君と夢見た甲子園   作:トップハムハット卿

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4話に続いて5話です!

どうぞ!


#5 始まりの一日

鈴木さんの監督を引き受けると言った春之助は、鈴木さんに案内されてグラウンドに連れて来られていた

 

ここのグラウンドは、今は内野に雑草などがあるが、整備すれば普通に使えそうだ。

それに、外野ゾーンの更に外側はヒマワリで埋めつくされているという素敵なグラウンドだ。

 

たがひとつ、気になることが春之助にはある。

 

「ところで鈴木さん」

「どうしたの?桜井くん」

 

「グラウンドからこっちに手を振ってる人がいるんだけど?」

「そうね」

 

「しかも、有原さんに凄く似てる」

「そうね」

 

この瞬間、春之助は悟った。

(ハメられた………!!)

 

「やっほー!春之助くん!」

「や、やぁ。有原さん。それと……」

 

「この子は4組の河北(かわきた)智恵(ともえ)。私の幼馴染なんだ」

 

ショートカットの髪型をした女の子、河北さんの紹介を有原さんがしてくれた

 

「そっか、よろしくね河北さん。俺は桜井春之助」

「よろしく、桜井くん!」

 

河北さんとの自己紹介を済ましたところで、春之助は隣の金髪の女の子の方を振り向いた

 

「君は野崎さんだよね?」

「は、はい!3組の野崎(のざき)夕姫(ゆうき)といいます」

 

彼女は自己紹介の時に、金髪だったこともあってかなり印象が強かったから覚えている

 

「よろしくね野崎さん」

「はい、よろしくお願いします」

 

 

「ところで、今日はお揃いのようだけど、どうしたの?」

薄々、嫌な予感を感じながらも一応聞いてみる春之助。

 

「どうしたの?って、練習するために集まったの!

春之助くんが私達、女子野球部の監督になってくれるんでしょ?」

 

「そうよ」

「ちょっと、鈴木さん!俺は野球部の監督をするなんて一言も!

鈴木さんの監督をするとしか言ってないよ!」

 

 

「私は野球部に所属しているの。だから、私の監督をするということはチームの監督をするということになるわ」

「屁理屈だ……」

 

「春之助くん!お願い!私達のチームの監督になって下さい!」

春之助にむかって頭を下げる有原さん。

春之助がノリ気でないのは承知の上の懇願だろう

 

「私からもお願い!桜井くん!」

有原さんと同じく、頭を下げる河北さん。

 

「私達に野球を教えてください!」

野崎さんまでも頭を下げる

 

悩む素振りを見せる春之助だが、彼は美少女3人に頭を下げられて、断れるほどのメンタルを持ち合わせていない。

 

「はぁ………わかった。引き受けるよ」

 

「いいの!?ありがとう!!」

「あぁ。やるからには、全力でやるよ」

 

「甲子園出場を目指してみんなで頑張ろう!

改めて、これからよろしくね♪春之助くん」

「こちらこそよろしく。有原さん」

 

「翼って呼んでよ。これからは監督と選手の信頼も大事になってくるから、親睦を深めるってことで……ね?私も春之助って呼ぶから」

 

「わかった。よろしく、翼」

 

ガッチリと握手を交わす辺り、2人とも実に高校球児らしい。

 

「これからよろしくね!桜井くん。私のことも、智恵(ともえ)って呼んでね!」

「あぁ。こちらこそ、智恵」

 

「よろしくお願いします。桜井くん。私のことも、夕姫(ゆうき)と呼んでくださいね♪」

「わかったよ。改めてよろしく、夕姫」

 

 

まだ選手は4人しかいないが、監督として春之助が加わり"野球部"が部として成立する人数になったのであった。

 

 

「鈴木さんもよろしくね?」

「なんで私だけ名字に"さん"付けなのよ」

 

鈴木さんは拗ねてそっぽを向いてしまった

まぁ、これはハメられた事に対するちょっとした春之助の鈴木さんへの復讐であるわけだが……

 

「ごめんごめん。改めてよろしくね、和香」

「…………はぁ、こっちこそよろしくね。春之助」

 

 

(※ナレーションは春之助の呼び方に合わせていきます)

 

 

「俺は呼び方は気にしないから、好きに呼んでね。

それと、"監督"って立ち位置ではあるけど、チームメイトと同じような感じで接してくれるとありがたいよ」

 

「わかった!じゃぁ、早速だけど練習しよっか!」

 

翼の掛け声で和香たちは外野の方へ歩いてゆく

 

