戦闘シーンで全員に活躍させようとすると冗長な感じになってしまう。かといって登場しておいて一言も喋らないのもどうかと思うし。
この辺は登場人物を増やした段階で分かっていたこととはいえ、やっぱり難しい。
これからまだ人数増えるというのに。
ハグレ王国が鮮烈なデビューを飾ったその日、それを遥か遠くから観測する者たちがいた。
~???~
「上手くいったようだナ?」
濃紺のヘソ出しシャツにミニスカートというラフな格好をした少女が玉座に腰掛け、向かいあった男に報告を求める。
「左様に御座います。」
白黒の仮面にタキシードを着た、長身の男は恭しく頭を下げながら答える。
「しかし、あの様な童共が我が目で見通せぬとはにわかに信じられませぬな。」
「奴らは私の地上侵略を武力で止めやがった。魔力を解放した今でも勝てるかどうかわからん。」
「ご冗談・・・ではないのでしょうな。」
契約を重んじる悪魔は嘘偽りを嫌う。気まぐれな主上とはいえそれは事実なのであろう。
「奴の動きはどうだ?」
「着々と勢力を伸ばしておりますな。上位悪魔でも奴の支配下に入る者が出てきております。」
「hmm・・・。こちらも急ぐ必要があるか・・・。」
少女は少し思案して次の計画を告げた。
―――――――
~数日後カズマ邸~
ハグレ王国はデビュー以降、高難度クエストだけでなく、畑仕事の手伝いから土木工事までこなす超便利屋集団として、わずか数日でアクセルでは知らない者がいない程の人気者になっていた。また、ローズマリーの薬屋も、回復手段が少ないこの世界において即効性の高さが評価され、道具屋や病院を中心に順調に販路を拡大している。ちなみに、調合に失敗した薬もなぜかとある魔道具店の店主がいたく気に入り、高値で買い取ってくれている。
これまで稼いだ金額は7,000,000エリスを越え、その中からカズマから借りた登録料は勿論、宿泊や諸々のお礼として相応の金額をカズマに支払っている。
おおよそ活動基盤が安定してきたところで、ローズマリーがカズマに次の計画を相談している。
「王都に行きたい?」
「うん、高額のクエストは大体こなしてしまったし、あまり私たちが依頼を独占するのは他の冒険者に迷惑をかけることになるんだよね?ギルドの方にもそう薦められたみたい。」
お互いに慣れてきて、ローズマリーの話し方も親しい相手に対する口調に変わってきている。
「いいんじゃないか?丁度俺たちも王都に行く用事があったからテレポートで連れていってやるよ。ゆんゆんも一緒に連れていけば1度に8人は行けるだろ。」
「テレポート?へぇ、この世界には便利な魔法があるんだね。あ、でもそれならデーリッチだけ連れていって貰えたら大丈夫だよ。」
「?何で?」
「デーリッチが持っているキーオブパンドラがあれば1度行った場所に空間転移できるからね。初めて会った時見せたあの鍵だよ。」
「マジか。確か異世界への転移装置とか言ってたけど、テレポートもできんのそれ。」
なんというチートアイテム。テレポート専門のアークウィザードがいるくらいだ。あの鍵があったら食うのに困らないだろう。
「なぁ、その鍵う「売らないよ?」」
「ちぇっ。」
ローズマリーはこの数日でなんとなくカズマの考えが読める程度には親しくなっている。カズマ自身もテレポート自体は使えるし、あったら便利だな程度での提案なので断られたら特に交渉するわけでもなく諦めた。
「ところで、先程王都に行く用事があると言っていたけど・・・。」
「ああ、王城から晩餐会の招待状が届いていてな。」
「え?それって凄いことじゃない?」
「まぁ、一応魔王倒した勇者だからな、俺。」
「え?えぇぇ!?」
「あれ?言ってなかったか?アクセルじゃ知らない奴はいないぞ?」
「いやいやいや!?日がな、こどら並みにこたつに入り浸って「明日から本気だす」とかいうニート根性を地でいくクズマさんが!?アクア達にセクハラすることが趣味の変態鬼畜ゲスマさんが勇者!?」
「おい!あながち間違ってないがそこまで言われると俺も傷付くからな!デリケートなんだぞ!俺は!ってか、クズマとかゲスマってあだ名は誰から聞いた!」
