとスバルは人垣の多さに感嘆とした。
「うわぁ……もぅ神社は参拝客でいっぱいだな~~?」
「三箇日だからね? 他に行くところもないし、自然と初詣に来ちゃうんだろうね?」
手をギュッと握り、ミソラは一揆果敢に足を前に進めた。
「いくよ!?」
「うん!」
チャリンチャリン……
小銭の鳴る音が響き、二人はパンパンと手を叩いた。
(今年もミソラちゃんと楽しく過ごせますように!)
(スバル君ともっと仲良くなって、もっと楽しい一年になりますように!)
合わせていた手を離し、二人はお互いの顔を確認した。
「なんのお願いをしたの?」
「私は去年よりも今年は、もっと、仕事が増えますように……かな? スバル君は?」
「僕は僕の身の回りの人たちの健康祈願かな?」
「ふふっ♪ スバル君らしいね」
「叶うといいね、お互いの願い……?」
「きっと、叶ってるよ……もう」
テレたように笑うと二人は心の中で嬉しそうに呆れた。
(嘘つきだな、ミソラちゃんは……)
(嘘つきだな、スバル君は……)
お賽銭の後、二人はおみくじを買っていた。
「さて、僕はなにが出たかな?」
貰ったおみくじを開いてみた。
『末吉』
「こんなもんか……」
良くも悪くもない結果にスバルはため息を吐いた。
『身近な人の願いは逆らわぬが吉』
「……」
読まなかったことにした。
「へぇ~~……身近な人の言うことは聞いたほうがいいんだ?」
「ギクッ!?」
背中からおみくじを覗くミソラに慌てて離れ、怒鳴った。
「勝手に見ないでよ!」
「そんなこと言っていいの?」
ニヤリと笑い、手を握った。
「ちょっ……ミソラちゃん!?」
手を引っ張られ、スバルは境内の裏側まで連れてこられた。
「こんなところに連れてきて、いった……ッ!?」
言葉をさえぎるようにキスをされた。
「ぷはぁ……」
糸を引くように唇を離し、ミソラはテレたように下唇をなでた。
「新年最初のキス! スバル君の家のお雑煮は関東風なんだね?」
「味見しないでよ……人のキスで」
スバルも恥ずかしそうに赤くなり、頭をかいた。
「……」
一瞬、視線をさまよわせた。
「ミソラちゃん、今、してほしいことある?」
「聞いてくれるの……?」
「まぁ、おみくじの威光には従わないとね?」
ミソラもテレたように赤くなった頬に手を当てた。
「じゃあ、セカンドキスをお願いしようかな?」
「うん……喜んで!」
唇を上に向かせるとスバルは目を瞑った。
ミソラも目を瞑り、スバルの唇を待った。
「大好きだよ、スバル君」
唇同士が重なると、二人は強く抱きしめあった。
家に帰る道中、スバルはミソラのおみくじの結果を聞いた。
「はい、これ!」
「どれどれ……」
『大吉』
「これはこれでミソラちゃんらしい……」
『身近な人が願いを叶えてくれる』
「……」
なんか騙された気がした。
「あ、ついたよ!」
家に付くとミソラは我が家のように家のドアを開け、家に入った。
「お邪魔しま~~す!」
「はい、墨の準備は出来たよ!」
「これはどうも!」
振袖からいつものパーカー姿に戻るとミソラは長方形の長い紙の前で筆を走らせた。
「書けた!」
「どれどれ?」
ミソラの書いた習字を見て苦笑した。
『恋人円満』
「ふふっ……いいね!」
「スバル君の新年の抱負は?」
「コレ!」
『静かに平和に』
「なにそれ?」
「スキャンダルにならないように、今年も静かに楽しく恋人関係を築けるようにって事だよ!」
「スキャンダルか~~……」
最近になって、何人か同期のタレントがスキャンダルを起こし、引退したことを思い出し、遠い目をした。
「ねぇ、スバル君?」
「なに?」
急に神妙な顔をするミソラにスバルは心配そうに顔を覗き込んだ。
「もし、私がアイドルを辞めたら、スバル君はどうする?」
「え……?」
不思議そうな顔するスバルにミソラは慌てて話を変えようとした。
「も、もしもの話だよ! それよりも、大掃除したの、このへ」
「変わらないよ……」
「え……?」
顔をしかめるミソラにスバルは強引に彼女をベッドに押し倒した。
「ス、スバル君!?」
覆いかぶさるように自分を見つめるスバルにミソラは真っ赤になった。
「僕は「アイドルの響ミソラ」を好きになったんじゃなく、「響ミソラそのもの」を好きになったんだ。何者になっても、この好きって気持ちは変わらないよ!」
奪うようにキスをし、熱っぽい息を吐いた。
ミソラもスバルのキスに興奮したのか、少し潤んだ目で微笑んだ。
「……バカ」
今度はミソラがスバルの身体を抱きしめるようにキスをした。
「今年も……来年も再来年も……お爺ちゃんお婆ちゃんになっても、ずっと仲良く楽しく好き同士でいようね、スバル君!」
「そうだね!」
抱きしめあいながら、二人は気が済むまでキスを繰り返した。
今年も二人の甘くて楽しい一年は終わりそうになかった。