流星のメモリアル   作:スーサン

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アイドルの悪習

「新ユニット?」

 マネージャーの言葉にミソラは眉をひそめた。

「そう。名前知ってるでしょう、盾元(たてもと)P」

「ああ、あのお猫倶楽部で有名な?」

 自分が生まれる前のアイドルなのでいまいちパッとしないが、想像してみた。

「それで、いったい?」

「実はミソラちゃんをいれて新しいユニットを作らないかって話が出てるのよ!」

「へぇ?」

 生返事を返した。

 いまいち、パッとしなかった。

「とりあえず、今日、会うことになってるから、よろしくね?」

「あ、はい」

 どこか曖昧な返事を返しながら、ミソラは盾元のいる事務所へ向かう車の後部座席の背もたれに身体を預けた。

 目的地につくとミソラは車から出た。

「あ、ミソラちゃん!」

「スズカ!」

 車から降りるとミソラはアイドル仲間のスズカを認めた。

「スズカも盾元さんに呼ばれたの?」

「うん。新ユニットの話でね」

「そっか! じゃあ、これから仲間になるんだね?」

「うん! よろしくね!」

 ニッコリ笑うスズカにミソラも身体の緊張が解けたように笑った。

 

 

 盾元の前に立つとミソラとスズカは妙な威圧感を覚えた。

 過去に一流アイドルを何人も育てただけあり、盾元の存在感は不快感すら覚えるほどの威厳と自信を持っていた。

 その不快感にスズカは涙目になり、ミソラの背中に隠れるように一歩引いた。

 慣れっこなのか、盾元はニコッと笑った。

 それでも、不快的な威圧感は増すばかりであった。

「響ミソラ君にスズカ君だね?」

「は、はい!」

 二人とも、盾元の不快感溢れる声に直立不動した。

「他のメンバーはすぐ来るけど話しだけはしておくね。新しいアイドルユニットの話は聞いてるね?」

「ええ、はい。マネージャーから聞きました」

「私もアイスから」

「それなら話は早いな!」

 盾元は企画書らしき紙の束をミソラ達に見せた。

「新しいユニット名は「STS48」と決めてるんだが、その前に君たちに聞きたいことがあるんだ」

「聞きたいこと?」

 ミソラは眉をひそめた。

「まだ、君たちは小さいからいないと思うが、彼氏とかはいるかね?」

 ドキッとミソラは心の中で胸に手を置いた。

「私の方針でユニットを組んでもらうアイドルは恋愛禁止とさせてもらってる」

「な、なんでですか?」

 ミソラの顔が真っ青になった。

「アイドルは偶像だからね。人に夢を与える仕事だ。それだけに彼氏がいるのはイメージ的に良くない」

「……」

 ミソラの顔が盾元の不快な威厳とは別に沈んだ。

「もし、彼氏がいるなら、公になる前に別れてほしい! 君たちもわかってるだろう。ここで一時期の感情で」

「失礼します!」

「あ、おい、ミソラ君!?」

 勝手に出て行くミソラに盾元は慌てて止めようとした。

「話はまだ」

「失礼します」

 勝手に出て行くミソラにスズカも慌てて後をおった。

「待ってよ、ミソラちゃん!」

 事務所に残された盾元は苛立った顔で舌打ちした。

「なんなんだ、最近の子供は!?」

 

 

