とある魂魄(タマシイ)の桜花両刀(デュアルソード) 作:蒼埼
はじめましてな方もそうでない方もこんにちは、白玉楼で庭師をしています魂魄妖夢です。
突然ですが、これを読んでいる貴方がたに質問します。もし、いきなり自分が知らない世界に放り込まれたらどうしますか?戸惑いますか?焦りますか?
わたしは……
「よぉ、きみかわいいねぇ〜」
「良かったらオレたちといいことしようぜぇ?ひゃはは」
「だ、誰か…助けてくださーい!!」
訳のわからん男どもの集団に囲まれている少女の近くで呆れております。
◇
気がついた時、すでに私はここにいた。
幻想郷では見たこともないような高い何か。
白玉楼では嗅いだこともないようなニオイ。
そして見るものすべてが奇天烈で鮮明すぎてアタマが追いつかない。
が、それでも分かることが一つだけあった。
(八雲紫め、彼奴は何を考えているんだ……)
そう、こんな所業が為せるのはただ一人、我が主のご友人であり幻想郷最古最強の大妖怪「八雲紫」以外出来るわけがないのだ。賢者と言ってもそれが本当なのか些か疑問を抱いてしまう。
それはそうと
「誰か〜!誰か助けてぇ!!」
「へへへっ、無駄だぜぇ。こんな人気のない場所にゃあ誰も来やしねぇよぉ」
どうやら賊の何かに絡まれてるようだな。しかし、囲んでいる輩はだらしのない顔をしている。見ていてイライラする。そして思わず首を突っ込んでしまった。
「あの、失礼ですが。先ほどから何をしようとなさっているのですか?」
『のぉおわぁああっ⁈』
よほど驚いたようだ。まあ、気配を消して近づけばこうなるのもおかしくはない話だが。
「先ほどからおとなしく聞いていればやましい方々ですね。人気のない路地裏で女子ひとりに寄って集るなど卑しい賊かそれ以下の下衆ですよ」
「お、おい……黙って聞いてりゃ難しいがシャクに障ることズバズバ言ってくれんじゃねぇのよ!ええ⁈」
「ナめんじゃねぇぞ⁈ゴルァ!」
やれやれ、このような挑発に乗ってくる側の連中だったか。困ったもんだ。
「……黙ってくれませんか? 私、今かなりイライラしていますので、それ以上ゴチャゴチャ言うなら弱者とて容赦しませんよ?」
「はァ⁈ コスプレ幼女に何ができるってんですかぁ?ひゃははっ 」
「発炎能力で黒焦げだぜ!!」
能力?ほう、この世界でもスペルカードでも使ってくるのか?なら、こちらも……って、あれ?
「ない、私のスペルカードが…ッ⁉」
「はあ? 何だそりゃ? とりま手が出ないならこっちからいくぜ!そぉらよぉ!!」
下衆のひとりが前動作もなく炎を放つ。そして私を包みこむように激しく燃え上がった。
「ちょっと!アンタたち何してるのよ⁉」
「何をって?邪魔者を黒焦げにしてんだよ!」
「ふむ、なかなか面白い能力を使うのですね。正直、少し驚きましたよ」
まあ、私「自身」が燃えてるわけではないんだけど。
「ちょっ、はァ⁈」
とりあえず少女を救い出したことだし、これからどうしてやりましょうか。
「ど、どうやって?」
「どうもこうも、私の半身を同じ形に仕立てておいただけですよ」
とりあえずこれ以上やられても厄介なので、こちらから制圧するか。幸い、楼観剣も白楼剣も帯刀している。柄で何とかしよう。
数秒後
「なんだ、こんなものか……もう少し強いと思ったのに。つまんないの」
柄で鳩尾をちょっと突いただけで音をあげてしまうなんて、鍛え方が足りないんだな。全く、男子たるもの鍛えておかないでどうすると言うんだ。
「あ、あの!!」
「ん?ああ、貴女は……」
「助けてくださって本当にありがとうございます!あたし、佐天涙子って言います!貴女は?」
突如こちらに距離を縮めてきた少女に対してさすがの私も驚いた。
「わ、私は……妖夢。魂魄妖夢です」
「ようむ?不思議な名前ですね」
「まあ、私はそもそもこの世界の住人じゃ……」
「えっ、ウソっ!!この世界の住人じゃないんですかっ⁉」
「みょん⁈そ、そうですけど……何をそんなに驚いているんですか?」
(いまの、かわいかった……)
「いやーっ、あれですよ!学園都市七不思議のひとつ!【学園都市の住人が超能力で異空間に飛ばされて、別の世界の住人と入れ替わる】ってやつです!!」
それって要は神隠しじゃないか。と言うかあのスキマ妖怪、こんな所からも餌をとってきていたのか。本当に守備範囲の広い賢者だなぁ。
「はぁぁっ!まさかまさか!こんなところで本当に見れるなんて!すごい!これは自慢出来る!!」
「あ、あの……はしゃいでるところ悪いのだが、ここは一体何処でさっきのあれは何だ?」
「ふぉおおっ、異世界人きたーー!」
