真・恋姫†夢想~三国無双の血を引くもの~   作:疾風海軍陸戦隊

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思わぬ再会

「動かないな・・・・志乃」

 

「はい動きませんね。でも吹雪様。落とし穴全部埋められてしまいましたね」

 

あの夜の戦いから一夜が明けた。この戦いで連合軍は大きな打撃を受けた。まず最初の汜水関攻略戦では奇襲を受け、さらには袁紹軍の輸送部隊が盗賊の被害を受けて物資不足さらに極めつけは東西関所の攻略で失敗。いまだに汜水関を突破できずにいた。戦術的には董卓軍の勝利であった。しかしこの東西関所の戦いで連合軍は本来の目的であった汜水関に設置されていた落とし穴を全部埋めることに成功した戦略的には勝利となっていた。

 

「そうだな・・・・さて、志乃」

 

「はい。わかっています吹雪様。今夜、敵陣へ行くのですね。でも大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ。斗志も同行する予定だから」

 

「ですがもしものことがあったら・・・・・」

 

志乃は心配そうな顔でそう言う。吹雪は志乃を安心させるように笑顔でこう言った

 

「大丈夫だよ志乃。俺はまだ死なないよ。まだ死ぬわけにはいかないからな」

 

と、笑うと軍帽を被りとある場所へと向かうのであった。吹雪が向かった場所とは一つの個室だった。吹雪はその扉をノックする

 

「すまないが、入るぞ」

 

そう言い、吹雪はドアを開けるとその部屋の中には赤いポニーテイルの女性が董卓軍兵士に尋問されていた。

 

「お、沖田様!」

 

「いや、敬礼はいいよ。後は俺に任せて、君は休んでくれ」

 

「はっ!」

 

兵士はそう言い部屋を出ていくと吹雪は空いた椅子に座る。すると尋問を受けていた少女はジーと吹雪を見ていた。

 

「ん?なんだ?俺の顔に何かついてる?」

 

「あ、いや。お前が天の御使いの一人の沖田吹雪なのか?」

 

「ああ、そうだけど?」

 

吹雪がそう言うと彼女は少し意外な顔をして首をかしげる

 

「いや、なんかもっと厳つい感じだと思ってたんだが・・・・女の子みたいで可愛い顔なんだな」

 

その言葉に吹雪は苦笑する。

 

「・・・・で、足の怪我の方は大丈夫かな?公孫瓚殿」

 

「ああ・・・見張り付きだがここいら辺も自由に散歩できるし、私も含め捕虜になった兵たちは捕虜というか客のように扱ってくれている。お前たちの軍は情に厚いな・・・・」

 

「そうですか。そう言われると嬉しいです。・・・・で、公孫瓚殿洛陽の方は見ましたか?」

 

「ああ行って見てたよ・・・・・今まで見たこともない活気ある街だな・・・・我々は一体何のために戦ったのかわからないな・・・・」

 

公孫瓚は肩をすくめ、そして悲しそうな顔でそう言う。

 

「なあ、沖田。話は星から詳しく聞いた。お前のことも董卓のことも・・・」

 

「そうですか・・・・・」

 

吹雪と公孫瓚はその後しばらく黙ってたが、公孫瓚が口を開く

 

「なあ、沖田。私を連合軍へ返してくれないか?」

 

「え?」

 

吹雪は公孫瓚に言葉に目を丸くする。

 

「私が連合軍の連中を説得する。『董卓は暴政などしてない』と。だから、この戦争。絶対に話し合いに持ち込ませて見せる。それが洛陽の街の人や董卓軍に迷惑をかけた私にできる唯一の償いだ。だから頼む!」

 

と、彼女は頭を下げて吹雪に言う。しかし・・・

 

「残念だが、それはできないよ」

 

「なんで!?」

 

「無論あなたが嘘を言っているとは微塵も思っていない。でも今あなたは敵軍の捕虜となっている立場だ。もし仮にあなたを連合軍陣営へ戻せば連中。特にそこの総大将である袁紹が君が董卓軍にわざと解放されて連合軍の情報を探る間者っということで殺されることになる可能性がある。だから君を解放するわけにはいかない」

