SAO_格闘少女が往く_   作:ALUM

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時間軸:キリト達が森に入った頃


2nd_アドベンチャー_

「このゲームから抜け出せなくなって、ライフがゼロになると死ぬと言われたあの日から早、三か月……」

 

 

どんよりとした空気が辺りを包み込む

 

 

「[Godless Moon]が、実は私と同じように性別を偽装していたと知ったあの日から早、三か月……」

 

 

そんな空気なんてなかった……。 ……なんてことをしてくれるんだ

 

 

「真似しないでよ……」

 

「どちらかといえば、死ぬというよりも[Godless Moon]が女の子だったということに衝撃を隠せない」

 

「衝撃を受けるものが違くないですか? というか、読み方知ってるのにわざわざそっちで呼ばないでください。 煽りということで運営に訴えますよ?」

 

「どうやって?」

 

「…………」

 

 

……空から突然現れたゲームマスターによって、姿をリアルの自分に変えられたついでに、このゲームは遊びじゃありませんよー、ライフがゼロになると死にますよー、無理やり外した人とかモンスターに倒された人とかもう死人が出てますよー、と言われてから三か月が経った。

初めの一週間は、秀麗眉目な男性だと思っていたフィーストが実は女性だったということに衝撃を受けて、しばらく茫然自失してました。 ……あの胸のときめきを返してほしいです

 

そんな私たちは今、拠点としている一つの宿屋の部屋にいる。 この宿屋はそれなりに大きくて二階建てになっており、私たちのいる二階部分の部屋の他にも何部屋かあった。今は十一時、周りが騒々しいです

 

 

「もうそんな時間なんだ……」

 

「ぼーっとしてればあっという間に過ぎていくのよ。 とりあえず下に降りようか」

 

「はいはーい」

 

 

部屋から出て下に降りると、そこはバーになっていた。 RPGゲームには必ずといっていいほど存在するおなじみの光景だった

 

 

「まだ一層を攻略できてない?」

「仕方ねえだろ。 討伐隊が十分に編成されていない状態で行って返り討ちに遭って死んじまってるんだからよ」

「ボスは確か………ルインコボルトとルインコボルトjrだったか。レベル上げれば余裕じゃないのか?」

「お前……ガイドブックもらってたのか」

「…………」

 

 

人が混み合っていて、とても賑やかでした

 

 

「賑やかなところはあまり好きじゃない。 外に出よう」

 

「えー……」

 

「いいから」

 

「はーい。……あ、待って」

 

 

しぶしぶ宿屋から外に出る。 そこからフィーストの後を追いかけるように町の中央広場に行く

 

 

「そういえば、神無」

 

「はい?」

 

 

モニュメントの前まで来ると、フィーストから話しかけられた

 

 

「スキルポイントとかちゃんと割り振ってる?」

 

「スキルポイント?」

 

 

そんなの……このゲームにもあったんだ

 

 

「説明書、ちゃんと読んでる?」

 

「…………♪」

 

 

にっこりスマイルで取り繕う

 

……読んでません

 

 

「レベルが上がればポイント入るから、ちゃんと分けておきなよ」

 

「はい」

 

 

メニュー画面を開き、スキル画面に移行する

 

 

「えっと……」

 

 

スキルポイントの表示は、たしか右下だったはず

 

 

「…………」

 

 

[SP:53]

 

 

……結構溜まってた。 さて、何に割り振ろう

 

基本スキルは……採集、探索、採掘、鍛冶、料理。 武器スキルのほうは……剣、槍、盾、刀、斧、投剣、体術か。……あれ、ダブルブレードは?

 

とりあえず、基本スキルからポイントを振ってみる

 

 

[採集:master 探索:master 採掘:master 鍛冶:master]

[NewSkill Unlocked!!:追跡 望遠 隠密 聞き耳 透視]

 

 

「な、なんか新しいスキルが出てきました」

 

「基本スキルは役に立つものばかりだから、取得しておきなよ」

 

 

どこからか取り出した大剣を見ながら、フィーストが言った

 

……うん、確かに前のゲームでは役に立つものばかりだったよ。 でも、あの時は攻撃が全部1しか当たらなかったから、多段ヒットするものを優先的に選んで、基本スキルにはほとんど割り振らなかったけど

 

 

「…………」

 

 

[追跡:master 望遠:master 隠密:master 聞き耳:master 透視;master]

 

 

この追加されたスキル……忍者になれとでもいうのか。 ……と、それはおいといて、次は武器のスキルを上げてこう

 

 

「…………」

 

 

とりあえず、それぞれに割り振っていく

 

 

[剣:master 槍:master 盾:master 刀:master 斧:master 投剣:master 体術:master]

[NewSkillUnlocked!!: ダブルブレード]

 

 

「…………」

 

 

そういうふうに出てきますか……

 

 

「…………」

 

 

[ダブルブレード:master]

 

 

うん、これで一通り終わったかな

 

 

[All Skill Unlocked!!]

