こんな感じで思いついた小ネタを挟んでいきます。
~カズマ邸~
それは一目惚れだった。「彼」と始めて出会ったとき、自分の中の何かが震えるのを感じた。触れ合いたい。抱き締めたい。でも駄目だ。今は周りに皆がいる。夜になったら「彼」の寝床に忍び込むのだ・・・。
会議が終わり、お風呂を借りた。他の皆は公衆浴場へ行ったのだが、アンデッドの私があまり町中をウロウロするのは良くないということで屋敷のお風呂を借りることになったのだ。アクアさんはとても神力の強い女神様らしく、彼女が入った後のお湯は聖水のような神気を帯びており、湯に触るとピリピリするので浸かることはできなかった。無論これだけ迷惑かけている身で文句を言うつもりなど微塵もないが、自分がアンデッドであるという事実を突きつけられたようで、少しだけ寂しさを感じた。
私の寝室はドリントルと一緒の部屋が割り当てられた。チャンスだ。ドリントルはお肌のケアを気にする為にあまり遅い時間まで起きていることはない。まぁ、もしも部屋を抜け出すときに気付かれても「ちょっとお花摘みに」とでも言っておけばいいのだが、他の者に勘づかれる危険性は少ないほうがいい。
斯くして時は満ちた。同室のドリントルに気付かれないよう静かに毛布をめくり部屋の入り口へ向かう。音を立てないよう、慎重に、慎重にドアノブに手をかけ・・・
「ジャガイモじゃが!?」
ビックゥ!と猫のように全身の毛を逆立たせながら、恐る恐る振り返ると、毛布をはだけさせて大の字でグースカ寝ている星のお姫様のあられもない姿。なんだ、タダの寝言かと、改めてドアノブに手をかける。キィィと僅かにドアが軋む音がするが、ドリントルが目を覚ます様子はない。成功だ。第一関門は突破できた。
部屋を出て階段を降りて一階に向かう。さて、ここが第二関門だ。私達が借りていたベッドは前の持ち主だった貴族に仕えていた使用人が使っていた物なのだそうだが、実は一つだけ足りなかった。そこで、一人だけ一階暖炉前のソファーで寝ることになったのだが、唯一男性のニワカマッスルが名乗りを上げてくれたというわけだ。ニワカマッスルは本当に男気溢れる良い男なのに、脳味噌まで筋肉なのが本当に勿体ないのよね。
なんて思いながら階段を降りきると、グースカグースカ大きなイビキが聞こえてくる。さて、油断してはいけない。普段はとぼけた脳筋男もハグレ王国創立期から前線を支え続けた歴戦の勇士。不用意に物音を立てては確実に目を覚ますだろう。コッソリコッソリ、玄関を目指す。よし、もう少し・・・、
「ハッスル!マッスル!」
またもやビックゥ!として振り返る。やはり寝言のようだ。しかし、どいつもこいつもなんて寝言なのよ!とこんな状況でもなければ全力でツッコミを入れてやりたい。
どうにかこうにか玄関を出て外へ出る。さあ、最後の関門だ。愛しの「彼」の寝床の前に仁王立ちをして、様子を伺う。どうやらぐっすりとよく眠っているようだ。「彼」は鳥類だけあって夜に弱い。
「さあ、モフらせてもらうわよ!キングスフォード・ゼルトマン!」
「彼」こと、ゼル帝が眠る小屋の扉を開け中に入る。ゼル帝が目を覚ます様子はない。ドキドキしながらそのフワフワの羽毛に手を伸ばす。
ヒョイッ
避けた。
え?まさか起きてる?いやいやそんなはずは・・・。もう一度手を伸ばす。
ヒョイッ ペッ
また避けた。さらにツバを吐いてきた。
まさか鶏にツバを吐かれるとは、2度に渡る人生でも初の経験である。って、本当に寝てるはずよね!?もうこうなったら無理矢理にでも・・・!
ゲシッゲシッ ペッ
蹴られた。蹴られた上にまたツバ吐かれた。
上等じゃないの。こうなったら維持でもモフってやろうじゃない。
ゲシゲシゲシゲシ ポイッ
ゲシゲシゲシゲシ ポイッ
な、なんということ・・・。こども空手トーナメントで無双を誇ったこの私が鶏相手に手も足も出ないとは・・・。フラッ
小屋を背に腕組みをしてしばし考えていると・・・。
「誰かいるのか?」
玄関からニワカマッスルが出てきて声をかけられる。しまった、夢中になりすぎて音を立ててしまっていたか。 マズイ、この状況はマズイ。ここで正体を知られてはならない。もし見つかってしまえば、普段はクールなのに本当は可愛い物好きキャラにされてしまう。もしそんなことになれば、明日からヅッチー辺りがベロぐるみを来て悪ふざけをしてきかねない。なんとかして誤魔化さねば・・・!
「コッ、コケ~コッコ。」
「なんだ鶏かよ。」
あ、危なかった。こんな時間に鶏が鳴くわけないだろと自分にツッコミを入れたくなる誤魔化しだったが、相手が脳筋ニワカマッスルで助かった。本当に。
はあぁ、と大きなタメ息を吐く。きっとこの鶏は人になつかないのでしょうね。今日はもう諦めて部屋に戻りましょうか・・・。
―――――
~翌朝~
「なんじゃ、ミアラージュ、よく見たらおヌシところどころケガをしとるのう。」
「え、ええ、昨日森の中で擦りむいたみたいね。」
そんなことより朝食当番だから急いで準備をしなくては、と誤魔化しながら、窓を開けて外の光を取り込む。
ふと、眼下にデーリッチとヅッチー、ニワカマッスルが朝の散歩から帰ってきたところらしく、門から入ってくる姿が見える。そこへ小屋の中にいたゼル帝が器用に小屋の戸を開けて、デーリッチに向かって駆け出す。
「コッコケ~、コケ~!」
「わわっ、危ないから急に飛び付いて来るなでち!」
「なんかこいつ妙にデーリッチになついてるよな。」
「そんなことないでちよ。ほらヅッチーも、モフモフ。」
「おお~モフモフ。」
子供たちと戯れるゼル帝。
「なんで~!?」
ミアラージュは一人悔しさに涙を流すのであった。
ヒヨコ時代のゼル帝はバニルに刷り込みしたせいでアクアになつかないという感じでしたが、鶏になってからはどうなんでしょうかね。
基本的にデーリッチはあらゆる種族から愛される子なのでこんな感じです。