気づくとギレンでドズルが怒鳴ってきた。   作:7576

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技術本部長 アルベルトシャハト

「よくきたな、アルベルト。急に呼んですまない、緊急事態だ」

 

右目に片眼鏡をかけた老人、第一印象は、これでやせこけてればマッドサイエンティストだ。

 

実際は国を思う清濁併せ呑む立派な大人だろうがな。

彼の出てたアニメのイグルーでもそんな雰囲気があった。

それにしてもギレンの第603技術試験小隊の扱いはひどかったな。

MSの隠蔽のためとはいえ秘密兵器だとかいって渡した兵器をなんら使わなかったからな。

必要な事ではあったとは思うが……。

まぁコロニー落としやら毒ガス虐殺までやってるんだから何も言えんな。

 

「いえ、技術本部と総帥府は目と鼻の先でございます、それほどの苦労ではございません。して緊急事態とは……」

 

ここは盛大にギレンのカリスマを発揮するところだな。

 

「連邦の技術は私の予想を遥かにこえていた……連邦のV作戦については聞いているな。その調査によって連邦のMSの情報を手にいれることができた」

 

総帥府はしきりに連邦のV作戦、MS開発計画は難航し、連邦製MSはろくに歩けもしないとか物をつかめもしないなどとプロバガンダ放送をしていた。

 

「はっ、やはりV作戦ですか。連邦のMSはそれほどの脅威、でしたか」

 

V作戦関連の話題だとは流石に想定して来ていたか。

 

「そうだ、これを見ろ」

 

そうしてデータパッドに俺が原作知識とギレンの知識を使って描いた、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンク、加えてジム、さらにはボールの予測性能、ついでにホワイトベースをアルベルトに見せる。

実際はどうとかはわからないし素人の描いた大雑把なものだが彼には想像がつくのだろう。

 

「RXシリーズ? MS運用母艦? こ、これはっ! MSのみにミノフスキー粒子の縮退、解放のプロセスをさせずに解放のみMSにさせるエネルギーcapによるビームライフルの実用化に成功……学習用コンピュータ……なっ、ルナチタニウム合金製のMS! 連邦はガンダリウム合金と呼ぶつもりと、……これは! 我が方の兵器が無力化されますぞ! ガンダリウム合金と名付けたくなる気もわかる性能ですな ……それにコアブロックシステム……いやはやなんとも高価で効果的ですな……なるほど。これは技術実証機でありこれを基にザクを軽く凌駕する量産型MSジムの開発ですか。これももしやすると開発中の次世代量産機ゲルググを少し下回る程度の性能になるのではないですか!それにこのボールとかいうものは低コストでザクにも勝ち得る性能……ありえない! あのMSをバカにしていた連邦が、ここまで…! それにミノフスキークラフト内蔵の単独での大気圏突入、離脱が可能な母艦まで…………いや、可能ということですか、我々でもやろうと思えばできたかもしれないことでしょう。ふぅ、連邦は我々という手本をみてより効率的なMS運用体制を確立しようとしているということですな…………」

 

あまりの驚きにアルベルトはギレンの前だということを忘れて科学者としての顔が出ているようだ……。

データを見て独り言を呟き始めた。

 

こうした原作知識を使うことに後悔はない。

どのみち俺の知る歴史を変えるのだ、早期にこの知識を味方に知らしめ対策を講じねばならん。

 

それはそうと、ジムとゲルググが同じぐらいの性能か……ガンダムと同じぐらいの性能はある傑作量産機であったはずだが。

ルナチタニウム合金を用いていないゲルググがガンダムと同性能な訳がないのか。

ジム強すぎって感じだが、連邦も流石にザクと同性能な機体を量産しようとはしない。

こちらがリックドムだって量産開始してる中ではなおさらだな。

俺はザクマシンガンで凹みもしないガンダリウム合金に恐怖している。

当然だ、実弾兵器はほとんど効かないとみていいだろう。

いまあるジオンの兵器では撃破は非常に困難だ。

射撃戦では実質的にはビーム兵器のみが有効だろうし、接近戦でのヒートホークもビームサーベルとの鍔迫り合いができるのは初めのうちだけだ。

ビームサーベルの出力が上がればヒートホークごと断ち切られるらしいからな。

現状ガンダムは戦艦のメガ粒子砲がまぐれで当たるとか関節部に爆弾を設置しまくるとかでもすればなんとか倒せるという感じの機体で正面から戦っても無双されるだけの状態だ。

このお高いチート機体め。

本当にMSとやらはいままでの戦場の常識をぶち壊すんだな。

 

「このガンダムは一機でもあれば現在開発中のMA以上の活躍ができるだろう。このままジオンが手をこまねいてなにもしなければ、という注釈は付くがな」

 

