この素晴らしい世界に祝福を? ~KAZUMAの場合~ 作:新世紀
異世界転生。昨今ではま~た異世界ですか、はいはい俺tueee俺tueeeいじめられっ子乙などとリアル派思考()な方々から揶揄される事の多い物語だ。なるほど、確かに主人公にとって都合も良く、一見恵まれていないように見えてその実……なんてのも多いからそんな風に批判されるのも理解は出来る批判と言えるだろう。
しかしどうだろう。もし自分がそんな状況に巻き込まれたら、あなたならどうする?色々な答えがあるだろうが、俺は勿論
「いよっしゃあああああああ! さよなら俺の拷問修行ライフ! こんにちは異世界! ここなら叔父の魔の手も伸びねえ!」
異世界転生最高です!辛く苦しく長い戦いの末におっさんにうっかりでぶち殺されたが、それで大型トラックやらをぶつけられる日々が終わるなら何も言う事はねえ。
あそこを歩いているのはケモ耳娘にエルフ耳の美少女か。おお、地球だと芸能人でもそういないレベルの美形が、普通に歩いてるのは実にすばらしい。
「どうしてくれるのよおおおおおお! あんたのせいで、私天界に帰れなくなっちゃたじゃない! 返してよ!私を天界に返してよ!!」
折角異世界とやらに来れたと言うのに、特典とやらで連れてきた見た目だけは麗しい女神が何やら騒ぎ立てている。
「女神さんよお。俺は今町行くエルフや、猫耳少女やらに心躍らせてる所なんだ。邪魔しないでくれるか」
「誰のせいで怒鳴ってると思ってんのよ!!!」
やんわりと静かにしてほしいと理由もきっちりとつけて述べたと言うのに、なぜか首を絞めてくるぞこの女神。一体どういう教育受けてんだ。
「いいかよく聞け。何が不満なのか知らんが、あの天使が魔王を倒せば帰れるって言ってただろ。だったら話は簡単だ。あんたも神様の端くれなんだから、こう何かすんごい『権能』の一つや二つはあるだろ?それでぶっ飛ばせば全て解決だ」
「無理に決まってるでしょこの糞外道!!天界ならまだしも地上なんかに降りたら、びっくりする程弱体化するから、女神としての力なんてほとんど使えないわよ!」
「…………はー、つっかえ」
綿密に練っていた魔王退治作戦が、あろう事か初っ端から破綻しやがった。なんだよ弱体化って。制限付きでしか力を振るえねえなんて神様止めたら?
「そういやさ、来る前に聞きそびれたんだけど、この世界ってどんな世界観なんだ?」
「ちょっと、そのつっかえってどういう意味よ。返答次第ではこの場で撲殺してくれるわ!」
「いいから答えろ。世界観しだいでは今後どう動くかが変わるんだから」
ぐるぐる唸る女神を鎮めるのに無駄に時間を取られる。
「世界観も何もいわゆる中世ファンタジーよ。それよりも謝って。私を使えない扱いしたことを謝って!」
「はいはいさーせんさーせん。これで満足だろ。いやな、中世ファンタジーって一口に言っても、ハイファンタジーかゲームファンタジーとかで大きく変わるだろ。その辺を知りたいんだよ」
俺としてはこれを一応はっきりとさせておきたい。最初は異世界転生と聞いて考える事もなく安請け合いしてしまったが、もしJRPGみたいな世界ではなく洋ゲー風味な場所なら石橋を叩いて渡る必要がある。
最悪なのはゲームファンタジーでもKOTYにノミネートされるような、バグファンタジーだった場合だ。この場合は女神を残して自殺する。
「あんたがよくやってた、レベルを上げて物理で殴るゲームみたいな感じよ」
「レベルの概念がある世界。てことはギルドや組合なんかがあるってとこか」
そうなると方針は決まった。まずは定番だが冒険者にでも登録して身分証明書を手に入れよう。
「行くぞ。はぐれるなよ女神様」
「どこに行くのよ?」
「異世界の定番冒険者ギルドだよ。冒険者ギルドに行って登録して、身分証作って貰って、その日の宿代ぐらいは稼げるような簡単なクエストとか紹介して貰うんだよ。とにかく行くぞ、ここに立ってても時間の無駄だ」
「な、なんかあんた無駄に手馴れてるわね。あ、カズマ、私の名前はアクアよ。女神じゃなく、アクアって呼んで。私が女神だってバレちゃ、私を崇拝する信者達でこの街が大変な騒ぎになるから。住む世界は違っても、一応私、この世界で崇められてる神様の一人なのよ」
「了解、アクア」
