流星のメモリアル   作:スーサン

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風邪に特効薬

「るんるん♪」

 コダマタウンに到着するとミソラ早足でスバルの家へと向かった。

 足取りが軽く、自然と鼻歌も気持ちよく歌えた。

「今日は特別な日~~♪」

 華麗にターンしながら足を止めるとミソラは快活とした声で叫んだ。

「す~~ば~~る~~く~~ん! あ~~そ~~ぼ♪」

「あ、ミソラちゃん……!」

 家のドアが開くとスバルの母、あかねがミソラを迎え入れた。

「いらっしゃい!」

「スバル君に渡すものを渡しに来ました!」

 ビシッと手を上げるミソラにあかねも嬉しそうに笑った。

「ありがとう! あの子も喜ぶと思うけど……」

 ミソラを一旦、家に入れると、あかねは困った顔で頬に手をついた。

「実はあの子、今日、風邪をひいてるのよ……」

「またですか!?」

「またなの……」

 どうしようもない息子を持った親の顔をするあかねにミソラも呆れた。

「風邪をひきやすい体質なのか……それとも、風邪に好かれやすい体質なのか……それとも両方か? どっちにしても、面倒を見るほうも疲れるわ……」

 チラチラとミソラを見た。

 ミソラもあかねのチラチラに気付き、得意げに胸を張った。

「私に任せてください!」

「そういってくれると思ったわ!」

 嬉しそうに手を叩き、あかねはどこから取り出したのか純白のナース服を取り出した。

「これって……?」

「たまには趣向を凝らさないとね?」

「うわぁ~~……!」

 目をキラキラさせ、ミソラはナース服を受け取った。

「ありがとうございます!」

 

 

「あ~~……喉が痛い、頭が痛い、水が飲みたい」

「はい、これ、水……!」

「あ、これはどうも……って!?」

 ビックリした顔でベッドから起き上がった。

「ミソラちゃん、いつの間に家に入ったの!?」

「ついさっきだよ! 気付いてなかったんだね?」

 ちょっと寂しそうにミソラは顔を伏せた。

「ご、ごめん! 風邪で頭が回らなくって……でも」

 ミソラの格好を見た。

「なんで、そんな格好してるの!?」

「えへへ……可愛いでしょう?」

 クルリとターンをし、ナース服を見せた。

「なんだか、見たことないナース服だけど、気に入っちゃった♪」

「それはミソラちゃんが着ちゃいけないタイプの服だと思うけど……」

「着ちゃいけないタイプの服?」

 そういい、ミソラは自分の格好を見た。

 ノースリーブで胸元はハート型に割れ、僅かに出来た谷間が色気を誘い、絶対領域のミニスカは男の欲情を誘った。

 どう見てもあっち系のナース服であった。

「でも、私が慕ってる先輩はこういうのも着る日が来るかもって言ってたよ?」

「……その時はアイドルを辞めて、僕のところに来てね?」

「よくわかんないけど、わかった!」

 元気良く返事をするミソラにスバルは重いため息を吐いた。

(本当にわかってるのかね?)

 スバルのため息にミソラは不思議そうに首をかしげた。

(スバル君、さっきまで真っ赤だったのに、今度は真っ青だな? やっぱり、風邪の調子よくないんだな)

「今日はミソラちゃんと遊んであげること出来ないんだ……悪いけど、帰ってくれないかな?」

「なにいってるの!」

 ガッと怒鳴られ、スバルは倒れそうになった。

「スバル君が苦しんでるときこそ、恋人の私が一緒にいなくってどうするの!?」

「ミ、ミソラちゃん……」

 風邪のせいで、ちょっとだけ涙もろくなったのか、スバルは嬉しそうに目頭を押さえた。

「じゃあ、お願いしていいかな……その……」

 言い難そうに顔を赤らめた。

「汗をかいたから拭ってくれないかな……身体を?」

「あ、う、うん、いいよ!」

 ミソラもちょっと恥ずかしそうに頷いた。

 用意してあった洗面器から濡らしたタオルを取り出した。

「じゃあ、起き上がらせるね?」

 スバルのパジャマを脱がせるとミソラはゴクリと喉を鳴らした。

(いい身体……)

 小学生の肉体とは思えないしっかりした、いい身体つきにミソラは惚れ惚れとした。

(これって、鍛えてるというよりも生まれつきの肉体の柔軟さなんだろうな?)

