「夏だ! 太陽だ! 海だぁぁぁぁぁぁぁ!」
ザッパァ~~~ンと波が打ち、ミソラは青い空に向かって両手を広げた。
「一年ぶりの海だぁぁぁぁぁ! おっよぐぞぉぉぉぉぉ!」
「ミソラちゃん! 泳ぐ前に準備体操しないと!」
「えぇ~~……すぐに泳ごうよ?」
「準備体操せずに溺れたらどうするの? 前に溺れたことがあったでしょう?」
「はぁ~~い……覚えてますよぉ……たく、うるさいな」
唇を尖らせながら、ミソラは渋々、準備体操を始めた。
「おいちにいさんし! おいにいさんし!」
「おいち……にい……さんし……」
元気よく準備体操を始めるミソラに対して、スバルは苦しそうに身体を曲げていた。
「スバル君、身体固いね?」
「じゅ、準備体操は身体を温める体操だから、身体が固くってもいいの!」
「言い訳言い訳♪」
「くそぉ……」
悔しそうに顔を赤らめた。
「よし! 準備体操終わり! 早速、およ……」
『ただいまより、ミス渚コンテストの受付を行います!』
「ミスコン!」
スバルの手を引っ張った。
「面白そう! 参加しよう、スバル君!」
「ちょ、泳ぎは!?」
「そんなの後々! 泳ぎなんて、いつでも出来るんだから!」
「フリーダム過ぎるよ、ミソラちゃん!」
『え~~……続きまして! エントリーナンバー五番、渚イチコさん、どうぞ!』
「どうもどうも♪」
両手を大げさに挙げ、満面の笑顔を浮かべ現れた美少女に観客が沸いた。
「どうも、偽りの美少女、渚イチコちゃんです! ただいまより、渚ちゃんのちょっと寒い手品をしたいと思います!」
独特のテンションで踊るとパンッと手を合わせた。
「このなにもない両手から……」
手を離すとなにも無い手のひらから、シルクハットの帽子と手品に使うステッキが現れた。
「どうです? すごいでしょう? 百斤屋で三百円で売ってました!」
トントンッと帽子を叩いた。
「さぁ、鳩ちゃん、GOGO! あれ?」
鳩の出ない帽子にイチコは不思議そうに帽子を覗いた。
「なんで、鳩が出ないの? 不良品、つかまされたかな? ギャァァァァァ!?」
帽子の中から鉄砲雨のような塩水が飛び出し、イチコをびしょ濡れにした。
「ちょ、シルクちゃん! ここは塩水じゃなく、鳩でしょ!? もっかいやるから、今度はちゃんと、鳩を出してね!?」
ポンッと飛び出した。
「そうそう、このハート型のチョコが……って、べた過ぎるわ!? ギャァァァァァァ!?」
また、塩水に襲われ、イチコは倒れこんだ。
「やるじゃない……」
帽子を投げ飛ばした。
「そっちがその気なら……って!?」
投げ飛ばされた帽子が攻撃し返すようにイチコのお腹を直撃しイチコを吹き飛ばした。
「おぼえてろよぉぉぉぉぉぉ……!?」
ステージの奥へと吹っ飛ばされたイチコに司会の男は苦笑いし、マイクに口を近づけた。。
『え、えぇっと……渚イチコさんでした』
爆笑する観客にステージ裏に構えていたミソラは悔しそうに拳を握り締めた。
「これは強敵かも!」
「ミソラちゃん、それよりも、この手って、許されるの?」
「スバル君! 私達はなんのためにここにきたの!? 勝つためでしょう!」
「いや、泳ぎにきたんだけど……」
「寝言を言うな!」
目を燃やしミソラは気合を溢れさせた。
スバルは諦めた顔でため息を吐いた。
(本当、ノリのいいこと好きなんだから)
『続きまして、エントリーナンバー六番! 響夜(きょうや)ミカミさんです!』
「どうも~~~!」
スバルを引き連れ現れたミソラに耳打ちした。
(なに、響夜ミカミって?)
(偽名だよ! 本名出すと参加できないし)
(いいのかな、これって……)
(いいから、構える!)
(はいはい……)
ベースを構えた。
「練習はちゃんとしてるよね?」
「一応……毎日三十分」
「じゃあ、十分だね? 失敗したら、スバル君が全部悪いから!」
「はいはい……」
「じゃあ、行くよ!」
ギター鳴らし、指を天に突き立てた。
「スターコード・ロックバスター♪」
ギターが鳴り響き、スバルも続くようにベースを弾きだした。
「変わる流星♪ 黒い宇宙(そら)♪ 星が輝く♪
私と君は出会った♪
闇に溶かされた私は君を傷つける♪
君は私を受け止めてくれた♪ 私はその心に助けられた♪
ぶつかる流星♪ 私と君は一つになる♪
君と私は初めてのブラザー♪」
カ~~~ン……
「え……?」
歌を止められ、ミソラは審査員達に抗議した。
「ちょっと、まだ、曲は終わってないよ!?」
「響夜ミカミさん、これはミスコンですよ? 男性の方の介入はルール違反です!」
「えぇぇぇぇぇ!?」
浜茶屋でラーメンをすすりながら、ミソラは悔しそうに泣いた。
「まったく、審査員は別ってないよ! せっかく、二人で作った曲なのにこんな終わり方なんて、あんまりだよね?」
「いや、妥当な線だと思うよ。ギリギリまでボクの参加、言わなかったんでしょう?」
「言ったら、参加させてもらえないと思って……」
「自業自得だよ。それに失格しなくっても、今回のミスコンは渚さんの優勝で決まりだっただろうし?」
「アンコールの嵐、すごかったもんね?」
アンコールに応えて手品を披露したイチコを思い出し、ミソラはクスッと笑った。
「今年はレベルが高かったね?」
「ボク達はレベル以前の問題だったけどね……あ、ミソラちゃん、ジッとして?」
「え……なに?」
頬についたナルトを手に取った。
「もう、慌てて食べすぎ!」
「えへへ……恥ずかしいな」
「はい、ミソラちゃん」
パクッとナルトを食べさせてもらい、ミソラは顔を綻ばせた。
「スバル君、チャーシューいる?」
「うん、欲しい!」
「あげない♪」
箸に取ったチャーシューを口入れた。
「でも。浜茶屋のラーメンって、微妙な味だよね? なんだか、伸びてるみたい」
「そう?」
ジュルンッと麺をすすった。
「ミソラちゃんのラーメンを食べてるみたいでおいしいよ」
「私のラーメン……」
自分の料理が浜茶屋レベルと同じだと言われ、ミソラはショックを受けた。