千里山 武田信玄と呼ばれた男   作:yuzinn

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決断と選んだ道

準決勝前

陣は亮と薫を連れて、昼ごはんの買い出しに出ていた。

 

「一樹と良介の希望した物は買ったよな?」

 

「大丈夫です。」

 

「こちらも問題ない」

 

「なら戻るか」

 

会場のロビー

 

「ふざけんな!」

 

バカデカイ声が聞こえた。

 

「どうしたんでしょう?」

 

「一樹の声のようだ」

 

「急ぐぞ!」

嫌な予感を感じながらも急いで声の方へ向かう。

 

三人がたどり着くと一樹と見知らぬ男子がにらみ合いをしていた。

その後ろで良介と見知らぬ男子がいた。良介は僅かに不機嫌そうな顔をしていた。

 

「何の騒ぎだ一樹」

 

「陣、……悪い熱くなりすぎてた」

 

陣を見たことで一樹は少し、冷静さを取り戻したようだ。

 

「誰だテメーは、関係ない奴はすっこんでろ!」

 

「こいつの所属する麻雀部の部長ですよ。松山高校2年 宇崎選手」

 

「知ってるのかこいつのことを!」

 

「彼らは準決勝の対戦相手だよ」

 

「テメーらは。運だけで勝ち抜いてきた千里山高校の部長か?」

 

宇崎の言い方は明らかに見下してきていた。

 

「なんだと「止めな」…」

 

「運か?確かにそうかもな」

 

「身の程「麻雀は運の要素の強いゲームだからな」…」

 

敬語を止めた陣の言葉に宇崎は上手く流されてしまい。これ以上の暴言を吐けなかった。

 

「そろそろ行くぞ」

 

宇崎が黙ったのを見計らい、控え室に向かった。

 

 

控え室

 

「あのやろ~」

 

一樹はまだ怒りが収まらないようだ。

 

「一樹君らしくないですよ」

 

「…一樹落ち着く…」

 

周りが納めようするがなかなか、冷静に成れない。

 

「陣も手伝ってくれ」

 

普段のなら陣が一喝して収まるだが、今回は陣が腕を組んだまま動かなかった。

 

「今回は一樹の言い分もわかるからな。宇崎の奴は自身の実力に溺れて傲慢になってる」

 

一樹の説明によると、宇崎は敗北校によく暴言を吐くらしく、それは自分は勝利者だから許されると考えているらしい。

 

今回もそれをしていて、一樹が止めに入りケンカになったらしい。

 

「…ムカつく…」

 

「怒るのはいいが、麻雀に怒りは持ち込むなよ」

 

「う!わかってる」

 

準決勝開始

 

「亮」

 

「何ですか陣君?」

 

「今回はアドバイスはしないが一言、気をつけろよ」

 

「わかりました」

 

「アドバイスはしないのか?」

 

「流石に準決勝だ。対戦相手も簡単に分析できなくなってきた。変なアドバイスしてもかえって悪くなる可能性がある」

 

陣の言葉で今回の相手が強敵であるのがこの場にいる全員が理解した。

 

先鋒戦開始

 

試合が開始直後は亮が押していた。しかし、松山高校の先鋒も簡単に打たせてはくれなかった。二人は激戦を繰り広げたが最後の最後で亮が直撃受けて16000点を失い、二位で先鋒戦は終了した。

 

「すみません。最後の最後のでやられました。」

 

亮の顔を悔しそうに歪んでいた。かなり悔しかったようだ。

 

「薫君……後は頼みます」

 

「薫、気を引き締めてな」

 

「わかった。行ってくる」

 

次鋒戦開始

 

次鋒戦では薫が大きく活躍した。松山高校を削ることは出来なかったが、直撃を一度ももらわずに打ち続けた。

 

「お疲れ様です。薫君大活躍でしたね」

 

「ありがとう。だが松山からは点をほとんど奪えなかった」

 

薫は不満そうな顔だった。

 

「次は一樹の番だ冷静にな」

 

「おう!」

 

中堅戦開始

 

一樹は点数を失うことはなかった。

これは一樹というより松山の中堅の影響が大きい。

松山の中堅は一樹の守りの固さを知っているのか一樹を完璧に無視した打ち方をした。

周りのレベルもあり、一樹は守りを重視するしかなく、一位との点差が広がるのを黙って見ているしかなかった。

中堅戦終了

 

「くそ!何も出来なかった」

 

「かっ一樹君はしっかり守りましたよ」

 

「そうだぞ一樹。相手が攻めを諦める程、お前の守りが固いということだ」

 

二人が慰めようとするが 一樹は納得しなかった。

 

