この素晴らしいハグレ王国に祝福を!   作:ひまじんホーム

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 先に断っておきますが、このサブタイトルには何の意味もありません。何か別の作品を連想したり登場人物名から何かを深読みする方もいるかもしれませんが、あの作品とは一切関係ありません。ハグレ警察とはハグレ王国の正式な警察組織であり何か別の組織の名前をパクったなんてことはありません。パクるのは警察の仕事ですから。
 そんなことは置いといて、ま~た3ヶ月空いてしまって申し訳ない。宿屋イベントネタはポンポン思い付くのに筋は決まってるはずの本編の筆が中々進まない。そんなに大長編を書くつもりはないのだけれど。


第9話 ハグレ警察~純情派~

~その頃エリス様~

 

「はぁ~私って幸運を司る女神なのにこの巻き込まれ体質は何なのかしら?」シュバババババ

 

 エリス様はため息混じりに今の自分の状況を嘆きながら、自分の身長程もあろうかという書類の山を目にも止まらないスピードで捌いていく。地上で盗賊職をしながら鍛えた動体視力と手の速さ器用さがあって成せる技である。

 福の神フクちゃんから無茶振られたラヴァーズ様への謁見手続きを済ませたエリス様。通常なら数週間かかる手続きを人脈という人脈、あの手この手を尽くし、僅か1週間に縮めてみせたエリス様の手腕は間違いなく優秀だといえる。

 しかしラヴァーズ様へ謁見するということは、しばらく自分の担当世界を空けることになるので、先に終わらせられる仕事は終わらせておかなければならないというわけだ。仕事の合間の気分転換に降り立った地上で突然降って湧いた繁忙期には愚痴の一つも言いたくなるのは仕方がないだろう。

 

「しかし、あの子の持っていたキーオブパンドラ・・・。あれは人々の夢が作り出した言わば人工の神器。もしあれが本物だったとして、何故あの子が?福の神様には何か目的があるのかしら?」シュバババババ

 

 超高速で手を動かしながらも、下界で出会った、福の神様と共にいた異世界の少女のことを思案する。使いこなせば世界間移動すら可能にするキーオブパンドラは世界のバランスを崩壊させかねないアイテムとして天界では危険視されており、発見され次第破壊されたり天界の倉庫に送られて厳重に保管されているようなシロモノだ。福の神様がその事を知らない訳もなく、それを放置してるということは何か考えがあってのことのはずだ。

 

「まぁ、でも、福の神様のことだから、何か私では及ばないような理由なのでしょうけど。」ハァ

 

 考えるだけ無駄、という結論だけ残したところで手を止める。高く積まれた書類の山は既に、ない。

 同時にサポート役の天使が現れて、時を告げる。

 

「エリス様、そろそろ出発のお時間です。」

 

「ありがとうございます。準備は出来ていますので、直ぐに発ちます。」

 

 エリス様はスッと立ち上がり、丁寧に椅子の位置を正してから執務机の前に立つ。手にした錫杖で床をコツンと叩くと何もない空間に門が浮かび上がり、次第に実体化していく。

 

「では、留守の間は任せますよ。何かあれば地上に降りているアクア先輩に動いて貰ってください。」

 

「はぁ・・・アクア様に、ですか。何も起きないことを祈るばかりですが・・・、承知致しました。お気をつけて。」

 

 天使の反応に苦笑いしながら、エリス様は門をくぐって旅立った。

 

――――――――――――――――

 

~少し時は遡りアクセルの街~

 

 王都でマタラギと合同で受けたクエストを完了した後、アクセルに戻ってきたハグレ王国の面々とゆんゆん。クエストは成功だったにも関わらず、顔色は皆一様に真剣な面持ちである。早急に出処不明の大型魔物への対策をしなければならないからだ。

 カズマ達は王城での晩餐会に招かれておりそのまま泊まるそうなので、今日カズマ邸に帰ってきたのはハグレ王国のメンバーとゆんゆんだけである。

 

