久方ぶりの投稿ですね。
お手柔らかに…
翼たちの勧誘や新聞部の中野の協力もあって、女子野球部は順調に部員を増やしていた。
結成当初は5人だったのが、今では紅白戦が出来る人数にまで増えた。
しかし、大きな問題も抱えていた。
それは………
「あの二人って、いつになったら仲良くできるのかなぁ?」
「わからないわ。お互いがお互いを避けているうちは厳しいんじゃないかしら」
「何か良い方法があればいいんですが………」
「監督と副キャプテンの仲が悪いのはマズイよね」
春之助と東雲の関係についてだ。
東雲は春之助を見る度に不満全開なオーラを出すし、春之助もそれを察してなのか少し距離を取った対応をしている。
昼休みや部活後を使って、チームの方針や練習メニューを翼、和香、春之助、東雲の4人で話し合う機会があるが、そこの気まずさもかなりのものなので困っている。
「たしかに、桜井と東雲の仲が悪いのは、チームにとってマイナスだにゃぁ」
中野もそこに加わる。
「やっぱり中野さんもそう思う?」
「思うにゃ。問題が問題なだけに、早めに解決するに越したことはないにゃ!」
「でも、どうやって…」
「そこで私に名案があるにゃ!!」
自信満々に胸を張る中野。
「もっとみんな近寄るにゃ──」
「ほんとにそんなので上手くいくの?」
「大丈夫にゃ!作戦決行は今日の部活後!では解散にゃ!」
そして、作戦決行の時を迎えた。
「みんな部活お疲れ様ー!」
グラウンドの見回りを終えた翼たちが部室へと入る。
「うん。お疲れ様。この後は今度の練習試合に向けてのミーティングだよね?」
「そうなんだけど、ごめん!急用ができちゃって私は出れなくなっちゃった…」
「ごめんなさい。実は私も…」
「そっか。なら、ミーティングは日を改めることにしようか」
「いや!申し訳ないけどミーティングはやってほしいの!練習試合まで時間が無いし……ね?」
「わ、分かったよ。東雲さんは予定大丈夫?」
「……えぇ」
中野の言う作戦のままに行動したは良いものの、翼と自分が抜けた東雲と春之助だけのミーティングになる。想像しただけでも地獄絵図だ……と和香は思う。
「………」
「………」
部室で春之助と東雲の二人きりになり、かなり気まずい時間が流れていた。
お互いに沈黙すること数分、先に口を開いたのは春之助だ。
「東雲さん、こうなること分かってたでしょ?」
「それを言うならあなたもよ。部活が終わってから、明らかに有原さんの様子がおかしかったもの」
「やっぱりそうか~」
二人とも何となくそんな気がしていた。
「意図的に二人きりにされたってことは……」
「私とあなたの不仲を解消させるため。というところかしら」
「あ、分かってたんだ?」
「さすがに分かるわよ」
「へぇ。東雲さん、脳筋ゴリラだから人の感情とかそういうのは分からないと思ってた」
春之助のストレートな物言いに、東雲の額には青筋が浮かび上がる。
「よく聞こえなかったから、もう一度言ってもらえるかしら?」
「あぁ、いいよ。東雲さんは人の感情は分からない脳筋ゴリラだと思ってたよ」
聞き間違いだと思いたかったが実はそうではないらしい。
春之助は、ご丁寧にハッキリと言ってくれた。
「わざわざ2回も言わなくていいわよ!」
「いや、だって東雲さんが言えって」
「だからって2回も謗る必要があるのかしら!?」
「そんな理不尽な……。だから脳筋ゴリラなんだよ」
「また言ったわね!? そもそも私は脳筋でもゴリラでもないわ!筋肉質な野球少女よ!」
まさかの展開に、部室の外で聞き耳を立てていた翼たちは焦る
(ちょ、ちょっと中野さん!話が違うよ!)
(にゃにゃっ!?こんなはずでは無かったのにゃ!)
(ますます仲が悪くなってるような…)
(ど、どうしましょう!)
「私のことばかり言うけれど、桜井くん。鈴木さんがあなたの家に通っているらしいわね。真剣に野球をやっているように見せて、実は下心があって部員と接しているんじゃない?」
「なっ!?それをどこで!?」
思わぬ暴露に、春之助と和香は顔が青ざめている。
(すずわか、これはどうゆうことにゃ!?)
(そ、そうですよ和香さん!2人はそういう関係だったんですか!?)
(ち、違うから!そういうのじゃなくて!これにはちゃんと理由が…)
「情報源は言えないわ。でも、これは本当なのね?」
「……あぁ。でも、これにはちゃんと理由があるんだ─」
誤解を解くために、全力で説明をする春之助。
「──そういうことだったのね。それは、その………変な誤解をしてごめんなさい」
「分かってくれたならいいさ。それじゃあ、脱線しちゃったけど練習試合について話そうか」
初めの喧嘩はどこへやら、そこからはスムーズにミーティングは進んでいった。
(これでなんとか大丈夫そうにゃ)
(そうね。見つかる前にそろそろ帰りましょうか)
翼たちは、安心した様子で帰って行った。
「さて、練習試合についてはこれくらいで良さそうだね。そろそろ帰ろうか」
「えぇ。帰る前に1ついいかしら?」
「ん、なに?」
真剣な顔で春之助を見つめる東雲。
「本当に野球選手としてもう一度やり直す気は無いの?」
「うん、無いよ」
「どうして!? 」
「理由は前にも言ったけど、もう満足したんだよ」
「そんなの認めないわ……!!
あなたならプロにだってなれるのに!
プロになりたくても、なれない人もたくさんいるのよ!?」
「そうだね。でも、僕はもういいんだ」
東雲の訴えを切り捨てる春之助。
「君が何と言おうと、この考えは変わらない。僕はもう選手としては終わったんだ」
「あなたがそう言っても私は諦めないから。あなたにマスクをまた被らせてみせるわ」
そう言うと東雲はバッグを持ち、部室から出た。
帰り道、1人ということもあって東雲は春之助への不満を爆発させていた。
「なにが"もういい"よ!私は認めないわ!
絶対に認めない!!
だって、だって………!
"桜井春之助とプロの舞台で対決したい"ってずっと想って努力してきた私がバカみたいじゃない!
あの人は、私に目標をくれたのに!努力する理由をくれたのに……!
飽きたから辞めるなんて勝手すぎる………。
絶対に、また選手としてグラウンドに立たせてみせるわ」
強く心に誓い、自主練場所へと向かうのであった。
12話、龍ちゃんでした。
キャラ崩壊は大目に見ていただきたい