次から三年偏に入ります。
バイトとクリスマス
季節は12月、外は息が真っ白になる程、寒くなってきている。
そんなころ陣はバイトに励んでいた。
「荷物を運びいれ、終わりました」
「まあ、早いわね。ならこっちも運んでくれる?」
施設の人に荷物を運び終えたことを報告すると、また次の仕事を頼まれる。
「わかりました。これも倉庫でいいんですか?」
「ええ、お願いするわ」荷物運びは意外に重労働であるが、
源三に鍛えられた陣なら十分こなせるものである。
「この時期は人が足りなくてね。来てくれてありがとうね」
陣の働いている場所は老人ホームである。ここには月に数回、入居者と麻雀をするために来ている。その折でバイトを頼まれたのだ。丁度、陣はクリスマスプレゼントを買う為にバイトを探していたので喜んで引きうけたのだ。
「20日までしっかり働かせてもらいますよ(今年は竜華にしっかりしたプレゼントを買うために)」
決意を新たに働く陣であった。老人ホームで働いていることは竜華に伝えている。しかし、手伝いとしか言っていない。バイトをしていると言えば、プレゼントを買うためだと一発でバレてしまうからだ。
亮、怜、薫の三名は何となく気づいているようにも見えた。
そして20日までしっかり働いた陣はバイト代でプレゼントを探しに町にきている。
「先ずは適当に回ってみるか、良い店があったら入ってみることにしよう」
とにかく回ることにした。
探しに始めて3時間が経過したころ。陣はファミレスで昼ごはんを食べている。
「(いろいろ回ったが…何がいいのか解らないな」
陣は竜華以外と付き合ったことはない。当然、彼女にプレゼントを渡した経験もないので、こうなるはある意味必然だったのかもしれない。
「ぬいぐるみ…クリスマスに渡すには安すぎる。指輪…高校生が渡すものじゃない。服…そもそもサイズがわからん。アクセサリー…無難ではあるが、良いのがあるか?」
竜華に渡す物なので下手な物は渡せない。というか渡したくない。陣の真剣悩みは続く。 考えながらも手と口は進んでいたようで食事を終了していた。
「(時間はあるから、じっくりいくしかないな)」
気持ちを切り替えて探しに行こうと店を出て、直ぐに発見する。
絡まれいる女子を、
それを見て陣が最初に考えたこと、それは
「(またか…)」そう思いながら盛大なため息をつく。「(ここ数年、ナンパとそれに絡まれる女子とのエンカウト率、妙に高くないか?)」
文化祭の時といい、今回といい。何者かの陰謀でもあるのではないかと考えてしまうほどだ。
しかし、源三の教えもあり、助けないわけにもいかず
「(とっとと追い払って買い物に戻る)おい…」
追い払い中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・終了
毎度のことなのでやられてるところまで省略されるナンパ逹であった。哀れ!
「あの~」
「(よし、ささっさとここを買い物に戻ろう)すいません。用事があるので失礼します」
「え!」
相手に有無言わさずこの場を去り、買い物に戻る。
それからも歩き回り、現在は三件目のアクセサリーショップにいる。
「(この店、高めだけど良いものがあるな)」
この店は安めの宝石も扱っているので高めなのは当然である。
その中である装飾品が目を止まる。青色の小さな宝石である。
「(綺麗だな。それにこの大きさなら普段から身につけることもできる…それに竜華に似合う気がする)これにしよう」
考えと直感が一致したので、陣はそれを買い店を出た。
「納得したものも買えたし帰ろう」
満足した気持ちで帰る陣であった。
「あの人、どこに行ってしもうたんやろ…お礼言えんかったな~」そんなことを言う女のコがいたそうな。
クリスマス、当日の日
陣は町を竜華と歩いていた。前日はいつものメンバーで集まってクリスマ会で大いに騒いだりした。そして今日は竜華と二人きりで過ごす日なのだ。
「けっこう冷えるな、竜華は大丈夫か?」
