とある魂魄(タマシイ)の桜花両刀(デュアルソード) 作:蒼埼
ハロー、みんな!
Level0の佐天涙子でーす!
今日はね、すっごくステキな人に巡り合ってしまったのですよ!
名前は……魂魄妖夢さん、通称みょんちゃん!
スキルアウトに囲まれてた私を颯爽と救いだしてくれたの。まさに王子様みたいだったんだ!
で、いま恩返しの意味も込めていまみょんちゃんに服を買ってあげてるところです。以上あらすじ終わり!!
「涙子、誰に向かって話してるの?」
「あーいや、全然!何でもない何でもない!ほいじゃ行っきましょー!!」
「えっ、ああっ、ちょっと!そんなに引っ張らないでー⁈」
■
「……あのさ、涙子」
「………」
「いくら私でもこれは困る。確かに動きやすいし、この世界には溶け込めてるよ。でもね?」
「…………」
「なんで男物の服を着なきゃいけないのかな⁉」
「っとと、いっけない。似合い過ぎてて意識飛んでた」
「なんと脆い精神力でしょう」
「ばっちぐー!完璧だよ、みょんちゃん!似合ってるから全然問題ないよ!」
「ああ、やっぱり人の話聞いてない……」
涙子に渡された服はどれも男物という場所から持ってこられたものだった。じーんずに黒のてぃーしゃつあとねくたいと白のわいしゃつ、ねっくれすと黒ぶちの眼鏡を渡され、着替え終えて見ればあら不思議、男性のような私が居たわけだ。
「どうしてこうなった!!」
「えー、だってみょんちゃんって見た目かっこいいんだもん。黙ってれば男のコよりカッコいいぞ!というかあたしも最初にあんな服装してなかったら男の子と勘違いしてたよ」
「男子に勝る男らしさとは何なのだ……」
精神的にやられている私のところへにこにこしながら私のそばへとやってくる涙子。紙袋には私が最初に着ていた服が入っている。ちなみにすべて買ってくれるとのことらしい。
いろいろ複雑なところだがありがたいことだ。
「ねね、みょんちゃん。このまま何処か行こうよ?」
「そうは言われたって……私は涙子が連れてってくれるのなら何処へでも行くよ?」
だって私はこの世界のことほとんど知らないんだから。ついて行くしかないんだし。すると涙子は目をパチパチさせてから
「……み、みょんちゃんのバカ!て、照れるじゃん!もぅ、ばか」
「どういうこと⁉ 理不尽にも程がある!」
しかし、私の意見など聞こえておらず。涙子はというと何やら顔を赤くさせながらにこにこしていた。正直、なんか……困るね。
「やれやれ、気苦労が絶えないな……この世界は」
そう言って楼観剣と白楼剣を取り上げようとしたその時
「そこのあなた!動かないで下さいまし!」
突如、金属の針のようなモノが私に向けられ……宙に浮いている。これはどうやっているのだろうか。
「風紀委員(ジャッジメント)ですの!あなたを銃刀法違反の容疑で拘束致しますの!」
「し、白井さん!ちょっ、待ってください!」
その刹那、髪を二房に結いた少女が現れた。気配に気づくことなく私の背後に来るとは。一体何者だ?
「佐天さんも下がっててくださいな?それと、初春に感謝することですわね。この人を見つけたのは初春なのねですから」
「う、初春が⁉」
どうやらこの人は涙子のご友人のようだ。なら手荒な真似はするわけにはいかないな。
「涙子、大丈夫だよ。そこで待ってて?」
「で、でも!!」
「ほう、このLevel4のテレポーターである白井黒子を前にして随分と冷静で居られますのね?」
「まあ、特に恐れる必要もありませんしね。この程度の脅しなら」
幻想郷での闘いに比べれば大したことはない。うん、本当に……死にかけることもザラにあったなぁ、向こうは。
「強がるのはお止しなさいな、私の手に掛かればあなたの身体のなかにそれをテレポートさせることも簡単ですのよ?」
「そのてれぽーとというのは察するに空間移動系の力であると見受ける。間違いないかな?」
(何なんですの、この人…….あまりに冷静すぎます。今までの犯人とは何か違うような気がしますの)
「空間移動系の力は予め対象となる空間の情報をある程度知っておく必要がありますよね。ではもし……」
(まるで、過去に同じような能力者と闘ったみたいな口ぶり…!!)
「今ある空間を歪められたらとなれば、どうなるんですかね?」
もちろん私にはそんなことは出来やしない、ハッタリだ。そんなことが出来るのはうどんげさんの能力とか霊夢の結界あとはあの賢者ぐらいだろう。さあ、どうやってくる?
