SAO_格闘少女が往く_   作:ALUM

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「シリアス? ……あー、お皿に乗せた後に砂糖をまぶして牛乳をかけるとおいしいやつね」
「それはシリアルだって」ピコン!
「はぅあ!?」

※ゲームマスター(茅場)のセリフがうろおぼえなので若干アドリブが入ります


1st=ログイン=

[新規にIDとパスワードを作成します。 IDとパスワードを入力してください]

 

 

アナウンスとともに入力欄が現れる

 

……今までのゲームは全部同じIDにしてたから、今回も同じにしよう

 

入力欄に焦点を合わせ、IDとパスワードを入力する

 

 

[安全度:A+ これでよろしかったら次に――次にソードアート・オンラインでのアバターを作成します]

 

 

説明してたみたいだけど飛ばしてしまった。 多分、次に行きますって言おうとしてたかもしれないから別にいいか

 

アバターの作成画面が現れた。 アバター名、性別、肌の色、見た目、etc……。 かなり細かく設定できるようになっていた

 

……そういえば劉から、なるべくリアルばれしないようにキャラが現実と似つかないものを選んでっていってたなぁ。 とりあえず、見た目をごく普通の男性にしておこう

 

 

[ありがとうございました。 それでは、ソードアート・オンラインをお楽しみください]

 

「!!」

 

 

作成画面が消え、代わりにそこから光が溢れだしてきた

 

 

 

><><><><><

 

 

 

「……っ」

 

 

目を開けると、いつの間にか旧世の街並みを再現したかのような場所にいた。 そこらじゅうに人がいて、雑談をしたり武器を振り回していたり、みせびらかしていたりしていた

 

 

「…………」

 

 

……試しに、自分の手を握ったり開いたりしてみた。 手からリアルタイムで感触が伝わってくる

 

 

「……お、おおぉ~!」

 

 

すごい、すごすぎる! これが、仮想空間なのか!

 

 

「俺のナイフを見てみろ。 超イカスだろ?」

「だっせえな。 俺のソードのほうがかっけえよ」

「あ?」

「ん?」

「……よし、先にモンスター百匹仕留めたらそいつのほうがかっこいい」

「おっしゃ。 おさき」

「あ、おい」

 

 

すれ違った男二人の会話がこっちに聞こえてきた。 その会話もリアルで聞くようなものと変わらない

 

……コントローラーを握っていた頃は、チャットで会話をしていたけど、今はその場に居て普通に会話をしてる……!

 

 

「…………」

 

 

早速、始めたばっかりな人特有のメニュー画面の確認をする

 

……えっと、私の初期装備は……

 

 

「………………っ」

 

 

……わからなかった

 

 

 

><><><><><

 

 

 

「…………ん?」

 

 

開けー開けー、と数分間、顔半分が前髪に隠れた男性に変な視線を送られながら念じていると右下にボタンらしきものがあった。 とりあえず押してみる

 

 

[ようこそソードアート・オンラインへ。 基本的な操作の説明をします]

 

 

押してみると、無機質な女性の声が頭に響いてきた

 

……ナビゲーションかぁ

 

 

[まずはメニュー画面の開き方です。 右手を上げて下に垂直に払ってください]

 

 

言われたままに行ってみると、メニュー画面が開いた

 

 

「おおー」

 

[以上で終わります]

 

「それだけ!?」

 

 

つい大きな声を上げてしまった。 周りの視線が一気に集まってくるのがわかった。 が、それも一瞬で、すぐに元に戻った。 相変わらずマークしてる感じの男性はこちらを見ているみたいだ。 ……気にしない

 

 

[嘘です]

 

「…………」

 

 

全身の力が抜けた。 その場に膝をついてくずおれた

 

 

「おい、あいつ大丈夫か?」

「叫んだと思ったらがっくりポーズ。 頭、おかしいな」

 

 

……あなたたちにはわからない。 この……言葉で言い表すことのできない空しさを。 ……というか二人目、一連の流れ見て絶対楽しんでいるよね

 

 