「……落ち着いてくれない?斬るよ?」
「うわぁ、分かった分かった!分かりましたからその刀しまって!てか、それホンモノじゃないですか!!銃刀法違反で捕まっちゃいますよ⁈」
「じゅぅ……何です、それ?」
「それも知らないなんて……ホントに異世界人なんですね。あ、そうだ立ち話もなんですからカフェでお茶でもどうです?」
かふぇ、とは何か分からないがとりあえず一息つくことは出来るみたいだな。彼女の好意に甘えてここはひとつその場所に向かってみよう。
■
「お待たせしました!チョコフラペチーノでいいですよね?」
「ふら、なんですか?フランドールがどうしたんです」
「ふらんどーる?何ですか、それ?お人形さんの名前とかなんですか?」
「あー、すみません、失言しました。これは話が長くなりそうですから辞めておきましょう」
飲み物と佐天涙子から聞いていたから飲めるものかと思ったら何やら奇妙な器に入った不思議なモノが出てきた。
どうしたらよいものかとジーッと睨み合っていると彼女も気づいたようで
「あっ、これはですね。こーやって食べるんですよ」
と、ふらぺちーのをすくうようにして口元に運んだ。なるほど、かき氷のようなモノなのだな。
同じように食べてみると、今まで食べたことのない不思議な感覚に包まれた。
「ふふふっ、魂魄さん。嬉しそうで良かったです」
「み、みょん⁉ななな、何を言ってるんですか!佐天涙子さん!」
「だってぽけーってしてましたよぉ?」
「みょん、言い返せないです……」
(なにこれ、なにこの可愛い生き物……初春に負けないくらい可愛いんですけど!)
にやにやしている佐天涙子に何かイヤなものを感じた私はなるべくふらぺちーのを食べることに専念しようと試みた。
「ねえねえ、魂魄さん」
「……なんです?」
「みょんちゃんて、呼んでいいですかっ⁉」
ぶほぉっ、と私は口に含んでいたモノを思い切り吹いてしまった。即座に横を向いておいて正解だった。何を言い出すかと思えば
「けほっ、けほっ……なぜそうなるのですか⁉」
「それはあなたが可愛いからですよ!みょんちゃんさん!!」
「許可すらしてないのに勝手に使われてます!しかもびっくりするくらい違和感しか残らない呼び方になっちゃってますし!」
「ふぅむ、魂魄さんよりしっくりくる!よし、これで行こう!」
「も、もう好きにしていいよ…」
なんだこのひと、幽々子さまみたいに面倒だ。つ、疲れる。
「えへへっ、みょんちゃん。やっと敬語はずれたね」
「んぅ?……ッハ、し、しまった!すみません!」
「あー、いいよいいよ。敬語なんて使わなくてさ。なんか同い年みたいな子に使われると疲れちゃうからさ」
む、むぅ……どうやら気づかぬ間に苦労をかけたみたいだ。申し訳ない。
「そだ!みょんちゃんもさ、あたしのこと涙子って呼んでよ!」
「……はい?」
「涙子って呼んで!」
「はあ、なんでまたそんな唐突に」
「リピートアフターミー!るーいーこっ!!」
ダメだ、これは人の話を聞かないタイプだ。こういう時は反抗してもムダだ。おとなしく従おう。
「る、る……るい、こさん?」
「んーんぅ?」
「ええい、もう!ほら、これでいいんでしょ?涙子!」
「えへへっ、怒ってるみょんちゃんも可愛いっ」
「んなっ、ったく……」
「そう言えば、みょんちゃんはどこで暮らすの?」
「………………」
しまった、忘れてしまっていたわけではないがここは異世界。つまりは、私の居場所なぞ何処にもない。参ったな、どうしたものか
「ねぇねぇ、何なら私の部屋に来る?」
「ほ、本当⁉」
「もちのろんですともさ。だがしかーし!私のお願いを聞いてくれたらね!」
むむっ、ここで交換条件を引き出してくるとは涙子め……現状において私はかなり不利なところにいる。それを承知の上で好条件を出して自らの願いも聞いてもらおうとは、なかなか出来る。私は一息吐いてから答えを出した。
「…….そのお願いとやら受けてあげる」
「マジですか!ありがとう!それじゃあ……」
さて、一体どんな条件なのかな?
「服を買いに行こう!!」
……は?
改めまして、どうも作者です。
今作については亀速更新となると思います【思いつきで書いて行きますので】
【八雲紫との関係について】
ご指摘ありましたので説明します。言葉足りずすみません。
紫と妖夢の関係についてなのですが元来真面目な彼女にとって胡散臭い紫はあまり好感の持てる人(?)ではないということから。
幽々子が仲良くしてるのと相手が賢者であるということで、一応「主の友人」として括っていると考えていただければ幸いです。