間違いを指摘するならば、カズマは女として認識していないアクアに対してはセクハラしていないところだろう。カズマのセクハラ被害者は大抵はめぐみん、ダクネス、ゆんゆんである。
しかし、ローズマリーが、アクアがセクハラ被害者だと言うということはつまり・・・。
「アクアが嬉々として話してくれましたよ?」
「やっぱりか!あんのクソ駄目神がぁ・・・。あとでバインド&ドレインタッチの刑だな。」
カズマがジト目で広間の方を睨むと、自分の知らないところで死亡フラグが立っていることなど露知らず、アクアは子供たち相手に手品を披露して喝采を貰っている。
「ええと・・・、じゃあカズマ達は晩餐会に出る為、王宮に行くんですね?」
少し険悪な雰囲気にこれはマズいとローズマリーは無理矢理話を戻す。
「ん?ああ。本当は晩餐会なんて貴族の集まりは面倒臭くて行きたくないんだが、かわいい妹に会う為だからな。」
「え?妹がいるんですか?」
「ああ、ベルゼルグ第一王女のアイリスは俺の妹なんだよ。」
「え?えぇぇぇえ!?」ガタッ
先程、カズマが勇者だと聞いたとき以上に驚いてしまった。まさかカズマが王族だったとは・・・。
「何を馬鹿なことを言っている!カズマが王族なわけがないだろう!」
横から出てきたダクネスがちょっと本気で怒った様子で口を挟む。
「何を言ってるんだダクネス。アイリスは俺のことをお兄ちゃんと呼ぶんだぞ?これが妹じゃなくてなんなんだよ?」
「純心なアイリス様に悪影響を与え、あまつさえ兄と呼ばせるふざけた行いに、王城へ出入り禁止にされたのを忘れたのか!?」
「え~?俺王城でのことは変な薬飲まされたせいで記憶ないんだけど?」
「え?え?」
ローズマリーは話の流れが分からず混乱している。
「ばっちり覚えているではないか!気を付けろローズマリー!この男は幼きアイリス様をたぶらかした性犯罪者だ!魔王討伐で出禁が解かれたとはいえ、王城では重要監視対象にされている危険人物なんだぞ!」
「なにそれ!?俺も初耳なんだけど!?」
「たわけ!本来ならお前を王城に行かせられるわけがないだろう!アイリス様たってのご招待だからと私が責任を持ってお前の監視をするハメになってしまったのだぞ!」
「え、えぇと?つまりカズマが王族というわけではなく、王女様に兄と呼ばせる変態行為で城を出禁にされたということ?」クズマサン・・・
「大体そうだけど!言い方!」
とまぁ、そんなこんなでギャーギャー騒いだ翌日、カズマパーティは王城へ、ローズマリー、ヅッチー、ミアラージュのマナ節約組はアクセルでお仕事、後のメンバーはゆんゆんと合流して王都の冒険者ギルドへ向かうことになった。
――――――――
~王都の冒険者ギルド~
カズマ達と別れたデーリッチ達はゆんゆんの案内で王都の冒険者ギルドへ来ていた。ゆんゆんは王都でも活動をしていおり、新勇者サトウカズマや魔剣の勇者ミツルギと共に魔王討伐に参加した凄腕アークウィザードとして結構な有名人である。しかし、同時に高難度のクエストをソロでこなす孤高のアークウィザードとしても有名で、ゆんゆんに声をかけるものは少ない。というか一人でボードゲームをしたり、声をかけられると逃げたりしていたせいで声をかける者がいなくなったという方が正しい。
そんなゆんゆんを見つけて声をかけるイケメン剣士が一人。
「やあ、ゆんゆん。久し振りだね。今日は王都でクエストかい?」
一目で分かる程強力な魔力を秘めた大剣を携え、装着方法のよくわからないゴテゴテした派手な装飾の鎧、細身ながら鍛えられた肉体に端整な容姿。いかにも勇者といった出で立ちの男、魔剣の勇者こと、ミツルギキョウヤである。
「あっ、ミツルギさん。はい、今日はお友達と一緒にクエストを受けに来たんです!」
「え?お友達?」
ゆんゆんのぼっち性はミツルギもよく知るところである。過去に優秀な後衛を欲したミツルギは熱心にゆんゆんをパーティに誘ったことがある。しかし、その人見知りな性格からか断られた経緯がある。(とミツルギは思っているが、実際はミツルギの後ろでプレッシャーをかけてきたクレメアとフィオにビビった為だったりする)
「そうです!こちらのハグレ王国の皆さんです!」ジャーン
