真・恋姫†夢想~三国無双の血を引くもの~ 作:疾風海軍陸戦隊
「ふ・・・・吹雪」
「やあ、久しぶり華琳」
華琳の天幕に入ってきた人物は汜水関にいるはずの吹雪であった。
「沖田!なんでお前がここに!?」
秋蘭が驚き、そして疑うような目で俺に言う。まあ当然だろうな。敵将である俺がこんなところにいるのだからそれはそんな目で見られても仕方がないだろう。俺がそう思っていると・・・・
「兄ちゃ~ん!」
と、いきなり季衣が飛びついてきた。俺は季衣を受け止める。
「お~季衣。久しぶりだな!背大きくなったんじゃないか?」
「へへ~わかる?」
季衣は吹雪に頭をなでられ嬉しそうに言う。
「て、こら!話を逸らすな沖田!なぜお前が・・・」
と春蘭が言いかけた時
「失礼します!」
春蘭の言葉を遮るように誰かが天幕に入ってきた。その人物は吹雪がよく知る人物だった。そう流琉だ。
「やあ、流琉」
「あれ?兄様!?なんでこんなところに!?」
さすがの流琉も驚いた顔をする。すると華琳は
「・・・・で吹雪。何の用かしら?」
華琳は少し冷たい目で吹雪を見る。普通なら華琳も吹雪との再会を喜びたいが、今の状況吹雪は敵の将。なれなれしくはできない状況なのだ
「つれないな~。そんな怖い目で見るなよ。」
「いいから要件を言いなさい吹雪」
とあきれ顔でそう言う華琳。
「おっと…そうだったな華琳。実はな言いたいことがあったんだ。」
「言いたいこと?何かしら?もしかして私たちに降伏しろって言いに来たのかしら?」
「いや違うよ。」
彼女の性格からして降伏を受け入れることは絶対にしない。それは彼女の客将をしていたからわかる。第一に俺がここに来た目的は降伏勧告を進めるために来たんじゃない。
「じゃあ、何しに来たのかしら?」
「まず最初に華琳。お前この連合のことどう思ってるんだ?」
俺の言葉に魏の幹部たちは華琳のほうを見る。しばらく黙っていた華琳は口を開いた
「正直言って胡散臭いとは思っているわ。でも今はこんなご時世よ?弱いものは強いものに負けるそんな時代。だから私は汜水関。虎牢関を突破し洛陽でこの乱を
「・・・・」
俺は華琳の言葉に違和感を感じそしてしばらく考え
「(・・・・なるほど。そう言うことか・・・)」
俺は華琳の言葉の真意に気付き。少し笑みを出す。
「なるほど・・・・じゃあ、ここからが本番だ。華琳。お前は今、名声を取るために戦ってるって言ったな」
「え、そうよ」
「じゃあ、華琳。今の汜水関の様子。どうなっているか分かっているな・・・・」
「っ!?・・・・じゃあ、やっぱり」
「ああご名答。で、そこでだ。華琳たちには・・・・俺たちの護っている汜水関をあんたらにくれてやる。」
「「っ!?」」
その言葉に華琳たちは目を丸くする。
「お、沖田。一体何を・・・・・」
「春蘭。言葉通りの意味だ。今まで誰も突破できなかった難攻不落の汜水関を曹操軍が突破する。それで十分名声はとれるんじゃないか?」
「それはそうだが・・・・・」
「じゃあ、決まりでいいかな?華琳は?」
俺が華琳にそう言うと華琳はジーと俺の目を見る。そしてふっと笑い
「・・・・・わかったわ。あなたが嘘をつく人物じゃないし。いいわ吹雪。あなたのその言葉。乗りましょう」
「感謝する。華琳。それじゃあ、俺はそろそろ行くよ」
「兄ちゃん。もう行っちゃうの~」
「ああ、残念だけどな。そろそろ戻らないと。ところで華琳」
「何かしら?」
「そちらの二人は?見ない顔だけど?」
そう、先ほどから気になっていたが桂花の傍にいる二人の少女一人は眼鏡をかけたクールそうな女性。そしてもう一人は頭に人形を置き大きな飴を持っている少女の存在だ。
