放課後の部室で陣はいつものように対局をしていた。
「くそ~勝てねぇ~」一樹
「ありがとうございました」後輩A
結果はいつも通りであった。しかし今回はこれに
「本当に強いですね先輩は」二条 泉が加わっていた。
「そら、現時点で泉が陣君に勝てるようなら全国個人戦、優勝も夢やなくなってまうで」竜華
「本気の陣に勝つ、それは私ら…それこそ千里山高校麻雀部部員の目標やからな」怜
現在の千里山高校の頂点は陣であるのは疑いようのない事実である。
「目標か…なら頑張って君臨し続けないとな」
笑っている陣であった。
「ちょっと質問ええですか?」
「うお、何時からいたんだ船久保!?」一樹
船Qの登場。
「対局が始まってから、ずっといましたよ。それで質問なんですけど…」
「なんだ?」
「成瀬先輩は何時から麻雀をしてたんてずか?」
「何時から?」?マークを浮かべる陣
「はい、うちが一年間成瀬先輩の強さを研究して結果はそれは膨大な数の経験からくるものだという結論に行き着くました」
船Qの話に周りは静まる。陣の強さは誰もが知りたいことであるからだ。
「続きを…」陣
「はい、それには もの凄い数の人と、生で対局しなければなりません。」
様々な人と打つならネット麻雀をするのがいい。しかし、ネット麻雀では相手の牌の情報しか、入ってこないので生で対局するときに受ける相手の存在感や威圧を感じることが出来ないのだ。これだと相手の本当の強さがイマイチ解らないなことがある。存在感や威圧に慣れるためにも生で対局することは重要なのである。
「ですが成瀬先輩の年齢でそこまで、対局経験を積めるとはうちは思えんのです。それ故の質問何です。先輩は何時から麻雀をしていたんですか?」
船Qは完全に研究者の顔をしていた。
「…もの心ついた時には牌を触っていたな」
陣はゆっくりと話しだした。
「ルールを覚えてまともに対局出来るようになったのは四歳くらいだな。そのときは師範の道場の門下生と打っていたな」
「でも、それやと打つ人は門下生の人だけやね」竜華
「ああ、五歳までそうだった。色んな人と打つようになったのはそれからだ」
「なにがあったんですか?」
「師範の知り合いの老人ホームに行くようになったのが始まりだな」
回想
源三に連れられ老人ホームにきた陣(6才)
源三が知り合いと話しているので暇潰しに周りを見ていると麻雀をしている人逹がいた。
「まーじゃんだ」
陣は近づいて行き、対局の様子をじっと見ていた。そうしてると対局をしていた一人が陣に気づく。
「坊や何をしてるだい?」老人A
「まーじゃんみてました!」
「ルールが解るのかい?」老人A
「しはんにならいました。たいきょくもしたことあります!」
「そうか、そうか…打ってみるかい?」
「やりたいです!」
この計らいにより対局に参加する陣であった。
源三が陣を探していると、麻雀卓のある場所に人だかりができていた。
「なんじゃ、この集まりは?」
周りに聞くと、
「子供が対局しとるです。珍しく対局相手だから、みんな、こぞって打ちたがってるんです」
源三 話で対局をしている子供が陣だと気づき、人だかりの中に入る
「ここにおったか」
「あっしはん、いろんなひとと、たいきょくできてたのしいです」
声をかけると楽しそうに対局している陣がいた。
「源三か、なかなかやるのをお前の孫は「ろんです!」やられたわい」
「二回目の直撃じゃ交代せい!」
老人側は二回、直撃をツモなら三回、受けたら交代という特別ルールを作っていた。この老人ホームかなり巨大な施設なので住居者も多い、対局相手はいくらでもいるのであった。
陣は帰りの時間になるまで打ち続け、帰りは源三の背中で爆睡していた。
回想終了
「老人ホームに対局相手がたくさんのいることを知った俺はそれ以来、師範にねだって、暇な日に師範の知り合いがいる老人ホームに連れってもらい対局をするようになったんだ」
「そら、いろんな人と打てるわ」怜
「陣の地獄の練習メニューに老人ホームでも対局があるのはそこから来てるだな」一樹
「人生経験豊富な入居者の中にはプロ並の人もいたからな。対戦相手としては申し分なかったな」薫
「それで、いくつくらい回ったんですか?」亮
「県外を入れれば43の老人ホームを回ったな」
「よっ43ですか!」船Q
驚愕のする数であった。
