回生のライネル~The blessed wild~ 作:O-SUM
かつての勇者「俺がダンス担当」
麗しき雌「私が歌担当」
『最優の雄』に挑む戦士達「「「そして―― 俺達が楽器・コーラス担当! 」」」
~デンデデッデデレ♪×4 ヘエーエ エーエエエー(ry
唯一amibo化した、BotW魔物代表の創作ダンス
* * * * *
『…………して……』
真っ暗だった。
もし一寸先に獣が大口を開けて待ち構えていたとして、それでもその尖った牙の煌めきにも気付けないだろうほどの闇。視覚のみならず、その口から漏れる呼気による風の流れや音も、身体から漂うだろう獣臭だって感じ取ることは出来なかったに違いないと改めて思わせるような、五感を覆い尽くす無闇だった。
……ボクは、そんな場所をただ漂っていた。
今の今まで、ボクは自身がそんな場所とも言えない場所を漂っていたということを「自覚」すら出来ていなかったのだ。けれど、今はそれを認識出来ている。
(もしかして…… いや、きっと )
こうして何かを把握し、考えることが出来るようになれたのは、この意識の奥にじんわりと呼び掛け続けている『声』の恩恵なのだろう―― 何の根拠もない直感ではあるものの、ボクはそれを確信していた。
『……覚まして……』
初めはそれが『声』であるとすら気付けず、闇の向こう側から何となく感じられるだけの、か細く小さな音としか感じてはいなかったと思う。
けれど、その何が発しているかも分からない切っ掛けだけが、虚ろで空っぽになっていたはずのボクの中にまだ僅かに残っていた何かの琴線に引っかかり、暗闇に溶けて散っていたはずの「ボクだったモノ」を元の入れ物へと汲み上げさせた。
それは徐々に「自分」を取り戻すに連れ、音が『声』になっていくに連れて…… その声音が、響きが、ボクの何かを強く強く揺さぶって仕方なかった。
その繰り返しの末にボクは「自分」を取り戻し。
まだ止まないでいてくれている誰かの『声』が懸命に呼び掛けている対象が、この「自分」であることも認識出来る状態に成り得たのだ。この『声』を受け取れていなかったら、未だボクはボクを知らないままに、暗闇の中を漂っていたに違いない。
――けれど
『目を覚まして……』
けれど、この『声』の主が誰だったのか。
それが何故だか思い出せない。
こんなにも心を揺さぶる『声』なのだ。ボクはきっと、この『声』の持ち主に出会ったことがあるはずなのだ。いつの間に目も見えるようになったのか、『声』を感じる方向からは柔らかな光が徐々に広がってくるのを感じている。
自分の覚醒を促すようでいて、しかし労わるように暖かで、穏やかな光。
恐らくこの光を伴う『声』の主は、自分を害する存在ではないのだろう。
きっと出会ったことがある、好ましかったはずの『声』の主。
ハッキリと思考出来る意識を取り戻しつつある今、そんな己を取り戻させた切っ掛けとなった相手ならばすぐにも思い至りそうでありながら。その姿、そして名前すらも、遠く響く『声』をそのままにしたように朧で、曖昧だった。
……記憶の中にあるはずの『声』の正体を覆う
『目を覚まして……』
……一体この『声』は誰なんだろう?
……どうしてこんなにも懸命に呼び掛けてくれるのだろう?
……ボクはボク自身が、どんな存在なのか知らない。思い出せない。
……そんな何者でもないボクに、何をアナタは期待しているの?
……ボクに何をして欲しいの?
『目を覚まして…… リンク』
(…………あぁ、それは )
――ボクの名前!