 

 

あ、はい。まだなんかあるんでしょうか

 

 

[NewSkill Unlocked!!: チート]

 

 

「待って!?」

 

「?」

 

 

思わず声を出してしまった。 幸いにも、近くには人がいなかったからよかった

 

おかしい。 何、チートって……。 全部習得したらチート使えるようになるとか……それってゲームとしてどうなの!? って聞きたくなる

 

 

「どうしたの?」

 

「なんかチートが使えるようになりました」

 

「へー……」

 

 

な、なんかリアクションが薄い……

 

 

「どんなチートが使えるようになったの?」

 

「あ、えっと……」

 

 

試しにチートと書かれたボタンを押してみる

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

何も起こらなかった

 

 

「……何もないね」

 

「…………」

 

 

チャリン

 

近くで聞き覚えのある音がした

 

……これは、硬貨の落ちた音……!

 

音がしたほうへ向くと、予想した通り一枚の硬貨が落ちていた

 

……あれ? ソードアート・オンラインには、ポイントがお金代わりだから硬貨なんて存在しないはず

 

 

「……」

 

 

とりあえず拾ってみると、メッセージ欄が現れた

 

 

[残念だったな。 それは偽物だ]

 

 

「……」

 

 

無言で仕舞う

 

……所詮、チートだったよ

 

 

「…………ん?」

 

 

[SP:53]

 

 

なぜかポイントが減っていなかった。 ……もしかして、チートの影響?

 

 

「ステータスポイントのほうもちゃんとやっておきなよ?」

 

「あ、ハイ」

 

 

スキル画面を閉じ、ステータス画面に移行する

 

 

「……」

 

 

そこに映っているものを見て、性別偽装の時よりは低い衝撃を受けた

 

 

「……どうかした?」

 

「見てもらえればわかります……」

 

「ん……?」

 

 

フィーストが覗く

 

 

[StPt:999]

 

 

StPt……つまり、能力値を上昇させることができるボーナスポイント。 それがなぜかカンストしていた

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「は……はは……」

 

「…………」

 

「えーっと……」

 

「…………」

 

 

なんで黙っちゃうの!?

 

 

「チートの件も相まって……消されるな、これは」

 

「え……?」

 

 

全身に寒気が走った

 

 

「……冗談だ。 本気にするな」

 

「……」

 

 

冗談には聞こえませんでした……

 

 

「ラッキー、ってことで使ったら?」

 

「そ、そうします……」

 

 

攻撃力の横の矢印がついたボタンを押す

 

 

「…………?」

 

 

反応がなかった

 

……ちゃんと押してないだけかな

 

もう何回かボタンを押す

 

 

「…………」

 

 

けれども数値は上がらなかった

 

 

「どうかした?」

 

 

困っていると、フィーストが訊いてくる

 

 

「攻撃力を上げようとしてもボタンが反応しません……」

 

「他のステータスも試してみたら?」

 

「はい」

 

 

防御力の横のボタンを押してみる。 ……駄目だった

 

 

「…………?」

 

 

反応速度というステータスがあった

 

……なんだろう、これ

 

 

「これってなんですか?」

 

「それは……簡単に言ってしまうと、高ければ高いほど集中しているときに周りが遅く見える」

 

「へぇー」

 

 

反応速度の横のボタンを押してみる

 

 

「……!」

 

 

数値が一つ上がった!

 

 

「上がった!」

 

「よかったね」

 

「はい」

 

 

反応速度の下にある素早さの横のボタンも押す

 

 

「…………」

 

 

反応がない

 

 

「……気づいたこと言ってもいいですか?」

 

 

素早さの横のボタンを連続で押しながら言う

 

 

「はいどうぞ」

 

「……いくら反応速度が高くて周りが遅く見えていても、素早くなかったら普通に戦ってるのと変わりませんよね?」

 

「たしかに……向こうがこっちよりも早かったら遅く見える意味がないね」

 

 

フィーストが大剣の柄を見ながら言った

 

……そういえば、フィーストが戦っているところを見たことがない。 モンスターに出会ったときは全部私一人で倒してるから今度見てみたいな

 

 

「そういえば……神無は今、レベルいくつ?」

 

「え? えっと……」

 

 

ちょうどステータス画面を開いていたので、レベルを見てみる

 

 

[Lv:55]

 

 

「…………」

 

 

リアルの姿になる前に、五時間ほどイノシシ狩りをしていた結果がこれだよ。 この姿になってからは、イノシシじゃなくてボアってやつが現れて、経験値まったくもらえなくなったけど

 

 

「五十五です」

 

「とうとう並んでしまったか……」

 

 

残念そうにフィーストが呟いた

 

……ということは……

 

 

「私も五十五だ。 あれから一しか上がらなかったよ」

 

「ボアってやつを狩ってですか?」

 

「そう。 十二しか経験値をくれないからかなり苦労したよ」

 

「そ、そうですか……」

 

 

驚異的な精神力に……敬礼

 

 

「…………」

 

 

さっきから素早さの横のボタンを押しているけど、一向に反応しない。 ……まさか反応速度の速さだけで戦えってことじゃないよね

 

 

「……あ」

 

 

ボタンを連続で押していると、数値が一つ上がった

 

 

「上がりました」

 

「よかったね」

 

「はい。 ……でも、この二つだけです」

 

「自己再生されたら終わりか」

 

「そうでもないです」

 

 

私には……『ものすごくつよいこぶし』という名の、見た目が拳になっているおかしな性能の武器を持っているから

 

 

「…………」

 

 

反応速度と素早さだけか……。 なんか……どこかでこんなのあった気がする。 どこだっけ……?