 

「そんな・・・・いや、でもあの袁紹ならしそうだな・・・私は・・・・無力なのか」

 

公孫瓚は悔しそうに言う

 

「いや、公孫瓚殿。あなたは無力ではありません。あなたにはある役をお願いしたいのです」

 

「・・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連合軍天幕

 

「き~~~~!!なんで失敗するのですか!たかが弱兵の集まりごときに!?」

 

と、袁紹は次から次へと来る作戦失敗などの報告を聞き悔しがっていた。因みに顔良は負傷し運ばれた文醜の介護をしていた。

 

「ですが本来の目的である落とし穴を埋めることができたんですから。いいじゃないですか」

 

「それとこれとは別ですわ!」

 

「麗羽様。一つよろしいでしょうか?」

 

「なんですの田豊さん?」

 

「ここはひとつ撤退されては?」

 

「なんですって?」

 

田豊の言葉に袁紹の目は吊り上がる

 

「田豊さん?今なんておっしゃいました?」

 

「はい。ここは一時撤退されたほうがいいのではっとおっしゃいました。今戦いで我が袁紹軍は4割の犠牲を出しました…ですから我々は後方へといったん撤退し、冀州からの援軍を待ってる間、その他の軍勢に任せては?」

 

「却下ですわ!」

 

「なっ!?」

 

「この華憐で名誉ある名門袁家が撤退なんて末代までの恥ですわ!」

 

「しかしながら麗羽様。現在我が軍には兵糧が足りません。それなしでどう戦えと?」

 

と郭図はそう言うが

 

「そ、その点なら大丈夫ですわよ。今冀州から物資が届く予定ですわ。しかも今度は秘密に行動して動いてるので見つかるはずが・・・・」

 

と、袁紹がそう言いかけた瞬間

 

「袁紹様!大変です秘密輸送部隊が黒山衆の奇襲によってやられました!」

 

「な、なんですってー!?」

 

黒山衆とは周倉軍と対をなす盗賊団でその暴れっぷりは漢王朝でも手が付けられないほどの盗賊団だった。その報告を聞いて袁紹は取り乱し、それを聞いた郭図は

 

「(あれ?この場面なんだかデジャブですね・・・・でも、周倉軍に続いて黒山衆までも…まさかこれも沖田とかいう天の御使いの作戦かしら?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッハァー!!私ら黒山衆の棟梁張燕!あんたたちの兵糧をいただきに来たわ!全員、連合軍のくそったれの奴らを粛清にしなさい!」

 

「おおぉー!!」

 

一方、秘密の道を進み連合軍に物資を送る輸送部隊は物資を送る途中、いきなり黒い布を頭に巻いた集団に襲われていた。

 

「な、なんだこいつら!なんでこんなところに黒山衆が!?」

 

「知るかよ!黙って走ってここを突破しろ!」

 

「あ~こんなことなら連合に参加しなければよかったぜ。聞けば南に物資を送ろうとした連中、周倉の軍勢にやられたし。」

 

と、輸送部隊は必死に逃げる。しかし

 

「ぎゃっ!」

 

「ぐえっ!」

 

突如目の前に弓矢が雨あられと振っていく。そしてその前には髪の長い黒髪の背の高い女性が弓隊を率いて攻撃していた。

 

「私は黒山衆棟梁張燕が副将。張牛角!ここは通しません!弓の的にされたくなければ物資を置いてさっさと逃げなさい!」

 

と、張牛角の言葉に一部の輸送兵が物資を置いて逃げる。そして一方張燕の方は

 

「頭!。敵を追い詰めました!」

 

「粛清しなさい!」

 

「はっ!」

 

と、奇襲攻撃を使い、敵を殲滅していた。それを見ていた張燕は

 

「ふふ・・・我ながらいい奇襲戦法だわ。この際だから「黒山衆」じゃなくて「奇兵隊」って改名しようかしら?それにしても飴が舐めたいわね~」

 

