この素晴らしいハグレ王国に祝福を!   作:ひまじんホーム

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いきなりクライマックス。
状況がわからない方はゲームをプレイしてみてください。


第1話 始まらなかったスペースオペラ

~シャトル(宇宙)~

 

「オープン~・・・パンドラ!」

 

 ハグレ王国が国王、デーリッチがキーオブパンドラを掲げて叫ぶ。そして真っ暗な宇宙空間が眩い光で満たされると、マリオンからの猛攻に傷つき倒れた仲間達が今再び立ち上がる。

 

「まだ・・・、立ち上がるというのか!」

 

 星の守護者マリオンはかつてない強者、否、強者「達」を前にして、その目を驚愕に見開く。

 マリオンの審判の力は絶対だ。たとえ1対8という数の不利があっても、どんなに強大な力の持ち主であろうと、この圧倒的な力に吹き飛ばされれば、誰もが膝を折ってきた。

 しかし、この者たちはどうだ?どれだけ吹き飛ばそうと、一撃で沈めようと、何度も、何度も、何度も、何度も立ち上がりキバを向いてくる。その目には絶望の色など、欠片も見当たらない。

 敵の弱点は判っている。敵の急所はあの青髪の少女だ。彼女が持つ、その身の丈の半分はある、あの大きな「鍵」だ。彼女があの「鍵」の力を使い、倒れた仲間をことごとく復活させ、しかも立ち上がった仲間をより強化している。

 

 何度も繰り返された敵の行動パターン。解析は出来ている。マリオンに組み込まれた戦闘に特化した超高性能のAIは複数の攻略方法を導きだした。

 しかし、計算以上の力で抵抗してくる敵にギリギリのところで攻めきれない。近接攻撃は硬い前衛に阻まれ、切り札マリオンメテオすらイカヅチ妖精が前面に出て耐えきった。マリオンストレートで各個撃破を狙うも、一人一人が国王を護り、倒れ、その後に国王は鍵の力で仲間を強化復活させる。そうこうしているうちに、徐々にダメージは蓄積され、出力を限界まで高めたことによりエネルギーも枯渇してきている。マリオンにも限界が近づいているのだ。

「お前達は何者なのだ?何故、審判の力にに抗うことが出来る?神か・・・仏か・・・?ならばこの天をも砕く力に耐えられるか!?」

 

 マリオンは更に出力を上げる。その速度は音を置き去りにし、その一撃は天上を貫く。

 マリオンは今一度スロットを回す。出目は流星。狙いはあの少女。国王と呼ばれた青髪の少女デーリッチ目掛けて極限まで速度を高めたマリオンSクイックを放つ。

 

「ここは俺に任せろ!大防御!」

 

 しかし通さない。通させない。その背中はいつだって国王を護ってきた。

立ち上がるや否や、相手の注意を引き付ける魔導盾ヒキヨセルドを装備した、王国の赤き双璧が片割れ、ニワカマッスルがズイッと前に出る。

 マリオンはその速度を保ったまま、盾もろとも相手を砕かんとニワカマッスルに拳を突き出す。しかしオープンパンドラで強化された筋肉は巨岩すら打ち砕くマリオンの拳に耐えきる!

 攻撃を防がれたマリオン。そこにほんの一瞬のスキが生まれる。そして、そのスキをハグレ王国は見逃さない!

 

「M21グラニュー砲!」ダァン!!

 

「ぐっ、ッハァ!」ガァン!

 

 ドリンピア星王女ドリントルによるヘッドショットを狙った狙撃。完全にスキを突いたその一撃はマリオンの眉間に命中する。

 この世界に存在するあらゆる金属よりも高い硬度を誇るコスモニウムで造られたマリオンの頭部は、破壊には至らないものの、鈍い音を立てその衝撃に大きく仰け反る。ここに千載一遇のチャンスが生まれる!

