出来損ないの最高傑作ーNT   作:楓@ハガル

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黒人さんの事、時々でいいから、思い出してください。

シャープオーダーを着ているので、恐らくRaだとは思うのですが、あんな鉄火場で彼は、武器も持たずに何をしていたんでしょう……。
そんな、いつの間にやらムービーから消えていた彼ですが、本作では、一体どうなってしまうんでしょうね。



第五話 天敵の襲撃

 事前に知らされていて、良かった。肝は冷えたが、覚悟は、出来ておる。妾は、ワイヤードランスを握り直し。アフィンは、ランチャーからライフルに持ち替え、弾倉を交換した。

 

『訓練生各位へ、通達。目標地点を、更新します。マップを確認し、至急、移動して下さい。なお、ダーカーの詳細な出現位置は、予測不可能です。全方位への警戒を、怠らないで下さい。繰り返しますーー』

 

繰り返される連絡を聞きながら、端末で地図を開き、新たな目的地を、確認した。今までに通った道と、妾たちの現在地を示す光点、そして、この十字路を直進し、少し進んだ辺りに、別の光点が表示されている。この光点が、目的地か。

 

『以降は、各担当官と、連絡を密に取りつつ、行動しーーッ!? 通達、空間許容限界を突破! ダーカー、出現します!』

 

「いよいよ、来よったか……。アフィン、準備は良いな?」

 

「聞くまでもない、だろ?」

 

「かかか。そなたも、言うようになったのぅ」

 

「っと、来るぞ!」

 

 眼前の空間が、小さく、赤黒く、滲んだ。一箇所だけではない。その横が、その後ろが、同じように、滲んだ。見回すと、目の前だけではなかった。右手側も。左手側も。後ろもーー

 

 ーー囲まれる。

 

「抜けるぞ、続けッ!」「分かったッ!」

 

徐々に広がる滲みの、群れ。その隙間を、駆ける。身を守るフォトンと、滲みーーダーカー因子の集合体が、互いに干渉し合い、小さく爆ぜた。身体に、その衝撃が伝わるが、傷は負っていない。ならば、意に介す必要もない。そのまま、抜けるのみよ。

 

 どうにか、完全に包囲される前に、抜け出せたようじゃな。今の妾たちの周囲に、滲みは、ない。振り返り、得物を構えた。

 

「実体化と同時に、仕掛けるぞ。初撃で、一匹ずつ仕留め、後は流れじゃ。出来るな?」

 

「……お前の相棒だぜ? やってやるさ」

 

「良い返事じゃーー行くぞッ!」

 

不定形の滲みが、急激に収束し、形を得た。現れたのは、虫のような、四本足の、黒い化物。交戦例が最も多く、尖兵とも、斥候とも言われるダーカー、"ダガン"。交戦例の数に比例するように、一度の出現数が非常に多く、対処に手間取れば、そのまま飲み込まれる。『数の暴力』を体現したようなダーカーじゃ。

 

 しかし、まぁ。それは、あくまでも、対処に手間取った場合の話でありーー

 

 ーーこちらに背を向けて出現したダガン共の、手近な二匹の頭上へ、跳躍。落下の勢いに任せて、それぞれの胴体に、左右のワイヤードランスを、同時に突き通す。その刃は外殻を貫き、胴体下部の、ダーカーコアに達した。これまでに確認されたダーカー全種が持つ、共通の急所。それを破壊され、ダガン二匹は、糸が切れた操り人形のように頓挫し、そのまま、霧散した。

 その隣では、別のダガンが、背後から胴体を、ライフルのフォトンアーツ、『ピアッシングシェル』で撃ち抜かれた。滲みの位置から、事前に射撃位置を決めていたのだろう。放たれた弾丸は、そのさらに向こう、別の個体の胴体も、正確に捉えていた。この二匹も、外殻ごとコアを砕かれ、沈黙。

 合計四匹のダガンが、出現から5秒と経たぬうちに、ダーカー因子へと還った。残るは、九匹ーー

 

ーー手早く処理出来るのなら、ものの数ではない。

 

『ダーカー出現を観測しました! 全訓練生及び担当官は、可及的速やかに、新規目標地点へ移動し、他班と合流して下さい!』

 

遅いのう。こちらは、もう四匹も、潰したぞ。まぁ、良い。ともかく、こやつらを片付けて、さっさと移動せねば。

 それにしても、担当官、つまりゼノ殿が、来てくれるのか。現役アークスの援軍とは、実に頼もしい。妾たちも、足を引っ張らぬよう、尽力せねばならんな。

 