 

とりあえず半分ずつ割り振っていき、最後に残ったポイントを素早さに振る

 

……割り振ったけど、上限が一向に見えない。 どのくらいまで成長できるのかな

 

 

「これで神無は、実質無敵の素早さと反応速度を手にしたわけか」

 

「あははは……はぁ……」

 

 

こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……。 クリアするまで脱出不可なんて言い出さなきゃ、初期装備でモンスターとのバトルを楽しんだのに……。 ……言い訳だったか。 でも、爽快感は出るからいっか

 

 

「…………」

 

 

……さて、全部上げたし画面閉じよっと

 

 

「……ん? あれ?」

 

「またなんかあった?」

 

「…………」

 

 

[StPt:999]

 

 

へ、減ってない!?

 

 

 

><><><><

 

 

 

「……あ、そういえばいいものを拾ったんですよ」

 

「何?」

 

 

見てはならないものを見てしまったあの後から数分後、フィーストにカンストするまで振っておけと言われました

 

……振ってみたら数値が四桁で[FFFF]と表示されて、それ以上いかなくなってしまったのだよ、ははは。 ……FFFFってなんだろう

 

それをフィーストに聞いてみたら、四桁の十六進数で十進数に直すと[65535]らしいです。 ……五桁いっちゃったよ

 

……それだと、『ものすごくつよいこぶし』の『攻撃力+999』はまだカンストしてないってことだったのか。……早とちりはよくなかったね

 

 

「この剣とこの剣、くっつけられるんですよ」

 

「へー、ダブルブレードか」

 

 

なぜこの人は知っているんでしょう。……まさか……先生じゃないよね?

 

 

「基本的に体術でいくので、欲しいですか?」

 

「くれるならもらっておこうかな」

 

 

トレード申請がきた

 

現れたトレード画面の空欄をタッチして、武器欄を表示する

 

 

「……あれ?」

 

「また?」

 

 

……もうフィーストはトラブルに慣れてしまったみたいです

 

 

「武器を空欄に移せないです」

 

 

……移動させようとしたけど、タッチしてそのまま空欄に移そうとしても武器欄に戻っちゃう。 どうなってるんでしょ

 

 

「……渡せないみたいです」

 

「そう……。 まぁ仕方ない、大剣一本でいくよ」

 

 

ほんとに申し訳ないです……

 

 

「……ん?」

 

 

トレードでほかに渡せるものがないかスクロールさせていると、ふと、あるアイテムに目が留まった

 

 

「何かあった?」

 

「『天空に佇む城の秘密』っていうのががありました」

 

「なにそれ」

 

「アイコンが鍵の形してるので、多分鍵です」

 

「どこで使うかわかる?」

 

「ちょっと待ってください」

 

 

評細を見てみる

 

 

[使用すると秘密の部屋に通じる道が開かれる]

 

 

「だ、そうです」

 

「使ってみようか」

 

「え……」

 

「この世界はゲームなんだから、使わないと損だよ」

 

「あ、はい……」

 

 

時々くるフィーストの大胆な行動にはいつも驚かされます

 

 

「…………」

 

 

アイテム欄から例のアイテムを出す

 

 

「わっ!?」

 

 

出した途端、何もしていないのに勝手にカギが輝きだした。 足元が光だし、あわててその場から離れる

 

 

「モニュメントが……」

 

 

フィーストさん、ちょっと目が眩んだからどうなってるかわからないです

 

 

「う~ん……」

 

 

視界が元に戻ると、私が立っていた位置に下に続く階段が現れた

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

辺りには人はいないみたいだった。 みんな家の中にいるのかな

 

 

「みんな、リアルと差異がほとんどないっていうから来た、っていうのがほとんどだから戦うなんて無理だと思うよ」

 

「死ぬかもしれないのに戦う、っていうこと自体がおかしいですからね」

 

 

……私もおかしいってことになるじゃん

 

 

「攻略組は勇敢な連中ということになるな」

 

「そうですね」

 

 

多分、今頃は一層を突破するために頑張っているんだろうなぁ……

 

それは置いといて……

 

 

「始まりの町のくせに地下があるとは……」

 

「まったく……斬新な発想だよ。 こんなの普通は後半の階層に設置する」

 

 

それと、あとはダメージトラップに囲まれていたり、特殊なアイテムを三つ集めないと道が現れなかったり、コマンド入力しないと扉が開かなかったり……違うか

 