「爆連ヴォルガノン!」

 

 炎帝と呼ばれた大賢者ヴォルガノンが編み出した、持てる魔力の全てを火力に変換する大魔法。唱えるはヴォルガノンが孫娘、ヴォルケッタ。

 

「くっ、マリオンエレキテル!」

 

 マリオンは爆炎に視界を奪われながらも超威力の広範囲雷攻撃を放つ。狙いを定められずとも、大量にばら蒔かれた雷球は全員に大ダメージを与える。

 

「緊急リカバー薬!」

「なっ!?」

 

 がしかし、マリオンの反撃を予測していた王国の参謀ローズマリーは攻撃とほぼ同時に回復薬を蒔き、ダメージは瞬時に回復される。

 マリオンの体勢は崩れたままだ!「ゴッドブレス!ヅッチーちゃん!決めて!」

 

 福ちゃんこと福の神が単独で行使できる神の奇跡。対象に神の祝福をもたらし全能力を強化する支援魔法を放つ。

 

「魔神降ろし!任せたわよ!ヅッチー!!」

 

 降霊術の名家ラージュ家に産まれた希代の天才ミアラージュ。彼女は絶大な魔力を持つ神を降ろし、仲間の魔力を瞬間的にであるが、爆発的に高めることができる。

 

「いっくぜぇぇぇ!タ・ケ・ミ・ナ・カ・タ・バーストォォ!」ズガァァァアン!

 

 妖精女王の血を引く妖精王国のリーダーにして、雷を自在に操るイカヅチ妖精ヅッチー。パンドラゲート、ゴッドブレス、魔神降ろしと、バフ盛りマシマシに超強化されたヅッチーの全魔力を込めた一撃がマリオンを貫いた。

「グッ、ハァ・・・みごと・・・だ」

 

 星の守護者マリオンはハグレ王国の連繋の前についに倒れ伏す。

 

―――

 

「はぁ、はぁ・・・。か、勝てたのか?」

 

 全員が死力を出し尽くし、満身創痍である。ここで第2回戦なぞあったら堪ったものではない。

 

「あぁ・・・完敗だ・・・。マリオンの負けを認めよう。」

 

「じゃあ、約束です!私達の話を聞いてくだ・・・」

 

「待て待て待て、何を言っておるか・・・!まずは、安全を確保する方が先じゃろう?これも、約束じゃったな?まずは、わらわ達を元の場所に戻しておくれ!」

 

 ここは次元の塔からも隔離された宇宙空間にある。座標も分からない場所ではキーオブパンドラによる空間転移も封じられ、最悪、この場所の足場ごと破壊されれば全滅は必至だ。

 ローズマリーとドリントルは先ずは身の安全の確保の為に詰め寄る。

 

「あー、駄目駄目。二人ともそんな言い方じゃ駄目でち・・・。ここは国王に任せるでちよ。びしっと言ってやるでち!」

 

 デーリッチはマリオンに詰め寄るローズマリーとドリントルを諌め、一人前に出てマリオンと向き合う。

 

「マリオンちゃん!」

 

「マリオンはマリオンだ。ちゃんはいらない・・・。」

 

 マリオンは超高性能な戦闘用アンドロイドであるが、こうして並ぶと、10歳そこそこのデーリッチと外見年齢は殆ど変わらない。

 デーリッチはしっかりとマリオンの手を取り、目を合わせ、ニコーッと笑いかけ、告げる。

 

「スープとお肉、とーっても美味しかったでち!!ありがとう!!」

 

 どこまでも曇りのない純粋な笑顔で。思いの丈を伝えた。一触即発の緊張感が一瞬で緩み、その場にいたデーリッチを除く全員が「は?」という顔できょとんとする。

 

「なに?」

 

 

 アンドロイド故に論理的な思考が染み付いたマリオンにはその言葉の意図が分からない。

 

「ほらっ、みんなも突っ立ってないで!お礼お礼!」

 

「え、ええ・・・?だけど・・・。」

 

 匙を向けられたローズマリーはまだ先程のテンションを切り替えられていない。

「美味しかったでちよね!?」

 

 笑顔のまま、言い聞かせるように。

 

「あ、は、はい、美味しかったです・・・!どうも、ありがとう。」

 

 デーリッチの言葉に冷静さを取り戻したローズマリーも感謝の言葉を伝える。

 

「そういえば、とても美味しかったですわね!あれはすぐに用意できる料理じゃないですわ・・・!」

 

 福の神福ちゃんも続く。

 

「あ、ああ、すまんな。美味しかったのに残してしまって・・・。」

 