「慰めてくれてサンキューな……だか点差が広がったのは事実だ。すまねぇ」

 

「…一樹の分まで頑張る。任せて…」

 

普段以上に真剣な顔で良介は控え室を出た。

 

副将戦開始

 

良介の麻雀キレは普段以上であった。他家の上がりの読みも冴え渡り、例外なく点を奪った。

 

松山の副将はなんとか善戦したので、他家のよりは奪われなくてすんだ。副将戦終了

 

「…頑張った」

 

流石の良介もかなり疲弊していた。

 

「大丈夫か良介君」

 

「良介がここまで疲弊させられるなんて」

 

「だかよくやった!良介」

 

「でも一位との差はまだ大きい」

 

一位の松山の差は40000点近かくあった。

 

「(良介以外のみんなも 表に出さないが疲弊してるな)」

 

陣は両手を組んだまま、みんなを見ていた。

「陣」

「陣君」

「陣」

「陣…」

 

みんなは自分の不甲斐なさを恥じるような顔で陣を見た。

 

「そんな顔するな。俺が何とかする」

 

陣はもう一度仲間を見回して控え室を後にした。

 

廊下

 

「よう千里山の部長さん 」

 

「松山高校の宇崎、何かようか?」

 

「いや~弱い仲間を持つと大変だな~」

 

「なんだと?」

 

行きなり仲間をバカにしてきた宇崎に冷たい視線をぶつける陣。

 

「こえ~でも本当のことだろ?俺達、松山高校の部員に勝てたのは副将戦のみで、他の奴は実質的に負けてんだからな」

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

「いや、お前らを試合後にバカにするのを伝えておこうと思ってな」

 

「そうか…」

 

「それだけか?つまんねえな」

 

それ以上に相手をしないで陣は会場に向かった。

 

 

大将戦開始

 

陣は内心考えらがら麻雀打っていた。

「(このまま守りを固めていれば俺達は決勝に行ける。だかそれでいいのか?仲間に笑って決勝行きを報告できるのか?宇崎に仲間を侮辱される。それに俺は耐えられるのか?)」

 

陣の手の動きが止まった。

 

「(報告できるわけない!耐えられるわけがない!ならどうすればいい)」

 

仲間をなにより大事に思っている陣に我慢できる者ではなかった

 

陣の目を閉じた。

 

「(そうだな。潰せばいい。それで決勝に行けなくても、あいつらと来年も麻雀をやるために!)」

 

陣が目を大きく開いた。 闘気を満ちたその目を。

 

控え室

 

みんなは今の陣に違和感を感じていた。「陣の打ち方がいつもと違うな?」

 

「そうですね…風林火山 のどれとも違いますね」

 

「陣の顔も普段とは違うものを感じるな」

 

「…陣…潰す気で打ってる」

 

観戦室

「なんやあの打ち方は初めてみるわ」

 

「打ち方も形相も普段とは別物やな…竜華?」

 

「大丈夫なんか竜華!」

 

「震えとるやないか!」

 

竜華は震えていた。

 

「だっ大丈夫や二人とも」

 

「…陣が怖いんか?」

 

怜が予想を述べてみた。

 

「うん…今の陣くん見とると怖いし、なんか悲しい気持ちになるんや」

 

「観戦室を出るか?」

 

「ううん最後まで見ていたい」

竜華の決意は固かった。

 

「無理したらあかんで」

 

対局室

 

陣は相手が潰れようが気にしないで点数も精神も削っていった。

 

特に狙われているのがわかる宇崎の顔には絶望の色が見られた。

恐怖のためか打ち方も乱れに乱れ他家に点数を奪われ、順位が4位まで下がった。

 

それに対して陣は、危険な攻めをしているだけに そこを他家に攻められた。順位こそ二位のままだが三位との差は10000点程でいつ逆転されてもおかしくない状況であった。

 

大将戦終了

 

結果的に陣は逆転され三位終了し決勝行きを逃してた。

 

全国トップクラス松山が負けたので麻雀関係者は、この結果を大盤狂わせだと騒がれた。

 

「ありがとうございました」

 

陣は挨拶した後に宇崎を見た。

 

「ひっ!」

 

宇崎は見られただけで脅えていた。

 

「これでテメーも敗者だ 。テメーに他者を侮辱する資格はなくなったな」

 

「くっくそ!」

 

「今後は発言には気をつけろよ。そうじゃないとまたこんな目に遭うぞ」

 

陣はかなりの闘気を込めて宇崎を睨んだ。

 

「ひっひぃー!」

 

宇崎は悲鳴を上げて逃げていった。

 

「決勝戦行けなかったな・・・」

 

陣のその言葉が対局室に小さく響いた。

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