「ああ、彼女たちは新しく我が軍に加わった仲間よ」
華琳がそう言うと
「初めまして沖田さん。私は華琳様の軍師の郭嘉と申します。以後お見知りおきを」
「ああ。どうも初めまして。沖田吹雪です」
俺は郭嘉さんに挨拶する。
「・・・・でそちらは?」
「ああ。こっちは・・・・」
「ぐ~」
郭嘉さんが飴を持った少女を見ると少女は鼻提灯を出して立ったまま寝ていた。
「風!起きなさい!」
「おぉ!?」
郭嘉さんに突っ込みを入れられて、その少女は目をぱっちりと開けるがまたすぐに眠たそうに半開きな目となる。
「お~長い話だったのでつい寝てしまいました・・・・・でお兄さんは確か天の御使いの一人で枯草色の御使いと呼ばれている人ですよねぇ~?」
「え?ああ・・・・そうだよ」
「じ~」
「あ、あの・・・・何か?」
「思っていたのより随分と可愛い顔をしておりますね~」
ここでもかよ!?初めて会う人には必ずそう言われる。俺ってそんなにかわいい顔なのか?いや確かに顔は母さん似だからそれはそうなのか・・・?
「ま、まあこの顔は母親にだからな」
俺は苦笑してそう言う。
「なるほど…そうですかその顔はお母さん似なのですか・・・・・ところでお兄さんの背中にしょっているのが天界の武器である銃って言う物ですか?」
と、少女は俺の背中にしょっている九九式小銃を物珍しそうに見る
「ああ。そうだよ・・・・・ところで君の名は?」
「ぐ~」
「寝るなっ!」
「おお、うっかり名乗りを忘れてしまった恥ずかしさをごまかすため寝てしまいました・・・・・というよりお兄さん起こし方上手いですね・・・」
なんかこの子すごいマイペースな子だな・・・・なんか不思議な子だ。
「では改めましてお兄さん。風は程昱と申します」
程昱・・・・・魏の軍師で華琳の息子曹丕を支え続けた、あの程昱か・・・
「・…どうかしましたか?」
「ああ。いいやなんでもない」
「そうですか・・・・それにしてもそんな木と鉄の棒が、火を噴き敵を一撃で倒すなんて。汜水関の戦いを見るまで信じられませんでしたよ~」
「あれ?天界の武器とか飛び道具とか卑怯とか言わないんだ?」
俺が不思議そうに訊く。だってこの時代じゃオーバーテクノロジーである銃を使ったんだぜ。普通は非難の声とかすると思ったけど誰もそんなことを言わないから不思議に思った。
「はい。武器と戦いは時代とともに常に変わります。確かに天の国の武器っという反則級なのはありますが、それをどうこう言うつもりはありません沖田殿。それにあなたのその武器は防衛用、護身用の物なのでしょ?華琳様から聞きました」
と、郭嘉さんが眼鏡をくいッと挙げて俺に言う。なんか志乃もそうだが軍師ってすごい冷静な人が多いんだな・・・まあこれはこれで助かるけど
「そうですか。そう言ってくれると助かります・・・・・・では私はこれにて。」
俺は軍帽を被り華琳たちに陸軍式敬礼をし、天幕から出ようとしたが
「吹雪・・・・・」
華琳に呼び止められ俺は振り返ると
「・・・・また会いましょう吹雪・・・」
「ああ・・・・またな」
と、華琳がそう言い俺は微笑んで天幕を出るのだった。
「・・・・あれが沖田殿ですか・・・・何というか不思議な方ですね・・・・」
「風も同じ気持ちなのです・・・・・・何というか同じ天の御使いでも劉備のところにいるなんかスケベそうな白いお兄さんとは大違いなのです・・・」
郭嘉と程昱はそう呟き
「・・・・それにしても華琳様よろしかったのですか?沖田をあのまま行かして?今なら彼を保護することができたのですよ?」