 濡らしたタオルを手に取るとミソラはすぅと息を吸った。

「じゃあ、行くね?」

「う、うん」

 肌を軽く擦るように汗を拭うとミソラはえへへと笑った。

「なんだか、夫婦みたいだね、こうしてると?」

「実は昨日からお風呂に入ってないんだ……臭かったら、やめていいからね?」

「そんなことないよ!」

 スバルの裸の胸に顔を近づけ、そっと匂いをかいだ。

「男らしいいい匂いだよ……スバル君の優しい気持ちが伝わってくる感じで」

「ミ、ミソラちゃん……」

 テレたように笑うスバルにミソラも慌てて鼻を離した。

「あ、汗を拭かないとね? 手を上げて! 腕のほうも拭いてあげたいから!」

「あ、う、うん……」

 腕を上げると、ミソラは手馴れた感じで汗を拭った。

「ミソラちゃん、汗、拭うのうまいね?」

「えへへ……こう見えても杵柄は多いんだよ! ドラマ関係で取得したスキルだけどね? はい、終わり!」

 拭い終わったタオルを洗面台に戻すとパジャマを着せてあげた。

「だいぶ綺麗になったね?」

「うん……それと悪いけど、薬の時間だから、薬を取ってくれないかな?」

「うん! 机の上だよね?」

 部屋に降りるための階段を降り机の上に置いてあった薬を見つけた。

「これだよね?」

「うん、それ」

 薬を持って帰ると、ミソラは錠剤を落とさないよう袋を破り、スバルに手渡した。

「はい、お水! ゆっくり飲んでね?」

「うん……」

 薬を飲むと安心した顔で横になった。

「じゃあ、もう寝るね? ミソラちゃん、世話してもらってなんだけど、もう帰っていいよ。風邪伝染っちゃ、申し訳ないから……」

「寝るまで一緒にいるよ……手を繋いであげるからさ?」

 ギュッと手を握るとミソラは勇気を分けるように微笑んだ。

「苦しい時こそ、一緒にいるべきでしょう?」

「ミ、ミソラちゃん……ありがとう」

 スバルも風邪で少し心細かったのか嬉しそうに微笑んだ。

「……」

 スバルが目を瞑るのを確認するとミソラも心を落ち着けるように息を吸った。

「~~~~♪」

 ミソラの唇から優しいリズムの歌が流れた。

 聴いたことのない歌だった。

 恐らくミソラが即興で作った子守唄だろう。

 でも、優しい歌だった。

 不思議と心が安らぎ、眠気を誘った。

「スバル君……?」

「すぅ~~……」

 寝息を返すスバルにミソラもホッとした顔で手を離した。

「おやすみ、スバル君」

 チュッとキスをした。

 

 

 部屋を出るとミソラはナースキャップを外し、下の階に置いてあったバレンタインチョコを見た。

「はぁ~~……これじゃあ、チョコを食べれないよね?」

 チョコなんてクドイものを早々食べたいわけないだろうし、どうしようかとミソラは悩んだ。

「クドくなかったらいいのかな?」

 ミソラは恐る恐る星河家のキッチンを借り、作ったバレンタインチョコを包丁で細かく刻んだ。

「これをレンジで溶かして……」

 油分とチョコが分離しないよう、気をつけて溶かすと今度は冷蔵庫に入っていた飲み水を適当にチョコに流し込み、砂糖を加えた。

「後は適当に混ぜて、こんなものかな?」

 軽く味見をし、適度な水気を感じると冷蔵庫に溶かしたチョコを入れた。

「後は冷めるのを待つだけか?」

 

 

「うん? もう、夜か?」

 目を覚ますと思った以上に快調な寝覚めだった。

「風邪は……」

 額に手を乗せると大して熱くなかった。

「熱は冷めたみたいだな?」

 スッカリ痛くなくなった頭にスバルは寂しそうに部屋を見た。

「ミソラちゃん、帰ったのか……」

 自分で帰れといいながら、いざ、帰られると寂しくなるのか、なんとも複雑な男心をスバルは見せた。

「あ、スバル君、起きたんだ?」

 ガチャッと部屋のドアが開くとスバルはビックリした。

「ミソラちゃん!? 帰ってなかったの!? しかも、まだ、そんなエロ……じゃなく、ナース服の格好して!?」

「そんな事よりも、スバル君、今日は何の日かわかる?」

「今日?」

 ハンターVGを取り出し、日付を確かめた。

「二月十四日……あ、今日はバレンタインか?」

「そういうこと!」

 ニコッと笑った。

「それで、スバル君にプレゼントを用意したんだ! はい、バレンタインフォーユー♪」

 コップに注がれたチョコレートの液体を見てスバルは首をかしげた。

「チョコを溶かしてフォンデュみたいにしたんだ?」

「これなら、食べれるかなと思ったんだ。少し、水気を多くしたからサッパリしてると思うよ!」

「ありがとう……美味しく貰うよ」

 チョコレートのジュースを貰うとスバルはゴクゴクと飲みだした。

「ど、どう、スバル君?」

「うん!」

 ジュースを全部飲み、ニコッと笑った。

「とっても、美味しいよ!」

「本当! 思いつきで作ったけど、口にあってよかった!」

「思い付きね……」

 心の中で苦笑いした。

(だから、微妙な味なんだな?)

 踊るように自作チョコレートの出来を喜ぶミソラにスバルはこれが恋人生活の我慢かと小学生で悟った。

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