 ドリントルも冷静さを取り戻す。

 

「何を言っている。あれは、ただ、お前達の注意を引き付けるために・・・。」

 敗者として、機体が破壊されることも覚悟していたマリオンは一人だけ話の流れに付いていけない。

 

「いや、忘れてないでちよ。歓迎の気持ちは本当だって、自分で言ってたじゃないでちか・・・!」

 

「・・・。お前らは・・・いや、お前はそんなことを言うために、マリオンに勝ったのか?」

 

 濡れ衣を着せられて殺されかけた相手に礼をするなど、マリオンの思考回路では理解できない。何か別の企みがあるのか、そうでなければ真の馬鹿者である。

 

「い、いやぁ、それもあるけど、実はこの後に続く頼みがあってぇ・・・。」

 

「そうだろうな・・・。なんだ?」

ここでマリオンは正常な思考を取り戻す。交換条件か・・・、予想はできた話だ。奴らは宇宙戦艦の部品に興味を示していた。マリオンの機体を破棄しない代わりに宇宙戦艦を寄越せ、とでも言うのだろう。

 お人好しな者たちだ。戦争に勝ったのだから、マリオンも破壊して宇宙戦艦も奪ってしまえばいいものを。

 だが、戦艦が目的というならば、マリオンは従わねばならない。なぜならば艦長であり、主砲でもあるマリオンは謂わば戦艦の核でもある。ユニーク機体であるマリオンには予備機もなく、替えが利かない。

 

「あの料理!実はデーリッチまだ途中だったんでちよねー!」

 

 ん?リョウリ?

 

「ちょっと席を外しちゃったけど、まだ、食べられるでちよね!?食べてもいいでちよね!?」

 

 料理・・・?さっきの料理のことか?

 一度は機能回復したマリオンの思考回路が再び混乱する。

「ど、どうだろうか・・・。だいぶ冷めて肉が硬くなっていると思うが・・・。あぁ、でも温め直せば・・・。」

 

 何だ?まだあの料理に何かあるのか?交渉の場として、会食の場をセッティングしろとでも言うのか?

 

「うひょー!温め直せるんでちかー!?もう、決まりでちー!即効、シャトルに戻るでちよー!」

 

 いや、違う。あの様子は本気で料理が食べたいだけのようだ。

 どうやら奴は真の馬鹿者のようだ。

 しかし、見ていて気分が良い馬鹿者だ。

 マリオンはアンドロイドだが人間の感情というものが少しだけ理解できた気がする。

 

「・・・不思議な奴だな・・・。」

「ヅッチーが一番乗りだぜー!」

 

「あっ、ヅッチーずるいでちー!」

 

「おら、ガキどもはしゃぐんじゃない。」

 

「「「あ、あのぉ、じゃあ私達もついでに頂いてもいいです?」」」

 

 訂正する。

 

「不思議な奴らだ・・・。」

 

―――

 

~宇宙シャトル(食堂車)~

 

「めっちゃジューシー!これでちよ、これ!」

 

「どうも、すみませんね。我が儘言っちゃって。」

 

 デーリッチは温め直した料理が出されるなりすぐにかぶりつく、とてもご満悦な様子だ。ローズマリーも申し訳なさそうにしながらも、しっかりと料理を頬張っている。

「いや、問題ない。まさか、こんな流れになるとは思わなかったが・・・。」

 

「それで、どうでしょうか?信じて頂けます?さっきの話、私達のこと。」

 

 事の発端は一ヶ月程前。天界に大きな混乱をもたらした「天界空間転移事件」に遡る。

 元々、福の神福ちゃんはフクという禍神だった。禍神フクは強力な力を持っていたものの、ハグレ神であった彼女は天界では孤立しており、禍神フクの仲間は姉妹神の御影星という禍神だけだった。二柱の禍神は自分達の居場所を確立するために天界の権力争いに身を投じた。

 ハグレ神であった二柱の力は絶大で、瞬く間に天界を掌握し、その名を轟かせた。しかしその後、目的であった自身の居場所を守ることを重んじたフクと、更に権力の拡大を図ろうとした御影星との間に軋轢が生まれ、今度はフク対御影星という天界を二分する争いに発展。

