流星のメモリアル   作:スーサン

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ミソラー旅行記

「新しいバトルカード?」

 手渡されたバトルカードを見て、スバルは首をかしげた。

「どんな効果なの、宇田海さん?」

 カードを渡すと宇田海は少しだけ得意げにしゃべった。

「今回のバトルカードは身体を小さくするバトルカードなんです」

「身体を小さく?」

 ミソラの顔が真っ青になった。

 恐らく、以前、幼女になったときのことを思い出したのだろう。

「いえ、幼くなるカードじゃなく、身体が本当に小さくなるんです。某ネコ型ロボットのアレみたいに」

「某ご先祖様が残した発明品のアレみたいにですか?」

「そう、アレです!」

 どこか、例えが違う気がしたが、ミソラは深く突っ込まないことにした。

「でも、小さくなるって……あまり役に立たない気がするけど?」

「そんなことないよ、スバル君」

 宇田海の後ろで話しを聞いていた天地が口を挟んできた。

「災害現場でも、人が通れない小さな穴も身体が小さくなれば通れるだろう? 現状でも緊急時の救命者の搬送や荷物の運送も小さくなれば、効率が上がるだろう?」

(ものは考えようってことか?)

 納得した顔をするスバルに宇田海が申し訳なさそうに項垂れた。

「それで申し訳ないんですが二人にこのカードのモニターを協力してほしいんです」

「モニターの協力?」

「バトルカードの実験です。二人なら、僕たちが予想だにしない欠点や利点を見つけてくれると思います。それを活かし、今後のバトルカードの発展に役立てたいんです」

「発展か……?」

 ミソラも興味深そうにバトルカード見た。

「まだ、柄はないんだ?」

「試作品ですからね。柄のデザインは完成後にプロの絵師に頼む予定です」

「そっか……」

 スバルを見た。

「ねぇ、私が試してみていい? 私、ガリバー旅行記、好きなんだ!」

「ガリバー旅行記? ああ、あの小さな人間の国や大きな人間の国を旅して回る主人公の話ね?」

 自分は読んだことないなとアゴに手を乗せた。

「まぁ、いいか。僕はまた今度、試せばいいし……」

「わ~~い、だから、スバル君好き♪」

 嬉しそうに手を上げ、スバルからバトルカードを貰った。

「じゃあ、いくね?」

「どうぞ」

 ハンターVGを取り出した。

「バトルカード! 『ミニマム』!」

 ハンターVGがバトルカードを読み込むとミソラの身体が光り輝き、姿を消した。

「ミソラちゃん!?」

「ここだよ、スバル君!」

「あ……?」

 足元でぴょんぴょんとジャンプするミソラにスバルはホッとした顔で腰をかがめた。

「とりあえず、小さくなることは成功みたいだね?」

 足元で小さくなったミソラの頭を指で撫でた。

「でも、なんだか、お人形さんみたいだね、今のミソラちゃん?」

「スバル君は巨人みたいだよ!」

「そっか」

 ニコッと笑い、手のひらの甲を床につけた。

「乗って」

「うん!」

 手のひらに乗るとスバルはミソラを落とさないよう、ゆっくり立ち上がった。

「服も小さくなるんだ?」

「スバル君のエッチ!」

「ご、ごめん!」

 真っ赤になって胸を隠すミソラにスバルも慌てて謝った。

「ちゃんと、服も小さくなるよう、調整しましたら、その点は大丈夫です!」

 誇らしげに胸を張る宇田海にスバルは心の中で舌打ちした。

「じゃあ、今日はその身体のまま、一日を過ごしてほしいんだ。一日経てば、元に戻るから、安心していいよ!」

「わかりました!」

 天地の言葉にミソラは元気良く、手を上げた。

「にしても、高いな~~……」

 スバルの手のひらから落ちないよう、四つん這いになり、遠くにある床を見た。

「ここから落ちたら、ただじゃ済まないだろうな?」

「そうならないように、気をつけないとね?」

 ミソラを実験室のテーブルの上に乗せるとスバルは冬用のコートを着た。

「よし、ゴミは入ってないな」

 胸のポケットの中身を確かめると、また、ミソラを手のひらに乗せた。

「はい!」

 胸のポケットの前に立たされ、ミソラは首をかしげた。

「なに?」

「僕の胸ポケットに入って! ポケットの中なら、落ちる心配もないでしょう?」

「そっか? スバル君のポケットに入るって、なんだか、違う意味でドキドキするね?」

 遠慮がちにポケットの中に入ると、ミソラは風呂に入ったような顔をした。

「あ~~……これは癖になりそう」

 気持ちの良さそうな顔をするミソラにスバルもクスッと笑った。

「どう、ポケットの中の感覚は?」

「スバル君の胸の心臓の鼓動が気持ちいいよ~~……」

「ミソラちゃん……」

 若干、呆れ気味に赤くなると天地が話を切り上げた。

「じゃあ、また、明日、来てくれ! その時に感想を聞かせてくれよな?」

「あ、はい!」

 

