この戦争はもうあと半年ほどで学徒動員、コロニーの兵器化、父上殺しまでして敗戦を迎える。
半年もないか……数ヶ月だ。
気を引き締めなければな。
「セシリア、話がある。明日の夕方緊急の演説を行う。それに併せて議会に各種法案を通させよ、これだ」
議会はギレンが掌握している。
見せかけの議論が行われるだけの状態だ。
内容は細々といろいろあるが目玉は練兵システムの実験だな。
学徒動員に備えたものだ。
効果は出るか分からないが可能性があるのはどんどんやる。
「か、かしこまりました。しかし、連邦のV作戦はそれほどなのですか? それにどこからあの情報を……いえ、差し出がましい真似を致しました。指示を出してまいります」
そういって立ち去ろうとするセシリア。
ギレンの秘書セシリア・アイリーン、完全なギレン派閥でその忠誠心と言えば自らギレン暗殺計画のトップと称して反ギレン派の一掃、そしてキシリアの逮捕を狙うほどだ。
ギレンの愛人という話もあるが、よくよく思い出すと実際そうらしい、こうなんというかそういう記憶があるのは不思議なものだな。
びしっとした秘書中の秘書、という感想よりナイススタイルの秘書だわ。
でも戦時中という事であまりそういう事はもうしてないみたいだな……うむむ、残念。
死亡フラグまっしぐら、勝ちの目が見えない中で
こんな事を考える余裕があるのもギレンのIQの高さか。
「よい、そうだ。それほどのことだ。お前には話すべきだろうな。私は未来を見たのだ。少し私の部屋に来るといい。今晩どうだ」
セシリアにはこれから先の事を、ありえた未来を教えておくべきだろう。
信じるかどうかはわからないが。
親衛隊のデラーズにも伝えておくべきか……。
デラーズは1年戦争終結後、自ら残党を率いて連邦に戦いを挑んだ過激なジオン主義者と呼んでもいい男だ。
裏切りはしない男だ。
「未来? かしこまりました。明日と五日後の総会の細かい手配を終えたらお伺いさせていただきます」
そうしてセシリアが去っていく。
私室に自然と来てくれるということはそういうことかもしれない……ぐへへ、男としてこんなに嬉しい事はない。
なんてな、こんな馬鹿な考えが浮かぶのはIQの高さ故の思考の余裕だな。
まぁ俺は童貞ではないからもしそうだったら嬉しいだけではあるが……俺はもうギレンだから、セシリアを騙している訳じゃないから罪悪感なんてないぞ。
あぁ、そんな馬鹿な考えをして思い出したが、ガルマに連絡を入れるか。
ザビ家の仲を取り持つキーパーソンだ。
そんな考えはおくびにも出さず去り際のセシリアに先の戦闘シーンとデータを渡す。
「ああ、そうだ、MS総会に来る奴らが渋るようならこの映像を送っても良いぞ、それと仕事を終えたらデラーズも呼ぶのだ」
ギレンへの信の厚い、2人には同時に話してしまおう。
内容を信じる信じないにしろ、未来を知る人間が増えるほど未来は変わるだろう。
良いか悪いにしろジオン派の人間に知っている人間が増えれば連邦の腐敗を終わらせる可能性も高まるだろう。
そういえば俺はギレンの影響を受けているのだろうか。
この連邦への憎しみ、以前の俺はこんなにもジオン派だっただろうか?
イグルー、特にヅダ好きだったのは確かだが……。
そんな事を考えても仕方ないか。
俺の命がかかってるんだ。
死んだら元の世界にーとか神様と出会ってなんか言われるとかそういうテンプレ的な展開になるのかどうかなんて分からんしな。
やる事をやるしかない。
セシリアと別れた俺は通信室に向かった。
ガルマ・ザビ
アメリカ大陸にて地球方面軍を配下に持つ。現地の企業や政界にコネを、親ジオン派を作るために派遣されている。まぁ戦いの経験のないガルマに経験を積ませようという意図。南米ジャブローの近くにザビ家がいるという圧力をかけるという意図。宇宙のザビ家内の政治的戦いから逃れさせるという意図。といった複雑な理由で派遣されている。実際には地球方面軍はキシリアの指示のもとにあるし、ガルマは見てるだけな状態だな、甘やかされている訳だが、本人はザビ家の職務を果たそうとしている。
ガルマはおぼっちゃま、政治的にクリーンだからな。
ガルマが死ねばザビ家内での政治的争いはより醜くなるだろう。
生き残らせなければ、キャスバルに殺させはせん。
「地球方面軍司令、ガルマ・ザビ大佐につなげ」
しばらく待った後、ガルマが通信に出た。
「兄上、突然どうしたのですか。わざわざサイド3からこんな盗聴の危険のある通信を……」
ガルマだな、少し伸びた髪の毛をいじっている。
緊張しているのが丸わかりだ。
優秀で冷酷な兄弟の中でただ1人意図的には手が血で汚れていない男だ。
少しからかってやろう。
「ガルマ、お前の様子が気になってな」
「な……何事ですか、いえ、元気にやってますよ、兄上。地球はいいところです。色々、大変なことはありますが」
まるで明日、空からMSが降って来そうな驚きだな。
それほどか。
記憶にある分にはギレンはガルマになんら期待してない、というか相手にしてなかったな。
アウトオブ眼中だ。
ガルマには辛い事をした訳だな。
「そうか、地球の醜い金持ちのエリートの相手は大変だろう。お前はよくやってくれている」
「い、いえ、兄上達はそれより大きなものの相手をなさっているのです。私もザビ家の一員として負けるわけには行きません」
「そうか……」
「…………」
会話が続かないな。
ギレンにとってガルマはあれだ、純粋すぎて手がつけられない。
どんなに話してもどうしても高圧的になってしまうだろう。
こうなったらシンプルに話すしかないな。
「ガルマお前には期待している。密命を渡す、生きろよガルマ」
これがギレンにできる最大の譲歩だ。
「兄上? いえ、はい。もちろんです。ザビ家の一員として恥じない行いを務めます。その密命果たしてみせます」
そうしてガルマとの通信は終わった。
密命の内容はアプサラスの開発援助命令と持久作戦命令だ。
今までの謝罪も書いておくか、ガルマのやる気が出るだろう。
あとイセリナとの恋の後押しもか………。
それにしても
「ザビ家として恥じぬ行いか……」
ギレンよ。
大量虐殺を行いながら優良人種を自称するとはなんなんだろうか、弱肉強食か?
「フッ、動物と変わらんな」
提唱するならそんな物よりもニュータイプ論を推す。
まぁそれもおいおいだな。
私室に戻った俺はセシリアとデラーズを待った。
プロットなんてくだらねぇぜ! からプロットすごいになりました。
少しずつ書いていこうと思います。