 事務所を出るとスズカは慌ててミソラの手を掴んだ。

「ちょっと待ってよ、ミソラちゃん! 急に帰ったら、盾元さん、怒って、なに言ってくるかわからないよ!?」

 振り返るとスズカはビックリした。

「泣いてるの、ミソラちゃん?」

「ちょっと、あの人の言い方が癪に障って」

 涙を拭うミソラにスズカもマジメな顔で返した。

「お世辞と気持ちのいい人じゃなかったね?」

 雰囲気だけじゃない。

 過去にいくつもの成功を収めてるものの自信と尊大さを盾元は持っていた。

 それはまさに自信からくる、他者を見下した威厳といえた。

 位が近い人間なら、彼の威厳は頼もしくも見えるが今の感覚で生きているミソラやスズカにとってはただの老獪にしか見えなかった。

 ミソラは自分を落ち着けるようにいった。

「スズカ、私、ここだけの話だけど、大切な人がいるの」

 スズカの顔も深刻になった。

「もしかして、前に撮影所に来てた、あの星河くんって子?」

「気付いてたんだ?」

 苦笑するミソラにスズカもわかるよと微笑んだ。

「ミソラちゃんがあの子を見る目は他の子と違ったからね」

 お互いおかしそうに笑うと、ミソラは吐き捨てるようにいった。

「だから、盾元さんの恋愛禁止は納得いかない。仮にイメージが落ちたとしても、私は彼を大事にしたいと思ってる」

「うん。間違ってないと思うよ。大切なのはアイドルとしてのイメージじゃなく、身近にいる大切な人だもんね」

 私にはそんな人まだいないけどねとスズカはテレ笑いした。

 ミソラもクスッと笑った。

「なんか、私のせいでスズカも巻き込んでゴメンね?」

「いいよ、別に。アイスからも盾元さんの企画に乗るのは反対気味だったしね」

「なんで?」

「私が主役じゃないからだって」

「アイスらしい」

 ふふっと笑うと二人の前に違う車が止まり、女の子が盾元のいる事務所へと入っていった。

「さて、帰って、事務所の人たちに謝らないとね?」

「怒られるかな?」

「たぶんね」

 不安そうな顔をするスズカにミソラも憂鬱そうに答えた。

 

 

 その日の夜、ミソラはスバルの家に泊まりこんだ。

「ていうことがあったの」

「そっか」

 ミソラの話を聞き終えるとスバルも納得した顔で微笑んだ。

「ありがとう、ミソラちゃん、ボクを選んでくれて」

「私にとって、大切なのはスバル君だからね」

「でも、大丈夫なの? 盾元プロデューサーといえば、業界でもかなり発言力があるって聞くけど?」

「大丈夫だよ! ただ単にオファーを断っただけだし、盾元プロデューサーも断ったって理由で私を陥れることはしないでしょう」

「だといいんだけど、嫌な予感がするな~~……」

「もう、スバル君は心配性なんだから!」

 ギュッと手を握った。

「大丈夫! 私がスバル君の元を離れることは絶対無いから! あの不思議な世界でずっと一緒にいるって約束したでしょう?」

「……そうだね」

 ニコッと笑い、スバルもミソラにキスをした。

 

 

 朝、目が覚めるとハンターVGから非通知のメールが届いた。

「誰からだろう?」

 自分のハンターVGを手に取り、メールを開いた。

『一人でここに来てくれないか?』

 添付されていた地図を見て、スバルは嫌な予感を感じた。

『君のために言う。ミソラ君がダメになる前に来ることをオススメする』

「脅迫かよ」

 メールを閉じ、いまだに自分のベッドで眠っているミソラの顔を見た。

「ミソラちゃん」

 自分の不安を隠すようにスバルはミソラの頬にキスをした。

 

 

 電波変換して、すぐに目的地の崖の見える丘につくと不快感を放つ威厳ある男が立っていた。

 電波変換を解き、元の身体に戻ると急いで男のもとへと走った。

「あの、アナタですか、ボクを呼んだのは?」

「星河スバル君だね?」

「あ、はい」

 不快感のある威厳を放つ男にスバルは直立不動した。

(たしか、この人は盾元プロデューサー)

 嫌な予感を感じた。

「君、ミソラ君の恋人かい?」

「え……?」

 固唾を飲んだ。

(調べられてる?)

「隠さなくってもいい。これは公表する気は無いしね」

 といいながらも、その目はまるで蛇のように陰湿に光っていた。

(下手に隠しても泥沼に入るだけか)

 一息入れた。

「そうです」

「そうか」

 盾元の目が不気味に光った。

「なら、話は早い。ミソラ君と別れたまえ!」

(やっぱり)