「う~ん・・・。クリスタルネウザー・・・か。」

 

 ドリントル達からの報告を聞いたローズマリーは唸るように呟き、対応策を練る。

 

「まさか偶々飛ばされてきた先で見知った魔物に出会うとは思いもよらない事態だ。しかし、このままでは情報が少なすぎて対応がとれない。これが偶然か、私達を狙ったものなのか、その判別すらできない状況だからね。そもそもが私達はこの世界のことすらよく知らないということもある。まずは情報を集めたい。」

 

「そうじゃの。わらわ達も取り合えず金を稼ぐことばかりであまり足下を見てなかったような気がするわい。して、どう動いたらよいかの?」

 

 ドリントルも同意する。

 

「うん、まずは冒険者ギルドで話を聞いておこう。変わった魔物の例や他にも何か事件が起きてないか、ギルドで何か把握していることもあるかもしれない。」

 

「そうじゃな。明日はクエストの前にギルドから聞き込みをしておこうか。」

 

「他の冒険者からも聞き込みをしたほうがよいのではないかしら?」

 

 福ちゃんも参加する。

 

「そうだね。確かギルドで酒場店員の募集をしていたし、ウェイトレスの仕事をしながら聞き込みをすると効率がよさそうだ。」

 

「クエストはどうする?」

 

「皆が頑張ってくれたおかげで資金は順調に貯まって、ある程度の蓄えもあるけど、今後もし私やミアちん、ヅッチーも戦闘に参加しなければならない状況があればマナタイトの消費も増えるだろう。なるべく収入を得られるようにはしておきたい。クエスト組はアクセル周辺でこなせるクエストを請けながら情報収集にあたってほしい。王都での活動はカズマ達が帰ってきたら相談しよう。」

 

 ローズマリー、ミアラージュ、ヅッチーの3人は各々仕事をしながらの情報収集に。あとのクエスト組は依頼をこなしつつ、情報収集に充てることになった。

 

「何があるか分からない。皆、くれぐれも用心してあたってほしい。解散。」

 

「「「はい!」」」

 

 現状やれることは多くない。見えない脅威の存在にローズマリーは一抹の不安を拭えないまま、この場は解散となった。

 

―――――――――――――――――

 

~冒険者ギルド~

 

 アクセルの冒険者ギルドは突如現れた新ヒーロー達の登場に連日沸き立っていた。珍妙な格好をした連中だが、次々と高難度のクエストをこなしつつ、街の清掃や子供のお守りまでするハグレ王国を名乗る謎の集団。殆ど女性のパーティーということもあり、男性冒険者を中心に一部ではファンもつきはじめている。ちなみに牛男にもひっそり筋肉教の信者がいるが今後それが語られることはないだろう。

 

「あら、皆さんおはようございます。昨日から王都のギルドに行かれたのでは?」

 

 酒場で朝食を貪る冒険者達の傍らで机を拭いていたルナがドリントルを先頭に入ってきたハグレ達に声をかける。

 

「そうなんじゃがのう。ちょっと話が聞きとうてな。」

 

「話・・・ですか?」

 

 怪訝そうな様子でルナが聞き返す。

 

「何、大したことではない。最近街で変わった事件や新種の魔物の目撃情報なんかについてギルドで把握していることはないかの?」

 

「事件と、魔物、ですか?あぁ、そういえば昨日王都の郊外で正体不明の強力な魔物の出現情報があったとかで、今朝火急の便で冒険者へ注意喚起を促すよう本部からの指示が下りてますね。何でも、あの魔剣の勇者ミツルグさんが苦戦を強いられたとか。皆さんも見慣れない魔物を目撃したら無理に戦わず、応援を呼ぶようにしてくださいね。」「あ、あぁ。そうするようにしよう。他にも何か変わったことはないかの?」

 

 カツラギと一緒に戦った件はややこしくなりそうなので伏せておく。ギルドですら未確認魔物についての情報が届いたばかりということは魔物についての新しい情報は期待できなそうだと判断し、事件について尋ねた。