そんなことを呟いていると

 

「張燕覚悟ぉー!」

 

と、傷だらけの輸送部隊の兵士が張燕に襲い掛かる。張燕はそれをひらりとかわし脚で相手の足を引っかけて転ばす。そして、その兵の頭に向けて片手に小型の弩を向けていた

 

「飴・・・あるかしら?」

 

「え?」

 

いきなりの言葉に輸送兵は目を丸くし硬直していた。そんな中、張燕は冷たくそして恐怖をまとった目で

 

「ないなら死んでなさい!」

 

そう言い引き金を引き輸送兵を殺した。すると・・・

 

「張燕様。もう終わったのですか?」

 

と、先ほどの髪の長い弓手の女性、張牛角がやって来た。

 

「ええ、雪波。今さっきね。それと何度も言ってるでしょ。二人の時は真名である『深雪』っと呼びなさい。それと肩車」

 

「はいはい…まったくうちの大将は甘えんぼですね」

 

そう言い、張牛角こと雪波は張燕こと深雪を肩車する。

 

「・・・・で、これからどうするのですか?これを機に董卓軍に加わりますか?」

 

「冗談言わないで私は誰かに縛られるなんてまっぴらごめんよ。私たちは自由気ままに生きる。それが私たち黒山衆のモットーでしょ?」

 

「では、なんで董卓軍を助けるような真似を?まさか周倉の影響ですか?」

 

「違うわよ。ただ単にあのクルクル女が気に食わないのよ。なんなのあの高笑いに髪型。なめてるのかしら?」

 

「ふふ・・・あなたは相変わらずの毒舌ですね。で、奪った物資はどうするんですか?」

 

「一部は部下たちに分けなさい」

 

「残りはどうするのですか?」

 

雪波がそう言うと深雪はフフッと笑うのだった。

 

 

 

 

 

場所は戻って袁紹陣営。

 

「頼みの綱である物資が失った・・・・・麗羽様。もはや我が軍はこれ以上被害を受けるわけにはいきません。ここは一時撤退をし、火中の栗を取るのは曹操や孫策たちに任せては?」

 

郭図の言葉に袁紹は

 

「う・・・・仕方ありませんわね。わかりましたは田豊さん。郭図さん。今回はあなたの指示に従いましょう」

 

さすがの袁紹もこれ以上自分の兵を失いたくないのか渋々自軍の兵を後方に下げるのであった。

 

 

 

一方、馬騰陣営

 

「まさか、月の軍隊がここまでやるなんて驚きだね・・・」

 

馬騰は今までの戦いを見ていた。

 

「確かにあのへんなお兄さんが言っていた銃?だったけ?あれじゃあ私たちの騎馬隊も勝てないよ・・・ねえ。翠姉さま?」

 

「・・・・・」

 

「姉様?」

 

「あ、なんだよ・・・・」

 

「どうしちゃったの?ここにつく前からボーとしてるけど?」

 

「ああ・・・・なんでもないよ」

 

「お姉さま・・・・」

 

先ほどから上の空な感じの馬超に馬岱は心配な顔をするすると・・・

 

「っ!?誰だ!!」

 

と、罵倒は何かの気配を感じ、そばに置いてあった槍を手に取り気配のする天井の方を突く。すると・・・

 

「さすが馬騰様・・・・鋭い洞察力ですね」

 

すると穴の開いた天井から眼帯をした白銀の髪をした少女が降って来た。

 

「あんた誰だい?」

 

「はッ・・私は董卓軍第三師団「吹雪隊」所属の樊稠と申します」

 

「何?貴様董卓軍の奴か!何の用だ!?」

 

「はっ・・・わたくしは我が上官である沖田吹雪隊長から手紙を預かってまいりました」

 

「吹雪の!?」

 

吹雪の名を聞き馬超は驚く

 

「そう・・あの小僧から・・・・で、なんだい手紙って?」

 

「はい。こちらです」

 