 

 コダマタウンまで戻るとミソラは感嘆の声を上げた。

「人がゴミのようだって表現があるけど、これは人が山のようだね?」

「ミソラちゃんサイズだと、全てが違って見えるでしょう?」

「うん! でも、スバル君のポケットの中、暖かいね? 一生、出たくないよ……」

「バカ言わない……」

 コツンと人差し指で小突かれ、ミソラは嬉しそうに笑った。

「ねぇ、スバル君! ちょっと、地面に下ろしてよ! 小さくなった身体で人がどう見えるか見てみたい!」

「はいはい……」

 周りに気をつけながらスバルはミソラをポケットの中から出し、地面に下ろした。

「うわぁぁぁぁぁ! これが巨人の世界か!?」

「普通のコダマタウンの世界だよ……」

 クックックッと苦笑した。

「にしても、すごい迫力だね、この視界は?」

 行きかう人々がまるで地震を起こす巨人に見え、ミソラは目をうるうる輝かせた。

「ねぇねぇ、スバル君、スバル君! 大きくなったら、二人で小さくなって暮らそよう! きっと、楽しいよ!」

「バカ言わないの! もう時間切れ……」

 ミソラの前に手のひらを見せた。

「危ないから、戻ろうね?」

「ぶぅ~~……」

 ミソラの顔がムクれ、渋々、スバルの手のひらに乗った。

「スバル君はロマンがないな……」

「変なロマンを求めて、ミソラちゃんを危険に会わせられないでしょう?」

「……」

 顔を赤く、ミソラはポケットの中に戻った。

 ぐぅ~~……

「あ……」

 ポケットの中でお腹を押さえ、ミソラはエヘヘとに笑った。

「スバル君、オヤツにしようよ!」

「オヤツね……だったら」

 通りがかったハンバーガーショップを見て、指差した。

「食べる?」

「うん!」

 

 

 トレイをテーブルに乗せるとミソラは感動に飛び上がった。

「夢に見た巨大ハンバーガー♪」

 目をキラキラさせ、ミソラは赤くなった頬を手で隠した。

「全部、食べきれるかな?」

「わけないでしょう! ミソラちゃんは、これだけね?」

「ぶぅ~~……」

 千切り渡されたハンバーガーを受け取り、ミソラはほっぺたを膨らませた。

「でも、これだけでも、すごい量……!」

「小さいと全てがお得な気分だね?」

「うん!」

 元気良く首を振り、ミソラは手に収まりきらないハンバーガーを食べた。

「むぅ~~~……♪」

 ミソラの顔が至福に変わった。

「小さくなると食べる味も食感も大きくなって、美味しさが二乗だよ!」

「おかわりいる?」

「うん!」

「ダ~~メ! 太るからね」

「スバル君のいじわる……」

 ハンバーガーを全部食べ終えるとミソラは満足したかのようにお腹をさすった。

「当分、ハンバーガーはいいや……」

「これだけ食べればね?」

 ちょっぴりポッコリしたミソラのお腹を見て、スバルは苦笑した。

 

 

