この素晴らしいハグレ王国に祝福を!   作:ひまじんホーム

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 ちょっと身の回りがごたついて遅くなりました。次回からは早くなるよ!

マリオンちゃんかわいい←コモンセンス


第5話 ヌルゲー

~冒険者ギルドまでの道中~

 

 ハグレ王国のクエストチームはデーリッチ、ドリントル、ヴォルケッタ、ニワカマッスル、マリオンの5名に、はむすけがくっついている。カズマパーティからはダクネス、めぐみん、おまけのゆんゆんが付き添っている。

 

「おまけって何よめぐみん!なんか私の扱い酷くない!?」

 

「知りませんよ。誰に言ってるんですか?」

 

 新しくできたお友達との初クエストということで、呼ばれてもいないのにウキウキで参加を申し出たゆんゆん。昨夜はその感動を里の両親に伝えようと便箋20枚に渡り書き綴ってしまった。

 

「めぐみんちゃん!ゆんゆんちゃん!ダクネスお姉さん!今日はよろしくお願いしますでち!」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

「よろしくね!デーリッチちゃん!」

「ああ、よろしく頼む。」

 

 一行はぞろぞろとギルドへ向かった。

 

―――――

 

~冒険者ギルド~

 

「冒険者ギルドに入ると、壁の掲示板に現在受けられる依頼が貼り出されてます。その中から自分達の力量と照らし合わせてこなせそうなクエストを選んで受付に申告するんです。基本的に、あるクエストに対して1つのパーティが受注を申告すると、他のパーティはその依頼を受けられません。また、クエストが進行中のパーティが別の依頼を並行して受けることも出来ません。クエスト結果は成否に関わらずギルドに報告をして終了となります。」

 

 クエストを受けるにあたり、めぐみんから簡単なレクチャーを受けるハグレ王国の面々。

 

「まぁ、冒険者稼業は習うより慣れろ、ですからね。まずは適当なクエストを選んでやってみるのがいいと思うのです。最近は魔王軍がいなくなった影響で害獣の討伐クエストが充実していますね。」

 

 充実、という言い方は少々不謹慎な言い方だが、魔王軍がいなくなっても冒険者稼業が成り立っているのは、活発化した野生モンスターによる被害が増加しているからであるのは、否定できない事実である。

 特にアクセルは元々魔王軍絡みのクエストも少なかったので、以前より依頼の数は多いくらいで、ギルドの職員も頭を悩ませている。

「なるほどのぅ。なになに?ジャイアントトード討伐一匹につき1万エリス、畑を荒らす野良牛退治10万エリス、白狼の群れ討伐30万エリスか。ふ~む、いまいちパッとせんなぁ。」

 

 顎に手を当てながら貼り出された依頼を確認していくドリントル。なかなかお眼鏡にかなう依頼は見つからない。

 

「これなんかどうでち?」

 

 デーリッチが背伸びしながら大きな熊の絵が描いてある依頼書を指差す。

 

「どれ、アクセルの森に大量に侵入した一撃熊の群れ掃討1頭につき20万エリス、未確認の大型個体の目撃情報アリ、か。稼ぎは良さそうじゃが、危険はないのかの?」

 

「一撃熊って昨日カズマお兄さんと会う前に出会ったモンスターなんでち。ほら、冒険者カードの討伐数に加算されてるでしょ?デーリッチとミアちんで無理なく倒せるくらいだったでちよ。」

 

「なるほど。肩慣らしには丁度よさそうじゃの。どうじゃ?めぐみん、ダクネス?」

 

「ほほぅ、なかなか良いチョイスです!強力な魔物を一瞬で吹き飛ばす我が爆裂魔法の威力をとくと御覧頂きましょう!」

 

 

「是非もない!前衛として存分にこき使ってくれ!」ドキドキ

 

 目を紅く輝かせながら賛成するめぐみん。両手を拡げてなにやら嬉しそうに話すダクネス。ちょっと顔を赤くしてハァハァしてるが、それに気付く者はいない。

 

「ほいじゃ、決まりじゃの。受付で申告してくるので、しばし待っておれ。」

 

 ドリントルが受付へ向かう。

 