 

「そうですね。一昨日になりますが、商業街で道具屋サクラを営むヨシノスケさんの娘さんのエリーさんが失踪したとかで捜索願いが出されてるそうで、ギルドにも捜査協力の依頼が出されています。普段全くといっていい程に事件が起きないアクセルでは珍しい大事件ですね。」

 

「失踪事件?えらい物騒じゃな?」

 

 存外に大きな事件が起きていたことにドリントルは驚き、聞き返す。

 

「はい。警察の方で捜査中とのことですが、足取りは掴めず、迅速な解決が求められる為にギルドにも捜査協力の依頼が出されたようです。」

 

「なるほどのぅ・・・。しかし、う~む・・・。」

 

 失踪事件というと大きな事件だが、自分達が求めている案件とは繋がりは薄いようにも思える。依頼が出されたばかりということはギルドにも大した情報はないのだろう。

 

「何か気になることでも?」

 

「あ、いや、妾達も探し物をしていてな。今の話からだとあまり関係はなさそうじゃと思うての。ところで今日は何か手頃なクエストがないかのう?」

 

 ギルドからはこれ以上の情報は得られなさそうだと判断し、今日出されているクエストに話を移す。

 

「え~と、それでしたら、討伐クエストは高難度のものは皆さんに片付けて頂いたので、ジャイアントトードか野良牛退治くらいですね。あとは先程の失踪事件の捜索、建築現場のアシスタント、配達、街の清掃、あっギルド酒場の臨時ウェイトレスも募集してますよ。」

 

 基本的に公共施設であるギルドには仕事斡旋としての側面もあり、モンスター討伐のような危険なクエストだけでなく、一般の仕事も紹介している。しかも実入りの大きな討伐クエストはこの数日であらかたこなしてしまった為、てっとり早く稼げる仕事は残ってないらしい。残った仕事でアクセル周辺で出来るクエストというと、便利屋みたいな仕事が多くなる。ハグレ王国は仕事があれば何でも請けていたので凄腕と知られた今でもギルドからは難易度に関係なく仕事を提示される。

 

「そうじゃのう・・・。」

 

 建築現場のバイトよりはまだカエル狩りのほうが手っ取り早く稼げるが、情報収集を平行して行うのを考えればギルド酒場にも人を回したい。などと思案していると、じっと口を挟まないようにしていたデーリッチから声がかかる。

 

「ドリントルちゃん!」クイクイ

 

「ん?なんじゃ?デーリッチ?」

 

 いつもの幼い少女ではなく、普段は見せない真剣な顔を覗かせるデーリッチ。それは彼女が本気で誰かを救おうとしたときに表れる王としての顔。

 

「ドリントルちゃん!その事件の捜査に協力するでち!デーリッチは誰かが酷い目に合っているかもしれないのにそれを見過ごすことはできん。」

 

 強い目。ギュッと唇を噛みしめてそう告げるデーリッチには、オセロに負けてすぐ涙目になる普段の面影はなく、決意の色が灯る。

 

「デーリッチ・・・。そうじゃな。それがハグレ王国じゃったの。」

 

「おうでち!」

 

 そんなわけで、情報収集兼酒場ウェイトレスとしてヴォルケッタ、ジャイアントトード狩りにマッスル、マリオン、ゆんゆん、失踪事件捜査にデーリッチ、ドリントル、福ちゃん、はむすけ(デーリッチの頭に乗ってる)で当たることとなった。

 この失踪事件の捜索が真実への近道とはこの時は誰もが知るよしもなかった。

 

 

―――――――――――――――

 

~アクセル警察署~

 

「え~と、ではこちらがエリーさんの似顔絵と特徴、事件の経過をまとめた資料です。」

 

 警察官の人から行方不明の女性の情報を受け取る。

 

「ふむ、年の頃は20くらいか。綺麗な青い髪のおなごじゃな。」

「デーリッチとお揃いでち~。」

 