ゆんゆんが後ろに控えていたメンバーを紹介すると、ミツルギもそちらに視線を送った・・・ところで目を丸くする。
10歳そこそこと見られる少女が3人、1人は頭にハムスターを乗せている。やけに露出の多い大人っぽい女性2人。そして筋肉を顕にした上半身裸のムキムキビーフである。
「な、なかなか個性的なお友達?だね?」ヒク
ゆんゆんの紹介を受けて各自挨拶をしたところで、頬を引きつらせながら控え目に印象を語るミツルギ。独特の感性を持つ紅魔族にあってゆんゆんは比較的常識的な方だと思っていたが、その認識は改める必要があるかもしれない。
「そういえば、今日はクレメアさんとフィオさんは一緒じゃないんですか?」
「ああ、今日は夜に王城に呼ばれているから夕方までは自由行動にしていてね。二人は服や小物を買いに行っているよ。僕は買い物の必要がないから、簡単なクエストでも受けて時間を潰そうと思って。」
「あ、ミツルギさんも招待されていたんですね。」
「も?」
「はい。カズマさんたちも招待されていて、先に王城に行ってるはずですよ。」
「うげ!」
正攻法を重んじるミツルギにとって、搦め手で相手を出し抜くカズマは天敵とも言える。カズマの力を身をもって経験しているミツルギは、カズマの真の恐ろしさを知る数少ない人物のうちの1人であり、あまり顔を会わせたくないのが本音だ。
ちなみにゆんゆんが呼ばれていないのは、ゆんゆんはカズマパーティの一員だと認識されており、招待状もカズマパーティ一行に対してのものであった。しかし、実際はゆんゆんはカズマパーティではないので、1人だけ招待されなかった形になってしまった。ぼっちの為ならトラブルさえ呼び込むゆんゆんはもしかしたら本当に呪われているのかもしれない。本人が気付いていないようなのが幸いだ。
「ミツルギお兄さんはカズマお兄さんのことが嫌いなんでちか?」
「そ、そんなことは、ないよ?」
子供故のド直球の質問に歯切れが悪そうに答えるミツルギ。
「それよりもゆんゆん、せっかくだから一緒にクエストを受けないか?そちらの皆さんもどうですか?」
話題を変えようと、合同クエストの提案をするミツルギ。
「え?え~と、私はいいですけど・・・。」チラッ
ゆんゆんはデーリッチとドリントルに視線を送る。
「デーリッチは構わないでちよ?一緒の方が楽しそうでち!」
「妾も構わんぞ。」
というわけで、ミツルギをパーティに加えてクエストをすることになった。
―――――――
~王都郊外~
受けたクエストは街道に近くの岩場に巣を作ったスコーピオン討伐、報酬は1,500,000エリスである。
夕方までに帰ってこれる距離と、そこまで高難度ではない依頼という条件に丁度当てはまったクエストであった。
「スコーピオンとやらはどんなモンスターなのじゃ?」
街を出て、街道沿いを移動しながらドリントルがミツルギに訊ねる。
「スコーピオン単体は尻尾の毒にさえ注意すれば大したモンスターではありません。しかし、虫系モンスターの例に漏れず群れで襲い掛かってこられると厄介なのと、女王となる個体は他の個体よりはるかに大きく固い甲殻を持ち、ある程度の攻撃力がないとダメージが通りません。女王を倒せれば他の個体は生きていけなくなります。」
「要は雑魚が集まらないように露払いをしながら、女王を倒せれば勝ちということかの。」
「そんなところです。」
「では、前列はニワカマッスルを盾役に、ゆんゆんとヴォルケッタが範囲魔法で雑魚を露払い、デーリッチが回復担当。後列はミツルギ殿とマリオンで女王を叩きつつ、妾とはむすけで支援、福ちゃんが回復担当。囲まれないように注意するのじゃ。」
「了解!」
「おう。」
「おうでち。」
パーティメンバーを前列・後列二つに分けた役割分担。8人で1パーティを組むハグレ王国ではお馴染みの戦術である。強敵相手にも前列交代を駆使することで、最低限の損害で戦える固い戦術である。
見た目がアレなのと、数人を除いてレベル20以下というパーティに若干の不安があったミツルギだが、その士気と統率の高さにはベテラン冒険者のそれを感じ少し安心している。
―――――――
~スコーピオンの巣~
「弛緩毒狙い撃ち!」パァン!
