全国大会決勝戦
副将戦までの試合が終わり残すは大将戦のみ。一位の氷橋高校と二位の千里山高校の点差は僅かであるため、どちらの大将が強いかで決着つく。
控え室
陣は、リラックスした状態で椅子に座っていた。
「それじゃあ行ってくる」
陣はゆっくりと控え室を後にした。
「落ち着いてましたね」
「そうだな。プレッシャーも特に感じてないようだ」
「2日前は闘気が溢れ出していた人間には見えねぇな」
「……考えられるのは…」
「「「「竜華(さん)だな」」」」
メンバー中には、陣の態度の変化=竜華という公式が成り立っていた。
対局室前
「ここまで点差がつかなかったは初めてだ。素晴らしいチームメイトを持っているな成瀬」
突然の呼び掛けだったが陣は平然と返した。
「ありがとうございます天宮さん。昔から共に全国優勝を目指している。大切な仲間です」
「そうか…その仲間逹の頂点の力、この身で確かめさせてもらう」
「よろしくお願いします」
その会話を最後に二人は無言で対局室に入った。
放送室
「ついに来ました大将戦!この対局で男子日本最強の高校が決まります!実況は引き続き私、相模がさせていただきます。解説には川神プロに来ていただいております」
「よろしくお願いします」
「優勝するのは一位の氷橋か?それを僅差でそれを追う千里山高校か?それとも他の二校がどんでん返しをするのか?運命のゴングまであとすこし!」
観戦室
竜華逹は陣の登場を今か今かとまっている。
「う~緊張する~」
「あんたがそない緊張してどうするや」
怜は呆れつつセーラにツッコミを入れた。
「せやかてこんな空気やで、緊張するものはしてしまうんや」
「まあ、空気がピリピリしとるのは事実やな」
二人が言うように観戦室の空気は大将戦と言うこともあり、ピリピリしてるように感じた。
「陣も前みたいに闘気剥き出しにしてるんやろか?」
「それは大丈夫や」
怜の予想を竜華は否定した。
「そうなん?」
「うん…朝、陣君とお散歩としたときに話してたんや」
回想
「朝のお散歩は気持ちええな」
「涼しいし散歩には丁度いいしな」
二人はホテルの周りの自然公園を回っている。
「こうやって竜華と一緒にいると改めて思うな。俺は竜華に惚れてるだな~と」
「な、なに言うねん、いきなり!」
竜華は真っ赤になったが、陣かまわず続けた。
「朝、起きたときの俺は大将戦のことを考え過ぎていたよ」
「珍しいな、陣君がそないなんなんて」
「俺も人間だからな。決勝の大舞台の前にすくんでたのかもしれない」
「……」
「だか竜華と一緒にいるといつの間にかそんな気持ちは霧散して、落ち着いた自分になっていた」
「そう言ってもらえるとうちも嬉しいわ」
「彼女に依存してるようで何だが情けない話だかな。精神的にももっと強くならないとな」
陣は苦笑いする。自分が不動であることがチームの支えになっているのは陣も理解していた。だが「陣君はそのままええ」
竜華は真剣な表情で陣の頬に手を触れながらそう言った。
「陣君には色んな重圧がかかっとるのは知っとる。けどうちはそれに慣れてるべきやないと思うや。苦しいからこそ、頂点を本気で目指せる。慣れてしまったら思いも小さくなる。そんな気がうちはするや」
「…竜華」
「つらいかもしれんけど、これからも今のままの陣君の心で進んで欲しい」
「……今のままの心、か」
「そうや」
竜華は笑顔で
「それに陣君が崩れることはないで、だってうちが全力で支えるから」
「そうか…竜華が支えてくれるなら今のまま進んで行くのも悪くないな」「うん♪」
陣は一度も目を閉じて、その後目を見開いた。
それと同時に陣の体をから闘気が溢れた。だか以前のような荒々しいものではなく、穏やかさだか力強さ感じさせるものだった。
「最高の支えがあるんだ。俺は全力で優勝目指してくるか」
「そのいきや!がんばってな」
回想終了
「…ということで陣君は闘気はまえみたいに荒々しいものやなくなったんや」
竜華の話を聞いていた怜とセーラは微妙な顔になっていた。
「ほんまラブラブやな」
「うちらの入る隙間ないくらいお暑いな~」
二人は手うちわで扇いでいた。いつもの竜華なら赤面していたが、今回は違う。
「そうや、うちと陣君はラブラブや」
テンションが上がっているため赤面しないようだ。
そんなガールズトークをしていると陣が写った。
「ほんまや。穏やかな顔しとる」