 

「さて、降りていく前に確認するよ」

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

「?」

 

「降りていくんですか?」

 

「もちろんそうだけど?」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとに」

 

「…………」

 

 

この人……本気だ……

 

 

「……わかりました」

 

「ならよろしい。 じゃあ、確認」

 

 

探検していた時の恒例の確認事項だ

 

 

「はーい」

 

「クリスタルは?」

 

「大量にあります!」

 

「完全回復薬は?」

 

「それも大量にあります!」

 

「装備は?」

 

「点検してあります!」

 

「人が来ないのがわかったら?」

 

「即座にマイセットから最強装備に切り替えます!」

 

 

マイセットってすごく便利です。 これのおかげでわざわざ装備欄から付け直す手間が省けます

 

 

「よし、クリスタルと完全回復薬を持って」

 

 

階段に足をかけながら片手で二つ持つ

 

 

「探索……開始……!」

 

 

フィーストの合図で、先に私がゆっくりと階段を下りていく。 そのあとをフィーストがついてくる

 

 

「……?」

 

 

途中で何かを通り抜ける感覚がした

 

……なんかやばそう

 

 

「……」

 

 

階段を降り切ると、柱が所々に並んでいる薄暗い場所に出た

 

 

「………………」

 

 

マイセットから装備を切り替える。 ハイレグのインナーにスポーツブラ、その上からノースリーブのジャケットを羽織り、白い短パンを穿いた姿になった。 そして最後にフード付きのマントを羽織る。『アブセントクロス』と『求道者の外嚢』のマイセットだ。 ……お腹が出てるのが気になる

 

 

「はぁ……」

 

 

なぜかフィーストがこっちを見て、額を抑えながらため息をついた

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

手動で『ゴッドナックル』を装備しながら聞く

 

 

「なんでもない」

 

「……?」

 

 

ため息をついたのになんでもないとは……詮索しないでおこう。 大根切りの刑が執行されてしまうかもしれない

 

 

「さて、いこうか」

 

 

フィーストが先に進もうとする

 

……初期装備なのに先に行って大丈夫なのかな

 

 

「防具大丈夫ですか?」

 

 

尋ねるとフィーストがその場で立ち止まり、こちらをジト目で見てきた

 

 

「……神無」

 

「はい?」

 

「今、初期装備で先に行っても大丈夫なのか、って思った?」

 

「はい」

 

「よく考えてみろ。 雑魚しかいない一層でいきなりいい装備をドロップするほうがおかしい」

 

「あー……」

 

 

そうだった。 普通は後半の階層に行ってからくるようなものを、いきなりここで手に入れちゃってるんだよね

 

 

「……まぁ、でも当たらなければ大丈夫」

 

「その自信はいったいどこから……」

 

「もし格上の敵が来たら、神無に任せればいいし」

 

「ですよねー……」

 

 

フィーストよりも一歩前に出る

 

……初めから先頭を歩く気なんてなかったんだ

 

 

「…………」

 

 

……正直、誰も踏み込んだことがないところに先陣切っていくのは気が引ける。 情報がないと、敵に追われたときに袋小路に入ったらアウトだからね

 

 

「帰還用のクリスタルが使えるってことは……ここはダンジョンか」

 

 

フィーストがクリスタルを見ながら言った。 つられて見てみると、確かに淡く輝いていた

 

 

「じゃあ、敵きますね」

 

「先導よろしく」

 

「はーい」

 

 

先導といっても、一歩しか違わない。 もう並んで歩いているようなものだ

 

 

「…………」

 

 

敵がいつきてもいいように、警戒しながら前に進んでいく。 かなり奥のほうに明かりが見えていた

 

……あれがゴールかな

 

 

「……一本道か」

 

 

半分くらいまで行ったところで、フィーストがぽつりと呟いた

 

 

「そうですね」

 

 

一本道なら敵が前か上からしかこないから、奇襲を仕掛けられる心配はなさそうだ

 

 

 

><><><><

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

カツンカツンと、足音だけが薄暗い空間に木霊する

 

……静かだ。 静けさだけが辺りを支配している

 

 

「…………」

 

 

……なーんて、とあるキャラの真似をしてみた。 敵が全く来ないからすることがない。 無駄に気を張った気がする

 

 

「……はぁ」

 

 

少し離れたところにちょっと大きめの扉が見えた

 

……もうすぐゴール地点かな。 一本道で歩くだけ、それで敵は何も出てこない。 まるでエピローグだよ……

 

 

「……神無!!」

 

「!!」

 

 

フィーストが叫ぶと同時に集中し、極限まで反応速度を高める。そしてその状態のまま敵を探す

 

 

「……っ!」

 

 

真横からゆっくりと白い線が迫ってきた

 

……これなら受け止められる!

 

腕を交差し、構える

 

 

「受け止めるな! かわせ!」

 

 

どういうこと……!