「バインド!」
ドリントルが対象の物理防御を下げる弛緩毒を込めた弾丸を撃ち込み、すかさずはむすけがバインドで動きを制限する。
スコーピオンクイーンは瞬間、バインドを解除しようともがき、大きな隙が生じる。
「これでトドメだあぁぁぁ!」
魔剣グラムの加護を受けたミツルギが吼える。飛び上がって上段に振りかぶってからの唐竹割りはスコーピオンクイーンの胴体を真っ二つに切り裂く。断末魔を上げるスコーピオンクイーンは体液を撒き散らしながら崩れ落ち、やがて動きを止めた。クイーンを守っていた雑魚個体も糸が切れた傀儡人形のように動きを止める。
「凄い一撃でしたわね。」キュア!
福ちゃんがスコーピオンクイーンの毒を含んだ体液を浴びたミツルギに解毒魔法をかけながら労う。
「ありがとうございます。冷気魔法だけでなく、解毒魔法なんて高度な回復魔法まで習得されているとは素晴らしいですね。」
「あら、誉めたって何も出ませんわよ?」ニコニコ
「い、いや、そんなつもりでは・・・。アセ」
天然たらしなミツルギだが、別に女性経験が豊富というわけではない。年上の女性には弱いようである。
「お~い!そっちも終わったでちか~?」
巣の入口の方で雑魚の掃討をサポートしていたデーリッチが声をかける。雑魚の動きが止まったので、クイーンの決着がついたと判断し連絡に来たようである。
「こっちも片付いたぞい!そちらへ向かうから待っておれ!」
ドリントルが返事をして入口で合流することになった。
――――――
~王都への帰り道~
「いや~今日も楽勝でちたね~。流石は我らがハグレ王国!」
「こら、デーリッチ!そうやって調子に乗って油断するのがアナタの悪い癖でしてよ!」
さして手こずることもなく、予定よりも大幅に早く、昼前にクエストを完了してしまった一行。いつも通り調子に乗るデーリッチをヴォルケッタがたしなめる。そんな様子を見ていたミツルギが思っていた疑問を口にする。
「そういえば、さっきからハグレ王国って言ってるけど、そういう設定なのかい?」
「ハグレ王国はハグレ王国でちよ?デーリッチが王様なんでち!」
「へぇ~、それは凄いね!」
ミツルギはそういう子供の遊びなのだろうとは思ったが、納得できないこともある。
この子も含めたハグレ王国の戦闘力はちょっと異常なレベルであると言っていい。ドリントルの作戦の下、一緒に前衛を組んだマリオンは上級職であるルーンナイトにしてレベル20を越えていたが、スコーピオンクイーンを相手に単独で圧倒し、先程の福ちゃんに至ってはレベル10そこそこにして高難度の解毒魔法を習得し、更にアークプリーストでありながら冷気の攻撃魔法を使える。外で戦っていたヴォルケッタの魔法はゆんゆんと並ぶ程強力なものだったし、何よりもニワカマッスルの分厚い筋肉がスコーピオンの針を通さなかったのには驚愕した。そしてこの小さな女の子デーリッチがこのパーティの王(リーダー)であるという。
こういうデタラメなパーティには覚えがある。女神アクア様を共にしたサトウカズマのパーティである。しかも彼らと知り合いでもあるという。もしかしたら彼女達も似たような事情のパーティなのでは?と、ミツルギは問いかけようとした。
「ねぇデーリッチ、キミたちはもしかして・・・」
「おいおい、ありゃなんだ!?」
ニワカマッスルが上空を見ながら声を上げる。全員が視線を向けると、上空にクラゲにも似た巨大な影。それがこちらを目掛けて猛スピードで近づいて来ていた。
「突っ込んで来るぞ!避けろ!」
「きゃあ!」「わぁ!」
ズドォーンと、大きな地響きと共に目の前に降り立った巨大なモンスター。ニワカマッスルが察知できたおかげで直撃を喰らった者はいないが、突然の出来事に隊列が乱れ、行動が遅れた。その隙に飛来したモンスターは凍てつく冷気のブレスを放つ。ゴォォォという唸りと共に吐き出された強烈な冷気に防御は間に合わず、全員が大ダメージを受けた。