 その後、低レベルの冒険者には受けさせられる依頼ではないとルナからストップがかかるトラブルがあったが、ダクネスとめぐみんが間に入る形をとることで依頼を受けられるようになった。

 

―――――

 

~アクセル近くの森~

 

「さて、昨日振りじゃの。」

 

「一撃熊の目撃情報は昨日私達が出会った場所から少し奥の方が多いそうです。まずは昨日の場所まで行きましょう。」

 

 ダクネスとめぐみんが先導し、あとのメンバーが続く。敵感知のスキルを持つ者はいない為、目視で周辺を注意しながら進む。

 

「少し、よいか?」

 

「ん?どうしたんじゃ、マリオンちゃん。」

「マリオンだ。ちゃんはいらない。」

 

 森に入って少し進んだところでマリオンが指揮をとるドリントルに問いかける。

 

「マリオンの審判を覆したお前たちのことだ。野生モンスターごときに遅れは取らないだろう。しかし、マリオンは集団戦闘の経験が皆無だ。このまま戦闘をするとお前たちの足を引っ張る可能性が高い。マリオンは作戦の指示を求める。」

 

「う~む、マリオンが足を引っ張るなんてまずないと思うがの。まぁよい。ほいじゃ、今回は集団戦に慣れることを目標に、前衛に立って敵を見つけたら適当に殴ってて貰おうかの。それに合わせて他の者で援護に回ろうぞ。」

 

「わかった。つまり遊撃手として敵陣に切り込み、敵を殲滅しろということだな。責任重大な任務だ。マリオンは全力を持ってその信頼に応えよう。」

 

 

「え?あ~、まぁ、そんなところじゃな。宜しく頼むぞ。マリオン。張り切りすぎて攻撃の余波が味方に当たらんようにな。」

 

 ガッカリされるかと思ったが、想像していたのとちょっと違う反応が返ってきて戸惑うドリントル。まぁやる気出してくれてるしまぁいいか。

 しかしマリオンはドリントルの想像よりもはるかに、それはもうヤル気満々だった。

 

―――――――――

 

「もう、マリオン一人でいいんじゃないかな?」

 

 本来前衛でパーティの盾役となるニワカマッスルが腕を組んだまま呆れた様子で呟く。

 マリオンは「適当に敵を殴ってて」というドリントルの指示を言葉通りに実行していた。しかし、結果はドリントルの想像のナナメ上。マリオンが右手に装着しているマリオンイーグルは必殺必中の拳。その巨体ゆえ高い耐久を誇る一撃熊が、悉くマリオンの一撃で沈められていた。

 

「う~む・・・、援護をするスキもないのぅ。」

 

 そんなことを言っているうちにまた1体、マリオンストレートを喰らった一撃熊の巨体が宙に舞う。

 これで討伐数は合計12体。その内訳は、遠距離で敵影を補足して狙撃したドリントルが1体、側面から不意打ちで襲いかかってきたのをライトオブセイバーで迎撃したゆんゆんが1体、残りは全てマリオンによるものである。

 

「むぅ、このままでは私の活躍の場がなくなってしまいます。」

 

「爆裂魔法の出番なんて元々ないんじゃない?」

 

「なにおう!?偶々タナボタで1体倒せただけのくせに、我が爆裂魔法を貶すとは生意気です!」

「あら?もしかして、めぐみんまだ1体も倒せてないの?じゃあ今日の勝負は私の勝ちね!」

 

「くっ、ゆんゆんの分際で煽ってくれますね・・・。まぁいいでしょう、まだチャンスはあります。美味しいところを持っていく紅魔族の真髄をよく見ておきなさい。」

 

 何かにつけて勝負に持ち込む紅魔族コンビ。タナボタだろうと何だろうと、1歩リードしているゆんゆんが勝利を意識してめぐみんを煽っている。

 

「な、なんという攻撃力!是非ともこの身で受けてみたい!」ドキドキ

 

「止めとけって。俺も何度ぶっ倒されたかわからんが、興味本意であんなん喰らったら命に関わるぞ。」

「貴方はあのパンチを生身で受けたというのか!?なんて羨ましい!」ポ

 

「・・・あんた今、羨ましいって言った?」

 

「言ってない。」フイッ

 

「いや、言ったよな?」

 

