どの話も本筋の中で語りきれないエピソードなのでそのうち本編に繋がる予定です。濃いストーリーを本編に盛り込む能力がない作者の苦肉の反則技です。
ちなみに宿屋イベント扱いのエピソードはあと3話程ストックがあったりしますが、本編のストックはゼロ。
最近は身のまわりも落ち着いたので3ヶ月は空かないと思うけど、本編の筆が進まなかったら宿屋イベントが続くかも。
遅筆ですみません。
~カズマ邸~
夕食後は自由時間である。ボードゲームをしたり本を読んだり筋トレしたり、各々自由な時間を過ごしていた。
ローズマリーは一人部屋に戻り明日売る分の薬の調合をしていた。愛用の浮遊鍋いっぱいに煮詰められた緑色の液体をぐるぐるかき混ぜながら、別の磨り潰した薬草を放り込む。それをまた暫く煮た後、おたまで掬って空ビンに注いでいく。最後にコルクで蓋をして完成。同じ行程を繰り返して、30本の回復薬が出来上がり、それらを箱詰めしていく。本職が薬師というだけあって手際がよい。
「さて、こんなところでいいかな。」
薬の調合は慣れたものではあるが、ほんの1グラムの分量違いで失敗作になることもある作業なのでとても神経を使う。何故か失敗作の薬を喜んで買ってくれる人もいるが、それは本意ではない。
取り合えず予定していた仕込みを終えてホッと一息付いているとコンコンとドアをノックする音。誰か訪ねて来たようだ。
「ローズマリーさん、いますか?」
「はい?どうぞ。」
キィィとドアを開けて入ってきたのは気恥ずかしそうに手をモジモジさせているゆんゆんが立っていた。
―――――――――
「魔法資質を修得したい?」
「お願いします!」
ゆんゆんが顔を真っ赤にして一生懸命にペコペコしている姿は、傍から見ればどんな悪いことをしたのかと心配になる程であった。
「私に教えられることなら別に構わないけど・・・、でも魔法なら私よりゆんゆんの方が専門化だし、私に教えられることなんてないんじゃないかな?」
ローズマリーは炎と氷という相反する2属性の資質を持ちながら、それぞれを高度なレベルで操ることができる。これは彼女達の世界でもとても珍しい技術だ。しかしその反面、資質を得る過程での無理が祟り、ローズマリーはマナ欠乏症という持病を持つようになってしまった。
そんなリスクを負わずともこの世界には冒険者カードがあり、レベルを上げてスキルポイントさえ獲得すれば強力な魔法も習得できるし、スキルポイントを余分に割り振れば、威力や詠唱速度も上げられるという。現にゆんゆんは上級魔法だけでなくテレポートなどの補助魔法も習得済みだが、同じ魔法でも他の冒険者よりも数段威力が高いようだ。紅魔族という種族特性もあるが、ゆんゆんは魔法技術においてはこの世界有数の実力者である。
「その・・・私、魔法使いとしてめぐみんに負けたくないんです!めぐみんは爆裂魔法しか取り柄のないポンコツだけど、魔王軍の幹部を何人も倒してて・・・こないだのクエストだってボスを倒したのはめぐみんでした。私は紅魔学校の時からいつだってめぐみんに勝てなくて・・・。いずれ里の長にならなきゃいけないのに、このままじゃ、ダメなんです!負けたままじゃ里の皆に認めて貰えないんです!」
ゆんゆんは目に溢れそうな程の涙を浮かべながらも、強い眼差しをローズマリーに向ける。ライバルに負けたくない。誰よりも優れた魔法使いにならなくてはならない。それが義務感から誰かに与えられた感情ではなく、自身が越えるべき壁と認識したとき、人は本当の意味で成長する。魔王討伐パーティーの一員として名誉を受けた身でありながら、ゆんゆんは驕ることなく精進を続けた。そして今尚立ちはだかる高い壁に立ち向かう新しい力が欲しかった。
「なるほど・・・、軽い理由ではないようだし、決意は固いようだね。」
「それじゃあ・・・!」
「うん、構わないよ。元々魔法使いの素養のあるゆんゆんなら恐らく私のようなリスクも少ないだろうし。」
「よろしく・・・お願いします!」
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~翌日 アクセル郊外の平原~
「さて、事前に確認したところどうやらゆんゆんは雷属性の適性が高いようだ。そこで、今日は特別講師の方をお呼びしています。では先生、どうぞ。」ササッ
「マリオンだ。よろしく頼む。」ペコリ
「え~と・・・?」