「リカバー!」
デーリッチが慌てて全体回復魔法リカバーを唱える。先制攻撃で受けたダメージは瞬時に回復され、パーティは体勢を整える。そして信じられないものを見た様な顔した、否、実際に信じられないものを見たミツルギとゆんゆんが敵の攻撃を喰らったことよりも驚いていた。
「ぜ、全体回復魔法!?デ、デーリッチちゃんそんなことできるの!?」
この世界ではレベルが上がりにくいプリースト職は人気が低く、回復魔法を使える者は貴重な存在だ。ましてや高レベルのアークプリーストともなれば冒険者パーティでも王国騎士団でも引く手数多である。ミツルギは冒険者稼業をする中で多くのアークプリーストを見てきたが、全体回復ができるアークプリーストなんて存在しない。敬愛する女神アクア様でさえ、全体回復魔法を使う姿は見たことがない。
「こやつは・・・、クリスタルネウザー!?どうしてこんなところに!?」
ドリントルがモンスターを見据え、見覚えのある姿にその名前を告げる。
「クリスタルネウザー?水晶洞窟で見た?」
「そうじゃ、更には帝都決戦に送り込まれた超大型魔物の中にもいた奴と同じじゃ。」
向こうの世界で出会った魔物がどうしてこちらの世界に?いや、向こうでも異世界から召喚されたのだから、もしかしたらこの世界から召喚されていたのか?
「キミ達はあのモンスターを知っているのか!?」
「話は後じゃ!先ずはこやつを片付けるぞ!」
色々疑問はあるが、取り敢えずこの状況をなんとかしないといけない。ドリントルは全員に指示を飛ばす。
「奴は雷と投擲に弱い!マリオンは近距離、ゆんゆんは中距離からの雷属性で攻撃を!デーリッチと福ちゃんは回復に専念!眠り、毒攻撃は優先して回復!マッスルとミツルギは回復役に攻撃が行かんように守りを重視!奴が空中に逃げそうになったら妾とヴォルケッタで牽制、はむすけは動きを止めるんじゃ!」
「「「おう!」」」
かつてレジスタンスを率いて宇宙海賊と渡り合ったドリントルの指揮能力は高い。過去の戦闘経験から有効な作戦を瞬時に立案し、パーティを動かす。
「大防御!」
「ソードガード!」
ニワカマッスルとミツルギの二枚盾。ST攻撃を主体とする敵には回復役の安定は生命線となる。2撃目のブレス攻撃に備えて、後衛を完全に守る。
「マリオンストライク!」
「ライトニング!」
マリオンは空中を漂うクリスタルネウザーの更に上まで飛び上がり雷を乗せた強襲パンチを放ち、その動きに合わせてゆんゆんは中級魔法のライトニングで支援攻撃を行う。
先制のブレス攻撃で優位になったと思ったら一気に反撃を喰らい一旦距離を取ろうと空中へ飛び上がろうとするクリスタルネウザー。
「シンカーレーザー」
「爆炎ヴォルトントン!」
しかし、それを許さぬ二段構えの陣形。ドリントルは内角高めから低めにえぐり込むようにコントロールされた曲がり落ちる謎のレーザーで浮上を抑え込み、ヴォルケッタが空を飛ぶ謎の豚に乗って上空から押さえ付けるように爆撃。勿論マリオンに当たらないよう、コントロールされている。
四方から攻撃を喰らって混乱したクリスタルネウザーは上に飛べなければ横にと、ニワカマッスル、ミツルギに向かって相手を砕き潰すような猛烈な突進をしてきた。
「ふんっ!」
「はああっ!」
地面が抉れるほど強烈な突進を二人がかりで止める。ガードの上からでも絶大な衝撃。それなりのダメージは受けたが、後衛には届かせない。
「「ヒール!」」
デーリッチと福ちゃんで其々を回復。受けたダメージは直ぐに回復され、再び陣形を整える。
一方のクリスタルネウザーはぶちかましが止められ、大きな隙ができる。
「バインド!」
デーリッチの頭に乗っていたはむすけが、その隙をついてバインドで念入りに動きを止める。