自分で一応って言っちゃう女神に一抹の不安を覚えるが、気を取り直して俺達は冒険者ギルドを探す為に歩き始めるのであった。
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アクアを御共に町の住人に話を聞き、やってきたのはこの町-アクセルと言う名前らしい-でも一際大きな建物だった。
「どうもここが冒険者ギルドみたいだな」
冒険者ギルド。この手の異世界転生やら転移やらでは手垢がつくぐらいには、使い古された設定である。別名異世界版ハローワーク、あるいは派遣業者。
多くの主人公が最初はここから冒険を始める、いわば転生主人公の登竜門と言えるだろう。
「本日のミッション内容は冒険者登録、及び簡単なチュートリアルクエストの達成とそれに伴う金銭の確保だ。それがすみ次第今夜の宿をとるぞ」
「分かったわ。その辺は、最近トラックに飛び込み自殺して私の所に来てた多くの人達が、似たような事言っていたから把握してるわ。私も冒険者として登録すればいいのね?」
「エクストリーム自殺者のほとんどを送り込んだのかよ……」
我が祖国やばくね?多いって断言出来るぐらい転生トラック目的で飛び込んだ奴いるの?すごく運ちゃんが哀れなんだけど。轢いた人は刑務所で臭い飯を食い、自ら轢かれた奴は転生チートでチート主人公をしている現実に涙でそうなんだけど。
あまりにも無情な現実を聞かなきゃ良かったと思いながらも、ギルドの扉を開け中に入る。ギルドは酒場にもなっているのか、テーブルが並びアルコールの匂いがそこかしこからするのだ。
「いらっしゃいませ、お食事なら空いてるお席へどうぞ! お仕事関係なら奥のカウンターにお願いしまーす」
カウンターにある窓口は四つ。その内一つだけが混んでおり、他の三つに関してはガラガラに空いている。一つだけやたらと混んでいるのは、受付のお姉さんが美人で乳がでかく露出が多い服を着ているからだろう。
それになんだか男がやたらと多いなこのギルド。男女比9:1ぐらいには男の方がやたらと多い。地球の傭兵ならいざ知らず、異世界でこんなに比率が偏るもんなのか?
何か違和感を覚えるが、それを今気にしても得があるわけでもないので素直に空いている窓口に行く。
「はいどうぞ。何の御用ですかな?」
「えっとですね、俺とこっちの子もなんですが、冒険者になりたいんですが……」
「登録ですね。では、登録手数料としてお一人千エリスになります」
「なんだと?」
登録に手数料がかかるのかよ。むう、冒険者としての肩書きが身分証明書になる以上、当たり前と言えば当たり前なのだろうが。
「アクア、お前さん金はあるか?」
「あいにくカズマと同じで何も持ってきてないわよ。急に送られたんだから」
受付のおっちゃんに金がないので前借でどうにかならないか聞いてみたが、対応いたしかねますのお役所仕事で突っぱねられる。困ったな。
どうにかして金を工面しなければ。なんかないかな。お手軽に金を稼げる方法その辺に転がってないかな。
「困ったな~。とても困ったな~。あ~あ、俺みたいな小市民を誰でもいいから助けてくれないかな。神様とかが助けてくれないかな~」
「急に頼りがいがなくなったけど、仕方ないわね。カズマ! あんた私が誰か忘れたの! そう、あんたが助けを求めようとしている女神様よ! この私がいる限り安泰よ! どう、安心したかしら」
適当に焚きつけたらアクアがやる気を出してくれた。なるほど、この女神死後の世界にいた時は怠惰に見えたが、本質は頼られたがりだな。これは使えるな。
「では女神様。あなたの美貌を見込んでお願いが一つあります。あそこにいる楽しそうに話している男達を誑かして、どうにかお金を貰ってきてはいただけないでしょうか?」
「あの頭の悪そうな二人組ね。任せなさい! 私にかかればどんな男でもすぐに靡くわ!」
アクアは自信たっぷりに近くのテーブルで雑談していた二人組の冒険者に目を向けると、不自然に体をくねらせながら近付いていく。
不安になるちょろさだ。てかあの動きなんだ?あれで色気を振り撒いているつもりなのだろうか。
「相席してもよろしいかしらー?」
「ん? ああ、どう……。…………ど、どうぞ……」
どこからどう見ても気味の悪い行動を取りながら近づいてくる美少女に、男達の顔が引きつる。
「ねえ、あなた達、こういうお店で遊ぶのって始めて?」