「今の彼を抑えるのは不可能よ春蘭。それはあなたが一番わかってたはずよ」
「・・・・」
そう。春蘭は力づくでも吹雪を拘束しようとしていた。だが動けなかった。なぜなら吹雪の闘気で動けなかったのだ。もし下手にねじ伏せようものなら彼に瞬殺される。長年の武人の勘が彼女にそう警告して動けなかったのだ。だがそれだけではなかった。何か天幕の向こうで何かの殺気を感じ動けなかったのも一つの理由であった。
「・・・気で抑える・・・か。さすがあの呂布の息子だけあるわね・・・」
「華琳様。この後どうするのですか?」
「先ほどの話の通り。明朝、汜水関へ向かうわ・・・・いいわね?」
「はい。かしこまりました」
と、魏の兵たちは汜水関進軍の準備を始めるのだった・・・・
「・・・」
天幕に残された華琳はそう、心配そうな顔で天幕の向こうを見るのだった。
「隊長・・・・どうでしたか?」
「ああ、斗志。話はすんだよ。後すまないなここで待たせて」
「いいえ、私が隊長の傍に行けば必ず夏侯惇殿とぶつかる。そうならないためにも私は天幕の傍で待っていました」
そう。実は夏侯惇が動けなかったのは吹雪の殺気ではなく天幕の外で待機していた斗志の殺気で動けなかったのだ
。
「そうか・・・・で、斗志。汜水関の方は?」
裏道を通りながら吹雪と斗志は汜水関に向かいつつ話をする
「はい。星の話によると大半の兵が虎牢関へと撤退しました。ですがいいんですか?私隊の軍は勝ち続けているのに?」
「まあな。だがよく考えてみろ斗志。確かに俺たちは勝利したがその反面銃の弾丸や弓矢なんかを消費してこれ以上汜水関を守るのは難しい。かといってこのまま突撃しても敵はまだ10万も残っているそんな中、無意味な突撃をしたら兵の大半は失うだろう?」
「それはそうですが・・・・」
そう、実は汜水関の物資も底をつきかけていた。これ以上の戦いは危険と判断し吹雪は汜水関を放棄し撤退することを決めたのだ。
「ですが隊長。なんで曹操殿に?」
「まあ、あれだな客将の時のお礼かな?ほら?よく言うだろ『敵に塩を送る』って」
「なんですかそれ?」
俺の言葉に斗志は首をかしげる。ああ、そう言えばまだこの時代にそんなことわざないんだっけな・・・・
「まあ、あれだ天の国のことわざだよ」
「そうですか・・・・で、それはどういう意味で?」
「ああ、敵に塩を送るって言うことわざのもとはだな・・・・」
と、俺は戦国時代の武田信玄や上杉謙信の話をした。武田信玄が塩不足で困っていた時宿敵である謙信が塩を送って助けたことなどを斗志に話すと
「なるほど・・・なかなかできることじゃ、ありませんね。天の国の武人はすごいですね。わたしも見習わなければ・・・・」
と、斗志が感心してそう言う。確かにあの話はかっこいい・・・
「そう言うことだ。さてそろそろ急がないと夜が明けるな・・・・・・・・・ゴホッゴホッ!」
な、なんだ!?また急に咳が・・・・
「た、隊長!?大丈夫ですか!?」
斗志が心配そうに俺を見る
「だ・・・大丈夫だ。ちょっと咽ただけだから。それよりも早く戻ろう」
「そ…そうですね急いでみんなのところに戻りましょう」
そう言い俺たちは汜水関へと戻り、その後、俺たち汜水関守備隊は虎牢関へと撤退し、それを最前線で戦っていた曹操軍がこれを突破するのだった・・・・・
因みにその時の知らせを聞いた袁紹は『やっぱり後退なんてしなければよかったですわぁー!!』ッと非常に悔しがっていたという。
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