 結果として戦いはフクの勝利で終わり、御影星はフクの手により封印された。

 その後、自身の目的の為に大きな争いを生み出してしまったことを悔いたフクは、禍神としての力を封じ、禍神転じて福の神となったのだ。

 そして時は一ヶ月程前、長い年月を経て封印が解かれた御影星は、福の神に成り下がったかつての戦友であり宿敵でもあるフクへの復讐を計画する。天界における秘匿の奥義書、「風の書」「土の書」を奪い、そこに書かれてた強力な転移術により、天界の一部を切り取り次元の裂け目に封じ込めた。御影星はそこへ更に宇宙空間の一部をマリオンが乗る宇宙戦艦「神の船」ごと天界に送り込み、天界の破滅を企てた。

 福の神福ちゃんはハグレ王国の協力を得て事態の解決に当たり、禍神の力を使うことなく御影星の再封印に成功したが宇宙空間の転移術は完成してしまっていた。一方で勝手に喚び出されたマリオンは困惑していた。突然空間ごと転移されたが、これが故意の召喚であることを理解したマリオンは、最初に接触してきた上に事情を理解していたハグレ王国一行を事件の首謀者と判定。罪人としてハグレ王国に審判を下したが、覆され、今に至る。

勝手に喚び出され戦艦を破壊され自身もボロボロにされるなど、この一件の最大の被害者は間違いなくマリオンである。

 

「マリオンが信じようと信じまいと、負けたのだから、結論には意味が無いぞ?」

「私達は信じて頂きたいのです。意味があろうと、なかろうと。」

 

「何故だ?」

 

「あなたが悪い人に見えないから。気に入ったからですかね。」

 

「・・・。」

 

 マリオンは顔を赤くして俯く。マリオンはストレートな好意を向けられることに慣れていない。

 

「あれれ?黙っちゃった?ねぇ、どうしたの?照れちゃったの?マリオンちゃんかわいい!」

 

 そんな様子に、見た目は同い年位の女の子を相手にしたデーリッチが茶々を入れる。

 

「うるさい!しかし、まぁ、そうだな。わからなくも無い。ヘッドがこれでは綿密な悪巧みなどとは無縁だろう。お前達の言うことを、マリオンは信じることにする。だから、お前達も裏切るな。犯人であれば、マリオンは悲しいぞ。」

「大丈夫です。私達は本当に違いますから。」

 

 まさに、レベルを上げて物理で倒せばいい某攻略本の著者が言う、「話し合いから行き違いで喧嘩に発展しちゃったけど殴り合ってたら最後には友情が深まっちゃった、あの感じ!」である。

 敗者マリオンは相手の主張を受け入れる義務もあるが、それ以上にこの者達の言うことは信じていいと思えた。死力を尽くして戦ったにも関わらず、その相手に一片の曇りのない笑顔を向けられるお人好し国王に、マリオンは心惹かれていたのかもしれない。

 

「ところで、マリオンちゃ―マリオンはこれからどうするのかしら?」

 

 話が一段落したところで福ちゃんが問いかける。

「うん?」

 

「こんな所に一人でいて、何かあてはあるの?戦艦も壊れちゃったみたいだし・・・。」

 

 ちなみに壊したのはハグレ王国である。

 

「ううむ・・・。それについては悩んでいる。犯人を捕まえるというのは、もう意味の無いことだし・・・。だからといって、帰る方法を探すにも、まったく取っ掛かりがない。何より、この身体とシャトルで動くのはこの世界では目立ちすぎるようだ。」

 

 宇宙戦艦が動けば宇宙空間を旅して故郷の星を探すことも出来るが、航行可能距離が短いシャトルでは直ぐにエネルギー切れを起こして宇宙を漂流するのがオチである。

 

「じゃあ、うちに来るでちか?」

「うち?」

 

「うちの王国は種族のるつぼなんでちよ。ロボットもいるし、牛人間だって、たこ足の人だっているでち。マリオンちゃん一人が混ざったところで、全然、目立たないでちよ。帰る方法を探すならそれがいいでち。」

 

「マリオン・・・ちゃんはいらない。しかし、そうだな。一人でいるよりは、遥かに情報も入るだろう。だけど、お前達にメリットはあるのか?」

 