[次はソードスキルの説明をします。 これは初動モーションを検知して強力な一撃を放つものです。 剣に限らずにどの武器でも使うことができます]

 

 

初動モーション……構えってことかな

 

 

[それでは早速、街の外に出てボアを探しましょう]

 

 

このナビはちょっとせかし傾向にあるかな

 

気を取り直して立ち上がり、マップを確認すると現在地から門まで線が引かれていた

 

マップを頭に叩き込み、門に向かって駆けていく

 

 

「あいつ、初心者じゃなかったのか」

「もしかしてベータテストプレイヤーじゃない?」

 

 

街の中を駆け抜けている間、そんな声が聞こえてきた

 

……目的意識のある動きが初心者っぽくなかったかな

 

門の外に出るとマップの線が更新され、新たに街の外へと線が引かれていった

 

 

「…………」

 

 

すごい親切な設計だ

 

 

「……」

 

 

……線が途切れて点になっている部分にいるのか。 ……ちょっと遠いから、メニュー画面弄っていこ。 えっと、私の初期装備は……剣か。 ……外そ

 

 

[初心者のくせに武器を外してしまうとは……愚かですね]

 

「は!?」

 

 

……ナビゲーションにそんなことを言われるなんて……今までの人生の中で初めてです

 

 

またしてもどこか遠くに飛んでいった気を取りにいって、メニュー画面を弄りながら走っていると、目的地についた。 そこにはイノシシがたくさんいた。 頭の上に『Inoshishi』と表示され、HPバーがその下にあった

 

 

[それではソードスキルを使ってボアを倒してください]

 

「はいはい」

 

 

どれにしよう……一番近くにいるちょっと大き目のやつでいいか

 

右足を後ろに下げ、イノシシに対して身体を真横に向けた状態になり、足を開いて腰溜めに深く構える。 数年前に通っていた道場で習った基本的な技の一つ、『掌底』。 これがイノシシに効くかどうかはわからないけど、ソードスキルを発生させるにはいいはず

 

 

[それではソードスキルを使ってボアを倒してください]

 

「いや、わかってるから」

 

[それではソードスキルを使ってボアを倒してください]

 

「…………」

 

 

……新手のいじめを垣間見た

 

地中奥深くに沈んでいった気を掘り起し、目の前にいるイノシシを見据える

 

少し間を置いた後、一気に地を蹴り距離を詰める

 

 

「はぁあああっ!!」

 

 

そして、右手を突き出してイノシシに思いっきり押し込む

 

 

「■■■■ーーー!!」

 

 

断末魔の叫びを上げながら、イノシシが遥か彼方へと吹き飛んでいった

 

 

「よし!」

 

[EXP:200x1.5 Col:2000x1.5]

[Level Up!! 1 → 5]

 

 

リザルト画面が表示される

 

 

「おお!」

 

[last Attack Bonus!!: コットナックル]

 

 

……ラストアタックボーナス?

 

「……ん?」

 

 

コットナックル? ゴッドじゃなくて?

 

装備欄に入っていたコットナックルを詳しく調べてみる

 

 

[コットナックル: 攻撃力+60 全ステータス+50%]

 

「パロのくせに強すぎるでしょおお!?」

 

「うるさい!!」

 

「いたっ!」

 

 

背後から声がして振り向く前に、頭頂部に鈍い痛みが走った。 半ば涙目になりながら振り向くと、そこには艶やかな黒髪の男性がいた

 

 

「……っ!」

 

 

端正な顔立ちに、アバターだということをすっかり忘れてドキッとしてしまった

 

 

「近所迷惑だから気を付けて」

 

「はい」

 

 

……もしかして、不可解な出来事に頭を悩ませるってこういうことだったのかな。 チート武器なんて、健全プレイヤーからすれば諸刃の剣。 ……あ、使う場所を間違えなければいいじゃん。 そんなに悩むことじゃなかった

 

それにしても、こんなチート武器を野放しにしておいてもいいんだろうか……とりあえずリアルに戻って、私にとっては恒例になりつつある『運営に問い合わせ』をしなくては

 