「うちは大丈夫や、それに寒くなったら…」
陣の腕に抱きつく。
「こうすれば暖かいから問題ないや♪」
「なら、寒くなってくれる方が俺には役得だな」
冗談めかしに笑う。
「役得ならこのままにするわ」
竜華は更に強く抱きつく。余裕そうに見えて実は顔が僅かに赤くなっていた。初々しさも残るが付き合い初めのころよりカップルらしくなっている二人であった。。
「どっちの色がええかな?」白とピンクのセーターを見せてくる。「…白の方がいいな」
「なら、こっちするわ。レジは「(ヒョイ)」あ!」
陣は竜華の決めた服をレジに持っていく。
「クリスマスくらいは良い格好させてもらうよ」
普段のデートでは竜華は陣に奢らせることはほとんどない。奢られる立場でなく対等でいたいらしい。
「うん、お願いするで」許可が下りたのでレジへ。その店での買い物をすまし、
次の店に行くそこは……「すまん、ここだけは勘弁してくれ。マジでヤバイ!」
陣がここまで動揺するのは稀なことだ。その店とは……ランジェリーショップ。
この店に男性が入るのは(一部の人間を除いて)精神的に削られるのは避けられない。
「(竜華がこんなこと思いつくわけがない!誰か入れ知恵をした奴がいるはずだ)なあ竜華、クリスマスデートについて誰かがアドバイスしてきた人がいなかったか?」
「セーラと怜にしてもらったけど…どないしたん?」
「いや、気になっただけだ。(犯人はセーラか!覚えてろよ。地獄を見せてやるからな」
基本、怜は分別をわきまえたアドバイスしかしないので除外。
竜華はすこし天然が入っているのでセーラの言葉をモロに受けたようだ。
「うちの下着、選んでくれへんの?」
上目遣いにお願いされる。
「無理!いくらなんでもそれは無理だ。それにそんなに赤くなるなら、言わないでくれ」
誘っている竜華は顔を真っ赤にして目は潤んでいる。彼女のこんな顔を見れば大概の男は落ちるだろう。普段の陣なら間違いなく落ちていたが今回は踏み止まっている。しかし竜華も今日は引かなかった。
結果は
「男とは……無力だ(恋人が相手なら)」
敗北したのは陣だった。 竜華が試着室に入っている間、
陣は必死に冷静さを保っていた。
「(感情を殺せ、心に鋼の鎧をまとえばどんな状態でも冷静さを保っ「陣…君、これどうや」てるかーーーー!!!)」
陣の理性と戦いは続く。
1時間の戦いの末、(ある意味)での地獄から解放された陣であった。その疲労度は全国大会の決勝戦をも上回っていたそうな。
それからも買い物は続き 、7時を迎えた。
「そろそろ予約していた店に行くけどいいか?」 店は陣が探し、予め予約していたのである。
「うん。うちもお腹ペコペコや」
陣の予約した店は高級店ではないが評判がよく、個室のある店であった。
「すごく美味しいかったわ」
大満足のようだ。不意に外を見る
「うわ~ええ景色や~」
ライトに彩られた夜の町が一望できるようになっている。
「ご飯も美味しかったし景色も凄く綺麗、連れてきてくれて、ほんまにありがとうな」
「そこまで喜んで貰えると頑張って探したかいがあったよ。たけど感謝されるのは少し早いな。メインはまだ残っているしな」
そう言って小さな箱を取り出す。
「クリスマスプレゼントだよ」
「今日もあるん?」
実は昨日クリスマス会でもプレゼント交換があったのでないと思っていたようだ。
「昨日のはおまけで今日のがメインだ。開けてみてくれ」
「うん」
青色の宝石のついた首飾りが出てきた。
「…綺麗…」
竜華は首飾りをギュッと掴んだあと、陣に思いっきり抱きつき、大輪の花のように微笑んで見せてくれた。
「ほんまに…ほんまにありがとう」
「どういたしまして竜華」二人は唇を合わせ、ずっと寄り添っていた。
後日、竜華から手編みにマフラーをもらう。寒い日は陣はそれをいつも首に巻くようになった
余談ではあるが、竜華に妙なアドバイスをしたセーラは地獄を見たらしい。内容は本人の口から語られることなかった。