「え……母さん、今日、出かけるの?」
食べかけのご飯を飲み込み、ゴクンとのどが鳴った。
「そうなのよ! 高校の同窓会に出ないといけなくって……でも、大丈夫!」
グッと親指を立てた。
「ちゃんと、母さんが留守の間、アナタの世話をしてくれる人を頼んだから!」
「世話?」
家政婦でも雇ったのかとスバルは首をかしげた。
ピンポ~~~ン!
「あ、来たわ!」
ガチャンと不躾にドアが開く音がし、トントンと静かな足音が居間に近づいた。
「おはようございます、おば様!」
「おはよう、ミソラちゃん!」
「ミソラちゃん……」
ポトッと掴んでいた箸を落とし、目をパチパチさせた。
「まさか、僕のお世話って……」
「ミソラちゃんよ!」
「うんな、アホな……」
「る~~るる~~……♪」
適当に頭に浮かんだフレーズを歌にし洗濯籠の中身を確かめると赤くなった。
「スバル君のだ!」
トランクス派だった。
「……」
スバルがいないことを確認すると、ミソラはそっと、パンツを鼻に近づけた。
「すぅ~~……ハァッ!?」
ミソラは慌ててスバルのパンツを洗濯機に放り込んだ。
「危ない危ない……危うく、人の道を外れるところだった!」
「なにを外れるの?」
「キャァァァァァッ! スバル君のエッチ!」
「ぶべっ!?」
自分のパンツを投げつけられ、スバルは何事かを、自分のパンツを掴んだ。
「なんで?」
洗濯機の置いてある脱衣所のドアの前でスバルは何度も、目を瞬かせた。
「……」
ベッドの上でマンガを読んでいると部屋のドアが開いた。
「うん?」
マンガを置き、ベッドに胡坐をかくように起き上がると部屋の侵入者を見た。
「ミソラちゃん、どうかした?」
「掃除しに来たよ! おば様から、散らかった部屋を片付けるよう言われてるから!」
「いいよ! それくらい、自分でやるから!」
「私がやりたいの!」
「は、はい……」
一喝され、スバルはベッドの上で固まった。
「よくよく見るとスバル君の部屋って、意外と汚れてるよね?」
「そ、そう?」
「そうだよ! だって……」
置きっぱなしの野球のグローブとマンガを取った。
「出したら、出しっぱなしの状態じゃない!」
「そ、それは……その」
エヘヘと笑った。
「面目ない」
「まぁ、男の子だしね? ところで……」
グローブを取った。
「スバル君、野球やるの?」
「父さんに貰ったんだよ。今はたまに、委員長達と草野球に混ぜてもらってるよ」
「ちなみにポジションは?」
「……レフト」
「一番、暇なポジションを任されてるんだね?」
「全国のレフトに謝れ」
「ごめんなさい……」
ペコリと頭を下げた。
「アレ?」
首をかしげた。
「ところで、私、スバル君のお父さんにあったことあったっけ?」
「ちゃんと、会ってるじゃない……前だって、あれ?」
スバルも首をかしげた。
「僕も父さんの顔を最近、見てない気がする!」
「出張中とか?」
「いや、ちゃんと、休日、家にいるはずなんだけど! なぜだろう、父さんがいる記憶だけ、スッポリ抜けてる!」
「もしかして、私達、今、恐ろしい体験をしてる?」
「考えるのはよそう! 父さんは家にいるけど、僕たちが気付いてないだけだ!」
「それが一番、酷いことしてる気がする」
「気のせいだよ!」
日が沈むとスバルはミソラが入れてくれたお風呂に入るため、身体を洗っていた。
「スバル君、背中流してあげる!」
「来ると思ったよ!」
「水着着てる……」
ガッカリした顔でミソラは肩を落とした。
「なら、これならどう!」
パラッと身体を包んでいたバスタオルを取った。
「驚かないよ」
「……強くなったね?」
バスタオルの下に着た白ビキニに反応されず、ミソラはちょっとだけ、ムッとした顔をした。
「でも、これなら、驚くでしょう!」
「え……?」
自分の身体を洗い出すミソラにスバルは首をかしげた。
「なにしてるの?」
「はい、背を向けて!」
「……?」
言われるまま、背を向けた。
「じゃあ、スバル君の背中を流すね?」
「イッ!?」
肌に触れるように……いや、肌に触れてミソラは育ちかけている双方の胸をスバルの背中にくっつけ、スポンジのようにボディーソープで洗った。
「はい、ジッとして!」
腕を絡ませるように前に出し、ミソラはスバルの頬を後ろからキスした。
「どう? 気持ちいい、スバル君?」
「ミ、ミソラちゃん……これはやりすぎだよ!」
「嬉しいくせに!」
ケラケラ笑うミソラにスバルは動くことが出来ず身体を固めてしまった。
「クチュンッ……」
「あ、ミソラちゃん、風呂場で遊ぶから、湯冷めしたんだね?」
パシャンとお湯をかぶせた。
「ほら、お風呂に入るよ?」
「う、うん」
鼻をさすり、お風呂に入った。
「狭いね……えへへ♪」
「元々、一人用だからね」
狭い湯船の中、ミソラとスバルは足を絡めるように縮みこまり、笑いあっていた。
「さて、もう寝るけど……」
「……」
慣れない作業に疲れたのか、目をうつろうつろするミソラにスバルは確かめた。
「これ、ミソラちゃんの布団ね?」
ベッドの横に敷いた布団を指差し、スバルはミソラの手を握った。
「ほら、ちゃんと布団被って寝ようね?」
ゆっくり、気遣うように彼女の身体を布団に寝かしつけると掛け布団をかけてあげた。
「おやすみ、ミソラちゃん!」
チュッと頬にキスをし、電気を消した。
カチャンッ……
「うぅ~~……」
電気が消えるとミソラの虚ろだった目が少しだけ開き、ゆっくり起き上がった。
「あれ……なんで、私、布団で寝てるの?」
完全に寝惚けてるのか首を左右に振り子のように振り、隣のベッドを認めた。
「あった……落ちたんだ」
ベッドの中に潜り込み、ミソラはスバルを抱き枕にして眠りについた。
「この枕……いい匂い」
チュッとキスをし、ミソラはスバルの名前を口ずさんだ。
「スバル君みたいな匂いだな~~……」
翌朝。
「スバル~~……昨日はミソラちゃんとなにかあった!」
ニヤニヤ顔でスバルの部屋に入るとあかねは口を押さえた。
「まだ、二人の新婚さんごっこは続いてるのね?」
抱き合うように一緒に眠っているスバルとミソラにあかねは持っていたデジカメを構えた。
「当分は萌え要素に困ることはなさそうね?」
カシャッと写真を撮り、あかねは嬉しそうに笑った。
「起きた後、この子達、どんな反応するかしら?」
二人の桃色の未来を想像し、あかねはスバルの部屋を出て行った。
ガチャン……