そう言い雪風は馬騰に手紙を渡し、馬騰はその手紙をすらすらと読む。読み終えると

 

「なるほど・・・・やっぱりそうだったのね…あいわかったわ。私たちはこの攻撃にはあまり加わらないよ。そうあんたの大将に伝えてきてくれ」

 

「はっ・・・・ご協力感謝します」

 

そう言い樊稠は闇にまぎれ消える

 

「母様・・・・手紙の内容は?」

 

「ああ、やっぱりこの連合、変だと思ったがやっぱり誰かの策略のせいらしい、でそいつが書いた檄にそそのかされて袁紹がこのバカ騒ぎに乗った。らしわ」

 

「やっぱりそうだったのか…‥で、母様どうするんだ?」

 

馬超が母である馬騰にそう訊くと、一人の兵が入って来た。

 

「あんた、袁紹軍の者か?」

 

「はっ!そうであります。袁紹様から伝言を預かりました」

 

「伝言?」

 

「はっ!各軍勢は前線に立ち汜水関を落とせっとのことです!」

 

その言葉に馬騰は目を細める・・・

 

「(なるほど・・・・私たちを使い捨てにする気だな・・・・)悪いがそれはちと出来ぬ」

 

「は、はぁ?」

 

「悪いね。今私たちは疲弊した兵たちにご飯を作っているんだ次の戦いに向けてね。なあ、そうだろ蒲公英。翠?」

 

「え?ああ、そうだよ!今ね~みんなにお弁当を配ってるんだよ。ねえ姉さま?」

 

「あ、ああ。そうなんだよ今、西涼の兵たち腹がすいてて元気がないんだよ」

 

「‥‥というわけだ。空腹で士気の落ちた兵たちが前線に行っても足手まといになってしまう。だから私たちの軍は空腹を満たした後、私たちもちゃんと前線に行くから。総大将の袁紹にそう伝えておきな」

 

「は・・・はっ!」

 

そう言い袁紹軍の兵士は天幕を出るのだった

 

「母様・・・・」

 

「翠。蒲公英。あくまでこれは時間稼ぎよ。それと想華いるかい?」

 

「はい。ここにいます馬騰様」

 

と天幕から龐徳こと想華が入って来た。

 

「あんた吹雪とは顔見知りなのよね?」

 

「はい。定軍山の賊討伐の時に・・・・・」

 

「そうかい。じゃあ、あんたには重要なことを任せるわ。言いたいことはわかるわね?」

 

「はい。お任せよ」

 

こうして馬騰軍は兵たちに弁当を配るという理由で前線に立たず、汜水関が開くまでずっと動かずにいた。因みにこのことは後に「汜水関の空弁当」っと後世で言われるのであった。

 

 

 

 

曹操陣営

 

「汜水関の動きがおかしい?」

 

「はい。華琳様。昨晩に比べて攻撃が大人しいです。それになぜだが兵の数も減っています」

 

「・・・・・確かに変ね・・・・・まさか」

 

「どうかされたんですか華琳様?」

 

秋蘭が華琳に訊く

 

「もしかしたら、敵は撤退準備をしているわね」

 

「なっ!?」

 

華琳の言葉に陣にいる幹部は驚き目を丸くする

 

「な、なんで沖田軍らは防衛要塞である汜水関を撤退する必要が?」

 

「それは・・・・」

 

華琳がそう言いかけた時

 

「曹操様っ!」

 

一人の兵士が入って来た。

 

「なんだ!?敵兵か!?」

 

春蘭が兵士にそう言うが

 

「いいえ!それが・・・・」

 

兵士の一人が困惑しながらそう言うと、一人の少年が入って来た。その少年を見て魏の幹部たちは目を丸くする。それは華琳も同じであった。そして彼女が最初に出した言葉は・・・・

 

「ふ・・・・吹雪」

 

「おう。久しぶりだな華琳・・・・」

 

そう、彼女たちの前に現れたのは汜水関にいるはずの吹雪であった。

 

 

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