もとネタが好きすぎてちょっと引きずられたのと、原作エピソードが少ないヴォルちんの性格がイマイチ掴めてないせいか、読む人によっては違和感持たせてしまいそうで怖い。
―ヴォルケッタの独白―
確かに孤立気味でしたわ・・・。
王国でもデーリッチやヅッチーと一緒のとき以外は上手く皆の輪に溶け込めていませんでしたし、元々社交的なほうではありません。加えて、自分で嫌になるほどの自尊心というものが人を遠ざけていたこともありましたわ。そのせいであのとき彼女とはケンカをしてしまいました。
だから、その、仲直りをしなければという気持ちもありましたし、自分から切り出しにくかったことを、あちらから話しかけてきてくれた事が嬉しくて。つい調子を合わせて嘘をついたのは悪かったなと思っていますのよ。本当ですわ。
「やっぱりそうなんですね!?ようやく同士に巡り会えましたよ!実は私もなんです!」
だから、その、彼女から「爆裂魔法は好きですか?」と訊かれた時には悩みました。
爆裂魔法を始めて見たときは自分の魔法と比べて少し、ええ、少しだけ高い火力を見せつけられたのが悔しくて、酒場で喧嘩をしてしまう程でしたわ。でもお爺さまの「一に火力二に火力、三四も火力、五も火力」という教えを当に体現したその魔法を使いこなす彼女は、その意味ではワタクシの理想の魔法使いであり、悔しさと同時に憧れのような複雑な感情が芽生えていたんだと、後になってから気付いたものです。だからその問いにイエスと応えてしまっても嘘にはならないだろうと安易に思ってしまいました・・・。これで広がる輪があるならば、些細な誤魔化しは許されるのではないか。これでも友達が増えるのならば・・・。そんな風に考えてしまいました。
それが、とてもとても愚かな行為だと気付くまでには、一分とかかりませんでした。
私の好きと、彼女の好きには、とても大きな隔たりがあったのです・・・!
私は、今、凄く後悔しています。つい流れで私も爆裂魔法が好きとか言ってしまって。それが彼女の興奮に火をつけてしまって。
―――そのせいで、今、私は何もないだだっ広い草原に立っています。
「やー!今日は天候に恵まれましたね!雲一つない青空ですよ!」
否、私にとっては何もないただの草原でしたが、彼女にとっては違うのでしょう。
「今日は絶好の爆裂散歩日和です!」
爆裂散歩って何!?
「どうですか、ヴォルケッタさん。絶好の爆ビューでしょう?」
「ば、爆ビュー!?」
「この辺りは穴場なんですよ。街から徒歩で来れますが、街道からは外れているので街や他の冒険者の迷惑になりませんし。モンスターの群れと遭遇することもありません。」
「は、はぁ・・・。」
「まー、冒険者の活動が盛んな季節に入るし、カエル狩りクエストのパーティと出くわすくらいは覚悟していましたが、これ幸い、今日は私達で独占ですよ!」
「え、ええ、幸運でしたね・・・?」
「なんだか歯切れが悪い・・・?もしかして体調が優れませんか?」
「い、いえ、そういうことではないのですが、昨日、ちょっと寝付けなかったみたいで・・・。」
「そうでしたか。私も興奮が抑えられずに少々寝不足気味なのですよ。気が合いますね。私達。」
「そ、そうですわよね。お互い無理はしないようにしないといけませんわね!ですから程々に切りあg・・・」
「ご安心ください!今日はマリーさんからサンプルとして頂いた特製のメンタルグランパを持ってきているのです!これなら二発は爆裂魔法を撃てますよ!まるで夢のようなアイテムです!」
「ずこーっ!!」
――――――――――――――――
「エクスプロージョン!」チュドーン!
「・・・。」
膨大な魔力の奔流。偶々飛び出してきたジャイアントトードを目掛けて放たれた爆裂魔法は対象を消し飛ばし、残されたのは焦げ臭い大地と巨大なクレーター。流されて同行した爆裂散歩とやらであるが、間近でこれだけの魔法を見せ付けられるとまた思うところもある。
ドサッ
何て考えていたら魔力を使いきった彼女がうつ伏せに倒れていた。
「すみませーん。カバンに入れてあるメンタルグランパを飲ませて頂きたいのですがー。」
「あ、ええ、はいどうぞ。」
「ありがとうごさいまーす。」ゴクゴク
彼女を仰向けに抱き起こし、カバンから取り出した薬瓶を彼女の口にあてがうと、後は自力で薬を飲み始め、あっという間に2本のメンタルグランパを空にした。
「ぷはー!このマリーさんの作る魔法薬は素晴らしいです!魔法力を瞬時にここまで回復できるとは!とてつもなく苦いのが珠にキズですが。これがあれば何度だって爆裂魔法を撃つことができます!所持制限があるのが残念でなりません!」
「で、ですねー。最高ですよねー。」
「かつてカズマがいた世界の知識では、全ての宇宙の始まりは巨大な爆発から生まれたと考えられていたそうです。つまり爆裂魔法というものは究極の破壊魔法であると同時に究極の創造の力を孕んでいると言ってもよいでしょう。すなわち私達は爆発魔法を通して世界の歴史を見ていることと同じ。私達は爆発魔法を見ているのではなくて、私達が爆裂魔法に試されているのかもしれません!私達がこの世界の創造を知るためには、爆裂魔法という破壊を通さなくてはいけない。大変、面白く興味深いことなのですよ!!」
そう、キラッキラの笑顔でひたすら爆裂魔法の魅力について早口で捲し立てる彼女を見て、私は言葉に詰まった。
(この人は、一体何を言っているんだ?)
