準決勝から2日が経過しついに決勝の日を迎えた。
朝6時、陣は既に起床し用意を始めていた。部屋のチャイムがなる。
「はい、どちらさま?」
「竜華やけど、もう起きとる?」
「今、開けるから待ってくれ」
部屋に招き入れ椅子に座ってもらう。
「それでこんな早い時間からどうした?」
試合開始は10時半からなので移動時間を考えても時間余裕がある。
「なんや早く起きすぎてしもうて。陣君なら起きとるやないかと思ってきてみたんや」
「成るほど」
竜華の予想は見事、的中したようだ。
「なあ、竜華、少し散歩しないか?」
「…ええよ」
竜華と共にホテルの周りを散歩をすることで、リラックスした時間をすごした。 移動時間になり、ホテルのロビーには男子千里山のレギュラーに集合した。
「集まったな」
「いるぜ」「僕も」「私もだ」「…いる」「なら・・行くぞ」
この2日間、陣はトレーニングメニューを誰にも言い渡さなかった。伝えたのは
「コンディションを最大にしといてくれ」のみであった。ここまでくれば身につけられるかわからない力より今持っている力を最大限発揮できるようにしておく方が重要だと考えたからだ。
会場、選手エリア前
陣逹は竜華逹や千里山高校の生徒から応援の言葉を受けていた。
「頑張るやでみんな!」
「絶対優勝や」
セーラと怜からも激励を受けてやる気も全員マックスになった。
「がんばってな陣君」
竜華も陣から個別で応援を受けた。
「ありがとう。行ってくる」
陣は控え室に向かおうとするが、不意にその足を止めて竜華の前にもう一度きた。
そして竜華の唇を奪った。
された竜華も見ていた周りを人も呆然としていた。
「行ってくる」
そう言って、もう一度陣は控え室歩いていった。控え室
「陣君、さっきのは…」
「…抑えがきかなかった」
陣は顔を少し赤くしながら答える。
「竜華分、補給ってやつか?」」
「あれを見ると二人が別れるのを私は想像できないな」
「…ありえない」
「陣君は竜華さんにベダぼれですからね」
「…ほっとけ」
決勝前とは思えないほど和やかな空気が流れていた。
(選手呼び出し放送)
放送が流れた瞬間に全員、特に亮の纏う空気が鋭いものになる。
「時間ですね。では行ってきます」
亮の言葉に皆、無言で頷いた。
先鋒戦開始
先鋒戦開始と同時に亮はイリュージョンを発動し他家を潰しにかかった。
「開始と共にイリュージョンを発動させたな。様子見も一切する気ねぇな」
「様子見をして勝てる相手じゃないことを始まる前から察知したんだろうな」
「…常に全力全開で…さもないと…負ける 」
一樹、薫、良介は亮の行動から氷橋の強さを再認識する。
「陣は…どう見る?」
「もう少し見ないとなんとも言えないけど…亮の感じた強さが本当なら、どちらか流れを先に掴むかがカギになるだろうな」
南三局
「この試合、麻雀上級者以外はつまんないだろうな」
「…戦いのレベル高すぎ」
両者の読み合い、騙し合いが激しすぎて端から見れば動きが少なく見えるのだ。
ここで亮は少ないながら氷橋に直撃を入れた。
「お、亮の奴、読み勝ったか?」
「流れを掴めるといいだがな」
亮はこの一撃で流れを掴み押し気味に対局を進めた。
先鋒戦終了
「なんとか勝ちました」
「すげえじゃねぇか亮!」
「自信を持っていいはずだ、あれは間違いなく亮の勝ちだ」
一樹、薫の賞賛に亮は
「ありがとうございます。でも…」
「どうした?」
「完璧に流れを掴んだと思ったんですが、二位の氷橋には 12000程しかつけられませんでした。対局したからわかります。彼らはものすごく強いです。ミリ単位の油断が命取りとなるでしょう、気をつけくたさい」
「実際に対局した亮の口から聞けたのは大きい、改めて言っておく、油断、慢心は全て捨てて対局にあたってくれ」
「了解だ。陣」
「…わかった」
次鋒の薫も
「私も全身全霊挑んでくる」
控え室を出た。
薫が出たのを確認した途端、亮は座席に寝転んだ。
「本当に疲れました。当分動く気がしません」
「お疲れ、後は俺達に任せてゆっくり休め」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて少し・・休みます」
陣のともらいを受け亮は意識を手放した。
「亮がここまで疲弊するとはマジで強い奴らのようだな。(薫…マジで油断すんなよ)」一樹は心からそう思った。
次鋒戦開始
亮のおかげで油断は微塵もない薫は、亮同様に全開で打った。
対局が始まってから4局目。薫は画面越しからもわかるようにキツそうな顔をしていた。
「薫…つらそう」
「実力に差は感じねぇだがな。…陣、まさか対戦相手って薫と相性悪かったりするか?」
「…悲しいが当たりだ。氷橋の次鋒と薫は少し相性が悪い」
「少し…か?」
「実力が拮抗してる相手ならその少しが勝敗を分けることもある」
「でも…薫、直撃は一度しかもらってない…こらえてる」
薫は顔こそ苦しそうだが 点を大きく削られずに最後まで耐えきった。
次鋒戦終了
「全力を常に保つのは予想以上につらいな」
「だっ大丈夫ですか薫君!」
さっきまで寝ていた亮に心配されるほど薫はやつれていた。
「一度、直撃をくらってしまったのは唯一の心残しだ」
悔しそうに告げた。次鋒戦で氷橋との差は点まで8000点まで減少した。
「相性に悪い相手にあれしか削られてないだ。仕事は十分果たしてる」