困惑するアルベルトに俺は語りかける。

 

「良いか、私はこの事態を想定していた。この事態に対処する為に現段階での開発計画はほぼ全て凍結、防諜や可能性を期待していたが、すでにそれは形骸となった。それに使っていた全てのリソースをこちらに回す」

 

そういって俺はこの先の方針をアルベルトに渡す。

ちなみにビグラングの元になった戦艦以上の超弩級MAとかを知った時はニヤリとしてしまった。

ロマン溢れすぎていて凍結するか迷ったが、ひとまず凍結だ。

建造途中ではあるが資源として使われる事になるだろう……。

話を戻してロマンよりもまずはこっちだ。

フィールドモーター駆動、マグネットコーティング、全天周囲モニター、脱出ポッド、ムーバブルフレーム、エネルギーパック、とりもち、ビームサーベル、オーキス、メディカルポッド、索敵衛星、ビーム砲台、MS戦術の集積技術、兵站やMS操縦ソフトなどの統合、さわりだけだが脳波コントロールに関しての研究、要はニュータイプ関連の研究も。あとムサイは射角がひどすぎる、安価であろうしミノフスキー粒子下では射角を狭めて狙いやすくする狙いもあるだろうが、弾幕を張れない。

弾幕関連のセリフを俺は好きだったのだ。

というわけで新MS運用艦艇の研究もだ。

主だったものはこれだ。

他にもまだまだある。

 

だがそれでもジオンで現在進行中の計画よりも数は減っているし一つの道筋に沿ってもいる。

 

 

「これについては総帥府からも人を出す、父上にもキシリアにも話を通し、ジオン全体で技術的な対処を行う。5日後にMS開発に関しての総会を行う、アルベルトも来るのだ。驚くのも無理はないがな、この一件、ジオンの命運がかかっている。この5日でできる限り技術本部の新体制を整えるのだ。良いな? 何かあればすぐに報告しろ」

 

ギレンのカリスマでアルベルトの愛国心を揺さぶる。

 

「……はぁ…………はっ! 畏まりました!」

 

そうしてアルベルトは嬉々として部屋を出ていった。

データパッドで総帥府に指示を出し、人をつける。

防諜と監視だ。

技術本部は独立した部署だ。

そのため出向という形でいろいろな派閥が入っている。

これまで以上に敵と味方の判断、利用しなければならない。

 

いつの間にか来ていて、黙って俺をみていたセシリアは優秀だ。

 

「セシリア、キシリアはあとどのくらいで着く」

 

「明日には到着するそうです」

 

「明日、か。キシリアめ、思ったよりもかかる。ではそれまでに父上に会う、用意をしてくれ。それとキシリアに秘密通信でこれを送れ。『フラナガン博士にこれをみてもらえ』と添えてな」

 

渡すのはサイコフレームの発想を書いたものだ。

この時代まだサイココミュニケーターは試作型の設計が開始されたのみで完成系などフラナガン博士の頭の中のみだろう。

フラナガン博士にしかわからない。

いくら素人が描いたとはいえそのサイコミュの発展系、アニメの宇宙世紀においてのニュータイプ技術の完成系など見せられたら、大急ぎでキシリアをせっつき、こちらに来るだろう。

 

父上との会談にキシリアの説得……あぁそれとルナツー襲撃作戦を中止、もしくは作戦目標の変更をせねばならんな。

 

ルナツー襲撃作戦。

地球降下作戦を終えたジオンは艦隊決戦に敗れた連邦艦艇が篭るルナツーに襲撃を行う。

予想外にも要塞化されていたルナツーの防御を突破することはできずにこの作戦は失敗する。

アムロ達がルナツーに逃げ込む前に行われた作戦だ。

あのシーマ・ガラハウの海兵隊も参加していたようだ。

アニメでアムロ達を追ったシャアが簡単にルナツー内部に入れたことからそこまで要塞化されているとは思えないが……この襲撃作戦はあと一歩だったのか?

それとも襲撃後ゆえに単に警備が緩んでいただけでこの作戦の戦力では落とせないのだろうか。

連邦も苦しい戦いらしいが……。

 

データパッドで指示を出す。

これはドズルがうるさそうだ。

海兵隊を出しているキシリアもだな……。

 

父上デギンと話す前にこれとはザビ家の仲を良くするのは大変そうだ。

だがやらねばならん、スペースノイドの自治独立の為には、ザビ家は争いあってはならんのだ。

主な争いの原因はギレンにあった。

デギン、ドズル、キシリア、ガルマ、皆優秀な人間だ。

一致団結しジオン公国を守るのだ。




感想に気付かさせていただいた説明不足な点。

今回ギレンはあえて嘘をつきました。
ガンダリウム合金はまだ連邦では呼称されていません。

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