魔法資質を得る訓練と思っていたゆんゆんは戸惑いの表情を隠せない。マリオンは確かに雷属性のスペシャリストだが、あくまでも近接タイプで使う雷もゴーレムとしての能力だ。まぁ何か理由はあるのだろうと考えながらローズマリーの説明を聞く。
「ではまず、魔法資質を得るとはどういうことかを説明しよう。魔法資質を得るとは、その①耐性を得ること、その②出力をコントロールできること、その③変質ができること。これらが出来るようになってその属性の資質を得たことになります。」
「あの、質問いいでしょうか?」
「どうぞ。」
「今私は冒険者カードのスキルで魔法耐性や出力調整ができます。変質というのはちょっと分かりませんが、その②までは習得できているということでしょうか。」
「ふむ、とてもいい質問だね。その件についてはまだあくまでも私の推論になるんだけど、私は冒険者カードのスキルと私達の魔法資質は全く別の能力だと考えているんだ。」
「別の能力ですか?」
「冒険者カードのスキルは私もこの数日でいくつか習得してみたんだけど、似たような魔法でも魔力の使い方は違うみたいなんだ。」
「そうなんですか?」
「うん、自作の魔法は体内からマナを練り出すように放つんだけど、スキルの魔法は出来上がった金型にマナを通すように放つ感じかな?私達の世界にも魔法書やスキル書って物があるけど、丁度それに似たような感じだね。この感覚は実際に比べてみれば分かると思うよ。あ、でもマナを使うことには変わらないから、経験が全く無駄になるわけでもないと思うよ。」
「なるほど、分かりました。」
正確には分からないのが分かったというところか。ゆんゆんは自分の体内からマナを練り出す感覚というのは今まで感じたことがない。それをこれから身に付けていくんだとその言葉を心に留める。
「じゃあまず、その①耐性を得ることから始めよう。これは自分の魔法でダメージを受けないようにする訓練だ。その属性に自分のマナをぶつけて打ち消す技術を身に付けるんだ。そこでマリオンの力を借りることになる。じゃあマリオン、宜しく。」
「うむ。任された。」バチバチ
「あの、その属性に自分のマナをぶつけて打ち消すって・・・もしかして・・・?」
「流石に察しがいいね。私達の世界で魔法使いを諦める人の殆どはこの段階で挫けるんだ。」ニコッ
「あの!?何でニッコリしてるんですか!?あぁ!マリオンの両手がバチバチいってますぅぅう!」
「大丈夫。ゆんゆんなら直ぐに身に付けられるよ。」
「安心してくれ、ゆんゆん。マリオンは友達の為なら全力を尽くすぞ。頑張れ、ゆんゆん。」バチバチ
「いぃぃいやぁぁあぁぁあバババババ!」ビリビリ
―――――――――――――――――――――
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。」ビリビリ
「流石だねゆんゆん!こんなに早く雷耐性を身に付けるなんて!」
「あ、ばば、ありばとう、ございばす・・・。」ビリビリ
死ぬかと思った。死に物狂いでマリオンの雷撃に魔力をぶつけた。ただ魔力をぶつけただけじゃダメで、受けた雷を体で感じとって、無我夢中で同じ力をイメージしてぶつけたら少し威力が和らいで、ちょっとずつ修正をしていったら何とか無効化できた。これが、ローズマリーの言う耐性を得るということなのだろう。まだ体にも頭にも痺れが残ったままゆんゆんは礼を口にする。
「マリオンの機械の体から発せられる雷の力は純粋な雷の力なんだ。出力は大きいけどその分魔力の解析はしやすくて、訓練には向いている。ただ、実戦では使い手によって魔力の質が異なるから半減が精一杯だろうね。マリオンの攻撃も本来は物理との会わせ技になるから、無効化は難しいだろうね。」
「そう、ですか・・・。」
ようやく痺れが取れたゆんゆんはなんとか答える。
「それじゃあ、痺れも取れてきたようだし、その②出力のコントロールをしようか。」
「あ、ひょっ、ちょっとだけ待ってください!」
「ああ、安心していいよ。その②は多分あまり訓練の必要はないから。」
「え?」
「ゆんゆんは元々魔法力を使うことには慣れてるだろうからね。ほら、今マリオンから受けた雷を掌でイメージしてごらん。」
「はあ・・・。」パチ
言われた通りにゆんゆんは目を閉じて掌に意識を集中させる。するとパチパチと小さな雷が掌で弾けている。
「あっ・・・わかる、この雷は今まで使ってた魔法と違う・・・。」パチパチ
「そうそう、そのまま体内のマナを掌に絞り出すイメージをしてみて。」
「はい。」バチバチバババババ!