「ところでアフィンや。一匹ずつ、と言う話じゃったろう? 一発で、二匹も始末するとは、この業突く張りめ」

 

 アフィンに最も近いダガンのコアを、一旦屈み込んでから突き上げつつ、問うた。これで、残りは八匹。するとアフィンは、妾の背後で前足を振り上げたダガンの、コアを狙撃しつつ、こう答えた。

 

「お前だって、器用に二匹、押し潰したじゃねーか。どっちが業突く張りだよ!」残りは、七匹。

 

「なっ!? お、押し潰したなど、乙女に向かって、言うものではないわっ!」顔面ごと、コアまで抉り抜いた。残り六匹。

 

「事実じゃねーか! 踏み潰された虫みてーに、べしゃっ、だったぞ!」両前足の付け根を撃ち、仰け反ったところでコア狙撃。残り五匹。

 

「言い方、というものがあろう! まるで妾が、重いようではないか!」飛び掛かって来た二匹のうち一匹の、無防備に晒されたコアをブチ抜いた。残り四匹。

 

「お前、キャストだろ! 俺たちに比べりゃ、十分重いっての!」そのもう一匹のコアに、三点射撃。残り三匹。

 

「むきーーっ! アークスシップに戻れば、そなたらと変わらぬわっ!」怒りに任せて、蹴りでひっくり返して、コアを貫いた。残り二匹。

 

「論点ズレてるぞ、今は重いって、認めたようなもんじゃねーか!」その場に伏せ、それでも狙いづらいはずのコアに命中。残り一匹。

 

「おのれぇ……、覚えておれよっ!」胴体正面から右手側の刃を突き刺し、上方から左手側の刃を振り下ろした。これで、しまい。

 

 言い合っている間に、殲滅してしもうた。充実した時間だった、と言えよう。小気味良い舌戦に合わせて、次から次に敵を蹴散らすなぞ、なかなか出来る経験ではないだろうしの。

 

「ふいーっ、何とかなったな」

 

「当然じゃ。妾たちにかかれば、この程度、造作もない事よ。後は、船に戻ってから、そなたを祟れば、万事解決じゃて」

 

「すんません、調子乗ってましたーっ!」

 

おぉ、腰を90°まで折った、見事な謝罪じゃ。ならば、それに応えてやらねばな。

 

「分かれば良いのじゃ。では、この件については、止めておこうかの」

 

「この件……? え、何かこえーんだけど」

 

『おい楓、まさかワープの件じゃねぇだろうな?』

 

 おっと、アフィンをからかっていたら、丁度良いところへ、ゼノ殿からの通信じゃ。端末を操作し、双方向の回線を繋いだ。『ふぇいすうぃんどぅ』が視界に浮かび、そこに、ゼノ殿の、精悍な顔が映った。表情と、流れて行く背景から察するに、妾たちと合流する為に移動中、と言ったところかの。

 

「こちら楓。オペレーターからの通達中に出現した、ダガン十三匹を殲滅。これより、新規目的地へ、移動しますぞ。それと、その件に関しましては、後で分かるかと」

 

『ありゃあ、お前の自業自得だっつうのに……。まぁ、いい。とにかく、状況を伝える。移動しながらでも構わんが、よく聞け』

 

「承知しました。アフィン、先を急ぐぞ」「分かった」

 

全ての死骸が霧散し、元の静寂を取り戻した十字路を尻目に、妾たちは、走った。

 

 

 

 ゼノ殿の話によると、ダーカーの出現は、やはり十分に想定されていたらしい。その際の備えも、テレパイプを始め、万全としてあったそうだ。

 しかし、規模が、想定外だった。あまりのダーカー因子の集中振りに、フォトン係数は、想定されていたレベルを超えて、危険域に突入。そのせいで、携行品のテレパイプも、使用不可能となった。オペレーターからの通達に、テレパイプ使用がなかったのは、そのような背景があった為、と。

 元の目標地点のテレポーターも、ダーカー因子の妨害作用によって、現在は機能停止中。故に、最後の対策が執行される運びとなった。

 事前に決められていた二班と、その担当官二名を合流させ、計六名で、テレポーターの再起動が可能となるまで、ダーカー因子を減少させる、である。

 ただ、ここで、最後の問題が発生。訓練生の周囲は、特にダーカー因子が集中しており、フォトン技術を使用したテレプール降下が、不可能な状況らしい。なので、各担当官は現在、訓練生の降下地点に降り、そこから合流地点に急行している、との事。

 

 なるほど、実に、分かりやすい。要は、とにかくダーカーを倒せ、じゃな。

 

『俺も急いではいるが、何分、それなりに距離があってな。合流予定の班の担当官も、多分、到着は俺と変わらんだろう。だから』

 