「複数回行った場所もあるから対局数は……もう覚えてないな」
「それだけ回っていれば当たり前や」
怜は驚きを通り越して呆れていた。
「なるほど、質も量も素晴らしいものがありますね。成瀬先輩の強さの理由の一つがわかりました」
何度も頷く船Qであった。
「老人ホームですか私も行ってみたいですね」泉
「望むなら、今週の土日でも行ってみるか?」「いいですか!?」
「ああ」
泉の参加が決まった。そうしたら、
「部長、俺も参加したいです!」
「私もお願いします!」
参加希望者は一気に増える。
「いいけど、まさか他にも行きたい人いるか?いるなら挙手してくれ」
そうすると、かなりの人数が挙手する。
「こんなにいるのか、これは女子の部室にいる部員にも聞いた方がよさそうだな」
「なら、うちが聞いてくるわ」竜華
「頼む」
参加人数かなり増えそうである。
その週の土曜日、陣は男女麻雀部の部員を引き連れ老人ホームの前に来ていた。
「あらあら、沢山来てくれたのね」
「すいません、長谷川さん。希望者を募ったら予想以上の人数になってしまって…」
あれから参加者を男女両部で募ったら35人が参加を希望したのだ。
申し訳なそうに謝ると
「いいのよ。沢山来てくれた方が助かるわ。なにしろ対局したがって住居者の人逹は沢山いるんだから」
「そう言ってもらえると助かります。早速いいですか?」
「ええ、お願いするわ」 「わかりました。これから中に入る。対戦相手はもう中で準備万端の状態でいるそうだ。中に入ったら、直ぐに対局してくれかまわない」
「「「「「「はい」」」」」」」
中に入ると。
「まちかねた~」
「早速頼むぞ」
「まだまだ若い者には負けんわい」
やる気十分、対局する気満々の方々が迎えてくれた。
「好きな席について対局開始だ!」
陣の号令で部員逹は適当な席について対局を始めた。
「陣、はよせい」 「今、行きます」陣も顔見知りの杉田に呼ばれ、対局に入る。
「負けた、負けた陣はどんどん強くなるのう」杉田
「ありがとうございます杉田さん」
「それで次はどんな技を考えているんじゃ」
「次…ですか?」
「なんじゃ考えておらんのか?向上心は忘れては成長止まってしまうぞ」
「ご忠告痛み入ります(何だこの違和感は)」軽く答えながらもその一言に陣は何か感ずるものがあった。
その日の対局は部員逹にとって実りのあるものとなったようで帰り道では部員逹は何かを掴んだような顔をしている者逹もいた。
「なあ陣君?」竜華
「なんだ?」
「部員の練習メニューに老人ホームでの対局を入れるってことはできへんかな?」
竜華は今回の対局で部員達が得た物の重要性を他の部員達にも掴ませたいと考えたのだ。
「……なるほど!それはいいな」
「確かにいつもと違う人と打てるなら練習にはもってこいですね」船Q
「そうだな、早速、顧問に提案してくる 」
「うちも行く!」
陣と竜華は引率の顧問職員に提案しに動いた。
この提案はすぐに職員会議で議論され、可決された。老人ホーム側も住居者の気分転換になるので喜んで受け入れてくれた。 それ以来、千里山高校では月に数回、老人ホームで住居者と対局するようになる。この練習は陣達の卒業後も続けられ、千里山高校の伝統の練習となる。
その日の仲間たちとの帰り道、陣は杉田に言われたことをずっと考えていた。普段と違う陣ではあったがそれは源三でもない限り気づけないような本当に小さなものだった。それ故に長年の付き合いである一樹や亮を含め、気づく者はいなかった。
「(さっきから陣君、なんやいつもと違う)」ただ一人、竜華を除いては
考えたすえ、竜華は帰り道で陣と二人になったときに疑問をぶつけることにした。
「(じ~)」竜華は陣の顔を改めてじっくり観察する。
「なんだ、俺の顔をじっと見て?」
「悩み事があるなら話して欲しいや」
直球で攻めたのが聞いたようで陣の余裕が消える。
「……隠してるつもりだったんだけどな」
「解るのわ、陣君のことやもん」
陣は一度、驚いた顔をしたあとに「そうか」優しげな笑みを浮かべる。
「話してくれへんか?誰かに話すだけでも楽になるはずや」
「そうだな、でも誰かじゃ無理だ。竜華じゃないと…聞いてもらっていいか?」
「うん、もちろんや♪」陣が自分に相談してくれる、それがなにより嬉しいようだ。
陣は自分の悩みを話した。
陣の悩みとは、もろばれだと思いますが