この素晴らしいハグレ王国に祝福を!   作:ひまじんホーム

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 基本的にメインストーリーが進まないエピソードを宿屋イベントとしています。
 時系列が本編と前後したりしますので、ご注意ください。



宿屋イベントその2 友達増やせ!

~冒険者ギルド~

 

 一撃熊討伐クエスト完了後カズマ達と合流し、酒場ではハグレ王国の歓迎会を兼ねた宴会が開かれていた。他の冒険者も物珍しさから宴会に合流し、ギルドの中は大変な騒ぎとなっていた。

 そんな中で、喧嘩っ早いめぐみんがヴォルケッタに爆裂魔法の素晴らしさを説き始め、同じく煽られ耐性0のヴォルケッタが如何に祖父ヴォルガノンが偉大な魔法使いかを語り、お互いヒートアップしてきたところにアクアが「どっちの魔法の方が強いの?」とガソリンをぶちまけたせいで取っ組み合いの喧嘩になったところ、それぞれカズマとローズマリーに怒られてシュンとしていた。

 ゆんゆんは先程ヴォルケッタの前にめぐみんと今日の勝負の結果について言い合っていたが、めぐみんが喧嘩相手を変えてしまってから話し相手がいなくなり、隅の方で独りジュースをすすっていた。

 

 

「ゆんゆんは凄いな」

「ふぇっ?」ガタッ

 

 突然声をかけられて思わず立ち上がるゆんゆん。声がした方向に顔を向けるとマリオンが立っていた。マリオンは感情表現が苦手なのか、ずっとポーカーフェイスを保っている。

 

「マリオンちゃん?私が凄いって?」

 

「マリオンはマリオンだ。ちゃんはいらない。ゆんゆんはマリオンに出来ないことを簡単にやってみせた。だからマリオンはゆんゆんを尊敬している。」

 

「私が?マリオンちゃ、マリオンに出来ないことを・・・?」

 

 今日の戦闘でのマリオンの活躍は衝撃的なものだった。ほぼ単独で、一撃熊を10体相手に無双出来る冒険者なんて王都の高レベル冒険者を含めても一体どれだけいるだろうか。自分は偶々1体倒せただけだし、ライバルのめぐみんはボスモンスターを倒している。ちなみに今日の勝負は討伐数勝負なので、二人とも討伐数1で引き分けにしたかったが、ボスモンスターを倒しためぐみんに丸め込まれ、高純度マナタイトを取られてしまった。

 そんな自分がマリオンちゃんに出来ないことが出来るとは?一体どういうことだろう。

 

「うむ。ゆんゆんはたった1日で3人も友達を作っていた。マリオンも友達が欲しい。マリオンに友達の作り方を教えてはもらえないだろうか?」

 

「へ・・・?はぁぁぁあ!?」

 

 マリオンからお願いされたのは、まさかの友達の作り方教えて!である。そんな方法ボッチ歴イコール年齢のゆんゆんに分かる訳がないし、何故ゆんゆんにそんなことを頼むのか理由が分からない。

 

「いやいやいや!?ムリムリムリ!?ていうかそんな方法知ってたら私が実践してるからっ!?」

 

「?マリオンは見ていたぞ?ゆんゆんは昨日、デーリッチ、ヅッチー、ヴォルケッタの3人と友達になっていただろう?どうすれば友達が増やせる?マリオンはまだ人間の感情というものがよく分からないのだ。友達名人のゆんゆんに教えて欲しい。」

 

「と、友達名人!?」

 

 人生十四年。学校で二人組を作るときは必ず先生と組んだ。誕生日は独りでご馳走を食べる日だった。ボードゲームはめぐみんとやるまで一人用の遊びだと思ってた。サボテンのサボちゃんは今でも大切な友達だけど、言葉が通じる友達が欲しいなってずっと思ってた。

 そんな自分が友達名人。友達、名人だ。確かにデーリッチ達には友達と言われた。握手をした。一緒にクエストをした。もうこれは紛れもない友達だろう。結果、友達慣れしていないゆんゆんはちょっぴり浮かれていた。

 

「私が・・・私が友達名人・・・めいじん・・・」ウフフ

 

 熱に侵されたような怪しい表情をしていたゆんゆんだったが、まだ人の心の機微に疎いマリオンには余裕の笑みに見えたらしい。「うむ。頼もしいことだ。どうだろう、ゆんゆん、引き受けてはもらえないだろうか。」

 

「ま、まかせてちょーだい!」

 

 つい勢いで答えてしまった。

 もう嫌な予感しかしない。

 

―――――――

 

「まず、そもそも友達とはどういう状況になれば友達になるんだ?」

 

「う~ん・・・、一緒に遊んだり、ご飯食べたり?かなぁ?あ、でもデーリッチちゃん達とはクエストはしたけど遊んではいないわね・・・。めぐみんはライバルだから友達とは違うし・・・。お互いが友達だって認めたら友達になるのかも。」

