流星のメモリアル   作:スーサン

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彼の消える日【前編】

「はぁ~~……」

 ふらふらの状態のまま、ミソラはベッドに倒れこんだ。

「つかれた……」

 ポツリと愚痴がこぼれ、ゴロンッと仰向けになった。

「この数日間ずっと、働きづめだよ……スバル君とだって、まともに話してない」

≪今世紀最大級の仕事量だもんね?≫

「……やすみたい」

 ここ数日間の仕事量を思い出し、ミソラはまた憂鬱な気持ちになった。

「スバル君とお話したいな……」

 仰向けになったまま、ミソラは目を瞑った。

「……明日も仕事だから休まないといけないけど」

 ハンターVGを手に取った。

「少しくらいなら、いいよね?」

 ポップアウトを押し、スバルに電話をかけた。

 プルルルルルル♪

『はい、もしもし』

「あ、スバル君! 私、私!」

『あ、ミソラちゃん……寝てなくって大丈夫なの?』

「え……?」

『仕事、忙しいんでしょう? だったら、ボクと話すよりも一秒でも長く寝るほうが……』

 ミソラの顔が暗くなった。

「スバル君は私と話したくないの?」

『え……そんなことないけ』

「一週間振りの会話なんだよ! それがなんで第一声が「寝なくって大丈夫?」なの!? スバル君は私と話したくないの!?」

『い、いや、そんなことないよ! ボクだってミソラちゃんと』

「嘘だ! だったら、なんで、スバル君から電話くれなかったの!?」

『そ、それはミソラちゃんが忙しいだろうから、邪魔しないようにと……』

「言い訳なんか聞きたくないよ! 私と一緒にいるの嫌なら、そういえばいいでしょう!」

『ミソラちゃん……疲れてるよ。少し、落ち着いて』

「私は十分、落ち着いてるよ! スバル君が私のこと考えてくれないから、怒ってるんだよ!」

 目から涙がにじんだ。

「今日だって、嫌な先輩に頭を下げて、仕事場の雰囲気を盛り上げて……スバル君に私の気持ちなんかわかるわけないよ!」

『……ごめん』

「そうやって、謝れば済むと思ってるんでしょう! 私のことなんかどうでもいんでしょう、そうでしょう!」

『……』

「なんで黙ってるの!? なにか言ってよ!」

『……』

 なにも言わず黙っているスバルにミソラは気に食わない顔で怒鳴った。

「もういいよ! 私とスバル君は今日から赤の他人だ! 二度と私の前に現れないで!」

 ピッと電話を切った。

「うわぁぁあぁああ!」

 大声で泣き出すミソラにハンターVGの中のハープは呆れたようにため息を吐いた。

 

 

「あれ……?」

 いつの間にか目を覚ますとミソラはベッドから起き上がった。

「寝ちゃってたんだ?」

 ふわぁとあくびをし、寝癖のついた頭を押さえた。

「シャワー浴びないと……うん?」

 机の上に置いてあった写真立てを見て、首をかしげた。

「なんで、私一人しか写ってない写真を飾ってるんだろう?」

 写真を隠すように倒した。

「さて、今日は地方特集の仕事だっけ……頑張ろう!」

 パシンッと両頬を叩き、ミソラはガッツポーズをとった。

 

 

「コダマタウン?」

 車の中でミソラはビックリした顔をした。

「そう! あのロックマンが出たと噂される謎の町! ミソラちゃん、知ってる?」

「うん! 友達がいる町だから」

「へぇ~~……じゃあ、休み時間空けておくから、逢ってくるといいよ!」

「うん!」

 マネージャーの粋な計らいにミソラはここ最近の疲れが取れた顔で満面の笑みを浮かべた。

 

 