「はふ?」

 

「私の世話をすることに、何のメリットもないだろう?それとも、戦闘兵器として使うつもりか?」

 

「でーっちっち!」

 

「人と人が出会うのに、メリットなんていらんのでちよ!気に入ったから、一緒に歩く、それで十分でち。それともマリオンちゃんは、デーリッチ達が気に入らないでちかね?」

「・・・マリオンは・・・。」

 

「いや、よく分からない。好きとか嫌いとかで、行動を決定したことがない。」

 

「じゃあ、今日を記念日にするでち。好きとか嫌いとかで決定した日!」

 

 ニコーッと一切の曇りないその笑顔は心の底からマリオンを歓迎していた。

 

「・・・お前達はそれでいいのか?」

 

「歓迎しますよ。」

 

 二人のやり取りを聞いていたローズマリーは途中からこうなることを予想出来ていたようで、すんなりと了承する。後ろの方ではニワカマッスルが「またか~」と漏らしていたり、ミアラージュが「やれやれ」といった表情で成り行きを見守っていた。

 思えば別名お人好し王国とも呼ばれるハグレ王国のメンバーはその大半が元々は王国と敵対し刃を交えた者たちである。戦い終わってノーサイド。昨日の敵は今日の友。ハグレ王国に自然と根付いた不文律である。

 

「宇宙友達が増えるのか!?それはありがたいのう・・・!」

 

 声を上げて喜ぶのはドリンピア星王女ドリントル。クーデターにより星を追われ、追っ手から逃げる最中に宇宙船が故障し、星に帰れなくなった彼女とマリオンの境遇はよく似ている。

 

「マリオンちゃんみたいな子なら大歓迎ですわー!」

 

 福ちゃんも賛成のようだ。

 

「ううむ・・・。しかし、そうだな。この世界のデータも増やしておきたいし、邪魔にならないと言うのなら、行ってみるかな?」

「うんうん!」

 

 デーリッチは頭に被ったおもちゃの王冠が落っこちるほど大きく、勢いよく頷いた。

 

「それじゃあ、これから宜しくお願いしますね!」

 

「王国についたら案内するぞい!わらわに任せい!」

 

「て、手加減してくれな?あまりちやほやされると、感情回路がパンクする。」

 

「うふふふっ・・・!」

 

 こうしてまた、ハグレ王国に「いつも通り」心強い仲間が加わるのであった。

 

「それじゃあ改めて、料理を頂くとしようかな。」

 

 柄にもなく話がまとまるまで遠慮していたらしいニワカマッスルが席に戻って肉料理を食べ始めると、皆自分の席について食事を再開するのであった。

―――

 

~1時間後~

 

「へっへ~ん!四カド全部ヅッチーがとった~!」

 

 ヅッチーが最後のカドである右上のカドに白石を置くと、右辺上辺斜め3列が一気に白に変わる。まだ数ヶ所空白はあるが、この1手で大勢は決した。

 

「あぁ~!?デーリッチの黒が一気に白になったでち!?」

 

 直前まで黒で埋まっていた3列が一瞬で白に変わり、敗北が決まったデーリッチが悲鳴を上げる。

 

「これでヅッチーの3連勝な!相棒はオセロは苦手かい?」

 

 ちなみにこの国王、王国のペットである三つ首犬のベロベロスや、赤ん坊竜の地竜ちゃんにも敗北している。

「う゛ぅ~・・・こんなハズは・・・、もう1回!もう1回勝負でち!」

 

 食事を終え、後は目的地である天界の鉱山洞窟に戻るのみ。ハグレ王国の面々は各々時間を潰していた。

 デーリッチとヅッチーは携帯用オセロで、ヴォルケッタはローズマリーに勉強を見てもらってる。ミアラージュは読書、福ちゃんとドリントルは世間話に花を咲かせ、ニワカマッスルは食後の惰眠を貪っている。

 

「あなたたち!もう少し静かにできませんの!?」

 

 ヴォルケッタは、最近王国に帰属した天才召喚士シノブが書いた魔導理論書を読んでいた。時おり、ローズマリーに解らない部分を聞きながら勉強に勤しんでいたが、わんぱく国王達の騒ぎ声に我慢が出来なくなったらしく声を上げた。