 

 友達とは何か?哲学的な問いである。あまりにも経験が少ないゆんゆんは、経験談ではなく本で読んだ一般論で答えるしかないが、それほど外れた解答ではないだろう。

 

 

「なるほど、こちらだけが友達だと思うだけでなく、相手に友達だと認めてもらわなければならない、ということか。何か証拠になるものを用意しようか。」

 

 マリオンもなるほど、と納得している。が、何かずれている。

 

「では、どうしたら相手に友達だと認めてもらえるだろうか?」

 

「う~ん、友達ですか?って聞いてみるとか。」

 

「それは既に友達になった相手への質問ではないか?」

 

「あ、そうね。じゃあ友達になってくれますか?だね。」

 

「いきなり友達になってくれ、では断られないだろうか?」

 

「じゃあ、相手が断りにくい状況にするとか?ご飯とかお酒をきっかけにするといいかも?」

 

 

「それは素晴らしい考えだ!ありがとう、流石はゆんゆんだ!早速実践してこよう!」

 

 宴会はまだ始まったばかり、マリオンは喧騒の中に歩を進めた。

 

―――――――

 

「一杯どうだ?ここはマリオンが奢ろう。」

 

「お?気前がいいじゃねえか?流石はハグレ王国様々だな!」

 

 最初のターゲットはくすんだ金髪に碧眼のチンピラ男のダストである。タダ酒を期待して宴会に顔を出したが、期待通りの誘いに思いきり乗っかる。

 

「そうか、ではマリオンが注ごう。グラスを出すといい。」

 

「へへっ、たっぷり注いでくれよ。」

 

 本日の戦闘で大活躍したとはいえ、見た目は10才そこそこの新米冒険者の少女に躊躇なく奢らせるあたり、流石はカズマと並んでアクセルのクズコンビと呼ばれるだけのことはある。

 

 がしかし、ダストは直ぐにそれを後悔することになる。

 

「ゴクゴクゴク、プハー!やっぱり奢られる酒は最高だぜ!」

 

 マリオンによってなみなみと注がれたシュワシュワを一気に飲み干す。絵面といい、発言といい、わりと真剣にクズ野郎だった。

 

「飲んだな?気に入ってもらえて何よりだ。これでマリオンとダストはもう友達かな?」

 

「あん?いいぜ。奢ってくれるやつはみ~んな友達だ。」

 

 

「そうか!友達なのだな?嬉しいぞ・・・!ダスト!では、コレにサインしてはもらえないだろうか?」

 

「ん~なんだこりゃ?友達契約書?へあ?」

 

 一杯飲み干して盛り上がった気分が一気に醒める。これはアレだ。長く冒険者をやっていると誰もが1度は出くわす、悪名高きアクシズ教徒の勧誘の手口だ。

 しかしこの状況はマズい。ダストは既に出されたシュワシュワを飲んでしまっている。しかもタダ酒狙いで来た為に手持ちの金はない。相手は一撃熊を単独で倒したと聞いている。逃げられそうにない。

 

「え~と、僕たちまだ知り合ったばかりでトモダチとか、早すぎるんじゃないでしょうか?」

「そんなことはないぞ?一緒に酒の席を囲えば冒険者は皆仲間になれると聞いた。」

 ヤバいヤバい、これはヤバい。逃げ切れない。初心者殺しに追いかけ回されたときよりヤバい。

 

「あの、ちょっと仲間が来てるはずなので呼んできてもいいですかね?」

 

「ん?構わないぞ。その仲間にも奢ってやろう。」

 

「お?そ、それは有難いな。じゃあちょっと失礼するわ・・・。」

 

 そして、ダストは戻って来なかった。

 

―――――――

 

 そんなこんなで数人に声をかけては逃げられてるうちにマリオンとゆんゆんの周りには誰もいなくなった。

 

「ちょっとちょっと、一体何をしているんでちか!?なんか苦情が殺到してるでちよ!?」

 

 騒ぎを聞き付けたデーリッチが駆けつけてきた。

 

「おお、デーリッチか。デーリッチに言われた通りに友達を増やそうとしていたのだ。これがなかなか上手くいかなくて困っている。最初の数件はあと一歩のところだったのだが、段々マリオンの周りに人がいなくなってしまった。」

 

「え、ええ?みんな気さくな人達に見えるんでちけどねぇ・・・。」

 

 話を聞いて首を捻るデーリッチ。カズマパーティのメンバーはもとより、他の冒険者達もノリの良い人ばかりでハグレ王国との相性はよさそうなのだが。

 

 

「そうだろう?この友達契約書にサインをしてくれるだけでいいのにな。」

 

「・・・うん?」

 

 何か変な物が出てきた。

 

「だから、この友達契約書に。」

 