思い出せなかった。この瞬間まで忘れていた、ボクの名前。
もう言うべきことを言い終えたのか、ただ目覚めを待ち続けているように沈黙してしまった、けれど依然と待ち続けるように佇む柔らかな光に向け、意識を集中する。
直後に感じたのは、何かと繋がる感覚。
躊躇い、控えめに…… しかし切実にボクの名を呼んだこの『声』が、ボクを求めている。
(……この『声』に応えたいと、ボクは思っている……? )
不意に爆発するような勢いで広がった光の中に、浮かび上がったばかりの意識が再び溶けていく――
それでもボクの心に恐怖の感情は、ほんの欠片も湧いてはいなかった。
* * *
眼を開けた途端、滲む視界に飛び込んできた光景は、何とも眩しく色鮮やかな色彩に満ちていた。
……としばらく思いはしたものの、どうやら眩しく感じていたのは頭上に灯るささやかに灯る蒼い光源で、鮮やかな色とはその光を薄らと反射させる無機質な天井だった。
暗闇の中を永く漂っていたせいなのだろう、薄暗闇に浮かぶそれらですら豊かな色合いに感じていたのだという実感が、「あの世界から目覚めた」という感慨と、改めて考えてみれば何でもないモノに感動していたという、小さくも密やかな羞恥をボクに抱かせる。
(――――ここは……? )
身を起こして辺りを見渡す。
未だ朧げであり不確かな自分の頭の中ではあったが、ココはその中に残っている記憶にも一切の心当たりがない、何とも不思議な空間であるらしい―― ということしか分からなかった。
まず、どうやらベッドなのかも疑わしい、薄ぼんやりと蒼く光り続ける妙な家具の中にボクは今まで寝転んでいたらしい。
そして、窓が一つもない。
つまりは燭台や松明も見当たらないために本来なら真っ暗であるべき空間ではあったが、ベッドらしきものが放つ光と同種、あるいは違う色の熱を感じさせない無数の照明が辺りに散りばめられているために足の踏み場と、自分が寝ていた屋内がどんな趣きであるのかは何となく察することが出来る。けれど、それはあくまで観察が出来るというだけだ。
この屋内にあるモノで、自分がその用途を理解出来るものは何一つとしてなかった。
地面や壁、天井に至るまでびっしりと、独特な意匠に統一して彩られた装飾。
光る家具、光る内装。
取っ手も無く開け方の分からない石扉。
そして自分が何故こんな場所に下着一つで寝ていたのか―― それすらも、全く心当たりがなかった。
ベッドだと思うモノから起き出し、辺りを少し歩いて回ってみれば(想い通りに動かせる身体を再び得られたという事態にも、少なからず興奮していた)、ここはそれほど広い空間という訳でもないらしかった。そして恐らくは水も、食べ物だって僅かも保存されてはいないらしい。
これには困った。
何せこの身体、動かせることには動かせられるのだが、どうにも記憶の中にある過去の自分とは、比べようもないほどに弱々しいのである。
何かの記憶違いだったり、誰か全く別の身体に乗り移ってしまっている、なんて馬鹿げた話でないのであれば、どれだけ眠りこけていればこれだけ衰弱出来るのだろう? ……それともこれは、あの不気味なベッドの呪いだったりするのか?
……とりあえず、あの蒼い光に包まれている窪みの中に再び寝転がることだけは止めておこう。
幸い、今は深刻な空腹を感じていないものの、生きる為には食べ物と水は絶対に必要不可欠だ。この不思議な空間にそうした蓄えが一切存在しない以上、早々にここより出て、少なくとも体力のあるうちに飲み水だけでも確保しなければならないのだが…… この肉体では、得物でもない限りあの石扉を突破することは不可能に違いない―― そう確信してしまえる程度には、壁と扉を構成する材質は堅牢な趣きを誇っていたのである。
目覚めの喜びの後に待っていたのは、現実味のある飢死の恐怖であった。
(さっき歩いて回った限りは、手に取って使えそうなモノは転がってはいなかったんだよね……)
明らかに人の手によって作り出らされた空間は、しかし人の手に持たせられるような道具の一切を排していた。角の取れた壁は剥がそうにも指の取っ掛かりとなりそうなモノすらなく、唯一あった家具たる忌まわしそうなベッドも地面と一体化させたような造りとなっており、とても力任せに解体出来そうではなかった。
他にあるのはただ一つだけ。
石扉の左脇に位置する地面から、腰の位置に当たる高さほどの大きさを持った、人が立ったまま手をかざし、何らの作業をするには丁度良い台があるのみである。
これもまたしっかりと地面に固定化されているらしく、取り外すことは出来なさそうではあったが……それに加えてこの台をいじるのを後回しにし、他の探索をしたかった理由があった。
その原因は、この台の上部が灯す発光色。
恐ろしくもその台は、この室内において壁を彩る暖色ではなく、
正直に言って、触りたくない。
腹を空かさない程度にしか寝ていないはずの自分が、それほど昔だとは思えない過去の記憶よりも遙かに衰えている理由。どうしてもそれが、今まで自分が寝転んでいた謎の家具に関わっていそうでならないのだ。あの蒼い光には、身体を蝕む毒のような効果があるのではないかと勘繰ってしまう。
……ただこのままこうしていても、拉致が明かずに状況が悪くなる一方なのも事実。
腰を引かせていつでも手を引っ込められるように警戒しながら、それでもその台を調べようと触れる決断をするまでは、それほど長い時間を必要とはしなかった。
しかし結論から言うと、その段階ではまだボクが台に触れることはなかった。それは直前になってやっぱり怯えてしまったから―― という理由ではない。
なんと台の前に立った途端、斜めの傾斜をつけることで丸く整えられた真円の形状をこちら側に見せていた台の上部、その表面部分が独りでに動き出したのである。