 

「さっきイノシシが飛んできたんだけど、吹き飛ばしたの君?」

 

「え? あ、はい」

 

 

急に聞かれて、口調がしどろもどろになってしまった

 

 

「あの後エリア外に落ちて消滅したよ」

 

「そっちに飛ばしてしまったんですか……ぶつからなかったですか?」

 

「上の方を通っていったからなんともない。 あんな巨体を吹き飛ばすなんて結構な使い手だろうね」

 

「は、ははは……あ、一旦落ちますね」

 

「はいはい、どうぞ」

 

「……また、会えますかね」

 

「このエリアの端にいるから行けば会えるよ」

 

「じゃあ、また今度」

 

 

そう言ってログアウトボタンを押すと、光に包まれていった

 

 

「…………?」

 

 

完全に包まれる前に、遠くの方で少女がこちらをみつめているのが見えた

 

 

 

 

><><><><><

 

 

 

それから数日後、正式サービスが始まる日の十一月六日

 

 

「お姉ちゃん、またSAOやるの?」

 

 

自室に戻ろうとすると、リビングで新聞を読みながら劉が聞いてくる

 

……相変わらずのおっさん臭さ。 ……こうなってしまったのは私が時事ネタに疎いから。 ほんとに申し訳ないです

 

 

「ちょっとはまっちゃった」

 

「お姉ちゃん、それ、前のゲームでも言ってたよね?」

 

「言ってたっけ?」

 

「うん。 『このゲームすごくはまった。 お金ざっくざく手に入るしそれでトレード楽にできるから超楽しい』って」

 

「あー。 それ結局、劉が改造パッチあててたのが判明したんだよね」

 

 

そのことでアカウントを預けて調べてみても、正常だって言われたんだよね。 どんなパッチを作ったんだか

 

 

「素早さだけしか上がらなかったけど……結局のところどうだった?」

 

「制限時間ぎりぎりでボスを倒すっていうハラハラするようなプレイの連続で、そのころは抜け毛が多かったね。 ダメージ勝手に回避されるからひたすら殴ってたよ」

 

 

あの時ははげるんじゃないかと本気で思った

 

「抜け毛が多かったなんて初耳。 SAOの時はそうならないでよ?」

 

「はいはい。 身体放棄してフルダイブするからならないよ。 それで、劉は買わないの?」

 

「魔法使えないっていうから買わない。 使えたら買う」

 

「残念。 一緒にプレイしたかったなぁ」

 

「次作に魔法が出たら買うよ。それまで我慢」

 

「……じゃあSAOやってるからね」

 

 

自室の扉に手をかける

 

 

「ねえ、この茅場晶彦って人……なんだか顔つきが悪そうだね。悪人面によくありそう」

 

「…………もしかしてプレイしたいの?」

 

「まさか! そんなわけないじゃん」

 

「そう?」

 

 

自室に入り、扉を閉める

 

……さて、早速ログインだ

 

ナーヴギアを手慣れた手つきでかぶり、SAOのディスクが入ったハードの蓋を閉め、電源を入れる

 

 

「…………」

 

 

ベッドに仰向けに寝転がり、十分にリラックスしてから接続を開始する

 

……今は、十時五十九分。 お昼は早めに済ませてきたから問題ない

 

目をつぶり、きりのいい時刻……デジタル音が鳴るのを待つ

 

 

「…………」

 

 

ピッと短い音がし、十一時になったことがわかった瞬間接続が完了して目の前が明るくなり、ログイン画面が現れた。 いつものように言語と設定、IDとパスワードを入力して、光に包まれていく

 

 

 

><><><><><

 

 

 

目を開ければ、そこは見慣れた街の中の景色だった。 体の感触を確かめると、かすかに頬が緩んだ

 

……戻ってこられた。 この世界に

 

早速、待ち合わせている場所に向かう。 その前に、マップを表示してナビゲーターを指定の場所に設置する

 

 

「さて、いくとしますか」

 

 