「ヴォルちんもさ~、こんな所で勉強なんてしてないでオセロで勝負しようぜ?」

 

「やりません!わたくしは今勉強中でしてよ!」

 

「あ~!ヅッチー!デーリッチとの勝負はまだ決着ついてないでちよ!」

 

「だってさ~、相棒じゃ弱っちくて相手になんねぇんだもん!」

 

「なぬ!」ガーン

 

「ん?もしかしてヴォルちんは負けるのが怖いのか?そうだよな~勉強ばっか得意でもゲームで勝てるわけじゃないからな~。」

 

「ほう・・・、この大賢者ヴォルガノンが孫にして天才炎術士ヴォルケッタに向かって、負けるのが怖い、ですって!?いいでしょう、かかってらっしゃいな!」

 声を荒げながらも、どこか楽しそうにも見えるヴォルケッタ。結局いつものように3人一緒になってやいのやいのと騒いでいる国王二人と貴族の娘。

 

 思い思いに時間を過ごすハグレ王国の面々だったが、ふと、マリオンが何かに気付いたような素振りを見せる。

 

「おかしい・・・」

 

「どうしたんですか?マリオン。」

 

 その様子を見たローズマリーが声をかける。

 

「シャトルが出発してからかなりの時間が経つのにまだ先程の洞窟に着かない・・・?」

 

 シャトルに乗り込んでから、話をしていた時間を含めると、少なくとも1時間程経過している。

「えっ!?そういえば・・・、確かに行きは40分程度で到着しましたね?」

 

「現在自動走行中だが、機体の調子が悪いのかもしれん。ちょっと確認して・・・、ん!?手動運転に切り替わっている!?」

 

「どうしたんですか?」

 

「この船は本来、艦長であるマリオンの手足と同じだ。遠隔操作により、マリオンの命令通りに動く。しかし今、この船は手動運転モードに切り替わっていて、マリオンの制御下を外れている。」

 

 口調は冷静だが、マリオンの表情からはかなりの動揺が見てとれる。尋常ではない様子に他のメンバーも顔を向ける。

 

「それって、誰かがこの船を乗っ取ったってこと?」

 スペースジャック・・・。厨二病をこじらせた王国のムチムチポークこと、サイキッカーヤエちゃんならばこの心踊る展開に歓喜したかもしれないが、比較的まともな感性を持った今のメンバーには緊張が走る。

 

「そうだ。何者かはわからないが、その者は今、運転室でこの船を操作している。」

 

「しかし、解らない・・・。この船にはお前達8人以外に乗ってきた者はいなかった。ネズミ程の大きさでもなければ、質量センサーに反応があるはずなのだが・・・。」

 

「ネズミ・・・ね。」

 

「ネズミか・・・。」

 

「あ~、ネズミ・・・。」

 

 ネズミという言葉に、いまだに眠りこけているニワカマッスルを除く、ハグレ王国の全員の想像が一致する。

 謎は全て解けた。

 

「どうした、お前たち?何か心当たりがあるのか?」

 

「いや~・・・、ネズミといえば、ピンポイントで思い当たる奴がいるでちね・・・。」

 

 ホシの名は、はむすけ&どらごん。人語を話すハムスターのはむすけ、無類のパワーを秘めた竜の子供どらごん君のコソ泥コンビは、過去に何度もハグレ王国に大迷惑をかけてくれている。

 基本的には単純思考なおとぼけコンビだが、そのトラブルメーカーぶりは伝説の魔獣である地竜を復活させかけたこともあり、なかなか侮れない。

 センサーに感知されなかったということは、今回ははむすけの単独行動といことか。

「じゃあ、まぁ、ちょっと運転室に行って犯人をシバいてくるかの。マリオン、運転室に案内してたも。」

 

 犯人の目星がつくと、先程までの緊張が嘘のように、雑な対応になった。

 

「わかった。ついてこい。」

 

「ありがとうございます、マリオン。あっ、ヅッチー、ニワカマッスルを起こしてあげて。」

 

「あいよ。サンダー。」ドーン

 

「グギャー!」ナニガオキタ!?