 照り返す太陽にミソラはうなり声を上げた。

「あ、あつい……」

 太陽の輝きに耐え切れず、ミソラは広大な砂場に倒れた。

「み、水……」

「なにやってるの、ミソラちゃん?」

「砂漠で遭難ごっこ!」

 公園の砂場から顔を上げるとミソラは子供のように微笑んだ。

「不謹慎だから、やめなさい!」

 ミソラの身体を猫掴みのように持ち上げた。

「阿呆な遊びするなら、帰るよ?」

「ま、待ってよ! ちゃんと、食後の運動するから、まだ、公園にいさせてよ!」

 慌てて謝り、砂場に下ろしてもらった。

「今度はなにしてるの?」

 いきなり横になるミソラにスバルは怪訝そうに眉をひそめた。

「砂風呂ごっこ!」

 額に青筋が立った。

「帰ろう……!」

「ああ、今度こそ、本当に運動するから手伝ってよ!」

「仏の顔も三度までだからね?」

 怖い顔でミソラを見た。

「できるだけ、大きな砂山を作ってよ!」

「砂山? なにをするの?」

「そんなの決まってるよ!」

 えっへんと胸を張るミソラにスバルはため息を吐いた。

「大体、予想はつくけど、まぁ、ほどほどにね?」

 公園に備えられたバケツに水道水を入れ、砂場に戻った。

「なにしてるの?」

「砂山はちょっと水を加えながら作ると大きく頑丈な山が出来るんだ」

「へぇ~~……トリビアだね?」

「こんなので「へぇ」が貰えたら、「へぇ」の価値が下がるよ」

 そういい、スバルはミソラのために大きな砂山を作ってあげた。

「おし、出来た!」

「おお、これは絶景!」

 出来上がった砂山にミソラは勢い良く、準備体操を始めた。

「じゃあ、人類初の挑戦を始めよう!」

「大げさなこと言わなくっていいの」

「じゃあ、砂山登山開始!」

 砂山に足を踏み入れるとミソラは足場を確かめるようにパンパンと叩いた。

「意外としっかりしてるね?」

「ちゃんと作ったからね」

 満更でない顔をするスバルにミソラは意を決した顔で砂山を登り始めた。

「結構、足元崩れやすいな?」

 しっかり作られても、足場の悪い砂場に何度も足場を取られミソラはふぅと大きく息を吸った。

 普段から、レッスンで体力を作っているミソラでも砂山登山は堪えるようだ。

 砂山を半分、登った時点で休憩し、また登り始めた。

「スバル君、ちょっと、山を高くしすぎてない?」

「普通だよ」

「そうかな……よし!」

 頂上までたどり着くと、ミソラは高々と拳を振り上げた。

「砂山を征服したぞ~~~~~~!」

「よかったね、ミソラちゃん?」

「じゃあ、次は砂のお城に……!」

「帰るよ、ミソラちゃん……!」

「えぇ~~……いけずぅ!」

 

 

 家に帰るとスバルは机の上に古びた欠けた茶碗を置いた。

「よくこんなものがウチの家に置いてあったな?」

 目の前に置かれたポンコツ茶碗を見てスバルは呆れたため息を吐いた。

「で、これでどうするの?」

「そんなの決まってる!」

 ビシッと指差し、叫んだ。

「女の子の永遠の憧れ、牛乳風呂! 普段は勿体無いから、出来ないけど、この大きさなら、問題ないよね?」

「小さくっても問題あるよ! 母さんにバレたら、怒られるだろうから早く済ませるよ。後、なんで、牛乳風呂に欠けた茶碗が必要なの?」

「古今東西、小さな人間の入るお風呂は欠けた茶碗と相場で決まってるの! 紅茶のカップや水飲みコップなんて、邪道だよ!」

「牛乳風呂も邪道だと思うけど……深くは突っ込むまい」

「じゃあ、入れて入れて!」

「はいはい……」

 そっと、泡立たないよう、温まった牛乳を欠けた茶碗に入れるとミソラの顔が期待に染まった。

「某ネコ型ロボットのヒロインも夢中になった、あのお風呂がここに……」

「僕が君のお母さんなら、例え小さくっても、こんな暴挙、許さないだろうけどね……」

 牛乳を全て入れるとスバルはふぅとため息を吐いた。

「入ったよ……」

「よし、入ろう!」

「って、なに、いきなり脱いでるの、ミソラちゃん!?」

「え……?」

 パーカーを脱ぐと、ぷるんっと育ちかけの胸が揺れた。

「服着たまま、お風呂に入れないよ?」

「僕の前で脱がないでよ!」

「テレることないよ! 私たち、恋人なんだから!」

「そういう問題じゃないよ! ちょっと待ってて! 今、身体を隠すハンカチ探すから……!」

「スバル君のチキン野郎!」

「うるさい!」

 

 