 

 

「っ!!」

 

 

考えてる暇なんてない。 もうすぐまで迫ってきていた

 

白い線から垂直に跳び、何かの攻撃から逃れるとさっきまでいたところに亀裂ができた

 

 

「な、何が……っ」

 

 

後ずさりすると誰かに引っ張られる

 

 

「すんなりと行けたからおかしいと思ったんだ」

 

 

引っ張ってきたのはフィーストだった

 

 

「体勢を立て直す。 ……神無、敵が見える?」

 

 

フィーストに言われ、亀裂ができた場所を見る。 そこの部分の空間がぼやけていた

 

 

「……駄目。 ぼやけて見えないです」

 

「……わかった。 ロールは私がアタッカーを務める。 神無は反応速度を極限まで高めてて」

 

 

どこからか取り出した半透明な短剣を握りしめて、フィーストが言った

 

 

「ぼやけてほとんど見えないのにどうやって……」

 

「大丈夫」

 

 

フィーストがにやける

 

 

「私には……はっきりと見えてる」

 

 

そう言って、ぼやけて見えない何かに突っ込んでいった

 

 

 

 

><><><><

 

 

 

 

勝負はすぐについた

 

 

「……ふっ」

 

「…………」

 

 

フィーストがぼやけた何かの目前まで来た途端にその場から消え、現れたかと思うとぼやけた何かが地面に溶けていっていた

 

 

「…………」

 

 

この世界には魔法が存在しないはず。 だから、その場から本当に消えてしまう転移ができない。 だとしたら……フィーストは、極限まで高めた私の反応速度よりも速い動きをしたってことになる

 

 

「…………」

 

 

一体……フィーストって何者なんだ……

 

 

[EXP: 400000 Col:10]

 

 

「……こいつらも枠に当てはまるのか」

 

 

聞き取れないくらい小さな声で、何かぼそぼそと呟いていた

 

 

「……はぁ」

 

 

フィーストが大きなため息をついた。 気になって見てみる

 

 

[Last Attack Bonus!!:キャラカスタマイズキット{猫耳(黒) 猫シッポ(黒) カラーコンタクト]

 

 

「……?」

 

 

オンラインゲームにはよくあるアイテムだけど……どうかしたんだろう?

 

 

「こんなものつけてどうしろと……」

 

「つけてみたらどうですか?」

 

「あ?」

 

「ひいっ!! 冗談です!」

 

 

ただならぬ殺気を感じた

 

 

「あーそうだ。 これあげるよ」

 

 

そう言ってキャラカスタマイズキットを渡してきた

 

 

「トレード……というよりギフトできるみたいだから」

 

「試しにつけないんですか?」

 

「つけてあげてもいいけど、そのかわり……」

 

 

フィーストが大剣を取り出した

 

 

「〆切りね?」

 

 

にっこりと言い放つ

 

 

「あわわわわ……」

 

 

鬼だ……この人は人の皮を被った鬼だ……

 

 

「あ、ありがたく頂戴します……」

 

 

プレゼントボックスにキャラカスタマイズキットが送られてきた

 

……後で付けてみよう

 

 

「さて、ボスモンスターらしき敵みたいなのを倒したことだし、扉を調べてみようか」

 

 

フィーストが扉に近づいていく

 

 

「は、はい」

 

 

続いて、扉に近づいて調べてみる

 

 

「…………」

 

 

……ただの金属でできた扉だった。 鍵穴らしきものが取っ手の下に空いていた

 

 

「神無、ここも鍵使えない?」

 

「え?」

 

「ほら、あの鍵」

 

 

あの鍵って……あっ

 

アイテム欄から『天空に佇む城の秘密』という鍵を取り出す

 

……ほんの少し前に使ったばかりなのに。 物忘れってことはないんだけどなぁ

 

 

「それ、差し込んでみたら?」

 

「うん」

 

 

鍵穴に差し込んでみる

 

 

「カチャ、っとな♪」

 

 

空を切る音

 

 

「あいたっ!」

 

 

頭に衝撃が走り、鍵から手を放してその場にうずくまる

 

 

「痛みなんて感じないでしょ?」

 

 

背後からフィーストの声が降りかかる

 

 

「いや実は、ナーヴギアの出力が高くて感覚がリアルとほぼおんなじなんです」

 

「ふーん……じゃあ、存分にいたぶれるね♪」

 

「…………っ」

 

 

背筋がぞわっとした

 

……想像力はあまり豊かなほうではないけど、今、フィーストがどす黒い笑みを浮かべているような気がした。 ……確信は持てる

 

 

「冗談だから。 あまり本気にしないで」

 

 

声音と性格から冗談には聞こえませんでした

 

 

「それはおいといて……鍵開けた?」

 

「差し込んだだけです」

 

「回しなよ……」

 

「はい……」

 

 

鍵に手をかけ、回す

 

 

「……わっ!」

 

 

何かが外れる音がすると鍵が光だし、粉々に砕け散ってしまった

 

 

「あー……」

 

「なんかやった?」

 

「えっと……開いたみたいだけど、鍵壊れちゃった」

 