怜は陣の表情を見て納得した。
「陣のあない顔をみると対局がさらに楽しみになっきたわ。はよ、始めて~な」
「がんばってな陣君」
大将戦開始
試合開始直後から、天宮は先制攻撃を仕掛けてきたが、陣はそれを難なく防いだ。そして天宮の動きの意味を陣は読み取っていた
「(いきなりかよ。それに今のは揺さぶり目的の先制攻撃に使う威力じゃねよ)」
陣は雨宮の実力の片鱗をその身で体験した。
「(まあ、楽しいからいいけどさ!)早きこと風の如し」
さっきのお返しに風で雨宮に仕掛ける。
これはあっさり防がれる が、それは折り込み済みである。続けて
「侵略すること火の如し」
これもあっさり防がれると誰もが思ったが、そこで陣が呟いた。
「風+火で炎風」
この攻撃は相手にヒットした。
これには雨宮も僅かに表情が動いた。
今のは二つ型を合わせた技、炎風組み合わせやすい初期の風林火山のみで使える合成技である。強化版では一つ一つに威力が高さすぎて合成が難しいのである
「(もとからないような差であったが逆転はできたな。さて天宮はどうくるか?)」
その後は天宮は特に動きを見せずに南一局に入った。
「(何を考えている。…このまま攻めてみるか)吹き荒れること暴…!」
陣は何かを感じたように手を止めた。
「(なんだ!今の感覚は踏み込んだらヤバい気がした)」
天宮は陣の僅かな動揺を読みに陣に直撃を返してきた
「(あの感覚、気のせいじゃなさそうだ。なら)感じ取ること音波の如し」
控え室
「陣が音を使ったな」
「でも、おかしなところありましたか?」
「…わからなかった…」
「だが陣が見極めに使う、音を使ったことは何かが起こったに違いねえな」
天宮の強さは実際に対局してる人間にしかわからないようだ。
対局室
陣が見極め体制に入ってから3局が経過した。その間に陣は天宮に攻撃を仕掛け、全て反撃をもらっている。だかその分解析は進んでいた。
「(なるほど違和感の正体はわかっただがそれを可能にしてるのは多大な経験と天才的センス。スキル並のセンスってどんなのだよ。全く)」
天宮のスタイルは束縛の麻雀である。特定の動きをすることで相手に威圧や疑心を与えて制限する。説明するのは簡単だがスキルも無しそれを行うには多大な量の経験と血の滲むような努力、天才的センスが必要なのである。おまけにスキルではないので特定の弱点も存在しない。完成には時間がかかるが一度、完成すると強力この上ない能力である。
「(破るには制限すら飲み込む攻撃力が必要だな。今の手札では威力不足だな。なら)」
陣は目に先程までとは違う炎が宿った。
「(新しく作るだけだ!だから、今は守る)不動であること大陸の如し」
観戦室
陣が守りに入ったことで周りからは諦めたか?情けないなどの声が聞こえた。
その批判にセーラは立ち上がろうとした。
「セーラ!」
竜華がそれを止めた。
「なんで止め「言いたい人には言わせとけばええ!」そやけど~」
「どっちにしろ陣君が動けば何も言えなくなるんや」
竜華は陣の動きを何一つ見逃せないように見ていた。
「セーラ、私らも信じて見ようや」
「怜…そうやな…頑張れ陣!」
対局室
「(普通に回れば残り4局か…予想以上に時間がかかったが完成したな。後は使うのみだ)神風神炎作動」
陣は新技で天宮の束縛を打ち破った。これには天宮も驚いていたようであった。
「(この技は攻撃に全身全霊を込めるから扱いが難しいな。しかしこれしか対抗策ないのも事実だ。やるだけやるさ)」
このあと陣は攻め続け天宮の点を削りとった。しかし、天宮も伊達に優勝校の怪物なわけではない、少しではあるが、陣の神風神炎に抵抗を見せたのだ。この激闘を見た人達は怪物対怪物の頂点戦と表したらしい。
オーラス
「(点差は俺の4600点負けの状態か、このラスト局で勝敗が決まるな)」
牌が一つ、また一つと出されていく。そして陣が上がれる最後の牌
「ロン、………3900」
陣の宣言を最後に対局が終了となった。
直撃を入れた相手が天宮なら優勝である・・・
だが陣が直撃をくらわせた相手は天宮ではなかった。
放送室
「けっ決着ー!全国優勝を果たしたのは氷橋高校です。二位の千里山高校との差僅かに700点!なんという激闘でしょう」
「ここまでの名勝負は本当に久しぶりでした。解説にきて本当によかったです」
男子千里山高校は今年も全国優勝を僅差で逃した。