生まれてきてから私は「出来る側の人間」だって意識はずっと持っておりました。大抵のことは人並み以上に出来たし、炎魔法の使い手としては一流以上の自信があります。そんな私が、これほどまでに理解に苦しむことがあったでしょうか。そんな私が、まさか、栗のような口をして、十秒以上も何も言い出せないでいるなんて!
何を?どう返せばいい・・・?
振り返った彼女の目は、日も当たってないのに爛々と輝いている。・・・なんだか答えを待っている子供のようにも、紅目の、そう、魔王にも見えた。
その瞬間に背中に悪寒が走った・・・!ま、まさか、私は試されているのかっ・・・!?私の嘘は既にばれていてっ・・・!?どんな返答をするのか試しているのか!?
悪寒は既に全身に広がっていた・・・!私は激しく後悔していた、興味本意で爆裂魔法の世界に踏み込んだことをっ・・・!散歩だなんて、とんでもない!試されているのは私・・・!?私は怒らせてしまったのか・・・!?紅目の魔王・・・めぐみん・ザ・ルビーアイを・・・!
「あ、あの?ヴォルケッタさん?」
「はいっ!?な、なんでしょうルビーアイ様!?」
「ル、ルビー?」
「い、いえ、失礼しましたわ!深い見識をお持ちでっ・・・!私のような下っ端ではとてもとても!」
「いえいえ。同じ爆裂道を歩むヴォルケッタさんなら、もっと深い見識を持っているでしょう。」
「い、いいえ、とんでもない・・・!」
「・・・もしかして、そんなに好きでもないですか?」
「えっ!?」
「爆裂魔法。そんなに好きでもないのに、ついてきてくれたんですか?」
「え、だ、だからその・・・!ち、違うのですわ!ある程度は興味はありましたし、ルビーアイ様に逆らう気は決して!」
「大丈夫ですよ。落ち着いてください。」
「ええっ・・・!?」
「なんとなく、分かっていました。こちらに来てからの反応がおかしかったので。」
「あ・・・。」
「大丈夫です。責める気なんてありませんよ。私はむしろ感謝しているのです。楽しかったですし。この機会に爆裂魔法の素晴らしさを少しでも伝えたいと私一人で突っ走ってしまったようです。しかし、だったらどうしてついて来てくれたんです?ヴォルケッタさんにメリットはないでしょう?」
「あ、あの・・・。ごめんなさい。」
「はい?」
「ワタクシ、ハグレ王国では合流してから日も浅くて、デーリッチ達がいればいいけど、いないとあまり仲良くできる人も多くないから・・・。それに、貴女とは仲直りもしたいと思っていましたし、誘われて、とても嬉しかったのですわ・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「ヴォルケッタさん。ケンカしたきっかけはむしろ私の方にありますし、その話はもう止めましょう。あなたがそれを持ち出す度に、お互いに暗い気持ちになってしまいます。仲直りしなければと思っていたのは私も同じです。」
「はぁ・・・。」
「そんなことよりお互いに利益のある話をしましょう。例えば、あなたの魔法、爆連ヴォルガノン、でしたっけ。」
「え?」
「この世界には爆裂魔法に並ぶ威力のある魔法は存在しません。が、あの時、あなた方が墜落したという現場に残っていた爆発痕。あれについては私の爆裂魔法に並ぶ威力だったと見ています。あの魔法を撃ったのはあなたなのでしょう?」
「えぇ、でもあれは、限定した条件下でしか使えない特殊技で・・・。」
「そんなことを言ったら我が爆裂魔法も街中やダンジョンでは使えませんよ。いいですか、ヴォルケッタさん、私はあれを見てからあなたに負けたくないという気持ちが溢れて、抑えられなくなっているのです。実を言うと今日の爆裂散歩はあなたに私の爆裂魔法を貴女に見せ付けたいという気持ちもあったくらいです。」
「そんなこと・・・。」
「我がライバルを自称するゆんゆん相手でもこんな気持ちになったことはないのです。こと、爆裂魔法で私を脅かす人が現れたのではないかと。」
「・・・。」
彼女に対するモヤモヤした感情、その正体が何なのか解ってしまった。そう、彼女はあり得たかもしれない理想の私。ワタクシと同じだけど同じ道を歩まなかった私。認めたくなかった。ワタクシのちっぽけな嫉妬心。
彼女の爆裂魔法は一人では使えない魔法。必然的にパーティとして活動する必要がある。他の冒険者からチラと聞いた話では、彼女は爆裂魔法しか使えないピーキーさに色んなパーティで加入を断られ、最終的には半ば無理矢理にカズマさんのパーティに加わったのだとか。斯くして彼女は自分の理想を曲げなかった。自分が目指す理想の自分の姿を追いかけてそれを手に入れた。
対してワタクシは、ワタクシはちっぽけなプライドが邪魔をしてパーティを組むのを嫌って、「火力至上主義」を掲げておきながら、小技も覚えないと戦えなかった。何が大賢者ヴォルガノンの孫よ!ワタクシはお爺さまの教えを何一つ体現できていないじゃない!