街中を駆け抜けていき、目的地まで疾走していく

 

……この街から目的地まで意外と遠いけど、あの人はなぜかすぐにこられたんだよね。 どんな鍛え方したらそんなに早く走れるんだろう

 

そんなことを考えていたら目的地に着いた。 崖の淵に、いつものように腰掛けている男性の姿がそこにあった

 

 

「おーい」

 

 

呼びかけると反応してこちらを向いた

 

 

「あー……きたか」

 

「なんですかその反応は」

 

「別に嫌だから言ってるわけじゃないよ」

 

「ならいいです。 今日は正式サービス記念日ということで魔物狩りをしましょ」

 

「いいよ。 この辺りを探索し尽して、お金を貯めたいと思っていた頃だったから」

 

「……今日……正式サービスの日ですよね?」

 

「足が勝手に動いたんだ」

 

「……じゃあ行きましょ」

 

 

いつものあのイノシシがいる狩場へとナビゲーターを表示させる

 

……このナビゲーター。 なぜかわからないけど私だけらしい。 聞いてみたら『そんな便利な機能をなんでつけてくれなかったんだ』ってぼやいてたよ

 

歩いている最中で装備欄に表示されている『コットナックル』の評細を見てみた。 ……そこには堂々と『ゴッドナックルはパロ武器です。 なので能力はオリジナルの半分です』って書かれていた。 ……公式がちょっとおかしいよ

 

メニュー欄を弄っているうちに目的地に着いた。 なんだかイノシシの数が前よりも多い気がする

 

 

「さて、鈍った身体をほぐす時間だ」

 

 

背中を押される

 

 

「え?」

 

 

後ろを振り向いた

 

 

「行ってこい」

 

 

にこやかにそう告げてきた

 

 

「…………」

 

「あのーあなたは……」

 

「十分なくらい体を動かしたから」

 

「はい……」

 

 

前に向き直り、目の前の少し大きなイノシシを見据え、腰溜めに深く構えた

 

……今度は別の技を試してみようか

 

イノシシをじっくり観察し、急所を探る

 

……『点穴』。 リアルで、達人が岩に向かって放てば砕くことができると言われている技。 サンドバッグ相手に練習させられたけど、先生が見本でサンドバッグを鎖ごと吹き飛ばしちゃったからろくに練習できなかったんだよね……。 ……ドヤ顔の後に出てきたものすごい焦り顔はいまだに忘れられない

 

そんなろくに練習できなかった技を今、目の前にいるイノシシ相手に繰り出すわけなんだけど……ちゃんとできるかな

 

 

「そういえば、物飛ばすときはシステムが狙いを補正してくれるらしいんだけど、なんか気でも飛ばすの?」

 

 

集中している間に訊かれる

 

……物は飛ばさないけど、イノシシなら飛ばすかな

 

 

「正拳突きをお見舞いします」

 

 

……正しくは点穴だけど

 

 

「はいはい」

 

 

……読まれた?

 

 

「はぁー……」

 

 

息を整え、じっくりとイノシシを観察する

 

……先生は確か、『内臓に一番ダメージを与えられるところが急所』だって言っていたっけ。 それならイノシシの身体だと、横腹あたりかな

 

 

「…………」

 

 

少し間を空け、足に徐々に力を入れていく

 

 

「お、くる?」

 

 

くるんです

 

 

「……っ!」

 

 

地面を思いっきり蹴り、一気に距離を詰める

 

 

「はぁあっ!!」

 

 

加速した分を右手に乗せ、イノシシの脇に叩き込む

 

 

「■■■■■ーーーー!!!!」

 

 

どこか聞き覚えのあるような断末魔の叫びをあげ、またしても遥か彼方へと飛んでいった

 

……ゲームだから同じか

 

 

「……今のは点穴?」

 

「なんで知ってるんですか?」

 

「知っているだけ。 やろうと思えばできるけど武器があるからな」

 

「…………」

 

 

さいですか……

 

知っていることはスルーしてリザルト画面を見る

 

 

[EXP:300x1.5 Col:2000x1.5]