「このエリーさんが自分の意思で姿をくらませた可能性はありませんの?」

 

 福ちゃんも確認する意味で問いかける。

 

「エリーさんの父ヨシノスケさんの証言では親子仲は良好で自ら家出をするような可能性はないそうです。」

 

「最後に彼女の姿を確認出来たのは?」

 

「三日前の夕方に仕事先の服屋から出て、そのまま自宅に帰らなかったようです。おそらくその間に何かの事件に巻き込まれた可能性が高いと思われます。通報は一昨日になってからですね。」

 

「目撃者などはおらんのか?」

 

「現在、聞き込みを続けておりますが・・・有力な手掛かりは掴めていないのです。」

 

「なるほどの・・・中々手強そうな事件じゃの・・・。」

 

「皆さんにご協力頂きたいのは些細なことでもいいので何か手掛かりになることを捜索して頂きたいのです。得られた情報に応じて報酬をお支払いします。」

 

「あいわかった。妾達に任せるがよいぞ!」

 

 ドリントルは右拳を作り胸をどんと叩き、警察署をあとにした。

 

――――――――――――――――

 

~アクセルの街 商業街~

 

「お邪魔しま~す。」

「いらっしゃいませ~。」

 

 商業街の一角、大通りに面した道具屋サクラは、立地に恵まれたのか店主の努力によるものか傍目には分からないが、絶え間ない客入りに賑わっている。店内を見渡すと二人の店員が忙しなく動き回っており、どこぞの魔道具店とは違い順調な経営が窺える。

 しかし、そこには本来有るべきものがなかった。店主の姿が欠けていた。

 

「すまぬが、冒険者ギルドから依頼を受けたドリントルという者じゃが、店主のヨシノスケ殿はおられぬか?」

 

「ギルド?あぁ・・・エリーさんの件ですね・・・。店長は一昨日から殆ど寝てなくて、今は少し眠ってもらってます・・・。」

 

「そうか、ならばあまり無理をさせる訳にはいかんな。そなたらに話を聞こうにも忙しそうじゃし、また出直すとしよう。手が空くのはどのくらいの時間になるかの?」

 

「すみません。なにぶん店長がいなくて手が離せなくて・・・。夕方、お店を閉める頃にはお客さんも減ると思いますので・・・。」

 

 ドリントル達はまた夕方にと約束を取り付けて道具屋を離れた。

 

 

――――――――――――――――

 

~アクセルの街 道中~

 

「ふ~む・・・。なかなか有用な証言は得られんの。」

 

 ヨシノスケさんのお店には夕方にまた行くとして街中で聴き込みをしていたが、新たな進展はなく、ドリントルが力なくこぼす。 そこへ、何か思い付いた様子の福ちゃんが呟く。

「聴き込み自体は警察の人もしているでしょうし、別のアプローチを考えた方が良いかもしれませんわね。」

 

「別なアプローチって・・・、何か考えがあるんでちか?」

 

 福ちゃんの含みのある言い方にデーリッチが聞き返す。

 

「確証があるわけではありませんが、今回の事件、目撃者が不自然に少ないように思います。」

 

 いつものニコニコ顔を崩した福ちゃんが思案げな様子で答える。

 

「確かにそうじゃが、それは偶然か、犯人の手際が良かったからではないかの?」

 

「勿論、その可能性はあります。しかし、エリーさんが失踪したという時間と場所、人通りの多い商業街でまだ陽のある夕方に起きた事件にしてはあまりにも証言が少ないように思います。」

 

「つまり?」

 

「魔法やスキルの力で人目を避けることを可能にした、のではないかと。おそらくは姿を隠したり転移したりするような。ならば、それが可能な人物のほうを絞り込んであたってみてはいががでしょう?」

 

「なるほどの。姿を隠す魔法ライトオブリフレクションも転移魔法テレポートも、魔法使い系職業の高位魔法という話じゃったな。盗賊職の潜伏スキルも難度は低いが盗賊職の人数は多くない、か。いずれにしても使える者は限られるな。闇雲にあたるよりは効率は良さそうじゃ。しかも冒険者カードを持っていれば身元も割れやすかろう。」