 

 一行はこの期に及んで眠りこけているニワカマッスルを叩き起こして運転室に向かった。

 

―ー――

 

~シャトル(運転室前)~

 

(きゃぷてんおぶざしっぷぉ~ぉ!あしたからおまえがかじを~とれぃ~♪)

 運転室前に来ると、陽気な歌声が聞こえてくる。こちらの接近には気付いていないようだ。

 

「なにやらえらいゴキゲンな歌が聞こえるが、この声からしてホシははむすけで間違いないようじゃな。」

 

 ドリントルが扉に耳を当てながら中の状況を確認する。

 

「下手に抵抗されて、事故を起こされては堪らない。扉を開けたら素早さの高いデーリッチとヅッチーが最優先ではむすけを確保。ニワカマッスルは退路を塞いでおいて。マリオンは操縦をお願いします。他の皆は抵抗された場合に備えて、動けるようにしておいて。」

 

 ローズマリーが指示を出すと、全員が無言で頷く。

 

「じゃあ、扉の前に配置について、合図で飛び込むよ。」

 

 ローズマリーがドアの横に立ち開閉ボタンに手を添え、デーリッチとヅッチーを先頭、その後ろにマリオン、ニワカマッスルが控えている。

 

「せ~の!」ポチッ プシュン

 

 ローズマリーがボタンを押すと、空気が抜けるような音を立てて扉が開く。各自打ち合わせの通りに散開する。

 

「よ~そろ~ぉ♪おれたちの・・・って、なんだキミたちは~!」

 

 

――――

 

~シャトル(運転室)~

 

 懸念されたほどの抵抗もなく、あっさり捕まったはむすけは、頭に大きなたんこぶをこさえてグルグル巻きにされている。

「さて、まずは何でこんなことをしたのか説明してもらおうか?」

 

 ローズマリーが刑事ドラマの刑事さながら、はむすけに取り調べを行う。

 

「ふん。このはむすけ様が簡単に口を割るとでも?例え口が裂けても何も話すことはないね。」ペッ

 

「あ?黒こげにしてほしいか?」ギロッ

 

 この期に及んで尊大な態度を取るはむすけに、ローズマリーが本気の睨みを効かせる。

 

「レアな鉱石が採れないかと鉱山に行ったら怪しい乗り物があったので、金目の物目当てに忍び込んで、特に何も見つからなくて悔しかったのでこのシャトルをかっさらっていこうと思いました。すみませんでした。」

 ビビってペラペラと供述を始める。いっそ清々しいまでの小者っぷりである。

 

「ドラゴンはどうした?」

 

「どらごん君は鉱山で採れた鉱石を持って1度アジトに戻りました。すみませんでした。」

 

「どうやって運転していた?」

 

「テキトーにボタン押してたら手動モードになったって表示が出て、これはしめたと思って、あとはテキトーに。すみませんでした。」

 

 宿題を「本当はやったのに持ってくるのを忘れました!」って応えたら「じゃあ家まで取りに行ってこい」と言われてしまった小学生さながらに、急に大人しくすみませんを連呼するはむすけ。実に小者である。

「ハァ・・・、まったく相変わらずだなぁお前は。」

 

 大きな溜め息を吐いて、ローズマリーが呟く。ここで一旦はむすけから注意を逸らし、マリオンに向き直る。

 

「マリオン、シャトルの運航は順調ですか?」

 

「大丈夫だ。問題ない。」

 

 運転席のマリオンが応える。所謂死亡フラグに聞こえなくもないが、順調な様子である。

 と、ローズマリーの注意が離れた途端に芋虫みたいに転がっていたはむすけがモゾモゾと動き出す。

 

(フフフ、ボクの本当の狙いはシャトルじゃあないんっすよねぇ・・・)

 

 全く反省していない様子のはむすけは、まだ何かを企んでいるようだ。

 

(こんな縄でボクを縛るなんて出来ると思わないことっす!)