 予想通りの答えにスバルは辟易とした。

「彼女はこれから大きくなる器を持っている。それを色恋で壊すのは君のエゴだと思わないかい?」

 一方的な言い方だが、スバルは反論できなかった。

 盾元のいう言葉はスバルが今まで目をそらしていた本音を言っていたからだ。

「恋愛がいけないといってるわけじゃない。だが、恋愛をしてまで自分の未来を潰すのはあまりに軽率じゃないかといってるんだ」

 これも心のどこかで自分が思っていた疑問であった。

「君がいなければ、ミソラ君はさらに輝く。それこそ、時の人と呼ばれることも不可能じゃない。君もそう思うだろう」

 自分の心のうちをドンドン読んでくる盾元にスバルは真っ青になった。

「よく考えたまえ。自分のエゴを通して、ミソラ君の未来を台無しにするか、ミソラ君の未来のために別れるか。重要な岐路だよ」

 肩を掴まれ、スバルは鳥肌が立った。

 触れられるだけで不快感が増すゴツイ手だった。

 視線はスバルを捉えて離さず、一つの答えしか許さない迫力を持っていた。

(ボクがミソラちゃんの未来を……で、でも)

 盾元の揺ぎ無い視線にスバルはグラグラと心が揺れた。

「ボクは!」

 答えを言いかけたとき、スバルの脳裏に鋭い声が聞こえた。

≪君の想いはその程度かい?≫

「え?」

「どうかしたのかね?」

「い、いえ」

 頭の中に響いた謎の声にスバルは心を落ち着かせた。

≪ミソラちゃんのために別れるというのかい?≫

「ちがう」

≪なら、自分のためかい?≫

「ちがう」

≪じゃあ、なにがしたいんだい、君は?≫

「ボクは」

≪君は?≫

「ボクは!」

 盾元の顔がやれやれとなった。

「君の気持ちはわかるが、これはミソラ君の問題」

「うるさい!」

「え……!?」

 驚く盾元にスバルは大声で怒鳴った。

「ボク達の関係に無関係者が口を出すな!」

 スバルの怒鳴り声に盾元は呆気に取られた。

「二度とボク達のことをかぎまわるな! これ以上詮索するなら、しかるべきところに訴えるからな!」

「き、君! 自分のいってることが」

「お前、何様のつもりだ!? ボク達のことをとやかく言って!?」

「わ、私はミソラ君の未来を」

「お前みたいな不快な奴にとやかく言われる筋合いは無い!」

「こ、このガキ!? こっちが大人の対応できてると思って調子に乗って!?」

 掴みかかろうとする秋本の足を引っ掛け、転ばした。

「ぐあ!?」

 転んださいにアゴを打ち、悶絶する盾元にスバルはバトルカードを取り出した。

「二度とボクの前に現れるな!」

 バトルカードをハンターVGに読み込ませた。

 空からミサイルが降ってきた。

「バトルカード! レーダーミサイル!」

「おわぁ!?」

 レーダーミサイルから逃げるように走り出す盾元にスバルはさらにバトルカードを読み込んだ。

「バトルカード! アトミックマイン!」

「ッ!?」

 ミサイルを全て避けると、今度は次に自分の足元に地雷が埋め込まれ、動けなくなった。

「こ、こんなことして、許されると」

「うるさい!」

 キッと睨んだ。

「こっちの素性を訳も無く調べた癖にえらそうなこというな! もし、今度、ボクのもとに現れたら、容赦はしない」

 スバルの身体が光に包まれ、消えた。

「い、いったい、彼は?」

 カチッと足元がなった。

「し、しまっ!?」

 盾元の身体が光に包まれた。

「……」

 電波ロードに乗ったロックマンになったスバルは救急車に電話をかけた。

「威力は抑えてるから死ぬことは無いよ。殺すのも惜しい」

 吐き捨てるようにロックマンは自分の家へと帰っていった。

 

 

 家に帰るとミソラが調理場で包丁を振るっていた。

「お帰りスバル君。どうしたの、外に出ちゃったりして?」

「ちょっと、散歩。いい天気だったからね」

「そっか。じゃあ、食事を食べ終わったら、デートしようよ!」

「うん。喜んで!」

「……スバル君、ちょっと変わった?」

「なんで?」

「う、うぅん。ちょっと自信がみなぎってるような気がして」

「気のせいだよ」

 居間のイスに座るとスバルはミソラが用意してくれる食事を待った。

「ミソラちゃん」

「なに?」

「大好きだよ」

「私も!」

 スバルの顔は誰もが認めるミソラの彼氏としてふさわしい威厳を放っていた。

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