「春之助も一緒にやるんだから!ぼーっと突っ立ってないで!ほら!」

「え!?僕もなの…」

 

渋々、翼たちの元へ向かう春之助

 

そして、練習が始まった

 

まずはランニング

 

そしてストレッチ

 

軽めのダッシュ

 

こんな感じでウォーミングアップ終了

 

 

「次はキャッチボールだよ!」

 

翼の指示が飛び、みんなが応える

 

「まずは投げ方から教えるね」

 

「翼はいいとして、他のみんなはどれくらい投げれるの?」

 

「私は翼のキャッチボールに付き合ったことがあるくらい……かな」

「私は小さい頃によくお兄ちゃんとキャッチボールをしてたわ。河北さんと同じくらいのレベルだと思う」

「私は………今日初めてボールを握ります………」

 

「なるほどな……。よし、翼は智恵と和香を頼む。僕は夕姫に球の握り方や投げ方を教えるから」

 

「うん、わかった!じゃあ、鈴木さん、ともっち、一緒にキャッチボールしよっか!」

 

 

「よし、じゃあ僕たちもやろうか」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 

翼、和香、智恵チームと春之助、夕姫チームの2チームに別れて練習が始まった

 

 

「それじゃあ夕姫、まずはボールの正しい握り方からだね」

「握り方?」

「そう、握り方。たかが握り方だと思うかもしれないけど、握り方一つで投げたボールの軌道が変わるんだ」

「なるほど…」

 

夕姫は不思議そうな表情で春之助を見つめている

 

「最初は基本となるフォーシームから。これはピッチャーで言うとストレートの握り方だね。こうやってボールを持って、人差し指と中指の指先が縫い目に掛かるようにするんだ」

 

「こ、こうですか?」

 

「惜しい、ボールの向きが逆だね」

 

そう言って春之助は夕姫の手を掴み、ボールを正しく握らせる

 

「これが正しい握り方だよ。どう?フィットしてる感じがあるかな?」

「な、なんとなく……」

 

「よし、じゃあ早速投げてみようか」

「は、はい!」

 

「近い距離だから、しっかり僕のグローブ目掛けて投げてみて」

「わかりました。それっ!」

 

そこそこ速さのあるボールが春之助に届く。

 

「お、ナイスボール。いいコントロールだね」

「そ、そうですか?ありがとうございます」

 

「でも、投げ方にも基本となるフォームがあるんだ」

「フォーム……ですか?」

「そうそう。細部は個人によって違ってくるけど、土台はみんな同じさ」

 

 

「投げる時に大事なのは2つ。1つはグローブをはめている手の動き、もう1つは踏み出す足の動きだ」

 

「まずは手の動きから。グローブをはめている方の手は、ボールを投げる時、投げる方向へ向かって伸ばし、ボールを持っている方の腕を振ると同時に捻りながら引く。

言葉で説明しても伝わりづらいだろうし、実際にやってみせるね」

 

「まずは腕を伸ばして、こっちの腕を振るときに捻って引く」

 

スローモーションで夕姫にフォームをみせる春之助。

それを真似してみる夕姫。

 

「こうですか?」

 

ボールを触るのも初めてだと言うだけあって、かなりぎこちない。

 

「いい感じだけど、もう少しかな」

「うーん、難しいですね」

 

しっくりきていないのか、夕姫は何度も投げる真似をしている。

 

「ちょっと失礼するよ」

 

そう言って春之助は夕姫の後ろへ回り、彼女の腕を掴む

 

「こうやって、腕を振るときに……捻りながら引く!」

 

野球経験者なら分かるだろうが、投げ方を教える場合はコーチは誰もが教え子の腕を掴んで理想の動きをさせてやるとこから始めるものだ。

 

でも、それはほとんどが男性コーチが少年にする行為である。

 

高校生の男女がこれと同じことをするのは多少問題があると思う……

 

「どう?雰囲気だけでも掴めたかな?」

「は、はい……ありがとうございます/////」

 

この鈍感男は気づいていないが、ホントならセクハラで訴えられるかもしれない行為だと思う………

 

「よし、それじゃあ実際にキャッチボールをしてみよう。やってくうちに感覚をつかめると思うし」

「わかりました、それじゃあ投げますよー!それっ!」

 

まだ5人だが、今日は女子野球部の記念すべき始まりの一日だ

 

(とりあえず試合ができる人数集めないとな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかかでしたでしょうか!

感想など頂けるととても嬉しいです!
野球を愛する同志の方がおられたら是非!

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