「四名で協力し、持ち堪えろ、ですな?」

 

『あぁ、話が早くて助かるぜ』

 

「承知しました。ですが、早う来て頂かないと、困りますぞ? 乙女の柔肌に、傷が付いてしまうやも知れませぬ」

 

『あ? キャストの装甲が何だって? わりぃ、全っ然聞こえなかったわ』

 

「かかか。戯言ゆえ、お気になさらず。……おっと、合流地点に、無事に到着しましたぞ。他班の訓練生は、まだ到着しておらぬようですな」

 

『了解、それじゃ切るぞ』

 

「お待ちしております」

 

そこで、通信が切れた。とりあえず、他班の訓練生二名か、ダーカー共が出現するまでは、小休止、じゃな。と言っても、いつ、どこに出て来るか分からぬ以上は、常に警戒しておかねば、ならぬがの。

 

 合流地点は、段差のある丁字路だった。直進すれば、本来の指定地点がある。ここを合流地点にした、と言う事は、この脇道が、他班の順路に通じているのだろう。

 妾も、アフィンも、余力は十分にある。迎えに行こうか、と、一瞬だけ考え、即座に否定した。あの脇道の先が、どうなっているのか分からぬ故、入れ違いになる可能性がある。それに、これからゼノ殿と、もう一人の担当官殿が来るまで、ここで耐えねばならぬし、合流後は、テレポーター再起動の為に、ダーカーを殲滅せねばならん。体力は、温存しておくべきだ。

 

 二人、背中合わせに立ち、周囲に目を光らせる。また滲みが出たならば、ダーカーが現れた瞬間に仕留められるよう、構えたまま。

 そうして、幾ばくかの時が経ったところで。

 

「楓、来たぞ、他の班のヤツらだ! 後ろに何かいるけど!」

 

「む? おぉ、無事であったか! ふむ、数は少ないのぅ」

 

脇道の奥、曲がり角から、こちらへ駆ける二人組を、アフィンが見付けた。その背を追う、ダガン三匹と共に。

 あの二人が、気付いておるのかは、分からぬ。しかし、下手に振り向かせるよりは、そのまま走らせた方が、安全じゃろう。

 

「アフィン、行くぞ。お主ら! そのまま走れぃ!」

 

「よっしゃ! 先頭のヤツは頼んだ、残りは、俺が片付ける!」

 

二人目掛けて、走る。アフィンは、妾の真後ろ、やや離れ気味に追従。

 互いに全力で走っている為、距離が、あっという間に詰まった。そこで前方の二人が、妾を避けるように、左右に分かれた。避けずとも良かったのだが、せっかくだ。そちらを通らせてもらおう。

 先頭のダガンを正面に捉え、二人の間を抜ける。そして、

 

「はッ!」

 

そいつの胴体へ、右のワイヤードランスを繰り出した。彼我の相対速度が上乗せされた刃が、ダガンを襲う。ダガンは、まるで車に轢かれたかのように、全身がひしゃげてしもうた。

 それと同時、タン、タン、と軽快な音が二度響き、妾の脇を抜けようとした残り二匹が、ひっくり返った。コアを破壊され、絶命したようじゃ。

 

「うっわ。今までで、一番エグい死に様じゃないか?」

 

伏せの姿勢から立ち上がりつつ、呆れたように呟くアフィン。その呟きに、妾は鼻を鳴らし、

 

「ふんっ。猪武者には、相応しかろう?」

 

と、答えてやった。

 

 

 

 合流した他班の二人じゃが、特に自己紹介は必要なかった。緑髪のニューマン、ユミナと、黒い肌のヒューマン、アーノルド。クラスは、ハンターとレンジャー。

 アーノルドは、アフィンとは見知った仲だそうな。アフィン曰く、長銃の腕も良いが、本領は大砲らしい。なるほど、物量で攻めて来るダーカーとの戦闘で、頼りになりそうじゃ。

 そして、ユミナ。こやつは、妾の友人じゃな。ニューマンの生まれでありながら、抜群の格闘センスを引っ提げて、前衛の道を選んだ少女。巧みな長槍捌きは、妾の目標でもある。

 

「ま、楓ちゃんのワイヤードランスは、誰も真似出来ないってか、したくないけどね。あんなの、ハンデ以外の何物でもないよ」

 

「むぅ。妾には、あれが一番馴染むのじゃがのぅ…。ともかく、級友と会えて、嬉しいぞ、ユミナよ」

 

「うん、私も楓ちゃんを見て、ホッとしたよぉ」

 