 

「でも、どうやって魔法を使える人を探すんでちか?悪い人だったら素直に答えてくれるとは思えないでちが。」

 

「カズマさん達が帰ってきたら心当たりを聞いてみるのは良いでしょうけど・・・、こと魔法についてはアクセルにはスペシャリストがいるでしょう?」

 

「なるほど、ウィズか。彼女なら妾たちよりコチラの世界の魔法事情も、アクセルの街の冒険者にも詳しいじゃろうな。ほいでは、ウィズ魔道具店で話を聞いてみるかの?」

 

 と、3人(と1匹)が今後の動きを決め、ウィズ魔道具店へと足を進めた。

 

 

 

(・・・・・)

 

 その様子を見張る者の存在に気付かずに・・・。

 

 

――――――――――――――

 

~ウィズ魔道具店~

 

「こんにちは~!」

「いらっしゃいませ~、あら?どうしたの?今日はクエストに出てると思っていたのだけれど?」

 

 店に入るとエプロン姿のミアラージュが出迎える。王国では土産物屋だけでなく仮装大会の運営までこなす彼女の仕事ぶりは、なんとも慣れ落ち着いたものである。

 ミアラージュと挨拶を交わしていると奥からウィズも顔を出してきた。

 

「いらっしゃいませ。あらみなさんお揃いで、何かご用ですか?」

 

「こんにちはウィズさん。今日はウィズさんにお話を窺いたくてお邪魔させて頂きました。」

 

「私にですか?」

 

―――3人はウィズに事情を説明した。

 

「なるほど、状況からすると犯人は高位の魔法を使える者の可能性が高いでしょう。」

 

「盗賊の線はないのかの?」

 

 ドリントルが聞き返す。

 

「潜伏スキルだけでは犯行は難しいかと思います。被害者の方も襲われれば声を上げますし暴れもします。一瞬で気絶させたとしても現場の地理から考えて目撃者が全くいないのはやはり不自然です。テレポートでその場から存在自体を消し去ったと考えるのが妥当でしょう。」

 

「なるほどのぅ。」

 

「しかし、この街で高位の魔法を使える方ですか・・・。私の知る限りでは、私と、ゆんゆんさん、あとはカズマさんくらいでしょうか。」

 

「そんなに少ないのか?っというかカズマも!?」

 

 思わぬところでカズマの名前が出て驚かされるが、今回は関係ないので置いておく。

 

「ええ。勿論、私もこの街の冒険者全ての方を存じてるわけではありませんので、確たることは申し上げにくいのですが・・・。そもそも、アクセルは駆け出し冒険者の街ですから、テレポートを使える程の方ならそれなりに名前が売れている可能性が高いです。何かしらの事情がない限りは高レベルの冒険者の方は他の街へ行った方が稼げますからね。例外としてテレポート屋の方もいらっしゃいますが、彼らは魔法を悪用できないように私用を制限されています。」

 

「では、犯人はこの街の者ではないと?」

 

「私の知る限りではその可能性が高いかと。ただ、そうなると犯人の絞り込みは難しくなりますね。」

 

「・・・いえ、そうとも限りませんわよ?」

 

「福ちゃん?」

 

「他所の街から来たのであれば門番の人の目に触れますし、見知らぬ人物を見なかったか当たっていけば足跡を辿れる可能性がありますわ。」

 

「なるほど。」

 

「ウィズさん、貴重なお話ありがとうございました。今度は商品を買いに来させて頂きますわ。」

 

「いえいえ、お役に立てたのなら何よりです。皆さんにはマナタイトだけでなく色々お買い上げ頂いてますから。」

 

 ハグレ王国にとってウィズ魔道具店との関わりはマナタイトの購入が第一目的ではあるが、一方ではレアアイテムに目がない彼らにとってウィズの店は宝の山にも見えるらしい。各々の自由に出来る範囲の金額で商品を買っていたりする。