「開いたなら別に壊れてもいいでしょ」

 

「うーん……」

 

 

開けたらちゃんと閉めておきたくなっちゃうんです。 ……劉のせいで

 

 

「じゃあ開けて」

 

「はーい」

 

 

取っ手を握り、こちら側に引く

 

 

「…………重い」

 

「…………」

 

 

扉はびくともしなかった

 

 

「……神無」

 

「んー!!」

 

 

必死に引っ張っている中、フィーストが話しかけてきた

 

 

「っ……」

 

「神無」

 

「はぁ、はぁ……なんですか?」

 

 

息を整えてフィーストに向き直る

 

 

「神無……押さないと開かないよ」

 

「…………」

 

 

その場にくずおれた

 

 

 

 

><><><><

 

 

 

 

「念のため回復薬もっておこう」

 

「はい」

 

 

数分後、リアルでもやってしまう些細なミスによるショックからなんとか気を取り直すことができた

 

 

「それじゃあ開けて」

 

 

フィーストに促されて扉を押し開けると、開けた途端に扉が消え去った

 

 

「扉の意味は……」

 

「ないな……とりあえず入ってみよう」

 

「りょーかい」

 

 

同時に中に入る。 中は小さな空間になっており、中央には台座のようなものがあった。 そのそばでは紅い鎧に身に纏った男性が私たちに背を向け、台座から浮かび上がったものを見ながら何か作業をしていた

 

 

「……!」

 

 

気配に気づいたのか驚いたようにこちらを見た。 中に先客がいたことにこちらも驚く

 

 

「君達……いったいどうやってここに……?」

 

 

男性が動揺しながら訊いてくる

 

 

「あなたもどうやってこの中に?」

 

 

それにフィーストが質問で返した

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

沈黙が漂う

 

 

「…………」

 

 

フィーストから不穏なオーラが漂う

 

 

「……鍵を拾って手に持ってみたら地下に行けるようになって、それで……」

 

 

……耐えられなくなって先に言った

 

 

「鍵……? ……まさかセキュリティが破られたのか……」

 

 

こっちから言うと、男性がぶつぶつと小さく独り言を呟いた。 あまりにも小さすぎて聞き取れなかった

 

 

「今、セキュリティが、って言った?」

 

 

……隣で不穏なオーラを出している人はちゃんと聞き取れていたみたいです

 

 

「しまっ……!」

 

「聞こえないとでも思ったか?」

 

「…………」

 

 

……なんか、フィーストに取りついちゃったみたい。 元々クールだけどさらに拍車かかっちゃった。 ……スイッチ入ったのかな

 

 

「あんた……茅場晶彦だな?」

 

「え……?」

 

 

いきなり衝撃なことが発覚した気がする

 

……茅場晶彦って、確かナーヴギアを開発した人……

 

 

「……」

 

 

目の前の男性を見る

 

……リアルの写真で見たのとは全く違ってる。 本当に本人なのかな

 

 

「……は、こんなに早く見破られてしまうとは」

 

 

本人だった。 あっさり認めたよ、この人

 

 

「こんなデスゲームに開発者自ら参加するなんて、粋なものだね。 ほんと……何考えてるの?」

 

 

ちょ、開発者煽ったら消されちゃうよ

 

 

「……ようやく、夢が実現するからだ」

 

「あ、そう」

 

「……」

 

 

軽々とフィーストは切り捨てた

 

……まだどんな夢が実現するか言ってないのに

 

 

「……君たちは夕日を見たか?」

 

 

唐突に質問を投げかけられた

 

 

「見――」

「見ました」

 

 

フィーストが言うよりも早く言い切る。 さすがにこれ以上煽ったら何されるかわからない

 

 

「とても綺麗で、幻想的でした」

 

 

鐘がなり、広場に集められる少し前の光景を思い出し、言った

 

 

「……どうやら、君のナーヴギアは出力が強いみたいだ」

 

「……つ、強いと何かあるんですか?」

 

「現実世界にいるときと感覚がほぼ変わらなくなる」

 

「…………」

 

 

やっぱり変わらないんだ。 ……そのほうがいいけど

 

 

「普通はいじることができないはずなんだが……誰か身内に機械に詳しい者が?」

 

 

劉ぐらいしか家には機械に詳しい人がいない……

 

 

「……います」

 

「そうか。 話を戻そう。 私の夢は真の異世界の具現化だ。 そこでは、プログラムで動くものは何一つなく、全てが自我を持っている」

 

「……モンスターも?」

 

「そう。 そして、その異世界は今ここに具現化した」

 

 

男性が台座に向き直る

 

 

「だが、まだ不完全だった。 なぜならその世界はプログラムされているからだ。 プログラムされたとおりに動くものに、私は耐えられなかった。 どんなに学習させたとしても所詮はプログラム。 そこで思いついたのが、現実世界の人間をこちらの世界に引き込むことだった」

 

「…………」

 

 

……難しいことを言っているわけじゃないと思うのに、ついていけない

 

 