[Level Up!! 5→10]

 

 

「大量だな」

 

「ですね」

 

 

[Last Attack Bonus!! : コットナックル]

 

 

……まただ。 またこの武器だ

 

 

「コットナックル……? ゴッドナックルじゃなくて?」

 

 

……私と同じような思考をした人がここに一人

 

 

「コットみたいです」

 

「仕様かな」

 

「見てみましょう」

 

 

[コットナックル:攻撃力+60 全ステータス+50%]

 

 

「……やっぱりー?」

 

「前に叫んでいたのはこれだったか」

 

 

そうなんですよ……

 

 

「流石に50%も上がるのはバランスが崩れるな」

 

「また運営に報告してきますね」

 

 

そう言ってメニューを開き、ログアウトボタンを探す

 

 

「……あれ?」

 

「どうした?」

 

「……ない」

 

「問い合わせボタンが?」

 

「違います。 ログアウトボタンがです」

 

 

話しの流れ的に問い合わせボタンって思っても仕方ない……のかな

 

……それよりも、本来存在するはずの場所にログアウトボタンがなく、代わりに真っ白なボタンが置かれていた

 

とりあえず、押してみるものの無反応だった

 

……運営はいったい何をしているの? フルダイブしてるのに出られなくなっちゃったんだよ?

 

 

「ログアウトボタンなら、入ったときにはもうなかったよ」

 

「え?」

 

 

その一言に衝撃を受けた

 

 

「暇だったからメニュー画面を開いていたんだけど、消える瞬間をばっちり目撃した」

 

「…………」

 

 

運営さん……わざとやったんですか

 

 

「まぁ、いいじゃないか」

 

「どのへんがですか?」

 

「ファンタジーな空間で生活できる」

 

「現実の身体はどうするんですか」

 

「病院で栄養剤を補給しているだろうな」

 

 

病院のベッドの上で管につながれたまま目を覚まさない自分の姿を想像した。 そして、眠っている自分に対して特にリアクションを見せない劉の姿も容易に想像できた。 ……そういえば劉は何気に根が強いから、ちょっとやそっとの出来事じゃ揺さぶられなかったんだよね。 メンタル強すぎです。 どんな死地を潜り抜けてきたのかすごく気になる

 

 

「今すぐナーヴギアをとれないんですか?」

 

「無理に取ろうとしたら、神経にジャックするために照射しているマイクロウェーヴが脳を瞬時に焼くよ」

 

「じゃあ、電源が切れるまで待つとか」

 

「内臓バッテリーがあるし、気づくまでケーブルにつながれているよ」

 

「…………」

 

 

……劉、気づいてくれるかな。 ナーヴギアの構造を把握してるみたいだから無理やり外すことはないかな。 それどころか、起動中にも関わらずパッチをかぶせてくるかも

 

 

「始まりの街の鐘が鳴るまであと少し、か。 それまで狩りをしよう」

 

「どうしてですか?」

 

「止まっていても仕方がないからだよ」

 

 

まぁ……たしかに

 

 

「それにこの事実は多分、鐘が鳴ると同時に知れ渡ると思う。 そうなったら、このゲームの最終目標である最上階到達のために、このあたりのモンスターたちはあっという間に狩りつくされる。 そうなったらレベル上げは困難だ。 だから今のうちに狩れるだけ狩っておく」

 

「そうですね」

 

 

出来る限りのことをしないと。 やれるのにやらないなんて駄目だ

 

……と、いうことで早速、MMORPGの初歩の初歩であるパーティ編成を……

 

 

「パーティ組んでもらえます?」

 

「一緒にいるとそっちの経験値が大幅に下がるから一人で狩ろう」

 

「え……」

 

「……じゃあ、申請送る」

 

 

そう言うと、こっちに加入画面が飛ばされてきた。 それに同意すると、自分のHPバーの下に一つ新たに加わった

 

 

「Feast……フィーストさん?」

 

「フィーストでいい。 そっちは……Godless Moon……神無月でいい?」

 