ちら、とアフィンたちを見ると、左の拳同士をこつん、と合わせ、静かに笑っていた。互いの、ここまでの健闘を称え、生き残った喜びを分かち合っているのだろうか。

 何じゃ、あれは。格好良いではないかっ。

 妾も真似しようと、手を伸ばそうとした。しかし、それより早く、ユミナに抱きすくめられた。……そう言えば、こやつはもう一つ、引っ提げている物があったな。それに、顔が埋まってしまう。むむむ。妾はちっこい故、同じように誰かを抱いたとしても、童くらいしか、顔を埋めさせてやれぬ。身長が、欲しいのぅ……。

 

 

 

「さて。ユミナに、アーノルド、じゃったか。そちらの担当官殿から、状況は聞いておるな?」

 

「あぁ。ここで君たちと合流して、エコー先輩と、そちらの担当官が来るまで待機。六人揃ってから、この先のテレポーターを奪還し、キャンプシップに帰還する、だな」

 

 ユミナの胸から脱出し、情報共有。……まぁ、するまでもなく、ほぼ同じ指示が、担当官殿から成されていたが。

 

「ふむ。なるほどのぅ。じゃがーー」

 

 ただ一点、違ったのは。

 

「ーー妾たちが受けた指示は、『待機』ではなく『持ち堪えろ』じゃったな。来るぞ、戦闘準備!」

 

 滲みーーダーカーは、待機など、させてはくれぬらしい。テレポーター方面と、脇道方面に、滲みが現れた。

 囲まれてはいないが、厄介な状況。二方面ならば、前衛と後衛の二人ずつで、それぞれ対処すれば良い。じゃが、これ見よがしにガラ空きの、十字路方面が、気になる。

 どちらの方面も、滲みが多い。ざっと十は下らない数が、それぞれの道に、犇めいておる。対峙した瞬間に、十字路方面に滲みが出れば、物量による挟み撃ちの完成じゃ。

 起きるとは、限らぬ。起きぬとも、限らぬ。確率は、都合良く見積もっても、五分と五分。賭け金は、妾たち四人の命。博打としては、割りに合わぬ。

 さて、どう割り振ったものか。ダーカー出現まで、猶予は、ない。手早く吟味しようとして、しかしその思考は、重い金属音二つに、遮られた。

 

「後ろが、不安なんだろ? アイツらは、俺たちで吹っ飛ばす。やるぜ、アーニー」

 

「ユミナと楓は、後方の警戒を頼む」

 

いつの間に持ち替えたのか、アフィンがテレポーター方面へ、アーノルドが脇道方面へ向けて、ランチャーを構えた。

 なるほど、そうじゃな。まさに、ブチ込む好機。

 

「餅は餅屋。うむ、こちらは任された!」

 

「アフィン君とアーニーは、私たちが守ってあげるよ!」

 

ダガン共が顔を出し、アフィンとアーノルドが、引き金を引いた。吐き出された砲弾が、噴煙を伴い、今まさに現れんとするダガンの群れに、直進する。実体化と、着弾は、同時。

 

 爆炎が、フォトンが、群れを飲み込んだ。

 

 それぞれの道への、ディバインランチャー。過剰とも思える爆炎は、地形を変えんばかりに猛り狂い、フォトンは、ダーカーの存在を許すまじと荒れ狂う。衝撃で千切れ、爆風で舞い上がったダガンの残骸が、ダーカー因子となって消え行くのが、見えた。

 

 この機に現れるようにしていたのか、それとも、仲間をやられたからか。十字路方面に、多数の滲みが出現した。あまり嬉しくもないが、予想が、当たった。

 

「来おったな。ユミナ、抜かるでないぞ!」

 

「大丈夫、一緒に頑張ろぉ!」

 

頃合いを見計らって、パルチザンを携えたユミナと共に、二人で突撃。数は多いが、この程度ならば、何とでもなる。と思ったが……

 

「楓! 援護ーー」「アフィンッ! まだ来るぞ、あちらは、あの二人に任せろッ!」

 

……背後から、アフィンとアーノルドの声が、聞こえた。どうやら、先程までとは違って、おかわりが出たらしい。

 あちらに増援がでたならば、こちらに出ても、不思議はない。いつ来るか、それが分からぬ、となると、悠長に片付けている余裕は、ない。

 全く、ド新人を相手に、呆れた念の入りようじゃな!