「……に……て」
(マズイですわね、このお方かなりの手練れ。下手に手出しをしたとなればさらに多く被害が……)
しかしその心配は大声でかき消される。
「もういい加減にして!私の話も聞いてください!!!」
「……はい?」
「る、涙子?」
緊迫した空気が一瞬にして粉砕される。恐るべし佐天涙子。
「白井さん、私の話を聞いてください!」
「さ、佐天さん?しかし……」
「みょんちゃんも!敵意丸出しにしないで!」
「いやしかし、先に仕掛けてきたのは……」
「問答無用!二人ともそこに正座!」
■
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……し、白井さん!大丈夫です……か?」
頭の花飾りがよく似合う大人しそうな少女……初春飾利が到着すると
「ほえ?」
何故か黒子と見知らぬ男が佐天に説教されていた。
「だいたい二人ともまずはあたしの話をちゃんと聞いてください!」
「ど、どうしてこうなりましたの?」
「奇遇だな、私もそう思ってたよ」
「コラそこっ、話聴きなさい!」
怒っている佐天に正座している黒子と帯刀している謎の少年。もう何が何だか分からなくなっていた。
「あのー、これは一体?」
「う、初春……助けくださいですの」
初めて見る困り果てた黒子を見て、初春は愕然とした。
「白井さん、どういうことですか?私たち銃刀法違反の取り締まりに来たんですよね⁈」
「むしろ、私の方が質問したいですわ」
はぁっ、とため息をこぼす黒子。一向に止みそうにないお説教
(参ったな、これではキリがない。とりあえず涙子を抑えてきちんと話をした方が良さそうだ)
「涙子、ごめんね」
「……ですから、って、え?」
唐突に呼ばれてきょとんとする佐天。そして呼び捨てにされてる彼女を見て新たなショックを受ける初春。そんなことお構いなしに話を進める妖夢。
「敵意を出して涙子を心配させたことは謝るよ。ただ私はもともと異世界の住人、あそこでは凶悪な敵が五万と居るからいざ自分が危険と思ったら自然と臨戦状態になってしまうんだ」
そして隙を見て立ち上がり、涙子の肩にポンと手を置く。よし、ここまでは完璧。魔理沙に教わったお説教脱出術、効果てきめんだな。
「でもここは涙子が暮らしてる世界で、あって幻想郷ではない。私も早とちりをしてしまったみたいだ。ごめんね」
「み、みょんちゃん……」
『げ、幻想郷?』
その言葉を聞いて小首を傾げる二人、何故かジッと見つめてばかりの涙子。
そう私は彼女たちにきちんと説明しなくてはいけない。
私が異世界から来たことを……
■ところ変わってセブンスミストのコーヒーショップ
「えー、つまりあなた様はこことは全く別の世界の、その……【幻想郷】という場所から来られたのですね?」
「ああ、イメージとしてはこの世界でいう昔ながら日本を思い浮かべてもらえばいいと思う」
「ほ、本当だったんですね……異世界から来るっていう七不思議。てっきり創作物かと」
「あたしもそう思ってたけど、これこそ明確な証拠だよっ!!」
「涙子、分かったからとりあえず座ろうか……」
「えへへっ、ついつい」
「でも、その気持ち分かりますよ!佐天さんが羨ましいですもん……」
はて、何のことやら?
「んまぁ、あの類人猿よりはだいぶマシだとは私も思いましたけれども。佐天さんも抜け目がありませんわねぇ」
ジトーッとした目で白井が私を見て来た。その横で何故かニコニコしながら涙子が照れていた。
……まさかとは思うが
「もしもし、ちょっとそこのご両人。何か誤解してないかい?」
「でしょでしょ?私も助けてもらったときは、きゃーっ王子さまキター!ってときめいちゃったもん!」
やっぱり!こうなったか!ああもう油断も隙もあったもんじゃない!
「涙子!捏造するな!私は男じゃない!」
『……はい?』
「私は女だっ!」
「えーっと、あなたは男性ですよね?それとも女装趣味がおありですの?」
ああもう!どうして私は男に見られるんだぁああっ!
「何故ですか!!」
「それはまあ、そのような服装、態度、口調で話されましたらねー?」
「まさかの私自身が根本的な問題⁈」
「え?え?女の子なんですか⁉」
「そうです!私は女です!信じてください!」
「お、お姉様とは違った意味で男らしいですわね」
黒子が呆れ顔でため息を吐いたその直後、何処からともなく雷鳴が響き渡り「不幸だぁーーーっ!」という叫び声が聞こえた。
「あっ、御坂さんと例のヒトですね」
「まさに噂をすれば何とやら、ですね!」
そう言われて妖夢もちらりと、その方角を見た。ツンツン頭の男が茶髪短髪の電撃を放つという異様な光景を目の当たりにした。
「あんの、類人猿んんんんんんん!まーたわたくしのお姉様を誑かしてからに!今日という今日こそは!ほんっとぉおおおおにぃ、許しませんことよぉおおおお!」
ドス黒い波動を帯びた黒子がすぐさまテレポートでその場をあとにした。
「あわわわっ、これはまた大変なことに!」
「愛憎渦巻くドロドロの三角関係キター!」
きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぎはじめる二人を他所に妖夢は黒子が出していた気配に何かを感じ、すぐに黒子のあとを追いかけることにした。
「……二百由旬の一閃」