「言ってない。」プイッ

 

 あ~これはアレなパターンだ。ニワカマッスルは、ほんの二・三言、言葉を交わすだけで何かを覚ってしまった。せっかく、美人のクルセイダーと一緒に前衛を組めてちょっとワクワクしていたのに、現実は厳しいものである。

 

「ちょっと、デーリッチ!これではワタクシの出番が無さすぎて、腕慣らしもクソもないですわ!あの子に少し加減するように言ってやってくだりませんこと?」

 

 

「う~ん、それもそうでちねぇ・・・。お~い!マリオンちゃ~ん!」

 

「む?マリオンはマリオンだ。ちゃんはいらない。どうした、デーリッチ。マリオンにはまだ回復は不要だぞ?」

 

「え~と、マリオンちゃ・・・、マリオンのおかげで大分敵の頭数を減らせたでち。大活躍してくれたから少し休憩をとってほしいのでちよ。」

 

「そうか?まだお前たちと戦ったときの1/10の出力も出していないぞ?まぁ、ボスの判断ならばその通りにしよう。」

 

 まだ余裕綽々なマリオンだが、デーリッチの指示によって後衛に下がる。代わりに前に出たのはヴォルケッタ。

 

 

「さあ~て、ようやくワタクシの出番が来たようですわね!焦らされた分、本気でぶっぱなしますわよ!」

 

 ヴォルケッタは愛用の豚印の杖をくるくる回しながらバーンインストールを唱える。周囲のマナの悉くががヴォルケッタに取り込まれ、炎魔法の魔力に変換されていく。溢れ出す魔力によって、ヴォルケッタの足下の草が焦げ付く。

 

「さあ、黒焦げになりたいやつから出てきなさいな!」

 

 前衛のニワカマッスルとダクネスより数歩前進して声を上げるヴォルケッタ。その声に呼応するがごとく、前方の茂みから一頭の熊が顔を出したつかの間、ヴォルケッタ目掛けて猛烈な勢いで突進を仕掛けてきた。

 が、それをヴォルケッタはかわそうともせずに正面に見据えたまま呪文の詠唱を終わらせる。

 

「爆連ヴォルガノン!!」

 

 祖父ヴォルガノン直伝の極大炎魔法が、突進してきた一撃熊に向かって何発も叩き込まれる。巨大な火柱が昇り、周囲を炎に染め上げる。そしてその炎は術者であるヴォルケッタ自身すらも巻き込んでしまう。

 

「お、おい!ヴォルケッタが火柱に巻き込まれたぞ!」

 

 慌てふためくダクネス。

 

「ん~、まぁ大丈夫だろ。」

 

 平然と見ているニワカマッスル。

 

「何を悠長な!これほどの爆炎を生身で受けて大丈夫なわけがあるか!あぁ、私が代わりに受けたい!いや、受けなければなるまい!今助けりゅぞ!ヴォルケッタ!」ダダッ

 ヴォルケッタを助けるという大義を前にして、自分の願望を成就せんとダクネスが炎の渦に飛び込む。

「え?いや、おい、待てよ!」

 

 あまりに突飛な行動に反応が遅れ、ニワカマッスルの制止は間に合わなかった。

 

「あっつう゛ぃやぁあはぁん!」アァイイ!

 

 苦悶と恭悦の入り交じった何とも表現し難いダクネスの絶叫が響く。

 

「ちょ、なんですの!?アナタ!怪我するから離れてなさいな!」

 

 対して火中に在りながら特にダメージを受けた様子もなく、ダクネスに離れるよう促すヴォルケッタ。そしてヴォルケッタを炎から押し出しつつ自分は火柱の中心に行こうとするダクネス。二人はお互いに相手が炎の外に行くよう立ち回り、結果、もつれあってわけわからない状況になっていた。

 時間にして十数秒、火柱が収まり黒煙が晴れると、そこに残っていたのは直径10メートル程の焼け跡。そしてあちこち火傷をしているダクネスと、ダクネスにまとわりつかれているも至って無傷のヴォルケッタ。

 

「え、あの人、ヴォルケッタさん?何であの炎の中で無傷なの!?」

 

 自身も高レベルのアークウィザードであるゆんゆんには今の魔法がどれ程の威力であったのか、この場にいる誰よりも理解できていた。

 