「だが、それでも駄目だった。 プレイヤー達がログアウトという手段でこの世界から出ていく。 そしてまた、プログラムされた者たちだけが残る。 だから私はログアウトという手段を奪い、閉じ込めることにした。 そうすれば出ていくことはない」

 

「その理想に私達プレイヤーが巻き込まれたわけか。 ……はた迷惑なことで」

 

 

フィーストから不穏なオーラが消えていった

 

 

「……まぁ、クリアできれば脱出できるという手段を残しておいてくれたということは称賛するよ」

 

「すまないな」

 

 

……脱出方法は、最上階に到達だったっけ

 

 

「……ところで、そっちの君の衣装……仕様にないのだが」

 

 

男性が作業をしながら訊いてくる

 

 

「え? あ、はい」

 

 

急に聞かれてしどろもどろになってしまった。 二人だけで会話をしていたおかげで置いてけぼりだ

 

……えっと、服のことを言ってるんだよね

 

 

「街の外のイノシシからドロップしました」

 

 

男性の動きが止まった

 

 

「……君には最高の味方がついているようだ。 敵いそうにない」

 

「は、はは……」

 

 

乾いた笑いが出てくる

 

……劉、世界の茅場さんから褒められてるよ。 よかったね

 

 

「……どうやら、勇敢なプレイヤー達が第一層のボスを倒したようだ」

 

 

男性が台座から浮かび上がったものを見て言った。 近づいて見てみると浮かび上がったものは画面だった

 

 

「…………」

 

 

そこには、ボス討伐直後の映像が流れていた。 なぜか険悪な雰囲気になっている

 

 

『待って!』

 

 

黒いコートを纏った、あまり喋らなさそうな黒髪の男の子が階段に足をかけると、茶髪でハーフアップのお嬢様みたいな女の子が呼び止めた

 

 

「……?」

 

 

その二人の頭の上に名前が表示されていた

 

 

「……キリト……アスナ……?」

 

「知り合い?」

 

 

フィーストが訊いてくる

 

 

「名前が表示されてるから……」

 

「……」

「……どこに?」

 

「ほら、頭の上に……」

 

 

指差して伝える

 

 

「……見えないけど?」

 

「……え?」

 

「……いくら管理者でも、常に表示させるようなことはしない」

 

「……え?」

 

 

二人とも……見えてない!?

 

 

 

><><><><

 

 

 

「このことは、他の皆には黙っておいてくれないか?」

 

「そうします」

 

「ある程度攻略することができたら、私も階層攻略に参加する。 個人的に上の階層の敵は強く作りすぎた」

 

「そうしてください」

 

「それまでは、しばらくはここにいることにする」

 

「はい」

 

「……言っていなかったが、ここにくるまでの敵は九十階の雑魚モンスターだ。 遭遇した場合は……君達なら大丈夫だろうが……逃げてくれ」

 

「……はい」

 

 

この部屋に着いてからおよそ数時間後。 入る前に時計を確認しなかったから正確な時間なんてわからない

 

……結局、あの映像では私だけしか名前は見れなかったみたいでした

 

 

「…………それじゃあ、またどこかで」

 

「ああ」

 

 

目の前の男性、ヒースクリフと呼んでほしい人と別れ、私達は元来た道を引き返していく

 

 

「あの映像に映っていた子……キリトにアスナちゃんかぁ。 ……本名かな?」

 

「んー……キリトはともかく、アスナって子は本名かもね」

 

「なんでわかるの?」

 

「……見極める目があるから」

 

「出た! 心眼!」

 

「十連斬の刑にするぞ?」

 

「衝撃とか感覚にくるんでやめてください」

 

 

道中、そんな会話をしていた

 

……それにしても、ボスのいたフロアに結構な数のプレイヤーがいたなぁ。 ……一層なのに

 

 

「あ、着いたね」

 

「ん……」

 

 

長い回廊を歩き続けると、階段のあるところまで戻ってきた

 

マイセットから初期装備に切り替え、階段を上る

 

 

「ねえフィースト」

 

 

上りながら尋ねる

 

 

「ん?」

 

「あのヒースクリフって人がいた部屋って、装置でボス部屋の中を見れたよね?」

 

「んー、うん」

 

「ということは、あの部屋ってデバッグルームってことかな?」

 

「オブザーバールームのほうが意味合いとしては正しい」

 

「ありがとうございました」

 

 

金属がこすれる音がした

 

 

「回復薬使いながら一と零の間を行き来させるよ?」

 

「誠意がこもってなかった!?」

 

 

あまりにも酷くて涙しそうになった。 ……執行風景を想像したら悪寒が走った

 

 

「ねえ神無」

 

「はいなんでしょう?」

 

「……ばかにしてるでしょ?」

 

「してません。 してません」

 

「……素がそれならしょうがない。 諦める」

 

「………………」

 

 

……心が折れそうです。 悪意なんてこれっぽっちもないのに

 

 

「……」

 

 

階段を上りきると町の中央広場に出た。 辺りは日が完全に落ち、街灯がついていた

 

