女子麻雀全国大会当日
陣逹は会場の席取りに来ている。交代制で並んでおり、今は陣と亮の番である。
「人が増えてきましたね」
「ついでに記者もな」
会場前には観客と一緒に記者も集まっていた。男子大会の準優勝校であるメンバーにとって記者との接触は出来るだけさけたいのである
「準備してきてよかったですね」
「意外にばれないもんだな」
二人は軽い変装をしている。変装と言っても、だて眼鏡や帽子など不自然に見えないようなレベルではあるが。ばれていないようなので二人は肩の力を抜いた。
時間が近づいてきたので他のメンバーと合流し開場と同時に中に入った。
無事に席を確保に成功
「時間があるし少し散歩してくるけど、なんか必要なものあるか?」
「私は特にないな」
「僕もないです」
「了解、なにかあったらメールしてくれ」
陣はそう言い残し観戦室を出た。
陣は会場内をうろついていき、ロビーに差し掛かったときに記者の集まりを見つける。
「(人だかりができてるってことはどっかの高校が来たのか?)」
陣は不自然にならないくらいの距離で人だかりを覗いた。
記者に囲まれているのはどうやら白糸台高校のようだ。
「(へえ~全員が全員かなり強そうだな。特に赤い髪、宮永 照は纏う空気が他と明らかに違うな)」
陣はだて眼鏡越しに真剣な目で白糸台を見ていた。
そうしていると宮永 照が不意にこちらを見てきた。
「(俺の視線に気づいたのか?)」
強者が強者の存在を感じ取るように陣に気づいたようだ。宮永照少しの間こちらを見ていたが目を反らし記者に視線を戻した。
「(あいつの実力は俺や天宮並かそれ以上かもな)」
評価を終えた陣はロビーを後にする。 散歩を終了して観戦室に戻ると亮が迎えてくれた。
「お帰りなさい、何かありましたか?」
「特にないな。しいて上げるなら白糸台を見たくらいか」
「そうですか、陣君の見立てではどうでしたか?」
「全員がかなり強い上に、宮永照に至っては俺や天宮クラスの実力者だ」
「そこ…までですか?」
陣の評価に驚愕する亮。
「この話はここで終わりだ」
これ以上話すのは得策ではないと思った陣は話を終わらせた。
「時間は…竜華逹が会場の入るころだな、顔を見ておくか」。
関係者入り口で近くのイスに座っていたら警備員に呼び掛けられたりもしたが変装をといて、事情を話すと待つことを許可してくれた。
待っていると竜華逹がやってきた。
「よう」
手を上げると
「どちら様ですか?」
変装を解いていなかったので三年の先輩に警戒された。
「その人は大丈夫やで、先輩、なあ陣くん」
さすが彼女と言うべきか竜華は一発で気づき陣の手を握る。
「やっぱばれたか」
陣は変装を解く。
「陣!なんでそんなかっこうしとるんや!趣味か?」
「記者に見つからないためやろ」
セーラは驚愕したが怜はすぐに理解した。全国2位の大将である陣なと記者の良い的である。
「怜の予想通りだ。記者に見つかるとうるさいからな」
陣は記者に揉みくちゃにされたのを思い出したのか苦笑いする。
「それで、大切な彼女や仲間に試合前に一声掛けようと思って待ってたんだ」
説明を終えると皆、納得してくれた。
「ありきたりな言葉だけど、頑張れよ」
陣は短いが心のこもった応援を送った。
「ありがとうな陣君…めっちゃ嬉しいわ」
竜華は本当に嬉しそうに笑う。
「なんや、陣に言われるとやる気になるな~」
「私らも全力をつくしてくるわ」
セーラや怜も緊張がなくなったようだ。
「伝えること伝えたから俺は戻るよ」
陣は戻っていく。
「うん、ほんまありがとうな」竜
「行ってくるわ!」セ
「おおきにな陣」怜
三人にお礼を言われて陣は戻っていった。
「でも、さすが竜華やな」
「なんのことや?」
怜の賞賛の意味がわからず竜華は?を浮かべている。
「陣の変装を一目で見抜いたやろ?あれこそが愛の力なんやと思って」
「な!」
予想外のところを疲れ、赤くなる竜華
そんな一幕があった。
その後竜華逹は二回戦を見事に勝ち抜き準優勝に駒を進めた。
現在は陣の部屋で次の日の対戦相手の対策を陣とと竜華の二人で行っている。ほかメンバーは陣に言われて別の部屋でひたすら打っている。
「対策はこんなところやね」
竜華はビデオを見ながら言う。
「さすがに準優勝となると面倒そうな相手だな」
陣はすこし面倒そうな顔をしている。
休憩がてらにお茶を飲み 、一息ついたところで竜華は真剣な顔で切り出した。
「それで…なんで対策はうちと陣君だけでやったん?」
「…現状では準優勝の対策をみんなで考えるより、少しでも強くなる方が重要だと思ったからだ」