「よ、よくわかりましたね……」

 

 

今までのMMOでずっと使い続けてきたニックネーム。 自分の名前に月を付けただけのシンプルな名前。 ……劉には『ツキガマワッテキター』っていう風に捉えられたけど

 

 

「大体呼ばせるには呼びやすいものが普通だよ。 神無でいい?」

 

「それでいいです」

 

 

リアルばれ。 名前が

 

 

「それで、名前の横を見て」

 

「えっと……」

 

 

[Lv:54 HP:13402/15554]

 

 

「どんだけここでレベル上げてるんですか……」

 

「正式サービス開始と同時に速攻でボアを倒しまくって十時間。 倒した数は数十万に上るよ」

 

「どんだけ倒してるんですか。 リアルのあなたはものすごく精神力があるんですね」

 

「……まぁ」

 

「……?」

 

 

何か言ってはいけないことを言ってしまったかな……

 

 

「あー……気にしないで。 大したことじゃないから」

 

「そうですか……?」

 

「で、これでなんとなくわかった?」

 

「レベル差補正ですね……」

 

 

ものすごく邪魔な存在、レベル差補正。 これのせいでソロで+50の敵を倒した時は70%しかもらえなかった

 

 

「フレンド登録しておこう」

 

「……あ、はい」

 

 

その手があった

 

 

フレンド申請を受け取り、同意すると、フレンドリストにフィーストが加わった

 

 

「それじゃあ、五時の鐘が鳴るまで分れて狩ろう」

 

 

そう言ってフィーストがその場から瞬時にいなくなってしまった

 

……りょ、了解です。 さて、このあたりのモンスターは……

 

周りを見てみれば、辺り一面イノシシイノシシINOSHISHIだった

 

 

「…………」

 

 

コットナックルを装着し、付け心地を確かめる

 

……グローブを付けたような感覚がバーチャルなのに直に伝わってくる。 金属がついてるから重いかと思ったけど、見た目に反してすごく軽い

 

 

「……よし!!」

 

 

鐘が鳴るまでの間に目標、七百七十七匹討伐だ。 まずは目の前にいる奴から……!!

 

 

 

><><><><><

 

 

 

「九百九十六……九百九十七……九百九十八……」

 

 

……一向に鐘が鳴りません。 確か、鐘の鳴る時刻は正午と午後五時だったはず

 

ゲーム内の時刻を確認してみる

 

入ってきたときは十一時だから、プレイ時間は……ない?

 

 

「…………」

 

 

頑張って時刻を逆算してみる

 

大体入ってからログアウトできなくなるのを知るまで、多分二十分くらい。 普通のMMOだと五百倒すのにおよそ二時間くらいかかる。 それで、少し前に鐘が鳴った。 ……ということは今は四時半くらいになるのかな

 

 

「…………あ」

 

 

そういえばフィーストが何時の鐘とか言ってた気がする。 何時だったかな。 ……待ち合わせしてないから五時かな

 

 

「…………」

 

 

五時って言っていた気がする。 なら、後三十分だ

 

右に居るイノシシを吹き飛ばし、左に居たイノシシにぶつける。 そして、まとめて空のかなたに送り届ける

 

 

「千……!!」

 

 

……鐘が鳴らないせいで目標の七百七十七を大きく上回ってしまった。 ずっと動き回っていたのに疲れが全然こない。 逆に体が前よりも軽くなっている気がした

 

 

「ふぅ……」

 

 

コットナックルを外し、近くの岩に腰掛ける

 

 

「……っと」

 

 

そうだ、入手したものを見てみよう

 

メニューを開き、装備欄を開く

 

 

「…………」

 

 

入っている物を見て顔が引きつってしまった

 

 

[『コットナックル』『コットナックル』『ますたーあーむず』『コットナックル』『ゴッドナックル』『ますたーあーむず』『求道者の外嚢』『コットナックル』『コットナックル』『アブセントクロス』『ものすごくつよいこぶし』『ものすごくつよいよろい』『クロムリュミエール』『求道者の外嚢』『ヒュペリオンリガート』『コットナックル』『あるてぃめっとなっくる』『ねこぱんち』『ただのくつ』『HI☆NO☆KI』etc...]