 そうして、軽く挨拶をして出ていこうとするドリントル達をミアラージュが引き留める。

 

「あ、そうだ。コレ、役に立つと思うから持っていくといいわ。」ハイ

 

「なんじゃこれは?かわいい人形じゃな?」

 

 ミアラージュが手渡したのは金髪の少女をデフォルメした可愛らしい人形だった。

 

「魔除けの人形よ。邪悪な魔力に反応して、近くに悪いやつがいたら教えてくれるわ。」

 

「それはありがたい。しかし、便利な品じゃが商品ではないのか?」

 

「ええ、それ作ったのはいいのだけれど、私もウィズもアンデッドなせいか、ちょっと魔力を出すとすぐ反応してしまって煩くて困っていたのよ。棄てるわけにはいかないし、持っていってくれると助かるわ。」

 

「それはまぁ、難儀なものじゃな。そういうことなら有り難く頂いておくわい。」

 

「私はこれくらいしか手伝えないけど、頑張ってね。」

 

「おうでち!」

 

 そうして、ウィズ魔道具店での聴き込みを終え、街の門番へ話を聞きに行くのであった。

 

 

――――――――――――――

 

~アクセルの街 入口~

 

「あ~?他所の街からテレポートが使えるやつが来てないかって?」

 

 ウィズ魔道具店を出た後、街の門番を訪ねた3人(と1匹)。ウィズとの話にあった、テレポートを使える者に心当たりがないか聴き込みをしている。

 

 

「そうなんです。心当たりはありませんか?」

 

「そんなこと言ってもなぁ~。テレポート屋はしょっちゅう行き来しとるし・・・。あっ、でもこないだえらい美人がテレポートで街の前に来て驚いたなぁ。」

 

「えらい美人?」

 

「そうそう3日くらい前か。緋色の目に、燃えるような紅い髪、で真っ赤なローブ。美人な上にそんな出で立ちだったからよく覚えてる。紅魔族とは違うがありゃ相当な魔法使いだったろうなぁ。」

 

「ふむ・・・、時期といいタイミングが良いの。して、その女はどこへ行ったかわからぬか?」

 

「さぁ?何日か街のなかを見て回るとか言ってたからまだ街にはいるんじゃあないか?」

 

「ふ~む、とすれば街の中を探してみるか、いやしかし、もうじき夕方か。道具屋サクラにも行っt「おい、モンスターが来たぜ!」って、なんじゃデーリッチ、変な声を出して。」

 

「デーリッチじゃないでち!」

 

「は?」

 

「おい、モンスターが来たぜ!おい、モンスターが来たぜ!」

 

 ふと、目線をデーリッチの手元に送ると、デーリッチが持っていた人形が可愛らしかった姿の面影をなくし、キリッと太い眉毛に野太い声で危機を報せていた。

 

「う、わわわぁ!」ポイー

「おい、モンスターg・・・」

 

 その余りに不気味な様子に思わずデーリッチから人形を取り上げ投げ捨てるドリントル。

 

「なんじゃこの面妖な人形は!まったく!悪趣味が過ぎるわ!」

 

「ドリントルちゃん!それどころじゃないでち!モンスターが!」

 

「む?」

 

 ドリントルが振り向くと、そこに揺らめいたのは、紅蓮の焔。

 

「こんにちわ。お嬢さん達・・・。」

 

 誰もが認める美しい顔を妖しく歪ませ。

 

「私はそこの冠を被ったお嬢ちゃんに用があるの。」

 

 心の底まで燃やし尽くされるかのような圧倒的な魔力を背に。

 

「邪魔をすると・・・、死ぬわよ?」

 

 立っていた。

 




 会話ばっかりで動きが少ない回でしたが、次回辺りから大きく物語が動きます。次回はもうちょっと早く書き上げたいですね。
 あっ、感想等はお気軽にどうぞ。
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