「ヴォルちんは炎魔法のスペシャリストでちからね~。」

 

「いやいや、答えになってないわよ!?デーリッチちゃん?」

 

「?魔法使いの人って、得意魔法の属性に耐性を持っているんじゃないんでちか?」

「え?あ、もしかしてそっちの世界ではそうなの?」

 

 そうなのである。

 ハグレ王国の世界では、魔法を習得する際にはまずその魔法の耐性を身に付けるのが一般的である。それは誤爆により自身がダメージを受けないようにする安全面の対策と、その魔法の理論的基礎を理解する研究面での理由からである。

 冒険者カードで大抵のスキルを習得できるこちらの世界と違い、あちらでは固有のスキルが重宝される。読むだけでスキル習得ができるスキル書という物もあるが、貴重なうえに使い捨てであり、しかも一般化されたスキルは研鑽された固有スキルに劣るという欠点もある。なので、あちらの世界では自分だけの武器になる新しいスキルを自分で作り出すのが普通である。その為に習得する属性魔法に対する深い造詣と理解が必要になるが、その過程で対応する属性の耐性が自然と身に付くのである。

 ちなみに殆どの魔法使いは1つの属性を究めることに生涯を掛ける。稀に複数属性の習得を試みようとする者がいるが、その多くは莫大なマナ消費の反動に耐えられず魔法を使えない体になったり、中途半端になり大成しないで終わる。ハグレ王国の参謀ローズマリーも反対属性にあたる炎と氷という習得難易度最大の2属性を習得する代償にマナ欠乏症を抱える体質となってしまった。3つ以上の属性魔法を習得できた魔法使いはそれだけで歴史に名を残すことができる程の偉業というのがあちらの世界における魔法使いの常識である。

 一方で、一つの属性の研鑽に生涯を掛け、歴史に名を刻んだ偉大な魔法使いも勿論いる。ヴォルケッタの祖父ヴォルガノンがそれにあたる。

 爆炎の賢者「炎帝ヴォルガノン」の異名で讃えられた祖父をこよなく尊敬するヴォルケッタは、自らを「真・炎帝」と自称しては周りに痛い子として見られている。しかしながら、受け継がれた才とたゆまぬ努力は、14歳という若さにしてヴォルケッタを高位の魔法使いに成長せしめた。

 ヴォルケッタの信条は祖父に倣い、「一に火力、二に火力、三四も火力、五も火力」である。そして、そんな彼女が一切の手加減なく全力全開で放った炎魔法は、如何なる強力な魔物だろうがなんだろうが吹き飛ばし、消し炭すら残さない。

 残さないのだが・・・

 

「なんでアナタはぴんぴんしてるんですの!?」

 

 直撃ではなかったとはいえ、自身が全力で放った炎魔法の渦に飛び込みながら、全身に軽い火傷を負っただけのダクネスに驚きを隠せないヴォルケッタ。現にターゲットになっていた一撃熊に至っては消し炭すら残っていない。

 

「ふぅ・・・、素晴らしい威力の炎魔法だった。まだチリチリと私の肌を痛め付ける、その余韻が、た、たまらにゃい。」アヘー

 

 恍惚とした表情でワケのわからない事を口にするダクネス。傷は軽いものの、精神にダメージが残ってしまったのだろうか。

 

「ヒール!」

 

 その様子に慌ててデーリッチがヒールをかける。たちまちにダクネスのダメージは回復される。

 

「ハッ!あまりの快感に意識が・・・あれ?治ってる?」

 

「だ、大丈夫でちか?」

 

「む?今のはデーリッチのヒールか?くっ、余計なことを・・・あ、いや、ありがとう。助かった。」

 火傷が治まって少し冷静さを取り戻したダクネスが何故か残念そうにお礼を言う。

「ちょっとアナタ!危ないじゃない!というか大丈夫なの!?火傷の痕残ってない!?」

 

 せっかく廻ってきた自分の活躍にケチをつけられた文句と、それ以上にダクネスへの心配を口にするヴォルケッタ。普段は高飛車セレブを気取っているが根はとても優しい少女なのである。

 