……お腹すいたなー

 

 

「いつまで突っ立ってるの?」

 

 

気づけばフィーストが、『INN』と書かれた看板のついた家の前にいた。 私達が泊まっている部屋はこの宿屋だ

 

 

「早くきなよ」

 

「はいはーい」

 

 

駆け足でフィーストのもとにいく

 

……今日はなんだかいろいろありすぎて疲れた。 いきなり鍵が光るし、半透明の敵と遭遇するし、フィーストが信じられない速さでそれを倒しちゃうし、開発者に会えるし、自分にしか見えないものまで出てくるし……どうなってるんでしょ……

 

 

「…………」

 

 

家の中に入り、二階の拠点にしている部屋に行く

 

……考えても仕方ないか。 それよりも、明日からはボス討伐に参加してみよう

 

 

「……あ」

 

 

部屋に入り、ベッドに腰掛けるとあることを思い出した

 

 

「キャラカスタマイズキット……」

 

「……今やる?」

 

「うん」

 

「じゃあ、夕食とってくる」

 

「お願いします」

 

 

フィーストが部屋から出ていく

 

 

「…………」

 

 

アイテム欄からキャラカスタマイズキットを選択し、取り出す。 ちょっと大きめの箱に道具が入っているみたいだ。 その中から『猫耳(黒)』を取り出す

 

 

「……わっ!」

 

 

目の前が光り、視界が奪われた

 

 

「……っ」

 

 

視界が元に戻ると、手元から『猫耳(黒)』が消えていた

 

 

「……」

 

 

どこにいったんだろう……

 

 

「神無、持ってき……っ!」

 

「あ、フィースト……?」

 

 

フィーストがなぜか驚いた表情をしていた

 

 

「どうしたの、フィースト?」

 

「…………に、似合ってるよ、結構」

 

「……へ?」

 

「だから……似合ってるって……」

 

 

どうして顔を背けるんです? フィーストさん?

 

……ま、まさか!

 

自分の頭を触ってみる

 

 

「……!!」

 

 

あった。 消えたはずの『猫耳(黒)』がいつの間にかついていた

 

 

「…………!?」

 

 

そして、あるはずの耳が消えていた

 

 

「嘘……」

 

 

な、なんてことだ……! 

 

……これ、元に戻せないかなー。 たしか前のゲームだと、新しく作り直さないといけなかったけど、これはそうじゃないよね

 

メニュー画面を開き、装備欄を見る。 そこには、猫耳という単語はなかった

 

 

「……神無」

 

「はい」

 

「外せなくなっても……いいと思う」

 

「……はい」

 

「『な』を『にゃ』って言ってもいいと思う」

 

「はい……ん?」

 

 

聞き間違いか。 ……いや、この耳をつけてからなんか音が大きく聞こえるから、聞き間違えなんかじゃない。 『な』を『にゃ』ってなんだ……?

 

 

「……尻尾もつけたら?」

 

「…………」

 

 

外せないことをわかってお言いになってるんでしょうか……この人は。 マントがあるからいいものの、無かったら外歩けないよ

 

 

「つけてみたら?」

 

「……」

 

「つけてみたら?」

 

「……っ」

 

「つけてみたら?」

 

「っぎぎ……」

 

 

駄目、絶対、精神攻撃。 もうやめて! 私のMP(マインドポイント)はもうありません!

 

 

「つけてみなよー」

 

 

……はっ! まさか、あのときのことを地味に覚えてるの……?

 

 

「つけてみなよー」

 

「つけます、つけますからそのNPCチックなループやめてください……」

 

「わかればよろしい」

 

「…………」

 

 

やっぱり根に持ってた!

 

 

「うぅ……」

 

 

キャラカスタマイズキットの中から猫シッポ(黒)を取り出す

 

 

「…………」

 

 

ちらりとフィーストを見る

 

 

「…………」

 

 

にっこりとしていた

 

……どうしよう。 一生見られないくらいとてもいい笑顔してる。 スクリーンショットに収めておきたくなってきた

 

 

「……っ」

 

 

そんなことを思っていると、猫シッポ(黒)が勝手に輝きだした。 視界を奪われ、気づくと猫耳(黒)と同じようになくなっていた

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

重苦しい空気が辺りを包んだ

 

 

「…………」

 

 

……もし、私の勘が正しかったら今、猫耳と同じように尻尾が生えてきているはず。 ……見たくない、リアルの自分に尻尾が生えてるとか

 

 

「…………!」

 

 

見てしまった。 ……正確には、見えてしまった。 尻尾が勝手に前のほうにきたからだ

 

……あぁ、ふさふさでなんか触り心地がいいなぁ。 作り物なのに

 

 

「ふあぁ~……」

 

 

現実逃避していると、唐突に眠くなった

 

 

「夕食どうするの?」

 

「保り……」

 

 

最後まで言い切れない内に、意識を手放した

 

 




原作のキャラクターが考えていることって小説読んでてもわかりづらいです

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