 

 再び轟いた爆音を聞きながら、前足を振り上げたダガンのコアを、破壊。骸を振り払いながら、さらに前へ踏み込み、後ろにいたやつの頭部から胴体までを、縦一文字に両断。そこで、にわかに背後に、禍々しい気配を感じた。反射的に、振り返りながら薙ぎ払うと、確かな手応え。前足を二本とも失い、胴体を深々と切り裂かれ、赤黒い霧へ還らんとするダガンが、そこにいた。

 ユミナも、奮戦している。竿状武器(ポールウェポン)の利点を最大限に活かし、己の領域を侵す事は許さない、と言わんばかりに、間合いに入った瞬間に、一刀のもとに切り捨てる。ユミナへ向かって行ったダガンは、攻撃の素振りを見せる事さえ出来ぬまま、骸を晒していた。

 やはり、巧い。他の追随を許さないユミナの長槍捌きは、実戦に於いても、些かも陰りを見せない。

 

 

 

 最後のダガンを貫いた時、三度目の爆発が起きた。これで一先ず、合流地点のダーカーの数は、ゼロになった。しかし、油断は出来ぬ。戦闘態勢を保ったまま、辺りを見回す。来るならば、来い。妾たちは、逃げも隠れもせぬぞ。一匹残らず、ブチ抜いてくれよう。

 

 ところが、しばし警戒してみたものの、ダーカー共は、姿を見せなかった。諦めたのか。それとも、戦力の逐次投入は下策、と悟ったのか。まさかとは思うが、出現と同時にバラバラにされて、恐怖を覚えたか。

 いずれにせよ、合流地点は、元の静けさを取り戻した。風に煽られ、穏やかに靡く木々の声に、度重なる襲撃でささくれ立った心が、ゆっくりと凪いでいくのが、分かった。

 

「どうにか、無事に終わった、かな?」

 

「さすがに、疲れた……。気力が、ごっそり持ってかれた感じがするぜ…」

 

「ディバインランチャーは、消耗も激しいからな……。済まんが、俺たちは少し、フォトンの回復に集中する」

 

「うむ。後は、妾とユミナに任せよ」

 

 フォトンアーツやテクニックは、体内のフォトンと引き換えに、行使される。そして、その威力や効果か高い程、負担も増える。ディバインランチャーは、その最たる物。この短時間で、あれだけ連射すれば、疲弊するのも、無理はない。

 アフィンとアーノルドを、丁字路中央の木陰に座らせ、ユミナと二人で、警戒に入る。

 

「ユミナよ。ガンスラッシュは、扱えるかえ?」

 

「んー。セイバーモードなら、それなりって程度かな。ガンモードは、練習したけどムリ。私、射撃は、からっきしみたい」

 

「妾と同じか。後衛なしじゃが、妾とお主ならば、凌げるじゃろうて」

 

寄らば切るユミナと、寄って切る妾。妾が前に出て、抜けたやつをユミナが仕留めれば、擬似的ではあるが、前衛と後衛として戦えよう。

 

 アフィンたちに敵を近付けぬよう、木から離れる。その時、妾たちは、確かに、気が抜けていた。敵の攻勢を跳ね除けた安堵で。その後の、打って変わった静寂で。故に、あの二人から、目を離してしまった。

 配置につき、周囲に目を配り、そこでようやく、気付いた。道が交差する位置の、その崖上。つまり、アフィンとアーノルドの、真上。葉陰に隠れたダガンに、ようやく、気付いた。

 彼奴らは、諦めてなど、いなかった。下策を悟ってなど、いなかった。ましてや、恐怖を感じても、いなかった。

 彼奴らは、狙っていたのだ。波状攻撃を囮として、妾たちがそれを退け、安堵し、油断する瞬間を、狙っていたのだ。

 無限とも言われる、ダーカーの軍勢。それに比べ、アークスは、あまりにも少ない。その圧倒的という言葉すら生温い物量差を武器に、彼奴らは、一人一人、確実に潰す作戦を、選んでいたのだ。

 理解した頃には、もう、遅い。ダガンの、無機質な目は、アーノルドを捉えていた。

 

「アーノルド! 逃げろぉッ!」

 

声の限りに、叫んだ。遅い。駆け出した。遅い。気付いてからの、妾の行動。その全てが、遅かった。既にダガンは、崖を飛び降りていた。前足の鋭利な爪が、戸惑いながら武器を構えようとするアーノルドに、迫る。そしてーー

 

 ーー黒色が、弾けた。




黒人改めアーノルド。彼の運命やいかに。

ゲームストーリーの改変は、基本的にありません。

今回、序盤に楓が地図を見ていますが、端末から見れる地図=ゲーム中に『Mキー』で確認出来る地図です。なので、自分が踏破した箇所しか表示されません。前回まで、楓もアフィンも、記憶を頼っていたのは、この為です。

2017/07/17 9:18
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