キリッと顔を引き締め直して、剣を構える木場。
その瞬間、祭儀場に続く扉が重い音を立てながら開いた。
「ばしゃと きれぼし!」
「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
「フフフ・・・メタルジェノサイダ―」
「とにかく キケンな ワタシはまろうこん。よろしくね!」
「獣王記やりまーす」
「やっほ ^^」
「ガリオンヌ あげくのはてに ベオルブ邸」
「なにこれ…」
「えーっと、これはどういう状況なのかしら?」
「あらあら……」
「よのなか どうなっとるんかのう」
アーシアのローキックの痛みがまだ取れておらず、脛を押さえながら悶えるイッセー。
汗一つかかずに平然としている木場と塔城。
床に横になって寝息を立てるアーシア。
サイコジェニー状態から一向に戻らない俺。
白目をむきながら、ぶすぶすと白煙を上げるレイナーレとエクソシスト達。
バグにより現れた戦闘力5のおっさん。
リアス先輩達が混乱するのも無理はない。
……それにしても先輩たちはどこから来たのだ?
「ぶ、部長……一体何処から……?」
鈍い痛みに顔を歪めるイッセー。
アーシアの右ローキックは、格闘選手権に出れば世界を制する程の威力だろう。
「地下からよ、それにしても何があったの?」
「テツくんの知り合いの女性が現れて、ほぼ全ての敵を一瞬で倒したんです。
そこに倒れているレイナーレ達はその女性が倒しました」
「そ、そうなの……イッセーが堕天使レイナーレを倒してくれると思ったのだけれど、目論見が外れたわね……」
なお、ですリリーナ様はくそ王子を追いかけるため去っていった。
なんでも、くそ王子が浮気したとの事だ……さらば、くそ王子。
「とりあえず、レイナーレの処分は貴方に任せようと思うのだけど、どうするのかしら?」
イッセーは足をさすりながら、苦虫を噛み潰したような複雑な顔つきで、白目を剥いているレイナーレを見下ろす。
「正直、殺された事に関しては恨んでますし、今後許すことはないと思います。
でも、それが原因で部長達と出会えたかと思うと……」
「イッセー、早いところ纏めた方がいいぞ。
俺の経験則からすると、もうそろそろ何か起こる気がする」
俺の言葉に慌てて言いたいことを纏めようとするイッセーだったが、時すでにお寿司である。
相も変わらず白目を剥いているレイナーレがいきなり激しくぶれ始めた。
「っ!」
何らかの攻撃と思ったのか、リアス先輩が身構えるが……
「おっと! レイナーレが ぶんれいね」
「えっ……ゆ、夕麻ちゃん!?」
「紐水着」のレイナーレと「清楚」な感じのレイナーレの二人に分身する。
イッセーは清楚な方を見て夕麻ちゃんとか言ったけど、知ってるのか?
それにしてもまた分裂バグか……分裂バグ自体は良くある事だが俺以外のやつに起こる場合は、女限定で起きてる気がするぞ?
舞紗も俺の分裂バグで生まれ変わった存在だし。
「……う、うぅん」
「あ、起きた」
「あ、あれ? ここは? 私、なんでこんな所に……」
「どういう事だよ!? レイナーレと夕麻ちゃんは別人だったのか!?」
イッセー、大混乱である。
「いえ、そんなことはないはずよ。
堕天使レイナーレと天野夕麻は同一人物……のはずなのだけれど」
「イ、イッセーくん? 一体何が起こってるの……?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺にも何がなんだかわからないんだ!」
「テツ、これは貴方のせいなのよね? 何が起こってるか知ってるの?」
「あー、ちょっと待ってください。
いつも通りならそろそろ頭の中に情報が……お、来た来た」
えーと、なになに?
「結論から言うと、『レイナーレは天野夕麻だが、天野夕麻はレイナーレではない』って事になります。
詳しく言うと、レイナーレの天野夕麻だけの情報を抜きだしたのが、そこの天野夕麻ってことになりますね。
ま、ちびっとレイナーレとしての情報を受け継いでるところはあるみたいですけど……」
「なるほど、バイサーの時と同じようなものね」
納得したようなしなかったような、微妙な表情でリアス先輩は頷いた。
「……とりあえず、『天野夕麻』の方は無害そうだし放っておきましょう。
イッセー、改めて聞くけど『堕天使レイナーレ』のほうはどうするの?」
「……」
沈痛な、覚悟を決めたかのような表情でイッセーは答えた。
「頼みます」
「……わかったわ」
リアス部長の手から魔力の一撃が、レイナーレを消し飛ばす。
……白目を剥いたままカッコ悪く退場したレイナーレが些か哀れに思えた。
「さて、天野夕麻のほうはどうしようかしら?」
くるりと振り返って夕麻を見据えるリアス先輩。
夕麻は顔を青ざめさせながら、体を震わせた。
「い、一体何なんですか、あなたたちは……
イッセーくんとデートしてたと思ったらいきなりこんな事になってて……」
「ちょっと待ってくれ夕麻ちゃん、もしかしてデートの時の記憶はあるのか?」
「え? ええ……って、あれ?」
何かに大変なことに気付いたかのように、夕麻が狼狽える。
「デートした時の記憶しかない……!?
わ、私が今まで何をしてたか……どこに住んでたかも、親の名前もわからない!?」
記憶の欠如に慌てふためく夕麻、終いには泣き始めた。
「……テツ」
説明を求めるためリアス先輩が俺に向き直る。
「さっき情報流れ込んだ時に知ったんだけど、レイナーレが天野夕麻だった期間ってイッセーとデートした時ぐらいんだったんでしょ?
だから、その時の記憶しかないんですよ。 あくまでも俺の推測ですけど、悪魔だけに」
今俺上手いこと言った気がする。
「ハァ……それじゃあ天野夕麻の戸籍も作らないといけないわね」
この後、全員で泣き伏す夕麻を宥めてから今後どうするかを話し合うことになった。
結果から言えば、アーシアは駒王学園に転校させたうえでイッセーの家に。
夕麻も駒王学園に転校させるが、俺の家に来ることになった。
……なんか俺の家の人口が増えてる気がするが……
まあまあ、よかろう。
ちなみに、舞紗に遅くなるのを伝えるのを忘れていたため、帰ったらゲンコツをくらいました。解せぬ。
レイナーレ「謝罪を要求する!」