「ああ、大丈夫だ。私は防御スキルに特化したクルセイダーだ。炎耐性もそれなりに習得している。ヴォルケッタ、アナタこそ平気なのか?」

 

「自分の魔法で傷付く三流魔法使いなんてハグレ王国にはいなくってよ!」

 

「そうか、余計なことをしてしまったようだな。すまないことをした。」

「構いませんわ。それに身を呈して仲間を庇う騎士の鏡ともいえる姿、尊敬に値致しますわ。ありがとう。ダクネス。」

 

「こちらこそ、素晴らしい魔法を見させて頂いた。ありがとう。ヴォルケッタ。」

 

 何だかんだで握手を交わしてお互いを認め合う二人。これから中々良い関係が築けそうだ

 そんな感じで友情を深める少女たちを、ちょっと離れたところから白い目で見ていたニワカマッスルが一人呟く。

 

「いや、誰か突っ込めよ。」

 

 心優しき純真な少女達が変態の扉を開くことがないよう、ニワカマッスルはその一言以上の深入りはしないことにした。

 

「固有スキル・・・、耐性の獲得か。私もできるかな・・・。」

 一連のやりとりに思うところがあったゆんゆんが、アゴに手を当て真剣な面持ちで何かを考えていた。

 

「?どうかしたんでちか?ゆんゆんちゃん?」

 

「ん、ううん。なんでもないわ。」

 

「そうでちか?」

 

 ゆんゆんの様子がちょっと気になったデーリッチだったが、一応まだ戦闘中なので、それ以上には詮索しないでおいた。

 

「ふむ。まぁ粗方倒せたようじゃし、ここいらが潮時かのう?もう少し手応えがあってもよかったがの。」

 

 全員の前に出てドリントルがクエストの完了を宣言しようとする。

 

「あ、ドリントルちゃん。それダメなフラグでち。」

 油断大敵。終わったと思ったときが危ない時である。

 皆の前に出ていたドリントルの後ろの茂みがガサガサ揺れる。

 

「ん?」

 

 ドリントルが振り向くと、そこには先程まで相手していた一撃熊の2倍はあろうかという体躯、そして白い毛皮。まるで雪山かと見まがうような巨大な白熊が、腕を振り上げ今にも殴りかかろうとしていた。

 

「グオオオォ!!」ブオン

 

 咆哮と共に降り下ろされる右腕、不意を付かれたドリントルは反応が一手遅れる。

 

「危ねぇ!」ガキーン

 

 しかし、そこは流石のニワカマッスル。仲間の暴走は止められなかったが、敵の攻撃からはしっかりと仲間を守る。

 

「ニワカマッスル!助かったぞい!」

 

「姫さんは下がってな!こいつはちっと歯応えがありそうだ!」

 

 身長2メートル程度の赤い牛と4メートルはあろうかという白い熊、しかし、受けた感触では力は互角。

 

「っらああ!」

 

 ニワカマッスルは受け止めた右腕をはね除け、その勢いを回転運動に変換して体を捻った体制で飛び上がり、回し蹴りを顎に決める。

 

「ゴアァァオ!」

 

 完璧に決まった蹴りも決定打にはならず、白熊も一瞬よろけるがすぐに立て直す。体制を低くし、突進攻撃を仕掛ける。巨体からのぶちかましにニワカマッスルは腕を十字にクロスさせ防御の構えで受けるが、堪えきれず後方に吹き飛ばされる。

 

「くっそ~!回し蹴りが完全に入ったのに!」

 

 派手に吹き飛ばされたニワカマッスルだが、ダメージはそれほどでもなく、すぐに立ち上がり、再び白熊と対峙して首をコキコキ鳴らしている。まだまだ余裕がありそうだ。

 

「ふふふ・・・。」

 

 と、そこでニワカマッスルの後方から不適な笑い声が漏れる。

 

「あん?なんだ?」

 

「ふわっはっはっは!真・打・登・場!」

 笑い声の正体はめぐみんである。

 

「野生モンスターが群れを成す時には必ずボス個体がいる。とうとう姿を現しましたね!この時を待っていましたよ!最後に美味しいところを持っていく紅魔族の流儀をとくとご覧あれ!」

 