「陣…すまん」
「これは団体戦だ。まだ俺達がいる。今は休め」
「わかった…一樹、後は任せた、」
薫は寝はしなかったが椅子に背中を預けぐったりとした。
「おう!行ってくるぜ(もう大きな点差をつけらた状態で良介や陣に回したりは絶対しないぜ)」
一樹は目に炎を宿した状態で対局に赴いた。
中堅戦開始
始め一樹は守りを固めて様子見に入った。誰もが他家は無理に攻めずに他を狙うと思ったが ここで予想外の行動を起こす者が出た。氷橋の中堅が無謀にも一樹の鉄壁の壁を破壊しに挑むかかったのだ。だが破壊することはできなかった。その後も何度も弾かれ逆に点棒を一樹に奪われたが諦めずに攻め続ける。
「なにがしたいんでしょう。一樹の壁は強固さはもうわかったでしょうに」
「…往生際が悪い」
「突破できると思っているのか」
皆が理解できないでいた。
「(皆の言う通りだ一樹の壁はそう簡単に壊せるものじゃない。例え壊せても。効率が悪すぎる。何を考えている)」
陣ですら氷橋の行動は理解できなかった。
一樹の壁を突破できないままラスト三局になった。点差28000点まで広がっていた。
ここまできて陣は行動の意味をなんとなく理解した。だが自信を持てないでいた。
「(確かにそう考えれば辻褄は合う。だかやるか普通。今は全国大会の決勝戦だぞ)」
ここで遂に一樹の壁は粉砕された。だかここまでくれば残り二局で逆転は不可能。
「一樹君の壁を粉砕したのは凄いですが、今更手遅れです。逆転できるわけないですよ」
亮の意見に薫も良介も頷いた。
「……逆転する気がなかったら」
「へ?逆転する気がない?意味がわかりませんよ陣君」
「氷橋の中堅の目的は一樹の壁を壊すことだけで逆転する気なんて端からなかったんだ」
「今は決勝戦ですよ!そんなことして何の意味があるんですか!」
亮ですら理解できずに声を荒げた。
「あいつはおそらくチームより自分を優先したんだ」
「…自分?…」
「一樹の鉄壁の壁は大会中一度も粉砕されていない。あいつはそれがしたくてしょうがなかったんだろ」
「理解出来ません。普通はやらないですよ」
「理解できないくていい。俺もできない」
氷橋の中堅は一樹の壁を破壊はしたが逆転など到底できるはずもなく中堅戦は終了した。
中堅戦終了
「う~ん」
戻ってきた一樹は腕を組んで唸っている。
「お帰りなさい一樹君、なに唸ってるんですか?」
「いや~点差は広げたが、壁を突破されたのも事実だから、なんかしっくりこなくてな」
「それはしょうがない。今のお前は試合に勝って勝負に負けた状態だからな」
「…やっぱりそうか…くそ~モヤモヤする」
「なら来年晴らすんだな。あいつは一年だ。あの突破力があれば来年も出てくるだろ」
一樹の肩を叩き、陣は言い聞かる。
「そう…だな。来年までに俺の壁をさらに強固にしてやる!」
モヤモヤは消えたようだ。
「さてと、次は良介だ言ってきな」
「…うん…」
短く答え、良介は対局に向かった。
副将戦開始
陣は椅子に座って難しい顔をしていた。
「難しい顔してますね。理由はやはり移動中に話していた。あれですか」
「あれって副将戦の相手にスキル持ちがいるってやつだろ?」
「そうだ。俺達が準決勝で下した高校の副将はスキル持ちだ」
「なんか信じられないだよな。良介が準決勝で倒した相手だろ?」
良介は陣がスキル持ちだと言う男子を一度倒してる
「あの時は良介の独走ついていけなくてスキルを使う余裕がなくて負けただけだ。だが今回、良介は独走はできない」
「氷橋がいるからですね」
「ああ、氷橋の副将と良介がやり合って動きが遅くなればスキルを発動する時間ができる。先程までは氷橋のみを気にしていればよかったが今回はスキル持ちも気にしなけぼならないからかかる負担も当然増えるつらいだろうな」
「だか、それは氷橋も一緒だろ?」
「一緒ではあるが最初に狙われやすいのは一位の俺達千里山だ」
「…つらい対局になりそうですね」
対局始まってからすぐは亮と氷橋の副将の戦いであった。だが、東三局で良介が他家から直撃をくらい8000点を失った。
「スキルが発動したな」
「どんなスキルなんですか?」
「…自己強化型のスキルだな。見た感じ、効果は特定の役が上がりやすくなるってとこだな」
「それって何がいいんだ?」
「特定の役の牌が手元に集まりやすいってことは鳴くことなく上がれるから妨害されずらいんだ。妨害できないから、常に警戒して置かなくてはいけないし、警戒しているからその役になりそうな役は捨てづらくなるから手牌が窮屈になる」
「やられる相手にしてみれば面倒でたまんねぇな」
「まあ、特定の役を上がるから対策が取りやすい欠点もあるけどな」
テレビではいつの間にかスキル持ちは氷橋と良介に叩き潰されていた。
副将戦終了
「ごめん…逆転された…」
スキル持ちを叩き潰したのはよかったがそれまで点差は16000まで小さくされ、氷橋が他家に高得点の役を叩きつけたことで僅かに差で逆転されたのだ。現在は氷橋に2600点分負けている。
良介は誰が見てもわかるほど落ち込んでいる。
一樹逹が必死で慰めるもなかなか立ち直れなかった。
「良介、逆転されたのはまだ俺達が弱いからだ。お前だけの責任じゃない。気にするなとは言わないが落ち込むより、次の俺を応援してくれ」
「…わかった」
なんとか立ち直らせることに成功した。