 コダマタウンの公園に着くとミソラはそこで待っていた少女に手を振った。

「ルナちゃ~~ん! お待たせ!」

「あ、ミソラちゃん、待ったわよ!」

 公園で待っていたルナはちょっと怒った顔で微笑んだ。

「思ったよりも打ち合わせに時間がかかっちゃって! ゴン太くんにキザマロくんも久しぶり!」

「久しぶり、ミソラちゃん!」

「お久しぶりです、ミソラちゃん!」

 元気に挨拶を返すゴン太とキザマロにミソラも嬉しくなって微笑んだ。

「じゃあ、なにして話そうか?」

「あ、待って! 今日は私たちの他にもう一人、友達を呼んでるから!」

「友達?」

「ええ! 星ばっかり見てる星マニアよ!」

「委員長、その言葉が適切じゃありません! スバル君は宇宙が好きな宇宙マニアです!」

「ついでに科学関係も好きだよな! 俗に言うオタクって奴じゃね?」

「ゴン太! 人の彼氏を悪く言わない!」

「ご、ごめんよ、委員長……」

「スバル君?」

 どこか懐かしい響きのする名前にミソラは首をかしげた。

「ご、ごめん! 遅くなった!」

「おっそい!」

「ひぃ!」

 ドンッと叱られ、スバルと呼ばれた少年は怯えた顔で謝りだした。

「ご、ごめん……委員長の親友にあわせてくれるっていうから、彼氏として面目が立つようにオシャレしてたら時間がかかって」

「どこがオシャレなの?」

「見てわからない? この上着、いつも着てる上着よりも朱色の鮮やかさが違うんだよ!」

「わからないわよ!」

「そっか……あ、ごめん、君が響ミソラちゃん?」

「え……あ、はい!」

 なぜか初めて会う少年にミソラは緊張した。

「初めまして! 星河スバルです。えっと……委員長じゃなく、ルナの彼氏をやってます」

「彼氏……?」

 心がズキッと痛んだ。

「でも、押しの弱いスバル君が気の強い委員長とくっつくなんてボクは思いませんでしたよ」

「俺、しばらく、悔しくって寝れなかったけどな」

「二人ともからかわないでよ」

 ハハッとテレるスバルにルナも恥ずかしそうに二人を睨んだ。

「アンタ達、後で覚えておきなさいよ!」

 ミソラの声が震えた。

「あ、あの……君、ルナちゃんと付き合ってるの?」

「あ、うん。委員長とは少し因縁浅からぬ仲でね。まぁ、最高のブラザーかな?」

「ブラザー」

 馴れ馴れしくルナの肩に手をかけるスバルにミソラは心がどうしようもなく痛くなった。

 初めて会うはずの少年なのに、どうも初めて会った気がしなかった。

 ずっと昔から……

 それもとても大切な存在として知ってた気がした。

 でも、思い出せず、胸が針で刺されたように痛かった。

「さっきから、呆けてばっかいるけど、ボクの顔になにかついてる?」

「え、あ、い、いや……別に」

 慌てて顔を背けるミソラにルナの肘鉄がスバルの鳩尾に食い込んだ。

「ぐえぇ……!?」

「アンタ、ミソラちゃんになにかしたでしょう!」

「な、なにもしてないよ! 会うのだって、今日が初めてだし」

「今日が初めて!?」

 ミソラの心の中に大切な人から裏切られたようなショックを受けた。

「今日が初めて……私とスバル君は初対面」

「どうしたの、ミソラちゃん?」

「うそ……だ……」

「ミソラちゃん!?」

 倒れだすミソラの身体を支え、スバルは大声で叫んだ。

「委員長、今すぐ病院に連絡して!」

「わ、わかった!」

 ハンターVGを取り出し、ポップアウトを開いた。

 

 

「あれ……?」

 目を覚ますとミソラはムクリと起き上がった。

≪ミソラ、起きた?≫

「ハープ、おはよう……」

 目をこすり、今朝見た夢を思い出し、寝起きの涙をぬぐった。

(私とスバル君があったことのない世界か……)

 かつてスバルのいない世界を思い出し、胸が締め付けられるよう思いをした。

≪ミソラ。スバル君から、メールが着たわよ≫

「……消しておいて」

≪無神経なこといって、ゴメンだって……≫

「人のメール勝手に読まないでよ!」

 ヒステリーを起こしたように怒鳴り散らしミソラは肩で息をした。

≪ミソラ、意地を張ってると取り返しのつかないことになるわよ≫

「ことになるんじゃなく、私達はもう別れたの! スバル君と私は赤の他人! ホカッといて!」

≪ミソラ!?≫

 ハンターVGを机の上に置き、顔を洗いに行くミソラにハープは慌てて実体化した。

≪ちょっと、話を聞きなさい、ミソラ……え?≫

 机の写真立てを見て、ハープは絶句した。

「なにこれ……?」

 僅かであるが一瞬、スバルの姿が霞むように消え、ハープの水色の顔が青ざめた。

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