淡く灯していた蒼光を一瞬強く瞬かせたかと思えば、凹凸のなかった表面の真ん中が小さいもう一つの円となってせり上がってくる。そうして現れた小さな円は、更にその内側に何か違うモノを収めていたようだった―― それは両手に収まる程度の四角い板切れのようであり、周囲の円とは違う直線で構成された形状と、台の上では唯一の暖色を宿して柔らかく灯る様が、何だか不思議な存在感を放っていた。
そうして見守るしかなかったボクの前、丁度胸の高さぐらいの位置まで板切れを移動させた台は、役目を終えたと言わんばかりに沈黙している。再び動き出す気配は取りあえずなく、加えて手を伸ばせば楽に板切れを取れそうなその高さは、まさしく「板を手に取ってくれ」という無言の配慮に満ちているようではあったが…… その板の、恐らくは装飾だろう『目』の文様が蒼く輝きながらコチラを向いている様子が何とも不気味でもあり、先程選んだはずであるところの触って調べる決意が、心の中でやや萎え始めているのを感じてもいた。
(手に取ったら最後、ひどい罠とかありそう…… )
板を外した瞬間、この空間が崩落して生き埋めとかにされたらどうしよう―― そんな危険を心配してしまうほどに、現状のボクを取り囲むモノには安心感を持てる要素が見当たらなかった。
――何より。あの『声』の主が、此処にいない。
ボクを知っており、ボクが知っているはずの『声』の主。あるいは目を覚ませば枕元に居てくれているのではないかと思っていたその存在が、この空間にはいなかったのだ。覚えのない閉じられた密室に、衰えた身体をもって目覚めた現状が、思った以上にボクの心を臆病にさせているのかもしれない。
このままこの空間から出られずに、ただ1人きりで途方に暮れるしかないのか…… そう思い始めていた矢先のことである。
どこからともなく聞こえてきたのは、暗闇から自分を導いたあの『声』だった。
『それはシーカーストーン…… 永き眠りから覚めた貴方を導くでしょう…… 』
耳ではなく、直接頭の奥に響くようにして伝わる『声』。
あの暗闇の中を前後不覚に漂っていたからこその聞こえ方だと思っていたけれど、肉を得てなお全く同様に感じた『声』の響きから察するに、どうやら本人はこちらの世界にあっても、遠く離れた場所にいるらしい…… それでも暗闇の中にいた時よりも少しだけ明瞭に聴き取れるようになった『声』の様子から、その主との繋がりがどことなく強まったようにも感じられた。
ふと、先ほどまであった妙に重い孤独感があっさりと消えてしまっていることに気付き、我ながら現金だなぁと苦笑する。
ボクが、この世界で1人きりじゃない。それを知れたことが、こんなにも嬉しい。
板に浮かぶ、さっきまではあんなにも不穏に感じていた『目』の文様も今では、ただ名前通りの先導する眼にあやかって刻まれたのかもしれないな、と気楽に捉えることが出来るようになっていた。
(……『声』の人やこの板も、もう少し早くボクを導いてくれても良かったのに )
板を両手に取ると『目』の背面、恐らくはこちらが正面だったのだろうが、その中央部分が怪しく輝き出す。そしてその光に反応するかのように、あの固く閉ざされた扉が一本一本の細い柱に分かれ、それぞれが扉の上部に位置した壁の中へと引き込まれていった。
何でもなかったことに1人思い悩んでいたことには多少気恥ずかしい思いもあったが、とりあえずこの不思議な板を使えば外に出られるらしい。
……そしてこの扉の先には、この『声』の主も待っているのだろう。
別の空間と繋がったことで、こちら側とあちら側の空気が混じり合う。
――部屋だったらしいこの空間より外の空気はやや冷えたモノだったようで、温暖差から吹き込む風となって素肌を撫でたささやかな冷気が、ボクの身体を小さく震わせる。
(出来れば何か、羽織れるくらいの布が落ちてないかな…… )
ようやく開いた扉をくぐったボクは人工的で滑らかな床をペタペタと裸足で歩きながらも、そんなことを考えていた。
※原作を知らない方に、簡単に青年の現状を説明(原作あらすじ)
――100年前、ハイラル王国をマリオのクッパの如く周期的に襲っていた魔王を迎え撃ち、しかし敗れた勇者がいた。
そして勇者を含めた仲間達が軒並み死に絶える中、生き残った姫は瀕死の勇者を回復の眠りにつかせ、彼が再び立ち上がるまでの間、自らに宿った封印の力で魔王を抑え続けてきた。
そして100年後の時代、謎()の『声』の導きによってついに目を覚ました勇者はしかし、かつての記憶の一切を失ってしまったのであった。(← 今ココ )
無垢なる勇者は過去を取り戻すことが出来るのか?
王国を崩壊させた魔王を今度こそ討つことは叶うのか?
今、時を越えた勇者が新たな冒険へと旅立つ――!
一分の隙もない勧善懲悪ストーリーって、本当に素晴らしいですね (なお魔物視点 )
※作中描写や「ウツシエの記憶」を見た限りでは、シーカー族の古代技術特有の蒼い光を宿した存在は、100年前の世界にはガーディアン内部から漏れているモノと、神獣からぐらいしか確認出来ませんでした(当時姫様はシーカーストーンを持ちながらも遺跡の起動には成功しておらず、とある博士の『チェリーちゃん』も存在していないために、遺跡関連は武具を含めて全滅です)。
よって今後の冒険における力強い助けとなってくれる古代技術ですが、現状は【厄災】に関連する重要な記憶をほとんど失くしているピュアリンクにとって、得体の知れないこの蒼い光は「なんかヤベェんじゃね? 」となっております。
(原作でも一番最初にシーカーストーンへ【はごろもフーズ】した時、露骨に驚くほどにこの時のリンクはピュアッピュアです)
※今回の勇者閑話は前後編に分かれています。