「どういうこと?」。
陣一度目を閉じてからゆっくり開いた。
「今の千里山女子では優勝は不可能だってことだ」
「……」
「今日、白糸台の宮永照を直接みたんだが…彼女の実力は俺と同じかそれ以上だと感じた」
「じっ陣君と同等…ホンマなん?」
気丈に振る舞っているが 手が白くなっている。
陣の実力は竜華逹が一番わかってる。その陣と同等と聞けば無理もない話しである。
「本当だ。さらに面倒なことに今年の宮永照は大将だ。三人の誰とも当たらない」
はっとした竜華、気づいたようだ。
「先輩は本気の陣君と対局した回数は少ない、ということは…」
「そうだ、怪物クラスの威圧に耐性がない」
怪物クラスは対局中に無意識に威圧を放っているそれに調子を崩され、自分の麻雀を打てずに敗北する選手も少なくないのだ。
おまけに耐性はすぐにつくものではなく、今からでは時間が不足している。
「…そら…きついわ」
竜華も現状を理解したようで鎮痛な面持ちになる。
「今できるのは三人が可能か限り強くなって先輩の負担を減らすことくらいだ。そのためには勝てる見込みの高い準決勝対策に大量の時間を割くわけにはいかないないんだ。対戦相手には申し訳ないがな」
悔しそうに陣は告げる。このような対策しか取れない自分が情けないようだ。
「そっか…ありがとうな陣君」竜華は優しげな笑みを見せる。
「なんで、お礼を?」
「うちらのことも真剣に考えてくれたからや。うちもがんばって強くなって先輩に楽させんと!」立ち上がり意気込む。
「だから手伝ってや陣君」
「…ああ、全力でやらせてもらう!」
二人は皆のところに向かった。
その日から竜華逹、三人は陣の全力と何度もぶつかることになった。
次の日の準決勝は無事に勝利し決勝戦まであと2日というところまできた。
あれから行われた特訓は身を結び、竜華逹は実力アップに成功した。
「なんとか、陣に直撃入れられるようになったで」セ
「私もなんとか対応できるようになってきたわ」怜
「うちは陣君の大地を壊せるようになったで」
三人とも満身創痍ながら誇らしげであった。
「この短い期間でここまで成長できるようになるとは驚きましたね」
「そうだな。まさか本気モードの陣に食い下がれるよいになるとは夢にも思ってななかったよ」
「…三人とも…凄い」
三人の成長に亮と薫、良介は驚き
「俺達より強くなってじゃねぇか?」
一樹は悔しがっていた。
「これなら決勝戦も十分戦えそうだな」
陣も全力モードを維持し続けたのでかなり疲弊していた。
「大丈夫ですか」
「かなり眠いな…悪いけど先に寝る…」
陣はベットに入りすぐに寝入ってしまった。
「寝るの早えな、おい!」
一樹の驚愕する程、陣の寝いるのが早かった。
「しかたないですよ。全力モードを維持して竜華さん逹の相手をほとんど休みなくしていたんですから」
本気モードは集中力が必要な上に休みなく打ったので限界がきていたようだ。
「部屋の主も寝てしまったし、私は部屋に戻る」薫の言葉を合図に部屋に戻っていく。
途中で竜華は立ち止まる。
「どうしたん?もどるで竜華」
「陣君の部屋に忘れもんしたんよ。先に戻っててーな」
引き返して陣の部屋に戻る。
竜華は陣の部屋の予備鍵を渡されているので部屋に入ることできる。
中に入ると陣は先程と同じ体制で寝ていた。
「この体制やと負担がかかるで」
竜華が戻ってきたのは先程見た体制がつらそうだったと思いたったからである。
「よいっしょ。これなら大丈夫やね」
楽な姿勢に直して部屋に戻ろうとしたらハプニング発生する。ベットの上でバランスを崩し陣の上に倒れてしまったのだ。
衝撃から立ち直った竜華は現状を理解してすぐに離れようとするが、体制が悪くて力が入らない。
「(どないしよう。下手に動くと起こしてしまう)」
考えてるうちに状況はさらに悪化する。
陣が寝返りを打ったので竜華は陣に抱きしめられているに近い体制となってしまったのだ。
「(あかん、さらに動けない姿勢になってしもうた。どないしよう)」
考えるが妙案浮かばず。
「(でも、なんか安心するわ)」
竜華はそのまま眠りについた。
次の日の朝になり陣は目を覚ます。
「(なんかやけに寝心地がいいな)………俺はなんで竜華を抱きしめているんだ?」
状況を理解できない陣。
「昨日寝た時は確かに一人だった。なのに何故?」
彼女が自分の隣で寝ているので更に頭が冷静にまわらない状況で竜華が起きるまでは陣は悩み続けた。
余談ではあるがそのあと二人はメンバーにからかわれまくることになった。