彼女、めぐみんは私と同じ志を持ち、ワタクシと違う道を歩いてきた。そして今、二つの道が交差しようとしている。めぐみんは今、このワタクシにチャンスをくれている。ワタクシが再び理想の私を追いかけるチャンスを。
「めぐみんさん!私、いえ、ワタクシは貴女に挑戦状を送りますわ。」
ちっぽけなプライドに妥協してきた私、ハグレ王国で変わり始めた新しいワタクシ、仲間と一緒に戦うことで強くなったワタクシ。今、目の前に立ちはだかる高い壁に全力のワタクシで負けたくない、否、勝ちたい。
「ふっふっふ。いいでしょう!受けて立ちましょう!」
めぐみんは紅く輝く目を更に輝かせ、勇者を待ち受ける魔王の如く不敵に笑う。
「では、ここは紅魔族の流儀に乗っ取り、名乗り口上からの撃ち合いといきましょうか!」
「ええ!いいですわ!」
二人の若き魔法使いはお互いの杖を握り締め、ポーズを決めて高らかに名乗りを上げる。
「我が名はめぐみん!」
「我が名はヴォルケッタ!」
「紅魔族随一の魔法使いにして魔王を葬りし爆裂魔法を操りし者!」
「大賢者ヴォルガノンの魂を受け継ぎし爆炎の魔法使い!」
「ヴォルケッタを我がライバルと認め、此の戦いの勝利を望む!」
「めぐみんを我がライバルと認め、此の戦いの勝利を望む!」
「「いざ、尋常に、勝負!」」
――――――――――――――――
「・・・・・・・。」
「はぁ・・・はぁ・・・。」
膝に力が入らない。立っているのがやっと。全身全霊で放った爆連ヴォルガノンはかつてない威力でジャイアントトードを消し飛ばして、でも、勝ったのは隣でうつ伏せで倒れているめぐみんだった。
「めぐみんさん・・・やっぱり凄いですわ。」
ヴォルケッタは先程と同じようにめぐみんを抱き起こすが、回復薬はもうないので近くの岩影にもたれさせて休ませる。
「我が爆裂魔法は究極の魔法。負けることなどあり得ません。が、ヴォルケッタさんに負けたくない気持ちで撃った今の一撃は、爆裂マイスターカズマでも98点を付ける出来でした。90点レベルだったら負けていましたね。」
「ふふふ・・・。」
「ふふふ・・・。」
「何だか私達、良いライバルになれそうですね。今日は私が勝ちましたがこれで終わらせるつもりはないのでしょう?ヴォルケッタさん、いえ、ヴォルケッタ?」
「もちろんですわ。めぐみん。」
昨日の敵は今日の友。紅魔族の口上から始まった二人の勝負は、ハグレ王国の不文律で締められた。
「爆裂道を歩む同志として、ライバルとして、これから宜しくお願いします。」
「こちらこそ。ん?爆裂道?」
「そうですよ。これからは爆裂散歩にはヴォルケッタにも参加してもらいますからね!」
「ふっふっふ。めぐみん、ワタクシが歩むは爆裂道に非ず!炎の大賢者ヴォルガノンの魂を受け継ぐ爆炎道でしてよ!」
「なっ!?あなたはまだ爆裂道の素晴らしさを理解していなかったと言うのですか!?」
「ほっほっほ!ワタクシが歩むは爆炎道!貴女とはいずれ決着をつけることになるでしょう!震えて眠るがいいですわ!」
「なにを~!!」
混じり合う爆裂道と爆炎道。互いに高みを目指す若き天才達は新たな可能性を切り拓いていく。
その後、めぐみんが歩ける程度に回復するのを待って街に戻った二人。ついでに行ったカエル狩りをギルドに報告したところ、草原に大穴を開けたことが発覚し二人揃って怒られましたとさ。
ハーメルンでざくアクSS書く人増えないかなぁ。
あ、感想評価はお気軽にどうぞ。