 思えばヴォルケッタの爆炎魔法を目の前で見せられた爆裂魔法至上主義のめぐみんが黙っているわけなどないのである。

 両眼を紅く燃やしためぐみんは既に高速で詠唱を終え、爆裂魔法の発射準備が整っていた。

 

「ちょ!?めぐみん!?待って待って、みんなぁ~!さがってぇ~!」

 

「え?え?」

「なに?なんですの?」

「なにが始まるんじゃ?」

 

 突然慌て出したゆんゆんの様子に何事かと浮き足立つハグレ王国の面々。

 

「いいから!とにかく!はやくにげてぇ!」

 

 訳も分からず取り合えず下がるハグレ達。

 

「おい俺は下がれねぇぞ!」

 

 白熊と対峙してるが故に一人取り残されたニワカマッスル。

 

「バインド!はやく下がるんだ牛男!」

 

 助け船を出したのは巨大な白熊とは対極の存在。小さな小さなはむすけだった。覚えたてのバインドは拘束力は弱いが不意を付けたことで白熊に一瞬の隙が生まれる。

「助かったぜ!はむすけ!」

 

 全員が爆裂魔法の射程から外れたのを見計らって、めぐみんは練り上げた魔力を開放する!

 

「エクスプロージョン!」チュドーーーーン!

 

 耳をつんざく轟音と共に、先程のヴォルケッタの魔法より更に二まわりは大きな火柱が上がる。

 

「な、なんて威力なの・・・。」

 ヴォルケッタがやや悔しそうな顔でその火柱を見上げながら呟く。爆裂魔法は白熊の巨体を完全に捉え、跡形もなく消し去った。

 

 

―――――――

 

~冒険者ギルド~

 

「どういうことなの・・・」

 

 ドリントルからクエスト完了の報告を受けたルナが絶句している。

 

「討伐総数14、ボス個体も撃破ですって・・・?」

 

 確かに勇者パーティの協力があった。

 ルナが想定していたのは堅さに定評のあるクルセイダーが敵を引き付けて、頭のおかしい爆裂娘による一撃離脱だった。それなら比較的安全に、上手くいけば中々進捗しない討伐依頼でも複数個体の討伐可能性もあると判断した。だからクエスト受注を許可した。しかし、結果は討伐の殆どが一人の女の子によるもので、他のメンバーにも怪我人すらもなく余裕でクエストをこなしたのがわかる。

 色々と気になることもあったが、高難度依頼が一つ片付いてギルドとしては非常に助かったのと、サトウカズマの関係者となればそんなこともあるだろうと、深く考えないことにした。

 

「ええと、ではドリントルさんのパーティには討伐報酬2,800,000エリスに加え、ボスモンスター討伐による追加報酬が1,000,000エリス、合計で3,800,000エリスの報酬をお渡しします!」

 

ウオオオォォ!と冒険者達から歓声が上がる。

 

「おいおい!魔王討伐後で最高金額じゃないか!?」

「おいネエチャン達!奢ってくれよ!」

「ふっ、新たな英雄の誕生か。」

「あのドリントルって女。マブくね?」「いや、俺は青い髪の子のほうが・・・」

 一部おかしなことを言ってる奴もいるが、ハグレ王国はアクセルの冒険者ギルドにおいて鮮烈なデビューを飾ることになった。

 




 スキル習得云々はサガフロの術資質をイメージしといてください。魔法を使うだけなら買えば使えるけど、資質がないと高位術は使えなかったり、閃いたりできないってこと。このすば世界は冒険者カードという便利な物が出回ってるせいで、自分で固有スキルを作り出す人が少ないという設定。実際カズマが初級魔法を応用してみただけで驚かれるのはそういうことなんじゃないかなと思ってます。
 ローズマリーはデーリッチと放浪生活する中で1属性では対処できない敵に苦戦したことがきっかけで、2属性習得をしています。ただ、マナ欠乏症については才能がなかったわけではなく、録な環境もない中で独学で強引な習得を行った為じゃないかと思います。それだけでもとんでもないことだったりします。
 王国で3属性持ちはシノブとメニャーニャ。あともしかしたらミアラージュ。3人とも歴史に名を残すレベルの天才です。3属性に加えて最上位の回復支援魔法まで使えるシズナさんは伝説級。
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