「へっ? いや、俺達は結構ここの常連だと思うんですが……」
「あらあら、お盛んな事ねー? ふふふ、若いわね?」
「いいぞ、アクア。その調子だ。お前の頭がギリシャなとこ見せてやれ」
アクアが特に意味がないであろう茶番劇を繰り広げているのを、柱から見守る事にする。いくら美人でもあんな風に絡まれたら不気味にしか映らないのだろう。楽しそうに談笑していた冒険者二人の笑顔が消えて俯いてしまう。
「あら、そんなに体を固くしなくてもいいのよ?いくら私が美人で直視出来ないからって俯いちゃうなんてわ・る・い・こ」
俯いてるのはアクアと目を合わせたくないからじゃねえかな。そこからも二人組からお金を引き出せそうにない絡みが続きそうだったので、間に割ってはいる事にする。
「邪魔するぞ」
「ちょっと、あっちに行ってよ糞外道!もう少しで落とせそうなんだから!!」
つらい現実から逃げる為に意識を、強制シャットダウンでもさせる気かこの女神は。いいから少し黙っていなさい。
「すいませんねうちの連れが迷惑をかけたみたいで。お酒も美味しくなくなっちゃったでしょ?」
「い、いえ。その、ありがとうございます」
先ほどまで俯いてアクアと目を合わせない様にしていた男が、少しはまともに会話になりそうな奴が来たと顔を上げてこちらを見る。
「実は俺たちこの町に来るのに、お金を全部使いきってしまったんですよ。そのせいで冒険者として登録するお金もなくて困っていてですね。それで相方が恵んでもらおうと、あなたたちに絡んじゃったみたいで……」
男性の眼にそれならさっきの行動にも理由がつくと理解が宿る。うんうん、何事も話し合いだよな。
「そこで頼みがあるんですけど、登録料の2000エリスほど頂けると助かるんですが、お願い出来ないでしょうか?」
「……頼みを聞いてやりたいがなあ。知らねえ奴に金をやるほど、俺たちにだって余裕があるわけじゃねえんだ。他をあたりな」
…………仕方ないか。彼らが言っている事にも一理ある。そもそも彼らは楽しんでいたところをアクアに邪魔された形なのだ。むしろここで怒らないだけ人間が出来ているのだろう。そう考え、俺は一礼し立ち上がる。
「それじゃ、アクア。この人達をお前のトーク力で大いに楽しませてやってくれ。余裕は無くとも金はあるみたいだから、頑張ればおひねり貰えるぞ」
「ちょっと待ってくれ!!あんた何言ってんだ!?」
何って頼んでも金をくれないケチどもを困らせようとしてるんだが?え、もしかして俺が素直にアクアを回収するってこの人たち思い込んでいたのか?頭大丈夫?消費者金融に行く?
「さっきまで誠実そうに話してた癖に、どうして不思議そうに首を傾げてんだよ!お前言ってることがおかし……頭のおかしい姉ちゃんのほう向いて、肩すくめてんじゃねえええ!!」
全く困った人たちだ。あんたたちは人間出来てても、俺もそれに付き合う義理など無い。せいぜいアクアと酒のまずくなる付き合いをしてくれ。
「アクア~、腰をひねる時にはこうするともっと良くなるぞ」
「こうかしら?」
「そうそう、そんな感じだ。更に手首は~、こうだ!」
「ひいい、さっきよりも動きがキモい!?か、かっちゃん、金をやろう!それでこいつらを追い払えるなら
安いもんだ!!」
「ぐ、ぐうううううう、う、うう!ほ、ほら2000エリスだ!これをもって、どっかいっけ!!」
テーブルに投げられた金を拾い数える。確かに2000エリスあるな。
「これで登録できるな!改めてカウンターまで行こうぜ!」
「見たかしら、これこそ女神の力よ。褒めてもいいのよ!」
「……うそだろこいつら…………金を受け取ったとたんこっちを見向きもしねえ…………
しね……しんでしまえこのクズどもが!」
外野さんサイドから怨嗟の声が漏れ出してくる。ちゃんと回収料金を頂いてアクアを持っていこうとしているのに、失礼な奴らだ。
しかも一時間程前に死んだばかりの人間に向かって死ねだと。なんて畜生どもだ、絶対に許さん!
「【凍れ】」
【言霊】で酒を凍らせる。カウンターに向かう俺たちの背後で酒が凍り付いて飲めねえよ、どうなってやがんだと喚く声が聞こえてくる。
「あの人たち何を叫んでるのかしら?」
「さあ?女神に暴言を吐いた天罰でも下ったんだろ」
このすばの魔法・スキルが『』表記。
地球産魔法が【】表記。