 

 ローズマリーが後ろを向いている隙に、げっ歯類ならではの固い前歯で体に巻かれたロープを噛み切り、そのまま外の景色に夢中になっていたデーリッチに体当たりをかます。

 

「はぶっ!?」

 

 たかがハムスターと侮ってはいけない。スピードに特化したはむすけの体当たりは、ニワカマッスルが全力投球した小石を投げつけられるようなもの。完全に不意を突かれ、脇腹にもろに体当たりを喰らったデーリッチは3m程吹き飛ばされて壁に打ち付けられる。

 その時、いつも肌身離さず持っていたキーオブパンドラを落としてしまった。

「その鍵もらったっす!」

 

 デーリッチが持つ大きな鍵「キーオブパンドラ」、別名:最初の召喚士の鍵と呼ばれたそれは、戦闘中に見せた強力な蘇生効果だけでなく、空間に「穴」を開けて空間転移したり、逆に世界に空いた「穴」を塞いだり、結界を問答無用にぶっ壊したり、世界のバランスをぶっ壊しかねないトンでもない魔力を秘めたチートアイテムである。

 本当はそれ以外にも反則級の能力があるが、現状デーリッチに使いこなせる鍵の力は精々がテレポートと空いたゲートを閉じるくらいである。

 神が選ばれし者に授けるアーティファクトをも超えた、ワールドアイテム級の代物であるキーオブパンドラは、過去に何度もハグレ王国の危機を救ったが、その分、外部の者にもその存在が知られてしまっていた。無論、はむすけ&ドラゴンもキーオブパンドラのことは調査済みであった。

「ゲート・・・オープン!」

 

 デーリッチがキーオブパンドラを落とすや否や、はむすけは自分の体よりも大きな鍵に跨がって空間転移の呪文を叫ぶ!

 

 ・・・が、鍵は一瞬輝き反応するが、特に何も起こらない。

 

「あ、あれ?」

 

「はむすけ君?キミは一体何をしているのかな?」

 

 騒動に気付いて振り向いたローズマリーが問う。眉をひきつらせ、背後にゴゴゴというオーラが見えるレベルで怒っている。メチャクチャ怒っている。話し方が丁寧な分、余計に怖い。

 

「あ、あはは・・・ちょっとおたわむれをですね、ええ。」

 

「ファイヤ。」ボウ

 

「んぎゃぁぁあ!?あちちち!すみませんでした!勘弁してくださぁい!」

 

 死なない程度に絶妙に手加減された炎魔法がはむすけの毛皮を焦がす。数秒間ゴロゴロ転げ回っていたはむすけからプスプスといい匂いがしはじめたところではむすけの意識が飛ぶ。辛うじて死んではいない。

 

 と、そこへ運転席のマリオンが大声を上げる。

 

「なんだこれは!?緊急回避行動をとる!総員、伏せろ!衝撃に備えよ!」

 

 マリオンが叫ぶと同時に、ガァン!という大きな衝撃がシャトルに響き渡る。全員がマリオンの合図で体勢を低くしていたが、転んだり壁に激突したりと少なからぬダメージを負う。

「いたた・・・、どど、どうしたんでちか!?」

 

「次元断層だ!これに飲み込まれたら大変なことになる!」

 

「何ですか!?それは!?」

 

「空間に大きなズレが生じて、異空間との境目に穴があく現象だ!一体どうして突然!?」

 

「空間・・・穴・・・もしかしてキーオブパンドラが!?」

 

 ローズマリーが先程の出来事を振り返り、呟く。

 

「さっきは不発かと思ったが確かに鍵は一瞬光っていた・・・。使い慣れない者が高速移動中に無理やり使おうとしたから鍵の力が暴走したんだ!」

 

「マリオンちゃん!どうすればこの状況を脱せられるでち!?」

「無理だ。シャトルは急には止まれない。何とか軌道を変えようとはしたが、次元断層に吸い込む力のほうが強いようだ。これ以上はどうもできん。それと、ちゃんはいらない。マリオンはマリオンだ。」

 

「「そんな~!?」」

 

 もうお手上げな状況でもしっかり訂正を入れてくる辺り、まだ余裕があるように見えるが、全くそんなことはい。

 

 ハグレ王国一行とマリオン、そしてハムスターを乗せたシャトルは成す術なく次元断層に吸い込まれていくのであった。

 




今回登場したキャラがざくアク側のメインメンバーです。
まだ話に絡んでくる人とか、居残り組の話も構想はしてますが、本編から外れる部分は書ききれるかはわかりません。
8人しか選べないってツラい。
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