「ちょ、ちょっとなんてもの作ってるんでちか!?これをみんなに押し付けたんでちか!?」

 

「駄目だろうか?」

 

「駄目でちよ!!友達は契約書とかで確定させるものじゃないでち!心の中で認め合うものでちよ!?」

 

 思いもよらない代物が出てきて声を上げてしまうデーリッチ。

 

「ああ・・・。デーリッチが馬鹿だったでち!良かれと思った提案だったんでちがあ・・・。」

 

 

 額に手を当ててう~んと唸るデーリッチ。早く王国に馴染んでもらおうと出した友達を作るという指示は、とんでもない方向に逸れてしまっていた。

 

「ううん?」

 

「マリオンちゃん、すまんでち!デーリッチのせいでマリオンちゃんを孤立させることになってしまった。あの指示は忘れてくださいでち。デーリッチはみんなの誤解を解いてくるでち。」

 

「待て、待ってくれ。なぜデーリッチが謝る?お前に一体何の非があるというのだ?」

 

「デーリッチが愚かだったんでち。デーリッチの勝手な想いでマリオンちゃんに無理な指示を出してしまった。デーリッチはマリオンちゃんに早くみんなと仲良くなって欲しかっただけなんでち。」

 

 

「ふむ・・・、しかし、それは君の意図を上手く読めなかったマリオンの責任だろう?君の謝ることじゃない。」

 

「い、いや、でも・・・!」

 

「それより教えてくれ。どうして、君はマリオンを他のみんなと仲良くさせたいのだ?」

 

「え?」

 

「そんなことをして君に何のメリットがあるのだ?それをずっと聞きたかった。」

 

「だって、友達って素敵じゃないでちか。」

 

「うん?」

 

「デーリッチは友達を凄く大切に思ってるでち。マリオンちゃんも、もちろんそうでち。だから、マリオンちゃんの友達が増えて、マリオンちゃんが幸せそうなら、デーリッチもまた幸せなんでち。」

 

「マリオンを大切に思う?一体、お前はマリオンのどこが気に入ったのだ?」

 

「ちっちゃくて、かわいくて、やさしくて、まじめで、つよいところ、でちかねー?」

 

「・・・。」ポ

 

「あれれ?足りないでちか?それなら、えーっと・・・。」

 

「や、やめてくれ・・・!もういい!なんとなくだけど、友達という概念が分かった。そうか、こういう気持ちなのだな・・・。」

 

「ほえ?」

 

「友達の押し付けは間違っていたようだ。証拠は残せないけれど、のんびりと、友達を増やしていくことにするよ。」

 

「おお!」

 

「ところで、友達名人に一つ聞きたい。友達を増やすのに一番必要な能力とはなんだろうか?」

 

「能力でちか?能力はいらんでちね?」

 

「ほう?」

 

「必要なものは、笑顔と時間だけでちよ。それに・・・。もう出てきたらどうでちか?ゆんゆんちゃん。」

 

「ひゃい!?」ビックゥ

 

 机の陰から様子を伺っていたゆんゆん。隠れていたつもりはないようだが、ずっと口を出せずにモジモジしていた。

 

「ゆんゆんか、君にもすまないことをした。せっかくアドバイスをしてくれたのにマリオンは台無しにしてしまった。」

 

「そっ、そんなことないよ!私だって、友達名人なんて呼ばれて嬉しくなって、本当は自分で友達作ったことないのに偉そうにアドバイスなんかして・・・。」

 

 

「二人とも、そうじゃないでちよ。ゆんゆんちゃんはマリオンのことを想ってアドバイスをした。マリオンちゃんはアドバイスをしてくれたゆんゆんちゃんに応えようと頑張った。お互いがお互いのことを想いやっていたんじゃないでちか?」

 

「そうだけど・・・。」

「そ、そうだが。」

 

「そうやって想いあった二人はもう、友達なんじゃないんでちか?」

 

「「!!!」」

 

「ほら、握手、握手。」

 

 デーリッチに促され握手をする二人。涙目ながらもおずおずと手を出し嬉しそうなゆんゆん。微小ながら無表情を崩し、頬を染めるマリオン。

 二人はまっすぐ向き合って、目をあわせる。

 

「よろしく、お願いします・・・!」

「こちらこそよろしく、ゆんゆん・・・!」

 

 その後、3人でマリオンの誤解を解いて廻った。その時に、顔を赤くしながら謝るマリオンの姿が冒険者達に大層気に入られ、「マリオンちゃんかわいい」コールが巻き起こり、マリオンがオーバーヒートしてしまう事件が発生した。翌日、アクセルの街では「マリオンちゃんかわいい禁止令」が発令されることになった。

 アクセルの街は今日も平和である。

 




 ぶっちゃけこの話を書きたくてSS書き始めたようなものです。

 この話を読んだあなたはきっとこう言うだろう。

「マリオンちゃんかわいい!」
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