ゆんゆんが更に意識を掌に集めると雷は更に勢いよく弾け出す。
「そしたら今度は掌を前に付きだして、その力を解き放って!」
「はい!」バババシュン!
ゆんゆんは目を開けて目の前に向けて雷を打ち出す。威力は普段使う中級魔法のライトニングより少し弱いくらい。しかし明らかに今までとは違う魔力の使い方を経験したゆんゆんは新しい力の芽生えを確かに感じた。
―――――――――――――――――――――
「さて、大分雷の扱いに慣れてきたね。」
「はい。今ならカースドライトニングと同じ位の雷魔法を打てそうです。」バチバチ
最初はどうなるかと思ったが紅魔族の特性やゆんゆん自身の積み上げた経験もあるだろう、普通才能ある者でも1ヶ月はかかる道を僅か数時間でこなしてしまった。
ゆんゆんは短時間でここまで鍛えたローズマリーを尊敬の眼差しで見ているし、また、ローズマリーも淡々と話しているように見えるが内心は冷や汗をかいていた。
「じゃあ、最後のその③変質について、だね。」
「はい先生!どんなに辛い特訓でも頑張ります!」キビキビ
今ならローズマリーが脱げと言えばゆんゆんは躊躇なく脱いでしまうだろう。全幅の信頼を寄せたゆんゆんはローズマリーを先生と呼び始め、動きも目に見えてキビキビしている。
「では、私が教えられるのはここまで!解散!」
「はいっ!・・・へ?」ガクッ
力一杯の返事をしたあと言われたことを考えてガクッとするゆんゆん。
「あ、あの~?ローズマリーさん、今解散て言いました?」
「うん解散だ。ここから先はゆんゆん自身で作らなくちゃいけない。」
「私自身で、作る、ですか?」
「そう、変質っていうのは魔法の力を自分の力に合わせて変化させることなんだ。さっきマリオンは純粋な雷を使うって言ったけど、普通は皆自分に合わせて力を変質させている。極端な例だと悪魔族なんかは闇属性を混ぜて暗闇効果を付与させたりしているね。そうやってゆんゆん自身の魔力特性に応じた新しい魔法を作るんだ。それが出来たとき、ゆんゆんは雷の魔法資質を得たことになる。」
「私自身の魔力特性・・・。」
苦労して手に入れた力。しかしここまでは貰い物の力。そしてここからは自分で作り出す力。ゆんゆんは自分の掌を見つめながらちっぽけな自分が手に入れた大きな可能性に思いをはせる。
「雷の力は色んな応用が出来て面白いんだよね。うちの拠点でも超電磁ビッt「ちょ、ちょっと待ってください!」ん?」
「あの、せっかくなので、まっさらな状態から自分なりに考えてみたいな~なんて思ってまして・・・。」
「そう?まぁそれもそうだね。」
ローズマリーも納得して余計なアドバイスは避ける。が、何かを思い付いたように一つ提案をした。
「そういえば、さっきゆんゆんはマリオンの雷を完全に無効化出来たよね?これってマリオンの雷が純粋な雷の力っていうのもあるけど、元々の二人の魔力の質が相性いいんだと思うんだ。もしかしたら・・・。」
ローズマリーの提案はこの世界ではまだ確立していない魔力の使い方。異なる力を合わせて新しい性質を生み出す技術。合体技である。
「えっそんなこと可能なんですか!?」
「面白そうだな。試してみる価値はあるだろう。」
それが実を結ぶことがあるのかそれは作者にも分からない。
拙いクロスSSですが、もし感想等あればお気軽にどうぞ。