流星のメモリアル   作:スーサン

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金の環の指輪

「ふわぁ~~……疲れた……」

 バフゥとベッドに倒れむとミソラは全身の力が抜ける錯覚を覚えた。

 ここ最近、ミソラの仕事は激務であった。

 早朝五時起床の夜零時帰宅などザラにあった。

 労働基準法違反もはなはだしい仕事量にさすがのミソラも精神も身体も限界を超えていた。

 明日は久しぶりのオフ(お休み)。

 今後の仕事の英気も考え、グッスリ眠り、起きたらスバルを誘拐してデートを楽しもうかと考えていた。

 意識が遠くなりかけた。

 遠くから声が聞こえてきた。

「ミソラちゃん! 起きて~~~~!」

「わぁッ!?」

 起き上がった。

「スバル君? どうしたの、こんな夜中に?」

「もう、朝だよ!」

「え?」

 時計を見た。

 確か時計は朝の六時を指していた。

 どうやら、眠ったことにも気付かないくらい深く眠っていたらしい。

 それでも休日の(といっても、世間では学校や会社のある平日だが)時間に起きるのは早すぎる時間だった。

 ミソラは寝起きの最悪な顔でスバルを睨んだ。

「悪いけど、私、眠いから……遊ぶならあとで」

「外に出るよ!」

「ほへぇ?」

 有無を言わさず、アパートの外へと放り出されるとミソラは眠たい目をこすった。

「どうしたの、スバル君? 今日はえらく興奮してるけど?」

「ミソラちゃん、今日はなんの日か知ってる?」

「月曜で特にイベントはないと思うけど?」

「もう、ミソラちゃんは!」

 バシッとミソラの目にサングラスのようなメガネをかけさせた。

「え、なに、いきなり? なんで、こんなサングラスをかけさせるの?」

「それはサングラスじゃないよ。太陽を見て!」

「太陽って……人の目を潰す気?」

「いいから早く!」

「はいはい……」

 しぶしぶ顔を上げ、太陽を見た。

 ビックリした。

「日食だ……?」

 月のように欠けだす太陽の光を見て、ミソラは感嘆した。

「今日は金環日食の日なんだ! ちなみにそれは太陽の光から目を守ってくれる日食メガネ!」

「金環日食? ただの皆既日食じゃないの?」

「すぐにわかるよ」

「……?」

 首をかしげ、太陽を眺めた。

 徐々に飲み込まれていく太陽の光にミソラは不思議とワクワクした。

(考えてみれば、私、日食なんて初めて見た)

 太陽が月に飲み込まれると、ミソラは仰天した。

「太陽が綺麗な輪っかになった!」

 指輪のように綺麗な輪っかになった太陽の光にミソラは言葉を失った。

「金環日食っていうのは、太陽に綺麗な輪っかを作ることで、日本じゃ貴重な体験なんだよ!」

 スバルの説明も聞こえてこないのかミソラはウットリした顔で微笑んだ。

「あ、太陽が欠けだした」

 三日月形になっていく太陽にミソラはガッカリした。

「金環日食は一瞬しか見れないからね」

「一瞬の奇跡だったね?」

 メガネを外した。

「うわぁ……まぶしい!」

「太陽を見ながらメガネを外すからだよ」

 呆れたようにスバルも日食メガネを外した。

「どう? 叩き起こされただけの価値はあったでしょう?」

「うん! スッカリ、目が覚めちゃった! ありがとう、スバル君!」

 照れくさそうにスバルは人差し指で鼻の頭をかいた。

「実はもう一つおまけがあるんだ」

「おまけ?」

 ミソラの左手を握った。

「ス、スバル君?」

 手を握られミソラは真っ赤になった。

「はい、プレゼント」

 薬指に指輪がはめられた。

「これって?」

「おもちゃ屋で売ってたんだ。『金環日食指輪』っていって、記念品なんだよ!」

「金環日食指輪か?」

 ただの金メッキを張っただけのおもちゃの指輪だが、不思議と嬉しい気持ちになった。

(スバル君が私に指輪なんて……なんだか、アレみたい)

 ふふっと微笑み、ミソラはスバルの唇にキスをした。

(ミソラちゃん)

 スバルの唇を舐めるように舌でなぶり、離した。

「……」

 唇から唾液の糸ができ、ぷつんっと切れた。

「本当にありがとう、スバル君!」

「うん」

 ニッコリ笑うとスバルはミソラをお姫様抱っこした。

「ス、スバル君?」

 いきなり、お姫様抱っこをされ、ミソラは真っ赤になった。

「眠たいんでしょう? ベッドまで運んであげるよ」

「キ、キザだね、スバル君は……」

「知らなかった?」

「うぅん! じゃあ、ちょっとだけ眠るにね?」

「おやすみ、ミソラちゃん」

 スバルに身体を預けたままミソラは眠りに入っていった。

 不思議と仕事の疲れが今まで以上に癒えるのを感じた。

 スバルの胸のぬくもりと匂いが心地よかった。

 今日はいい夢が見れそうだった。

 彼女が目を覚ましたとき、きっと、さらにいい一日が待っている。

 そんな夢が見れそうであった。

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