「ライトニング・ストライク!」
完全に無防備となった相手にゆんゆんによる上級雷魔法が頭上から降り注ぐ。
「マリオンストレート!」
トドメはマリオン。一気に間合いを詰め、強力なパンチを叩き込む。クリスタルネウザーはその体を半月状に凹ませながら吹っ飛ばされ、絶命した。
―――――――
「なかなか危なかったですわね。」
福ちゃんがホッとしながら、周囲を確認する。
「まったく!デーリッチがフラグを立てるからですわ!」
「えぇ・・・、デーリッチのせいじゃないでち・・・。」
いわれのない非難を受けるデーリッチだが、少し調子に乗って油断していたのは事実なので、反省はしている。
「ところでミツルギ殿、今のモンスターはこの世界ではよく見るタイプなのかの?」
「この世界?やはりあなた方は・・・。いや、とんでもない。僕も王都でそれなりに冒険者をやっていますが、初めて見ましたよ。こんなのが頻繁に出現したら王都はひとたまりもありません。むしろあなた方にこそ心当たりがあるように見受けられますが?」
「そうじゃのう・・・。何度か戦ったことがあるが、何と説明したらよいか・・・。」
言葉に詰まったドリントルはデーリッチの方を見る。デーリッチは頷いてドリントルに代わって続きを話す。ハグレ王国のこと、異世界のこと、そこで起きた出来事。あまりこの世界の住人に広めるべきではない話だが、デーリッチの人を見る目はミツルギが信用に足る人物として、包み隠さず話すことにした。
「信じられない話だけど、それならキミ達の強さや見たことない魔法にも説明がつく、か。じゃあ、今のモンスターはキミ達の世界から紛れ込んだ可能性があると?」
ミツルギはカズマ同様に自身も転生者であり、異世界の存在を認識している。また、女神アクアやエリスが現世に降臨することを目の当たりにしていることもあり、理解が早い。
「そういう訳でもなさそうなんじゃ。」
「というと?」
「さっきのクリスタルネウザーというモンスターは確かに向こうの世界で戦った相手じゃが、向こうの世界にとっても召喚によって呼び出された異世界のモンスターだったんじゃよ。」
「え?じゃあ、今のモンスターはこの世界に召喚されたきた可能性があるってことかい?」
「そうじゃ。そして奴は妾たちをピンポイントで襲ってきた。ちょっと偶然にしては出来すぎている気がするのう・・・。」
嫌な予感に冷や汗をたらすドリントル。全員同じことを考えたようで一様に緊張が走る。
「まぁ、ここで話していても仕方がないだろう。一度王都に戻ろう。ギルドには僕から報告をして、他の冒険者からも情報を集めることにしよう。キミ達も何か対策を立てる必要があるだろう。」
時間はまだ昼に差し掛かるところ、一行は重い足取りでギルドに戻った。
―――――――
~???~
「アンノウンに向けた大型魔物が倒されたようです。」
白衣を着た研究者と思われる女性が報告を上げる。
「ほう・・・。やはり只の冒険者というわけではないようだな。そいつらの情報は取れたか?」
同様に白衣を着た青年が応える。どうやら青年の方が立場が上であるらしい。
「魔剣の勇者ミツルギの一行が未確認モンスターの存在をギルドに報告したようです。」
「魔剣の勇者か、ならば正面からやりあってはこちらの損害が増えるだけか・・・。」
「いかがいたしましょう?我らが研究過程で手に入れた2本の青色の髪の毛・・・。モンスターや魔族とは違う、他の人間とは異なるイレギュラーな性質はいまだに解析ができておりません。」
「これ以上派手に動いては我々の存在を感付かせることになる。次の計画が動き出すまでは魔剣の勇者の動向を監視しつつ、サンプルの解析を進めておけ。」
「承知致しました。」
白衣の女性は部屋を後にした。
書こうとして困った。マツルギさんの戦い方がよく分からん。