「ああ~~……これが牛乳風呂か?」

 牛乳のお風呂に身を包まれながら、ミソラは嬉しそうに足をチャプチャプさせた。

「ちょっと臭いけど、牛乳風呂って、お肌にいいんだよ!」

「そ、そう……」

 背中を向けたまま、スバルは返事を返した。

 ミソラはクスクスと笑った。

「スバル君と一緒に入りたかったな、牛乳風呂♪」

「い、いつかね……」

「ねぇ、こっち向いて、いいだよ♪ 恋人同士なんだし、恥ずかしくないよ!」

「せ、節度は守らないと……」

「節度ね~~……」

 牛乳のお風呂に肩まで浸かり、ミソラは、そっと胸を撫でた。

(また、大きくなったんだよね。未来のためにちゃんと、お手入れしないと……クスクス♪)

 将来、赤くなって動揺するスバルの顔を想像し、ミソラは明るい気持ちになった。

 

 

 それから、ミソラは夜になるまで小さな身体を満喫した。

 テレビを見れば超大型テレビだと喜び。

「これは映画なんて目じゃないよ!」

 お風呂に入れば、潜水や水泳を楽しみ。

「ぷはぁ! こんな広くて深いプールを貸切なんて初めてだよ!」

 と、思いつく限りの遊びを堪能した。

 そして、時刻は夜……

「さて! 今日はこれくらいにして、明日、天地さん達に今日の報告しないとね?」

 ミソラのために用意した普通のサイズの布団をベッドの隣の床に敷いた。

 こうすれば、寝てる最中にバトルカードの効果が切れて、元の大きさに戻っても布団に包まれて暖かいと考えての行動だ。

 布団にシワがないことを確認すると、スバルはミソラの身体を丁寧に抱き、布団の中に寝かせつけた。

「そんな事しなくっても、一人で寝れるよ!」

「僕がしたいからしてるの。今のミソラちゃんだと、ついつい甘くなっちゃうんだよね?」

「なら、最後にお願いがあるんだけど……」

 唇を突き出すミソラにスバルは苦笑した。

「大きさが違うから、キスは出来ないよ」

「そっか……そうだよね?」

 残念そうな顔をするミソラにスバルも少し残念そうに立ち上がり、部屋の電気を消した。

「おやすみ、ミソラちゃん」

「おやすみ、スバル君……」

 スバルがベッドに入るのを確認するとミソラも目を瞑った。

「……」

「…………」

「………………」

「……………………」

「…………………………」

「………………………………」

「……………………………………スバル君、起きてる?」

「すぅ~~……」

 静かな寝息が返り、ミソラは布団から出た。

「寝てるな……よし!」

 拳を握り締め、ミソラはスバルのベッドをまるでロッククライムしてるように登り始めた。

 二、三回、本気で落ちかけ、軽く、死の恐怖を味わったが……

「疲れた」

 ベッドまで這い上がるとミソラは荒い息を吐き、柔らかいクッションに座りこんだ。

「よし!」

 体力を取り戻したのか、ミソラはもう一度立ち上がり、トテトテとスバルの顔の前まで近づいた。

「……可愛い寝顔♪」

 眠っているスバルの顔をジッと見つめ、ポッと頬を染めた。

「唇はムリでも、ここなら、出来るよ!」

 チュッと頬にキスをした。

「おやすみ、スバル君……」

 スバルの隣に潜り込みミソラも幸せそうに眠り込んだ。

 

 

 次の日……

「あれ……? なんだろう、この気持ちのいい感触は?」

 スベスベで暖かくって、柔らかくって、どこかいい匂いのするこの物体にスバルは心をときめかせた。

「なんだか、ミソラちゃんみたいだな……テッ!?」

 目を開けるとスバルはビックリした。

「なんで、ミソラちゃんが僕のベッドで眠ってるの!?」

 良く見ると今のミソラは一糸纏わぬ全裸だった。

「ベッドの中でパジャマが破けてる……」

 無残な形で千切れ散らかっているミソラのパジャマにスバルはハッとした。

「そっか、パジャマは小さくしたんじゃなく、元から小さいから、ミソラちゃんの体格に合わさず千切れたんだ」

「うぅ……うるさい!」

 ギュッと裸のままスバルに抱きつき、唇にキスをした。

「ッッッッ!?」

 言葉を失うスバルにミソラはまた、幸せそうに離れ、眠りに入った。

「おやすみなさい……♪」

「ッ!?」

 離れた瞬間、胸のピンク色のポッチが見え、スバルは鼻を押さえた。

(起きたら、どう説明しよう?)

 といいながらも、ミソラの裸体から香る女の子の匂いにスバルは胸をドキドキさせた。

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