久しぶりの休日を迎えられ、ミソラ、前から約束していた、紅葉狩りをスバルと楽しんでいた。
「……落ち葉が綺麗だね」
「うん。そうだね」
ゆらゆらと舞い落ちる赤い葉にスバルはクスッと微笑んだ。
「こうやって、四季を感じられるのは日本ならではの楽しみだね」
「うん……最初は紅葉を見て、飽きないかなと思ったけど、案外、惚れ惚れとするものだね」
「そうだね」
ニッコリ微笑むスバルにミソラは少しだけ、恥ずかしくなり頬を赤らめてしまった。
秋になると感傷的になるとよくいうが、ミソラは今日ほど、その言葉が本当だと思ったことはなかった。
あの時、FM星人が地球を侵略にやってきたあの日。
ミソラは金を生む木としか考えていなかったマネージャーに歌を汚されたくなく、その心をハープに取り付かれ、ハープ・ノートになった。
一時は自暴自棄になり、自分の殻に閉じこもったこともあったが、それを救ってくれたのが、ロックマンになった、スバルであった。
あの事件後、アイドルを引退したが、みんなの応援もあり、新しい歌を作りたく、アイドルに復帰した。
最新曲の「シューティング・スター」は堂々のオリコン上位に入り、名実ともにミソラは、実力派アイドルとして、人々の人気を集めることとなった。
でも、一番、人気を集めたいのは、たった一人の少年の存在だった。
「うん……どうかした、ミソラちゃん」
「あ……いや、別に」
いつの間にか、スバルをジッと見つめていたミソラは慌てて、スバルから視線を離し、また、紅葉を眺めることにした。
「にしても、風が気持ちいいね。スッカリ、涼しくなって、これが秋って、感じだね」
「うん……秋は色んなことができる時期だからね。勉強の秋にスポーツの秋、読書の秋に食欲の秋……」
「そうそう……子供はたくさん食わないとね」
「え……」
ビシッと横から棒に刺さったヤキイモを見せ付けられ、スバルとミソラはお互いに森林の上で焚き火をしている老人を見た。
「あ、あの……」
「デートかい、お若いの」
「あ、いえ……これは!?」
慌てて言い訳を探そうとする二人に老人は見せ付けていたヤキイモを綺麗に半分こし、二人に差し出した。
「ふっくらしてうまいぞ」
「あ、ありがとうございます」
渡されたヤキイモの熱さに手のひらでキャッチボールをするスバルとミソラに、老人は、横に座りなさいと愛嬌のある笑みを浮かべ、二人に指示した。
「……」
二人は少し遠慮がちに焚き火の近くに座り、ホゥと息を吐いた。
「秋の焚き火っていうのも、風情があるね」
「秋葉は燃えやすいからね……」
焚き火を見ながら、ヤキイモを食べると二人は目を見開き、ニッコリ微笑んだ。
「おいしいね、このヤキイモ。ねぇ、ミソラちゃん」
「うん! 掘れたての味って感じだね……おじさん、このヤキイモ、どこで手に入れたの」
おいしそうに焼き芋を食べる二人に老人は嬉しそうに頷いた。
「親戚が送ってくれたものでの……一人じゃ食いきれんから、ここを通る若者にわけて渡してるんじゃよ……そういえば、さっきも、やたら大きな小学生がワシのヤキイモを三個もペロリと食べて去っていったの」
「ゴン太だ……」
友人の奇行に顔を赤らめるスバルにミソラはどうかしたのと首をかしげた。
「なんでもないよ……でも、秋の空に紅葉、そして冷たい風にさらされヤキイモを食べるって、本当に幸せなことだよね」
「うん……」
お互い顔を見つめあい、ふふっと微笑みあう二人にパシャッと光が落ちた。
「え……」
「ふふ……いい写真が取れた。二人とも、メアドを教えてくれんかの」
「え……あ、はい」
慌てて、メアドを教えると老人は慣れた手つきで二人に写メールを送り、二人に見るよう指示した。
「あ……」
「う……」
ミソラとスバルはお互い恥ずかしそうに項垂れ、送られた写真を見た。
幸せそうにヤキイモを食べて微笑むその写真は、幸福という言葉を、そのまま、目で体現したような綺麗な一枚であった。
「ワシの密かな趣味での、幸せそうな人たちを写真で撮るのが、ライフワークなのじゃ」
「お、お爺さん……いくらなんでも、冗談でもヤリすぎだよ」
「気に入らなかったかえ」
「うっ……」
言葉を失い、顔を赤らめるスバルにミソラはコッソリ、さっきの写真を携帯電話の待ち受け画面に設定した。
しばらくして、老人と話す内容をなくすとスバルとミソラは名残惜しそうに老人と別れ、不思議がっていた。
「何者だったんだろう、あの人」
「さぁ……でも、いい人みたいだったし。ほら、お土産におイモ、貰ったし」
「ミソラちゃん、ヤキイモ、大好きなんだね」
「甘いものが嫌いな女の子はいないよ、スバル君」
「ふふ……」
楽しそうに微笑むスバルにミソラも嬉しそうに微笑み、笑いあった。
次の日、ミソラは仕事に行く前に軽く新聞を広げ、目を見開いた。
『え……天才写真家、日本に帰国、若い可愛いカップルの話に花が咲く』
「……これって、昨日のお爺さんだ。写真家だったんだね」
よく見ると、新聞の記事に、自分たちを写した写真が飾られており、ミソラは恥ずかしそうに顔を赤らめた。