 

 

……な、なんなんだこのラインナップは。 『ますたーあーむず』が『コットナックル』より5%ほど性能がいい。 そして、『ゴッドナックル』。 ついにモノホンきたー!! 能力が『コットナックル』の二倍、つまり全ステータス100%!! 最初の第一階層でこんなに強いものがきていいのだろうか……いいに決まっている!! 今まで命中率とか回避率とかしか割り振れなかったせいで全然攻撃が通らなくてもっさりしていたバトルが、『爽快痛快大喝采!!』できるようになる! ……それで『求道者の外嚢』は……見た目が渋そうな感じだ。 ステータスは……反応速度+20? よくわからないから保留

 

 

「……ん~」

 

 

目がしょぼしょぼしてきた

 

……それで次は『アブセントクロス』か。 見た目は……完全に女性が着るような代物でした。 まるで、中身を完全に把握しているようなドロップ。 ……劉……まさかね

 

 

「…………」

 

 

『ものすごくつよいOO』シリーズ。 もう運営はふざけてるよね。 『こぶし』のほうは攻撃力カンストしてるし、『よろい』のほうは防御力がカンストしてるし自動回復力に+2000ついてる。 ……これはもうシステム的に倒すのは不可能ですよね~

 

 

「……?」

 

 

あれ? ここにも『求道者の外嚢』が。 フィーストにあげよ

 

それで、『クロムリュミエール』と『ヒュペリオンリガート』は……剣のアイコンと槍のアイコンと両端にに刃がついたアイコンがいっぺんについてる……こんなの初めて見た

 

取り出して見てみる

 

 

「…………」

 

 

……見た目は至って変わらないみたいだ。 『クロムリュミエール』のほうは湾曲した二つの刃が真ん中で重なり、その間からまっすぐに両刃の刃が伸びていた。 『ヒュペリオンリガート』は長くてギザギザした刃が出ていた

 

試しに持つところを互いに近づけてみる

 

 

「……!!」

 

 

近づけると持つところが変形していき、長くなって二つの剣がつながった

 

両端に刃が付いた武器……ダブルブレードじゃん。 よくよく思い返してみれば、前にやってたMMOでそんな武器使ってる人がいたっけ

 

 

「…………」

 

 

この武器、棒術みたいなものかな。 真ん中持って振り回せばなんとかなりそう。 いざとなったら殴る蹴るでどうにかなるよね

 

 

「…………」

 

 

そして、また、顔がひきつった

 

 

[『あるてぃめっとなっくる』『ねこぱんち』『ただのくつ』『HI☆NO☆KI』]

 

 

『あるてぃめっとなっくる』……なぜ、カタカナにしないんですか。 性能みたけど、『ものすごくつよいこぶし』に全ステータス+200%も付与されてますよ? 後、振るうとぎゃおおぉ!!ってなんですか? それと『ねこぱんち』……攻撃力、自動回復力、反応速度、共に三桁超え。 ……見た目に惑わされるなとはまさにこのこと。 そして『ただのくつ』。 ……本当にただのくつでした。 最後に『HI☆NO☆KI』。 ……つまり『ひのきのぼう』ということですか。 殴ると固定ダメージ千で、千回復するのか。 ……それ、本当に『ひのきのぼう』なんですかね……

 

 

「はぁ……」

 

 

後は全部既出か……目が少し疲れた

 

 

「…………ん」

 

 

気づけば空は茜色になっていた

 

……幻想的な夕日。 今までのゲームでは絶対味わうことのできない、限りなくリアルに近いバーチャルの景色。 ……リアルでもそれなりに綺麗な夕日なのに、それがグラフィッカーは何を思ったのかさらに美しく仕上げた

 

 

「…………」

 

 

……このゲーム、高いお金を出してまで買う価値があった。 それがたとえログアウトできなくなってしまっても

 

 

「……!!」

 

