「みんなー!次は軽くグランド整備をしてからノック!」
『はい!』
翼の呼びかけに、グランドの選手達が応じる。
「春之助!ノックお願いできるかな?」
「あぁ、もちろん。翼は新田さんたちのフォローをしっかり頼むよ」
「任せて!」
花宮高校女子野球部(仮)の発足から1週間と少し経つ。
最初は春之助を含め11人だったのが、なんと20人にまで部員が増えた。
長くなるので細部の紹介は省くが、名前だけでも紹介しておこう。
現在の部員は
そして監督の
この短期間で20人も部員が集まるのはかなり凄いことだろう。
新設の部活動だから敷居が低く入りやすいのもあるだろうし、新聞部である中野が新聞の記事で野球部の宣伝をしてくれているおかげでもあるだろう。
「新田さん、行くよ!」
「さ、桜井!初心者なんだから優しいやつお願い!」
「分かってるって。ほい、ショート!」
優しいゴロを新田は翼に教えてもらった動きで捌く。
「ナイス!」
「やっぱ、私センスあるな~♪」
「つぎ直江さん!」
「は、はい!」
こんな感じで練習は進んでいき、そして終わる。
部員の多くが初心者なので、初めのうちはこんなもんだろう。
翌日、放課後になり、生徒たちがそれぞれの部活へと足を運ぶ中、1人の少女が女子野球部のグランドへと足を運んでいた。
「ここが花宮高校女子野球部のグランドでいいのかしら?
学校新聞の記事を拝見させてもらったわ…。キャプテンの有原翼に会いたいのだけれど…」
「そうですよ。もしかして、入部希望の方ですか〜?」
新たな入部希望者だと思い、嬉しそうな夕姫。
それとは反対に、少女は険しそうな顔をした。
「入部希望?笑えない冗談ね。 何故、私がこんな''お遊び''に付き合わなくちゃいけないの?」
「……お遊びって、そんな事無いですよ」
少女の言葉に、直江がすこし不満げに反論する。
「素人ばかり集めた''野球ごっこ''は''お遊び''とは違うのかしら?」
「た、確かに未経験者が多いですけど…私たちだって真剣に練習してるんです…!!」
「そうだよ!いきなり来てその言い方はあんまりじゃないかな」
「咲さんの言う通りです。あなたに''お遊び''なんて言われる筋合いはありません!」
たまらず、近藤と夕姫も言い返す。
「あなたたちの監督、''あの''桜井春之助なんでしょう?」
「あの?……たしかに、桜井くんが監督ですけど…それが何か?」
「だったら尚更ね。あんな、野球から逃げた臆病者が監督をしているのに''真剣にやってる''ですって?
あなた達!『野球』を舐めないでよね!」
「─っ!?桜井くんは臆病者なんかじゃありません!怪我をして野球を辞めなくちゃいけなくなったって……!」
「彼は逃げたのよ!確かに彼は投げ過ぎが原因で肩を故障したわ……。でも、彼の怪我はもう既に治っているのよ」
「な、治ってるってどういうことでしょうか?」
変わらず、険しそうな表情で少女は夕姫の質問に答える。
「知っている人は少ないと思うのだけれど、彼は肩の治療のためにアメリカへ飛んだのよ」
「アメリカに!?」
「ええ。向こうのスーパードクターに手術をしてもらい、リハビリを経て帰国した。でも、帰国した彼を強豪校は必要としなかった」
少女は説明を続ける。
「いくら治ったとは言え、あんな大きな故障をすれば再発のリスクも当然ある。たとえ上手くても、そんな爆弾を抱えたような選手を欲しがる高校は無いわ……。それで彼は挫折し野球部の無く地元からも離れた花宮高校に来た。 つまり、野球から逃げたのよ」
少女から春之助の辛い過去を聞き、3人は返す言葉が無かった。
そこへ、翼が遅れてグランドに入ってきた。
「みんなごめん、ちょっと和香ちゃんと春之助と一緒に掛橋先生のところに……ってあれ?その子は?」
「ようやく来たわね、有原翼…。あなたと桜井春之助の作った『野球部』見せてもらったわ」
不思議そうな顔で少女を見つめる翼。
「悪いことは言わない。
──今すぐこんな『お遊び』は止めなさい。貴女には才能がある。その才能が枯れてしまう前に、こんな『お遊び』は止めて私の入っているチームに来るべきよ。
伝えたいことはそれだけよ。それじゃあ失礼するわね…」
そう言い残し、彼女は去っていった。
「おまたせ、みんな。……翼?それにみんなも、何かあったの?」
入れ違うようにグランドに来た春之助。
みんなの表情から、彼は何やら不穏な空気を感じ取ったのだった…。
7話でした!!
レオンくんごめんなさい……
彼女の第一印象をかなり悪くしてしまって(涙)
感想お待ちしてます!