 

カラン、と遠くで鐘の鳴る音がする。 装備を初期装備に戻していると、光に包まれた

 

 

 

 

><><><><><

 

 

 

気が付くと、始まりの街の広場にいた。 私だけじゃなく他の人たちも次々と光から現れてくる

 

 

「どうなってるんだよ、これ」

「あと一歩で倒せたのに……」

「いきなり転送すんなよ。びびるじゃねーか」

 

「神無!」

 

 

周りが騒々しい中、自分の本名を呼ばれた。 呼ばれた方に振り向くと、フィーストがこちらに駆け寄ってきた

 

 

「大丈夫か?」

 

「なんともないです」

 

「なら、よかった。 どうやら全プレイヤーがここに集められたらしい」

 

「そのようですね」

 

 

周りを確認しながら相槌を打つ。 気が付けば、広場にほぼぎゅうぎゅう詰めになるぐらい多くなっていた

 

 

「神無、あれ」

 

 

フィーストが空のある一点を指差す。 そこには『システムアナウンスメント』と書かれたパネルが点滅していた

 

 

「……!」

 

 

そのパネルが一気に増殖していき、空を真っ赤に染め上げていった。 そこから赤い液体がこぼれていき、巨大な人影を形成した

 

 

「プレイヤーの諸君、ソードアート・オンラインの世界へようこそ」

 

 

……どうも、ありがとうございます

 

 

「私はゲームマスターだ」

 

「ゲームマスターが直々に?」

「怖いです」

「安心しなよ。 僕がついてる」

「…………」

 

 

……ゲームマスターが直接くるのは珍しい

 

 

「さて、早速だが、諸君らのメニュー画面から既にログアウトボタンがなくなっていることに気付いている者がいると思う」

 

 

はい

 

 

「これはバグではない、仕様である」

 

 

……え? バグじゃない?

 

 

「バグじゃないって」

 

「よかったな。 運営に問い合わせる必要がなくなったぞ」

 

「……いいの? ……いいのかな」

 

 

よくわからなくなってきた

 

 

「諸君らのアイテム欄に、私からのプレゼントを用意しておいた」

 

「…………」

 

 

アイテム欄を見てみると、大量の回復薬とテレポクリスタルの中、手鏡というアイテムが入っていた。 それを取り出してみてみる

 

 

「うわっ!!」

 

 

手鏡が光り出したかと思うと、目の前が光に包まれていった

 

 

 

><><><><><

 

 

 

「……っ」

 

 

頭が少しくらくらする。 ……何が起こった……?

 

 

「…………!」

 

 

身体を確認してみると、腕がいつになく細い。 そして胸が出ていた

 

 

「……かん……な?」

 

「え?」

 

 

呼ばれて振り向くとそこには、肩につくかつかないかくらいの艶やかな黒髪の女性がいた

 

 

「……もしかして……フィースト?」

 

「そう……だけど……」

 

 

……いや、本当に訊くべきことは……

 

 

「「女だったの!?」」

 

 




点穴というのでテイルズを連想した方、あなたは最高のテイルズファンです(多分)

フィーストの意味は宴です。 ……はい。 つながってしまいました。 IFとして、別の作品から連れてきました。 勘が鋭い人は誰が来たのかすぐにわかります

コットナックルのネタは実際に遭遇したものです。 フレンドがトレードで通常武器を魔改造してやったぜアピールをしていたので、評細を見てみたら、全ステータス+200%って書かれていたんです。それと、一緒にモンスターを狩りにいったときに普通なら2%くらいのものがバンバン出てきたんです。 結局それは運営にばれてフレンドはBANされてしまいました。 ちなみにその友人は他作品で立ち絵を描かせている「アレミィ」です

ぎゃおおぉ!! のネタはPSP2の振るときに若本ボイスで叫ぶ武器からです。 オンラインでやってるときにルームメンバーがそれを使ってて腹が捩れました

P.S 第一話で店の前の方に並んでいたニット帽をかぶった女の子を神奈に見立てたらしっくりきた
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